ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

文字の大きさ
22 / 73

22 侵攻

しおりを挟む
 勤務三日目の戦場が終わり、クレイモアに退勤のサインを貰った時のこと。

「クロード、次の出勤までチヌークをこちらに待機させておく事は可能か?」
「んー、それは難しいです。俺の意識下にない場合、距離が離れすぎると自動的にリリースされてしまうので」
「むう、そうか。ならば仕方ないな」
「すみません」
「構わん構わん。チヌークの働きがあまりにも良いのでな。聞いてみたただけよ」
「はい」
「じきに運搬用の馬車が到着するはすだからな。輸送は奴らに任せるとしよう」
「今度の出勤の時もチヌーク出しますので」
「うむ、頼んだぞ。ではお疲れ様だ」
「はい、お先失礼します」

 クレイモアは名残惜しそうにチヌークの顔を撫で、軽くキスをして離れた。
 そしてチヌークは軽く身震いをし、ローターをはためかせて俺を乗せて魔王城へと帰投した。

 〇

 魔王城へと帰投した矢先、城内がやたらと慌ただしい事に気付いた俺は近くにいた女性兵士を呼び止めた。

「何かあったんですか?」
「あっ、貴方は確か……クロード、さん?」
「そうです」
「私はミリアリアよ、よろしくね」
「よろしくお願いします」
「さっき入った情報によると、人間軍が北北東の魔界の国境を超えて魔王城目指して進軍中とのことよ」
「人間軍が? 随分急ですね」
「そうなのよ。だから今偵察部隊が急行中よ」
「情報ありがとうございました」
「どういたしまして、クロードさん明日は?」
「俺は明日は非番です」
「そうなのね、ごゆっくり」
「ありがとうございます、それでは」

 手を振るミリアリアと別れた後、食堂で夜ご飯をいただいてから自室へともどる。
 風呂にはいったりなんだりして、腰を落ち着ける。
 人間軍か。
 一体どこの国か気になった俺は窓を開け放ちスカイガーディアンを召喚した。
 偵察部隊が向かっているのは聞いたけれど、スカイガーディアンから見た方がより明瞭に分かる。

「行け」

 ミリアリアから貰った情報通り、スカイガーディアンの航路を北北東へ指定し発進させた。
 高高度を飛翔するスカイガーディアンならば人間軍に発見される事もないだろう。
 クレアに俺が偵察をやると進言すれば「やってみぃ」と言われるだろうけど、偵察部隊のお仕事を取ってしまう事になる。
 それはそれで良くないと思うので自粛したというわけだ。
 他の管轄のヤツにでしゃばられても不愉快だろうしな。
 
「見つけたか」

 スカイガーディアンから飛んできた映像を脳内に展開する。
 おびただしい数の歩兵と荷馬車、騎兵が隊列を組んで進行しているのが見える。
 おそらくだが五万ほどの兵力はあるだろう。

「あれは……ブルーリバー皇国の旗か」

 隊列の中になびいている旗印は王冠の上に剣が交差しているもの。
 テイル王国にほど近い国で魔界境界に隣接する国だ。
 皇国の軍人も何度かテイル王国で見たことがある。
 俺が知ってるだけで、向こうは俺の事なんて認識してしていなかっただろうけど。

「ん? 進行方向に村が……」

 村の名前までは分からないけど、このままだと確実に人間軍に飲まれてしまう。
 見た感じ農村なので戦える人材がいないのではないだろうか……。
 心配だ。

「気付いてるみたいだな」

 村民達が慌ただしく荷造りをしているのが見える。
 距離的に、ギリギリ脱出が間に合うくらい。
 逃げ出すところを見ると、やはり農村には戦える魔族はいないようだ。
 どうする?
 今目視出来ている状態ならあそこにモンスターを召喚する事はできる。
 でも村人達もモンスターがいきなり出てきたらびっくりするよな……。
 そんな事を考えていると、村人達の脱出準備が整ったらしい。
 我先に逃げ出す村人を見て、被害が出ない事にホッと胸を撫で下ろした。
 そして人間軍が村に到着。
 進軍の最中に敵の村を見つけた場合、やる事は一つ、略奪だ。
 今回は村人達に被害が及ばなかったが、これが村人も残っていた場合、人間軍は虐殺を開始する。
 戦える魔族の場合であれば村に近付く前に戦闘となるので、村に接近できた事は戦える魔族がいないのと同義になる。
 ブルーリバー皇国軍は村人がいない事に驚いているようだが、略奪はしっかりと行っていた。
 略奪行為は戦争のテンプレートだが、魔族はあまりそういった行為はしないらしい。
 殲滅戦などの特殊な指令がない場合、村や町に侵攻したとしても無駄な虐殺や略奪はしない。
 虐殺をしないのは弱い者や、歯向かわない者と戦う理由が無いからで。
 略奪をしないのは人間の食糧や金品に興味がないからだ。
人界では魔界の物品は高く取引されたり、戦利品や武勲の証拠として扱われる事が多い。
逆に魔界では人界の物品などは全く売れない。
買うとしたら珍しい物好きなコレクターくらいだろう。
 今ブルーリバー皇国軍がいる村から魔王城近郊までは……おそらく約十二日ほどかかるだろう。
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...