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内乱
ツチラトVSオクタヴィアン そして東西分裂へ 三
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二人の戦士の決闘の舞台に放たれたのはウーゾイル軍が所有する大砲の弾だった。
なにやら訓練所のほうが騒々しいとの報告が本部に寄せられたのだった。
「騒いでいるのは侵入者だろう。やれ」
冷徹なバンジャマンの命令で"それ"は打ち込まれた。
この包帯男は知っていたのだろうか?"侵入者"とともに自軍の大佐がそこで剣を交えていたことを。
バンジャマンはあえて、爆撃した箇所を確認もさせず部下たちを撤退させた。
「侵入者は爆死した。遺体も粉々になり残ってないだろう」
バンジャマンが上層部にあげたこの報告は端的に言って嘘だった。
"彼ら"は生きていたのだ。
爆発の最中にツチラトは無意識のうちに、自分よりも重いオクタヴィアンの身体を担ぎあげ逃れた。爆発の被害を免れた観覧席にオクタヴィアンを寝かせると、ツチラトははっとした。気付けば敵の生命を救っていたのだ。
否、これまでの挑戦的な態度は、現世を疎んじ戦いに生きる彼なりの「友情表現」だったのかもしれなかったのだ。
オクタヴィアンが目を覚ました。
彼は、自分の命を狙った者と並んで座った。
ぼんやりと視界に映るのはさっきまで命を賭けていたステージの崩落する様だった。
「せっかくの舞台がなくなってしまった。これではわたしとお前の信念のどちらが強いか戦って決めることも出来ぬな」
ツチラトは髪をかきあげながら、月を睨んだ。オクタヴィアンが目を覚ますまでのわずかな時間に彼は目撃していた。冷酷なバンジャマンが現場を去る姿を。
状況証拠から言えばあの包帯男は味方ごと侵入者を殺そうとしたことになる。
さらに三つほどウーゾイル共和国にとってピンチを招く事態が進行している。ウーゾイル共和国の西側を占拠している一派が先代皇帝の威を借りて本気で独立しようとしている。
西側は経済活動を支える鉱山も保有していて、これを持っていかれたら東側は経済的にピンチ。
さらに東のオクチャブリでも現政府の威信が崩れ、社会主義指導者ゾーヤ女史が周辺国を巻き込みながら革命を起こさんとしている。経済的にピンチな東まで巻き込まれる可能性がある。
さらにウーゾイル政府そのものが、技術開発に託つけて、一部の権力者だけが私腹を肥やし、正統性を揺るがせにしている。
ツチラトはすべてをオクタヴィアンに話してやった。話してどうするのだと思うだろう。しかし話さずにはいられなかった。
そしてあわれな気持ちになった。目の前にいる愛国心の権化たる男が、信じ守ろうとするものの儚さたるや!
「ゴーチエのおっさんが国を裏切ったのもそういうことだ。無謀だし勘違いも甚だしいが、やつらは腐った国を守るくらいなら新しい国を作る気でいるようだ」
ツチラトの語りに滲んだものをオクタヴィアンは嗅ぎとった。
「いまなら、ゴーチエ殿の気持ちもわかる。しかし今さら西側にはつけないでござるよ」
オクタヴィアンはふと気になった。ツチラトはなぜ西側の味方をするのだろう。そして尋ねてみた。
はっきりとした答えはなかった。報酬目当てだとツチラトは嘯いた。
アンセルムたちに自分の貴金属類を与えてやった彼である。報酬目当てで仕事を引き受けるはずがなかった。
「またいつか戦おうぜ、オクタヴィアン」
ツチラトは闇に姿をけした。オクタヴィアンは二度と軍には戻らなかった。
そして翌日、世界を争いの渦に引きずりこむ出来事がおこる。
八月の末のことだった。
なにやら訓練所のほうが騒々しいとの報告が本部に寄せられたのだった。
「騒いでいるのは侵入者だろう。やれ」
冷徹なバンジャマンの命令で"それ"は打ち込まれた。
この包帯男は知っていたのだろうか?"侵入者"とともに自軍の大佐がそこで剣を交えていたことを。
バンジャマンはあえて、爆撃した箇所を確認もさせず部下たちを撤退させた。
「侵入者は爆死した。遺体も粉々になり残ってないだろう」
バンジャマンが上層部にあげたこの報告は端的に言って嘘だった。
"彼ら"は生きていたのだ。
爆発の最中にツチラトは無意識のうちに、自分よりも重いオクタヴィアンの身体を担ぎあげ逃れた。爆発の被害を免れた観覧席にオクタヴィアンを寝かせると、ツチラトははっとした。気付けば敵の生命を救っていたのだ。
否、これまでの挑戦的な態度は、現世を疎んじ戦いに生きる彼なりの「友情表現」だったのかもしれなかったのだ。
オクタヴィアンが目を覚ました。
彼は、自分の命を狙った者と並んで座った。
ぼんやりと視界に映るのはさっきまで命を賭けていたステージの崩落する様だった。
「せっかくの舞台がなくなってしまった。これではわたしとお前の信念のどちらが強いか戦って決めることも出来ぬな」
ツチラトは髪をかきあげながら、月を睨んだ。オクタヴィアンが目を覚ますまでのわずかな時間に彼は目撃していた。冷酷なバンジャマンが現場を去る姿を。
状況証拠から言えばあの包帯男は味方ごと侵入者を殺そうとしたことになる。
さらに三つほどウーゾイル共和国にとってピンチを招く事態が進行している。ウーゾイル共和国の西側を占拠している一派が先代皇帝の威を借りて本気で独立しようとしている。
西側は経済活動を支える鉱山も保有していて、これを持っていかれたら東側は経済的にピンチ。
さらに東のオクチャブリでも現政府の威信が崩れ、社会主義指導者ゾーヤ女史が周辺国を巻き込みながら革命を起こさんとしている。経済的にピンチな東まで巻き込まれる可能性がある。
さらにウーゾイル政府そのものが、技術開発に託つけて、一部の権力者だけが私腹を肥やし、正統性を揺るがせにしている。
ツチラトはすべてをオクタヴィアンに話してやった。話してどうするのだと思うだろう。しかし話さずにはいられなかった。
そしてあわれな気持ちになった。目の前にいる愛国心の権化たる男が、信じ守ろうとするものの儚さたるや!
「ゴーチエのおっさんが国を裏切ったのもそういうことだ。無謀だし勘違いも甚だしいが、やつらは腐った国を守るくらいなら新しい国を作る気でいるようだ」
ツチラトの語りに滲んだものをオクタヴィアンは嗅ぎとった。
「いまなら、ゴーチエ殿の気持ちもわかる。しかし今さら西側にはつけないでござるよ」
オクタヴィアンはふと気になった。ツチラトはなぜ西側の味方をするのだろう。そして尋ねてみた。
はっきりとした答えはなかった。報酬目当てだとツチラトは嘯いた。
アンセルムたちに自分の貴金属類を与えてやった彼である。報酬目当てで仕事を引き受けるはずがなかった。
「またいつか戦おうぜ、オクタヴィアン」
ツチラトは闇に姿をけした。オクタヴィアンは二度と軍には戻らなかった。
そして翌日、世界を争いの渦に引きずりこむ出来事がおこる。
八月の末のことだった。
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