ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

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48 カリスマ

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「はぁ……」
「どうしたのぉ? 浮かないお顔しちゃってぇ」
「いえ……」

 コザが最後に口走った言葉から察するに、俺を連れ戻しにきたのは王ガイアからの勅命だったのだろう。
 しかしよりにもよってどうして、俺に嫌がらせをしていたコザ達なのだろうか。
 どうしてダラスや直属の上司であったアスターではないのだろうか。
 なぜコザをコントロール出来る監視役がいなかったのだろうか。
 そして何故ダラスとアスターが革命軍の鎮圧部隊に異動になっているのか。
 ガイアの考えがまるで分からない。
 俺はさほど関わりがないとはいえ、父が懇意にしていた人物なのは知っている。
 なぜわざと絶縁につながるような人事采配を行なったのだ。
 今考えても答えは出ないし、無駄な事だとはわかっていても心の片隅にひっかかっていた。
 テイル王国に愛着があるわけではない。
 どちらかと言えば皆無だ。
 
「けど……なぁ」
「なぁにぃ? ひょっとしてそのダラスとアスターという人物が気になるのかしらぁ? どういう関係だったのぅ?」
「気になる、といえばそうですね。ダラスとアスターは王国にいた際お世話になっていた人達です」
「ふぅん、その人達は革命軍と遊んでるって言ってたわねぇ」
「そう、ですね」

 どうして革命が起きたのか、なんてのはどうでもいい。
 死。
 その言葉がぐるぐると頭の中を回る。
 革命が起き、テイル王国のありようが根本から変わるのか、それとも首の挿げ替え程度で終わるのか。
 革命が失敗するかもしれない。
 でもその最中にダラスとアスターの命が散るかもしれないと考えると、どうにも居た堪れなくなる。
 
「それも仕方ないのかな」
「何がぁ?」
「戦争って本来、殺し合いじゃないですか」
「そうねぇ」
「人間は弱いです。ちょっと刺されたらすぐ死にます」
「そうねぇ」
「魔族みたいに遊び半分でやる行為ではないんですよ」
「そうみたいねぇ」
「だから……」
「でもそれは貴方も分かっていた事なんじゃないのぅ?」
「え?」
「クロードが王国から離れたらモンスターが解放される。その結果が今回の顛末。こうなるのは少しくらい想像出来てたでしょぉ?」
「それは……」

 それはそうだ。
 確かに想像していなかったわけじゃない。
 でも、こんなに事が大きくなるなんて予想もしていなかった。
 
「んでもぉ、後悔するよりこの先の事を考えないとねぇ」
「つまり?」
「貴方がどうしたいかよぉ。魔王軍はみな須く個人の考えを尊重するわぁ。だからクロードが何を考えていて何をしたいかをきちんと話す事が大事なのぉ。たとえそれが承認できない考えであっても、ねぇ」
「きちんと、話す……」

 そんな事考えた事もなかった。
 テイル王国では、下っ端の個人の考えなどすぐさま切り捨てられる。
 軍上層部の決定は絶対。
 異論は認められない。
 それが軍のありようだと思っていた。
 いや、前世の職場でもそうだった。
 理不尽な納期やクレーマー、無理難題を押し付けてさっさと定時に帰る上司。
 稟議を上げても検討の余地なく棄却される。
 一個人の意見を全て拾い上げていては全体のバランスに関わるし、収拾がつかなくなるのではないのか。

「結局最終決定は魔王であるクレア様よぉ。非道で冷酷な決断をする時もあるし、人でなしという謗りを受けるような判断も下すわぁ。それが魔王だものねぇ。でも、上がってくる意見を全て蔑ろにするお方ではないのよぉ?」
「そう、なんですか」
「クロードが何を考えているのかは分からないわぁ? でも一人で抱え込むのはナンセンスなのよぅ。貴方は一人じゃないわ、魔王軍の、魔王城のみんながついているんだからしっかり自分を持ちなさいねぇ? 無理だと諦めたりなどせず、真っ向からぶつかって切り開いてみせなさいねぇ。私達はみなそうしてきたのよぅ」
「……はい。わかりました」

 漆黒を纏うカルディオールが、その瞬間だけ聖母のように感じられた。
 圧倒的な安心感と言えばいいのだろうか。
 包み込むような、奮い立たせるような物言いはやはり四天王の一角。
 数万はいる魔王軍の、大幹部のカリスマがなせる技なのだろうか。
 俺はどうしたいのだろう。
 これがお姫様だったり、ゲームのヒロインだったりしたら颯爽と助けに行くのが王道のストーリーだと思う。
 ……ダメだ。
 今は答えが出ないな。
 ゆっくりしている時間はないだろうけど、少し考えて、そしてクレアに話をしてみよう。
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