欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

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第七章 ロンシャン撤退戦ー前編ー

三三二話 すり合わせ

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 シャルルとラプターが友好的な関係を築いてから数時間後、俺はラプターを連れてアーマライト王の元へと訪れていた。

「お騒がせいたしまして誠に申し訳ございません」

「いやはや。何はともあれ無事でよかった。して、首尾はどのように」

「は。私の従魔クーガの助力もあり敵方のウルベルト中将を討伐、並びにウルベルトが従えていた魔獣ラプターも当方に従属する形とあいなりました」

「なんと! あのウルベルトをか! これは敵側も大きな痛手となるだろうな。さすがですぞ! 時に魔獣というのは……?」

 俺の報告を聞いてほくほく顔をしていたアーマライト王が怪訝な声で聞いてきたが、視線は俺の横に立つラプターに注がれているので見当はついているのだろうけど。

「はい。陛下の予想通り隣に立つこの鳥が魔獣ラプターです」

『お初にお目にかかる。ラプターだ、ゆえあって御方陣営に付かせていただく。よろしく頼む』

「そなたが本当に……魔獣なのか」

『本当だ』

「なんというか……意外に小さいのだな」

「陛下、ラプターは現在小さい姿に変化しております。本来の姿となるといささか巨大なもので」

「ほぉー……いやはや……魔獣……ううん、なんとも……ウルベルトが魔獣を従えていた事も寝耳に水だが、それを懐柔してしまうフィガロ様も大概ですなぁ……」

「私の場合はその、成り行きと言いますか、受け継いだと言いますか……説明が難しいのですが……何はともあれこちら側の戦力が大幅に強化されたことは違いありません。ラプターの実力は相当なものです」

「そうかも知れんが……まぁ良い、今はフィガロ様を信じましょう。スケルトンホースや魔獣など多大な貢献をして頂いた恩はいずれきっと返させていただきますぞ」

「はい。その時がきたらよろしくお願いいたします」

 アーマライト王から差し出された掌をしっかりと握りしめて俺は頷いた。
 
「話は変わりますが、ラプターから様々な情報が得られました。お話ししても宜しいでしょうか」

「おお、敵方の動きでも何でも良い、教えてくだされ」

「はい。まず革命軍の本拠地が判明致しました。場所は迷宮管理塔です」

「それは真か……! 革命軍め、よりにもよって管理塔とはな……ということは自由冒険者組合も落ちたか」

「組合の事ですが、どうやら内部に内通者がいたもようです。さらには枢機卿を人質にして教会騎士団六百人を動かしています、ですがラプターによれば枢機卿は既に殺されているとのことでした」

「枢機卿が……素晴らしいお方を亡くした……しかし教会騎士団であればこちらに引き込めるやも知れんな。問題は管理塔をどう攻略するかが問題なのだが……あそこには一般人もいるはずだ。戦闘で巻き込まないとも限らん」

「どう致しますか?」

「そうですなぁ……王城の守りは任せろとドライゼン陛下は仰っているし、ここで手を拱いていても何もなりますまい。軍を管理塔付近まで進めようと思います」

「分かりました」

「また後ほど作戦会議を行うので詳し話はその時に」

「かしこまりました。では私はこれで失礼いたします」

  アーマライト王に一礼し、静かに扉を閉めて退室した俺はそのままの足で食堂に向かった。
 第一段階の作戦時、並行して行われた王城敷地内の残党処理により、食料が備蓄されている倉庫を奪還することに成功していた。
 そのおかげで味気無い携帯食糧とはおさらば出来たのだが、かと言って何でも食べれるようになった訳でも無い。
 王城に保管されていた食料全てを使っても、現在王城にいる全ての人間を養うには持って四日だそうだ。
 その四日を出来るだけ引き伸ばすべく考え出された苦肉の策が、家畜の餌である雑穀を使用してカサを増すというものだ。
 乾パンや油漬け、塩漬けなどの保存が効くものはなるべくギリギリまで使わないようにとの事だ。
 普段なら捨ててしまう野菜の皮や、葉っぱの部分さえも雑穀と麦のリゾットに混ぜ込んで利用している。
 幸いにも水周りは無事な為に水分の心配をする必要は無い。
 王城の地下に監禁されていたシェフ達が頭を捻り、あの手この手で味を良くしようと頑張ってくれているのだが……こんな非常時にも困った人間というのは必ずいるもので。

「何だこのリゾットは! 水分が多くてベチャベチャじゃないか! それに家畜の餌まで入っている! 小汚い兵士ならともかく! 私に家畜と同じ飯を食えと言うのか!」

 食堂の端の方の席からそんな怒号が聞こえてきた。
 座っているのは小太りの貴族だ。
 どの爵位かは知らないけど、掌でテーブルの上を数度叩き給仕に文句を言っている。
 食堂には兵士達が大勢いるにも関わらず、大声で怒鳴りちらす小太り貴族。
 だが兵士達は薄ら笑いを浮かべたり、鼻で笑ったりする者が殆どである。
 
「申し訳ございません。別室にて他の料理を提供させていただきます」

「ふん! 分かればいいのだ! 早くしろ!」

 喚く貴族の横に立ったアストラがそんな事を言っており、当の貴族は満足そうに頷いている。
 これはアーマライト王が提案した策の一つであり、地下牢に閉じ込められていた貴族達を振るいにかけるものだ。
 協調性がなく、現状を把握出来ない者に貴族たる資格無し、とアーマライト王は言っていた。
 ちなみにアストラによって連れていかれた小太り貴族は別の料理を与えられる事もなく、元いた地下牢とは別の区画の牢屋へ収監される手筈になっている。
 ただでさえ窮地にいるのだ。
 自分の我儘を通そうとする無能な者達に構っている時間など無いのだろう。
 因みに地下牢に囚われていた貴族や富裕層の人間の凡そ七割が、別の区画の牢屋へと連れていかれているそうだ。

「ま、正論だよねぇ」

 アストラに連れていかれる貴族の背中を見ながら、雑穀入りのスープリゾットを頬張りつつ呟いた。
 小太り貴族が食堂から退出した途端、場内は兵士達の笑い声で満たされた。
 楽しそうに笑いあう兵士もいれば、喜ぶ兵士と悔しがる兵士もいる。
 どうやら食堂にいる兵士達は、貴族達が連れていかれるかどうかを副菜の乾燥肉の煮込みを掛けて勝負しているらしかった。
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