ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

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31 皇国の闇

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「クロード・ラスト?」

 ホルンストの出した名前に真っ先に反応したのはダレクだった。
 ダレクは横目でチラリと俺を見て、何も知りません、というような態度を取る。

「そうだ」
「そのクロードってのは何者なんですかね?」

 ここでいきなりはい、それ俺です、なんて言わないほうがいいのはダレクの態度でわかる。
 分かるけど、どうしてブルーリバー皇国が俺の事を知っていて、俺を探しているんだろうか?

「……詳細はどうしても言えぬが……クロードという男がとある国から魔界、魔王城方面へ逃亡したのだが、その男を我が国でお迎えしたいと考えていてな」
「ほぅ。他国の人間をこんな大部隊を率いてまでお迎えするとは中々に人気者みたいですね。そのクロードさんは」
「どうしても我が国に必要な人材なのでな」
「一つ聞きたいんですけどね? なんでクロードさんはとある国から逃亡したんです?」
「……それは目下調査中だ」
「逃げた理由が分からなくて、もし見つけたとして、振られる可能性とかは考えていないんですか?」
「もちろん考えている。一度会って話し合いをした上で合意が得られればの話だ。そのために我々は先方の出す望みに出来るだけ応えるつもりだ」

 ダレクとホルンストの話を聞きながら、なぜブルーリバー皇国が俺を欲しがっているのかがなんとなく分かった気がした。
 おそらく俺の情報がブルーリバー皇国側に漏れている。
 どこまで漏れているかは分からないけど、俺の出す望みに出来るだけ応えたいと言う事は何としてでも引き入れたいからだ。
 じゃあなぜそこまでして引き入れたいか、それは勿論召喚の技だろう。
 テイル王国を大陸一の軍事国家に押し上げた根源はラスト家の召喚術の恩恵だ。
 ブルーリバー皇国はどこからか、そのテイル王国の根源に辿り着き、今代の召喚士である俺に行き着いた。
 俺がブルーリバー皇国に行き、この力を貸せばきっと新しい大陸の覇者はブルーリバー皇国となるだろう。
 俺にだってそれくらいは分かる。
 
「すみません。俺からも一つお聞きしたいのですけどよろしいですか?」

 俺はすいっ、と一歩前に出てダレクの隣に並んだ。
 ホルンストの視線が俺に向き、ダレクが一瞬目を丸くしたのがわかる。

「何か?」
「おい!」

 ダレクが俺を睨んでくるが、別に正体を明かすとかそんなんじゃないから安心して欲しい。

「そのクロードさんをお迎えして、何をなさるおつもりなのですか?」
「……言えん」
「それじゃあこちらも探しようがないじゃないですか。仮に見つけたとしても貴方をブルーリバー皇国の方が探してましたよ、だけで首を縦に振ると思いますか」
「とは言ってもだな……こちらとしても軍事機密なのだ。分かって欲しい」
「そういう所が軍隊って感じですよね。ま、当たり前の事ですけど」

 機密は機密、他には漏らしてならない大事な事。
 テイル王国で言えば俺が機密そのものだったけど。
 今思えば俺の真実を知っているのが国王と軍関係者三人だけっていうのがダメだったんだろうけどな。
 コザが機密を知るに値しない人間だったのかもしれないけど。
 知っている人間が増えれば増えるほど、その事実が漏れる可能性が高まるしな。
 待遇は良くなったのかもしれないけど、逆にもっと違う、別の思惑が動き出す可能性も捨てきれない。

「お聞きしますが、ホルンスト少将にとって軍とはなんですか?」
「唐突な質問だな。軍とは私の生きる道そのものだ」
「生きる道ですか。では部下が体調を崩しました、ですがその日は大事な任務がありました。貴方はその部下にどういった対応を取りますか?」
「不思議な事を聞くな。そんなもの決まっている。体調不良だからなんだと言うのだ? 軍人とは任務をこなしてこその生き方だ。体調を崩すなど甘えている証拠。体調が悪かろうとよかろうと、任務に参加出来る事が喜びだろうに」
「……なるほど。ちなみにお休みは週二日ですか?」
「はっはっは! 何をおかしな事を! 軍人に休みなどない! 国の防人たる軍人に安息などはないのだ。常に国の事を考え、己の鍛錬に心血を注ぎ込み、研ぎ澄ましていく。それが軍人たるもの。休みなど甘えにすぎん!」
「そうですか。よくわかりました」

 聞くだけ聞いてみようと思ったけど、まさかここまでだと逆に尊敬してしまいそうになるな。
 筋金入りの愛国者なのかもしれないけど、俺とは合わない。
 むしろブルーリバー皇国の軍部がみなこの考えなのだとしたら……恐ろしいな。
 休みもなく働き続けるって、ゴーレムじゃないんだからさ。
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