さまざまな時評 ~映画からニュースまで

千田 陽斗(せんだ はると)

文字の大きさ
10 / 15
時評Ⅰ

クロノ・トリガー 動くものが時を刻む

しおりを挟む
 『クロノ・トリガー』は一九九三年の三月一一日に発売されたロールプレイング・ゲームです。
 余計な説明が不要なくらいの有名タイトルですが、「巨大な名前は意味を奪う」。
 これも、あえて語らなければなりません。
 
 『クロノ・トリガー』を金字塔たらしめているのはなにか?
 それは「ストーリーの良さ」に尽きると思います。
 ストーリーを簡単におさらいすると、主人公のクロノ青年と建国千年祭における少女マール(実はガルディア王国の姫)との出会いからお話は始まります。
 クロノの幼なじみでサイエンス・ガールのルッカが作り上げた物質転送装置とマールが持っていた不思議なペンダントの力が共振してタイムゲートが開きマールは過去へ飛ばされてしまいます。
 マールを助けにクロノとルッカも後を追い、やがて複数の時代をめぐる大タイム・トラベル・ストーリーへ発展していきます。
 ひょんなことから三人がたどり着いた未来の世界は荒廃しており、わずかに生き延びた人類がドームに身を寄せて暮らしていました。
 コンピューターに記録されていたのは、世界破滅の日の悲惨な映像。
  地下深くからその姿を表したラヴォスと呼ばれる巨大なウニのような生き物が、地上のすべてを壊滅させます。
 三人は、誓います。ラヴォスをやっつけてこの惑星の未来を救うと。
 この破滅の映像を見たときのマールの「こんなのってないよ!」というセリフが印象的ですが、三人の「未来を救いたい」という動機ははっきり言って端的です。
 世界が破滅するのは主人公たちが生きる時代から九九九年後です。彼らの寿命よりも先の、タイムトラベルさえしなければ知るよしもない話です。
 しかし彼らは運命を受け入れない。
 最初にマールが飛ばされた過去は四〇〇年前の中世で、そこでマールの先祖に当たる先代の姫に命の危機が訪れていました。そこで姫が死んでいたらマールの存在も歴史から抹消されていました。
 彼ら主人公たちは歴史を守りました。そして同時に改変者にもなります。
 『クロノ・トリガー』は王道のタイトルトラベルSFとして優れたストーリーを持っていることが分かります。
 
 ここからは、ストーリーのテーマを掘り下げてみましょう。
  物語の中盤、原始時代の人類と恐竜人との生き残りをかけた抗争劇が印象的です。
 この話はラヴォスの脅威から未来を救うためにタイムトラベルを繰り返す主人公たちの姿に重なります。
 原始人の女リーダーであるエイラも、恐竜人のリーダーであるアザーラもともに「勝ったものが生き残り、負けた者は滅ぶ」という端的な世界観を開示します。
 ちなみに世界を壊滅させるラヴォスは、惑星そのものを餌として生きる生命体であり、地球には原始時代に飛来して長い間地下に潜伏して惑星のエネルギーを吸収していました。
 ラヴォスの動機も善悪ではなく、人類や恐竜人と同じ端的な生き残りです。
 エイラに協力した主人公たちによりアザーラは倒されます。
「私たちのことを忘れないでくれ」と誇り高き尊敬できる敵として死んでいきます。 
 かつての原始人と同じように、端的な生き残りのために戦うなかで、冒険の記憶が輝かしいものになっていくのが、『クロノ・トリガー』体験なのだと思います。
 キャラが協力して繰り出す連携技もアツいです。
 なんだか、『アラモ』という西部劇を思い出すお話です。
『クロノ・トリガー』ってあんがい血沸き肉踊る要素があるんですねー。

 それから『クロノ・トリガー』は登場キャラたちも魅力的です。
 弱さや欠けた部分を持ったキャラが感情移入を誘うのだと思います。 
 中世では、勇者サイラスの親友でカエルに姿を変えられてしまった、その名も「カエル」。
 未来では、人類の新たな敵として造られたものの一人だけ人間の味方をして仲間から外される「ロボ」。
 それからカエルとは因縁の関係でありながら、やがて主人公たちと目的を一致させることになる「魔王」。
 個人的には、やはり魔王好きですよねー。
 絶対的な悪がいない世界、弱さをもった存在が輝く世界。日本的ですよねー。
 
 でもこの世界を味わいなおすために「つよくてニューゲーム」なんか繰り返しちゃうと、すごい時間をとられてしまいます。
 自分の人生や社会やらどーするんだ??
 リアルワールドにいる僕たちがタイムトラベルできないのが色々と悩ましいですよね。  
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

島猫たちのエピソード2025

BIRD
エッセイ・ノンフィクション
「Cat nursery Larimar 」は、ひとりでは生きられない仔猫を預かり、保護者&お世話ボランティア達が協力して育てて里親の元へ送り出す「仔猫の保育所」です。 石垣島は野良猫がとても多い島。 2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。 「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。 でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。 もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。 本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。 スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...