ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

文字の大きさ
61 / 73

61 挟撃

しおりを挟む
「なぁおい、何だあれ」
「ん? あぁ本当だ。モンスターか?」
「それ以外に無いだろ」

 テイル王国正規軍の兵士達は現在作戦行動中であり、目的である領主の屋敷周辺に展開して待機中であった。
 その中の兵士の一人が上空に滞空するソレを見つけ、隣であくびを噛み殺していた同僚に声をかけた。
 よく見れば少し離れた所にも、ソレと同じ体をした存在が等間隔で滞空していた。
 かなり高い所で留まっているためにその細部までは分からない。
 だがかなり小型のモンスターなのだという事はわかる。
 
「あれ、うちのか?」

 テイル王国がモンスターを使役しているのは公然の事実であり、それは一兵卒の彼らとてきちんと認識している。
 だが今回は首都からかなり離れた町での作戦だ。
 遠征にモンスター部隊が同行するという話は聞いていないが、もしかすると上空に漂う小さなモンスターくらいは出せる状況になったのかもしれない。

「そうじゃないか? 俺は何も聞いてないけど俺らみたいな下っ端にはそんな情報は回って来ないだろ」
「まぁ確かにな。しかしモンスター達が暴れ出した時はどうなるかと思ったぜ」
「だなぁ。原因は管理部門の不手際による事故だったって聞いたが……本当かねぇ」

 兵は眉と肩を同時に上げ、軍内に通達された事実を疑う素振りを見せる。
 クロードが国を見限った結果引き起こされたモンスターの暴走事故。
 国内ではテイルハザードと呼ばれており、革命戦争が起きるきっかけとなった大事故である。
 王の思慮は下っ端に分り得るものではないけれど、もう少しやりようがあったのではないか?
 というのが皆の心の内に秘めた思いであったのは間違いない。

「そろそろ作戦開始だな。さてさて、上のちびっ子は何をどう援護してくれるのやら」
「見た事も無いモンスターだが健闘に期待させてもらおうぜ」

 だがここで王への燻りを吐露した所で状況が変わるわけでもなし。
 二人の兵はメットをしっかりと被り直し、腰に帯びた量産の剣を握りしめ、目の前にある屋敷を睨みつけた。
 屋敷はいたって静かであり、窓からは使用人の姿すら見受けられない。
 平時は門を守護しているはずの門番の姿も見当たらない。
 相手側に正規軍の動きがばれているのは疑いようのない事実だろう。
 だとすれば相手は屋敷の中で身構えているはずであり、不用意に突撃するのは得策ではない。
 
「いけぇーーー!」

 正規兵達を指揮する将軍からの号令が飛んだ。
 それに合わせて大型の破城槌が轟音を立てながら門へと突っ込んで行った。
 盛大な破壊音と共に門がひしゃげて吹き飛んだ。

「進めぇ!」

 突っ込んだ破城槌が引かれると、大型の盾を構えた重装歩兵が列を組んでゆっくりと進行していく。
 その途端に屋敷の窓という窓から矢の一斉射撃が始まり、盾に、歩兵の鎧に、地面に矢の雨が次々と降り注いでいった。
 
「次ぃ!」

 指示が飛び、後方に控えていた弓兵部隊がお返しとばかりにボウガンでの一斉射撃を開始した。
 ボウガンの矢は一直線に屋敷の壁や窓に降り注ぎ、さらにそこで小規模の爆発が矢の分だけ巻き起こる。
 テイル王国軍特製の破矢である。
 矢の先端が対象に触れると、それを感知した炸薬が爆発を起こすという火矢の進化版とも言える装備である。
 爆破された窓は綺麗に吹き飛び、屋敷の壁には無数の穴が空いていた。

「始まりましたね」

 破城槌の轟音の後に響く無数の爆発音を聞きながらアスターが言った。
 
「ま、今回は楽勝だろう。次は俺達の番だ、楽勝だとは思うが、油断すんなよ」

 その隣にはダラスの姿もある。
 彼らは現在表門とは真逆、屋敷の裏手を位置取っていた。
 彼が担当する作戦は屋敷裏手から突入し、挟撃するというもの。
 ダラスの付近にはダラス率いる分隊が展開しており、この場の指揮権は彼のものだった。
 ダラスの今の階級は中将。
 モンスター統括司令官から降格したとは言っても、軍内部でのダラスの権力はやはり大きい。
 部隊編成でも自分が認める者を自分の部隊に集める事も容易い。
 それゆえにダラスは自らの補佐として、右腕としてアスターを自分の部隊に置いていた。
 
「行くぞお前ら! ケツ締めてけよ!」
「「「はっ!」」」

 ダラスは号令を飛ばし剣を抜き放つと、先陣を切って屋敷へと突入していった。
 そして裏手の扉を蹴り破った途端、大きな爆発が起きてダラス達は閃光に包まれた。
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

処理中です...