欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

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第七章 ロンシャン撤退戦ー前編ー

三二一話 魔獣VS魔獣

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 遠くに聞こえる狼の遠吠えは俺の心を高揚させるには充分だったが、この国に居るわけがないという現実的な思考が横切る。
 だがあの遠吠えを聞き間違えるはずもなく、俺の中では確信に近い思いを抱いていた。

「クーガ!」

 ——オオオォォォーーン……! ——

 俺の声に答えるように再び遠吠えが聞こえ、王城方面の一部に青い輝きが灯った。
 青い輝きは閃光となり一直線にこちらへ向かってくる。
 
『新手か!』

 背後からラプターの声が聞こえたと同時に、青い閃光は肌が溶けてしまいそうなほどの熱を振りまきながら俺の横を通過してラプターへと迫る。
 大きな爆発音が聞こえ、飛行しながら首だけで背後を見るとラプターの姿は無かった。

「ハアアイエルフウウ!」

 闇夜にウルベルトの絶叫が響くところをみるとどうやら倒してはいないようだ。
 この機会を生かすべく俺はさらに飛行速度を上げて王城へと飛ぶ。
 
『マスターーーー!』

 進行方向の暗闇の中からクーガの声が聞こえ、青白い光を纏った狼が建物の屋上を飛び跳ねるように近付いてくるのが見えた。

「クーガ! 来てくれたのか! ……あれ? なんかデカくないか?」

 最後に見たときは二メートルより少し大きいくらいのはずだったのだが、近付いてくるクーガの大きさは五メートルはあるだろう巨大な体へと変貌しており、青白く発光する体の周囲には青白い炎のようなモノが数個、フワフワと浮いていたのだった。

『マスター! 御無事でしたか!』

「あ、あぁ、うん。無事とも言えないけど生きてるよ」

 俺は開けた公園のような場所に降り立ち、クーガは出迎えよろしく俺の前でお座りをしてゆっくり尻尾を振っている。
 一体なぜこの場所がわかったのか、どうやってここまで来たのか、などの思いはあるが今は再会を喜ぶことにした。
 太い支柱のような前足を撫でると手が手首まで毛皮に埋もれてしまった。
 
「……なぁクーガ、お前成長した?」

『いえ! 人狼殿の所へ行った際、コルネット嬢からヒントを得まして自分なりに体を大きくしてみました!』

「コルネットが、ねぇ……それにしてもデッカイなぁ」

『は! コルネット嬢から小さいと言われましたので大きくしました!』

「大きくしましたって……砂山じゃないんだから……」

『変化、というそうですよ! コルネット嬢は背中から翼を生やしておりました!』

「コルネットはヴァンパイアだから羽が生えてもおかしくないけど……あーもう考えるのはやめだ!」

 最近気付いたのだが俺はやたらと考え込んでしまう癖があるようだ。
 たまには理詰めではなく感覚で動いてみることにしよう。
 
『詳しい話は後程するとしまして、あのデブ鳥はなんでしょう? 私と似た魔力を感じるのですが』

「敵だよ。お前と同じ魔獣で……サーベイト大森林に生息していた俺の影響で魔獣に変異した梟だ」

『なるほど、ではあやつはマスターの下僕というわけでしょうか?』

「いや、あの魔獣を使役しているのは俺じゃない、ウルベルトっていう人間だ」

『んな! そんな馬鹿な! 変異の根源たるマスターに従わないどころかマスター以外の人間にかしずき、あまつさえマスターに牙を剥いているというのですか!』

「根源て……間違っては無いけどなんかなぁ。でもそういう事だ、あいつは強いぞ」

『産みの親であるマスターに盾突く不届き者はマスターの第一の下僕であるこのクーガめがぶっ潰してやりましょう! マスターは私の背に!』

「借りるぞ!」

 地を蹴ってクーガの背中に飛び乗り、座る位置を調整してクーガの体をしっかりと掴む。
 怒るポイントが少しばかりずれているような気もするけど、これで戦況は二対二、地対空というハンデがあるようにも見えるが、そこは大丈夫だ。

「フライ」

 俺がクーガに跨ったことにより、フライの効力が俺とクーガの全体を包む。
 普段よりも魔力が吸われるがどうという事は無い。

『おおおお! 浮いております! 素晴らしい! さすがは私のマスターです!』

「さて、敵さんも復活したようだし。第三ラウンドといこうじゃないか」

 クーガの放った青い閃光の直撃を受けたであろうラプターが、ゆっくりとこちらへ滑空してくるのが見えた。
 ラプターは咄嗟に防御したようで、見た所大した怪我はしていないようだ。

『フィガロよ。その巨狼が?』

「そうだ。魔獣ヘルハウンドのクーガだよ」

『鳥の魔獣よ! 貴様! よりにもよって産みの親であるマスターへなんたる仕打ち! 弁えろ!』

「ハイエルフよ! まさか貴様も魔獣を従えているとはな! は! つまり吾輩もハイエルフと同じ境地にいるということに他ならないではないか!」

 冷静に話すラプターに対し激昂するクーガに、歓喜と驚愕の感情をむき出しにして一人で喋り倒すウルベルト。
 四つ巴になった会話は中々に混沌としていた。

『産みの親? 何のことだ? 私は森でたった一匹、目覚めたのだぞ』

『自らに流れる魔力の胎動、体を構成する魔素から流れる力の根源も分らんとは笑止千万! 愚かすぎるぞ鳥よ!』

「まぁまぁ、その話はいいから。叩きのめしてから教えてやろうじゃないか」

『マスターがそう言うのなら。鳥よ、お前に分相応というものを教えてやろう!』

 怒り猛るクーガと、首をぐるりと回転させてこちらを見るラプターの目線が交差し、俺の逃避行から一転、戦いは魔獣大決戦へと変貌を遂げたのだった。
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