欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

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第七章 ロンシャン撤退戦ー前編ー

三〇一話 嵐の夜に

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 俺とブラックが握手を交わしてから約三時間後、携帯食糧の木箱を搭載した複数の……馬車? 荷台? が王城の正門前に到着した。
 だが……。

「なぁ……リッチモンドさんや……」

「なんだい? そんな難しい顔をしてどうしたんだい?」

「どうしたもこうしたもあるかよ……」

 リッチモンドから連絡があってから数時間後、王城の前には数台の荷馬車と時刻塔に詰めていた皆が並んでいた。
 雨風は収まる事を知らず激しいままで、到着して早々に王城の中へ逃げるように駆け込む兵達はずぶ濡れの状態だった。
 哨戒中のロンシャン兵から荷馬車の接近を受けた俺は王城の入り口までリッチモンド達を迎えに来たのだが……。
 荷馬車を引いている存在が何やら不穏、というよりも不穏そのものだった。

「なんで骨のお馬さんが荷馬車引いてるんだ……」

「あぁ、これかい? 僕はこう見えても上級アンデッドだろ? だからそれに応じた能力がいくつかあるんだけどこれはそのうちの一つ、眷属召喚という能力でね。死霊術に似た所があるけどこの馬達は現実世界のものじゃない。僕の魔力で具現化させているけど、実態は【スケルトンホース】という実にそのまんまの名前の闇の家畜さ」

 俺の質問にリッチモンドは飄々とした態度で答え、嗎すらしない骨の馬の頭を呑気に撫ででいる。
 だが不思議と時刻塔に詰めていた者達はスケルトンホースを恐れる事なく、どちらかと言えば親しげな様子でじゃれている様子も見受けられる。
 一体何がどうなってるんだ?

「どういう事か説明してくれ……さっぱりわからないよ」

「だろうね? 僕自身も苦肉の策だったけど、上手くいったのはどれもこれもシャルルのおかげさ。あの子のおかげで大したトラブルも無くここまで来れた」

「シャルルが……?」

「そうだよ。あの子がこのスケルトンホースの無害さを証明してくれたからこそ、こんな短時間でここまでくる事が出来たんだ」

「詳しく、聞かせてくれるか」

「いいともさ」

 当のシャルルはすでにドライゼン王と共に王城の奥へ入っており、他の兵士達は王城の出入り口でせわしなく荷物の降ろし作業に従事している。
 俺とリッチモンドは玄関ホールの端にあるベンチに腰掛け、事の成り行きを聞いていた。
 リッチモンドはフードを深く被ってはいるがリッチ状態にはなっていないようで、骨同士をカチャカチャとぶつけあうスケルトンホースの鼻面を優しく撫でながら話し始めた。
 
「フィガロ達が王城に攻め込んでからというもの、こちらは全く動きがなくてね。本当に暇だったよ。どうせなら王城を奪還した後に素早く物資を運び込めるよう、待機中の皆で食糧を地下の保管場所から一階へ移動させておいたのさ。問題はこの暴風雨の中、どうやって大量の食糧を運ぶかだったんだけどね。僕がダメ元で言った案がすんなり通ってしまったものだから正直困ってしまったのは内緒だけどね」

「ダメ元って……何言ったんだ……?」

「なに、簡単な事さ。ちょっとした闇属性の魔法で使えそうな術がある、僕が呼び出した闇の世界の動物に荷車をひかせてはどうか、と提案したのさ」

「よくもまぁ、オーケー出したよな」

「他に方法が無いから、とドライゼン王は言っていたね。あの人はさすがだね、伊達に明王と呼ばれていない。優れた状況判断能力や柔軟な思考の持ち主だよ」

「兵士達は驚かなかったのか?」

「最初は驚いていたみたいだけど……シャルルがいち早くスケルトンホースと打ち解けてね。仲良さげに戯れるシャルルとスケルトンホースを見ているうちに兵達も警戒心が薄れたんだろうさ、すぐにスケルトンホースは人気者になった……正直「バカな」と思ったよ。それもシャルルが持つ王女としてのカリスマのなせる技なのかもしれないねぇ。あとはご存知の通り、スケルトンホースに荷車を引かせ、兵達に強化魔法をかけてここまでやってきたと言う事さ」

「ほぉん……」

「このお馬さんはとってもいい子なのよ?」

「シャルル! もういいのか?」

 やけに誇らしげに語るリッチモンドの横顔を見ながら、曖昧な返事をした時、背後からシャルルの声が届いた。
 髪の毛はまだ濡れているものの、王城内で調達したのであろう服に着替え、にこやかに微笑んでいる。
 そしてその横にはヘカテーとプル、ハンヴィー、アハト、シロンの姿もあった。
 
「ええ。ヘカテーさんに衣装部屋を案内してもらってそこで着替えてきたの。それよりもよ! 私だってびっくりしたのよ? シキガミを切って皆の様子を見てみたら室内に骨のお馬さんがいるんだもの」

「でもでも! この骨馬、とっても気性がおとなしくって懐っこくて可愛いのよー?」

 衣装チェンジをしたヘカテーとシャルルが顔を見合わせて破顔し、一体のスケルトンホースを撫でくり回していた。

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