欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

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第七章 ロンシャン撤退戦ー前編ー

二六九話 戦いの前に

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 寄せ集めのロンシャン兵四〇〇人と、屋敷にいたロンシャン兵を合わせた四二〇人、ドライゼン王以下ランチア勢の合同軍、それを指揮する総司令官はアーマライト王となり、ランチア勢の俺達は遊撃隊として組み込まれる事になった。
 機動歩兵隊の隊長を務めていたアストラは、アーマライト王の補佐をすることとなった。
 ロンシャン兵は八四人ずつの中隊に分割され、五人の小隊長はそれぞれの中隊長に任命された。
 中隊長となった彼等は、隊をさらに八つの小隊に分割し、新たな小隊長を選抜している。
 小隊には出来るだけバランスよく各兵科を分散させているようだ。

「まだ時間がかかりそうだな」

「四二〇人だからねぇ、それも臨時の寄せ集めときたもんだ」

「仕方あるまい、後はなるべく被害を出さずに、他に散らばっているロンシャン兵を吸収していくようだぞ」

 慌ただしく隊が編成されていく中、ドライゼン王はシャルルと共に準備運動をしながら言った。
 遊撃隊として任命されたランチア勢は、俺、リッチモンド、ドライゼン王、シャルル、守護騎士、ホワイトにピンクの七人とだ。
 俺とホワイトとピンクの三人で前衛を担当、リッチモンドには殿を担当してもらい、守護騎士はドライゼン王とシャルルの傍に付く事になった。
 アーマライト王はアストラやヘカテーと、あーでもないこーでもない、と作戦会議に忙しそうだ。
 その時だった。

「おーいフィガロ! 聞こえるかー!」

 脳内には待ちわびたクライシスの声が響いた。

「クライシス! お疲れ様です、今どこですか?」

「やっと繋がったぜ、奴ら阻害魔法でこっちの魔法を封じてきやがってなぁ。思念波もそれに邪魔されて全然繋がらないと来たもんだ、ま、この天下無敵なクライシス様がしばき倒してやったがな! だっはっは!」

「そうだったんですね。さすがです」

「あ、そうだ。塔に残ってたタウルスの爺さまとランチア兵は全員回収済みだ、やっこさん元気ハツラツだぜ、どっかの誰かさんのおかげでな!」

「よ、良かったです……なんか気になる言い方ですけど、無事なら良いんです」

「でよ? お前ら腹減ってねーか?」

 どうやらクライシスは陽動ついでに、タウルス達も一緒に移動させてくれたらしい。
 気掛かりだったクライシスとタウルスの二つが消えた、これで気兼ねなく戦いに専念できるというものだ。
 しかし腹が減ったか? とはどういう意味だ? そのままの意味でいいのなら……確かにお腹が空いているのは事実だ。
 昨日のお昼から飲まず食わずでここまで来ているのだ、減らないわけが無い。
 なるべく考えないようにしていたのだが、クライシスの発した一言で腹の虫が鳴る。

「多分、みんな空いていると思います」

「だよな? 吉報だぜ、俺の所に食い物がたんまりある。っつっても携帯食糧だけどな。取りに来れるか?」

「本当ですか!? ですがこちらは人が増えて四〇〇人以上の大所帯になってまして……」

「あぁ!? 助けに行ったのは王家の連中だけだろ!? なんでそんな事になったかは知らんが……ざっと千はある、大丈夫だろ」

 こちらとしてはとても助かる話なのだけど、千はあるという携帯食糧をどこで見つけたのか、というのもかなり気になる所ではある。
 しかし背に腹は変えられない、フライでひとっ走りすればさほど時間もかからないだろう。

「分かりました、伺います。場所はどちらです?」

「結構遠くまで来ちまったんだがな、王城の正門を背にして三キロぐらいの所にある時刻塔の地下だ。近くに来たらまたリングで連絡しろ」

「分かりました!」

「お師様かい?」

 俺が壁に向かってコソコソしているのを見たリッチモンドが、横から顔をのぞかせた。

「ああそうだ。どうやら大量の携帯食糧を見つけたらしいんだけど……一緒に来てくれないか?」

「オーケー、さすがお師様だね。なんでそんな大量な食糧を見つけたのかが少し疑問だけど」

「やっぱりリッチモンドもそう思うよな?」

「そりゃね?」

 二人で顔を見合わせて疑問符を浮かべた後、アーマライト王へ報告をして二人で外へ出た。
 人が居ない所まで走り、リッチモンドが変異を解いて空へ飛翔、俺もそれに続いた。

「王城の正門を背にして、三キロの所にある時刻塔……あれか!」

 上空に漂い、クライシスから指示された場所を探すと、周囲の建物に比べかなり大きい時刻塔が目に入った。
 時刻塔は所々が破壊されており、未だに黒煙が立ち上っていた。

「何があったのか、ちょっと察しがついたよ」

「偶然だね、僕も丁度そう思ったところさ」

 時刻塔の前に降り立ちクライシスに連絡を取ると、正面にあった扉だったであろうモノの裏からクライシスが現れたのだった。

「いよう! お疲れさん!」

「クライシスもお疲れ様です」

「お師様、お久しぶりです」

「んじゃさっそく、こっちだ。ついてこい」

 ヒラヒラと手を振りながらクライシスはさっさと時刻塔の中に戻って行ってしまった。
 俺のリッチモンドは急いでクライシスの後を追い、地下に繋がっているのであろう階段を降りていったのだった。
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