欠陥品の文殊使いは最強の希少職でした。

登龍乃月

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第九章 穏やかな日々

四一二話 奴隷商との出会い

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 ランチア守護王国では前王が奴隷制度を撤廃、禁止してから、表立った取引は無いと聞いていたのだけど……。

「不思議、ですか?」

「はい。この国での奴隷売買は禁じられていますから」

「おっしゃる通り、以前はいくつもの組織が手を出していましたが、今では私のみとなってしまいました。悲しい事です」

「闇オークションの会場であるここにいる貴方も裏の人間、裏取引……という事ですか?」

「ひっひっ、はい。その通りでございますよ、して旦那……いや若旦那。どうです? 一目見て行きませんか?」

 奴隷商は手を揉みながら怪しげに話し、手差しで行先を示している。
 この男に付いていけば、またもこの国の暗黒面を知る事になってしまう。
 それに今は俺以外にも連れがいる。

「申し訳ございません、今は間に合っておりますので。失礼します」

「ひっひっ! 連れないお方だ……ですが私は三日に一度、この場に立っております。興味がお有りでしたら何卒ご贔屓に」

 俺が断ったにも関わらず、表情を変えない奴隷商と分かれ、表で待っていたドンスコイやコブラ達と合流した。







『おかえりなさいませ、ご主人様。中でお客人がお待ちです』

「ただいま。え、客? 誰だろう……」

 家の前でドンスコイとコブラ、構成員達と分かれ、ガルバルディら子供達を連れて中へと入った。
 出迎えてくれたアハトとピンクにガルバルディ達を預け、手を洗ってから客人が待つというダイニングへと赴いた。
 そこで俺を待っていたのは武装した三人の男達だった。

「おかえりなさいませ、ボス!」

「貴方達は……」

「久しぶりです、ボス」

 俺がダイニングに入るなり立ち上がり、軽く敬礼をしたのはクロムジュニアに拉致された際に知り合ったStG傭兵団の団長、スカーだった。

「今日はどうしたんだ?」

「はい。不躾な用件で申し訳ないんですがね、そろそろ契約金を貰えないかと思いまして」

「なるほど。そうか、もうそんな期日か……」

「えぇ、ボスに雇われてからもうすぐ一月が経ちます。書面は交わしていませんでしたが……俺は旦那の言葉を信じましたし、仲間達も信じている」

「一人あたり金貨二枚、契約期間は三ヶ月、で間違いないよな?」

「そうだ」

「分かった。じゃあ早速支払いといこう」

「おお! 良かった! ありがてぇ!」

 終始難しい顔をしていたスカーだったが、俺がお金入りの皮袋をテーブルに置くとすぐにホッとした表情に変わった。
 皮袋からStG傭兵団の人数三十人分、しめて金貨六十枚を取り出してテーブルに並べた。

「ひーふぅみー……確かに約束の給金だ、ありがとうございます」

「契約書を交わしたいけど、生憎と今は手元に無いんだ。近い内に渡したいと思うんだけど……傭兵団はどこに滞在しているんだ?」

「俺達はボスの領地を調査しながら適当に野営して生活してますんで……定住場所は無いんですよ」

 スカーは照れくさそうにそう言うと、頭の後ろをポリポリとかいて笑った。

「え、それでいいの……?」

「良くは無いですが……ボスからの指令は領地の調査と警備でしょう? なら街で宿を取って行ったり来たりするより、現地で寝泊まりした方が効率いいですし、お金も使わなくて済むんでね。それと一つ言わせて貰いますが……ボスの領地、広すぎます」

「あー、なるほどね。言われてみれば確かにその方が効率いいね。領地の広さに関してはもうごめんとしか言えない」

「まぁ二つ返事でオーケーしちまった俺も悪いんですがね」

 何とも言い難い妙な空気になってしまい、お互いが虚空を見つめているとスカーが思い出したように続けた。

「そう言えばボスの領地で妙な物を発見したんです」

「妙な物?」

「はい。恐らくは遺跡だと思いますが、荒れ果てていて中に入るのは危険だと判断して目印だけ付けて放置していました」

「場所はどの辺……って地図が無くちゃ意味無いじゃないか……」

 スカーの言う遺跡らしき物の場所を知りたかったけれど、生憎と自分の領地の地図も持っていない事に気付いて愕然とした。
 色々とバタバタしていたのもあるが、自分の領地の地図すら持っていないのは完全な失態だろう。

「おお! なら俺達が作った地図を使って下さい! 簡易的なモンですが無いよりマシでしょう」

「本当にいいのか!?」

 やたらとドヤ顔をしたスカーは懐から取り出した羊皮紙と、小さな木炭の欠片をテーブルの上に置いた。
 羊皮紙を広げると、本当に簡略化された地図が姿を見せ、地図上には色々な書き込みがされていた。

「よくここまで……」

「時間なら腐るほどありましたし、月に金貨二枚も貰えるんだ。これぐらいやらなきゃバチが当たるってもんだ」

「ありがとう。スカー達を雇って本当に良かった」

「へへ、そう言ってくれりゃあ本望ですよ。んで例の遺跡っぽい場所ですが……このマル印の地点です」

 地図上に示された場所は隣国ヴェイロン皇国にほど近い場所にあり、この屋敷からだと約五キロほど離れた場所にあった。

「見た目は石造りの建物のような感じでしたが、劣化は酷く蔓や草木に侵食されちまってました」

「そうか……ありがとう。しかし遺跡かぁ……ドライゼン王は知っていたのかな……いや、知っていたら俺に話してくれるはずだもんな……よし、なら四日後だ。四日後、俺とトロイのメンバー数人で現地に向かう。その時一緒に来て案内してくれ」

「了解だ」
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