ブラック王国軍から脱退した召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになりました

登龍乃月

文字の大きさ
69 / 73

69 怒りの鉄拳

しおりを挟む
「お前何言ってんだ!?」
「本気で言ってるのか?」

 ダラスは怪訝な表情で、アスターは訝しげな表情でそれぞれ俺に目を向けた。
 そんなに変な事を言っているつもりはないんだけどな……。
 変かな?

「本気ですよ。本気ですとも。クロード・ラストはやりますよ」
「つってもなぁ。飲みに行かない? みたいなノリで言われてもなぁ……」
「クロード・ラスト! よく聞け! 俺達は軍人だ! ピクニック気分でふらふらしているお前とは違う! 俺達はお前の!」
「よせアスター」
「ですが中将!」

 俺の勧誘の仕方が気に食わなかったのか、アスターは眉を吊り上げて俺に食ってかかってきた。
 それをダラスが制するが、アスターはまだ言いたりないようだった。

「……よせと言った。聞こえなかったのか?」

 ダラスはいつもより一段低い声を出してアスターを睨み付けた。
 アスターにとってダラスは上官、そして軍人にとって上官の命令は絶対である。
 色々と俺関連の事があったので、普通の兵達よりはフランクなやり取りをしている二人。
 しかし今この場では完全な上官と一士官であった。

「悪いな、クロード。気を悪くしないでくれ」

 鋭い眼光がふっと穏やかになり、ダラスは後頭部を軽く掻きながらそう言った。
 
「いえ、大丈夫です。俺の言い方が悪かったんだと思います」
「……、」
「アスターもアスターで色々大変だった部分もあるんだ、分かってやってくれ」
「そう、ですよね。アスターさんの言い分も分かります。俺が突然国を捨てて出て行った尻拭いをさせられているんだ、って言いたいんだと思います。怒るのも最もです」
「……ふん……随分と軽く言うのだな」

 アスターは俺の目を見ずに、壁の一点をただじっと見つめていた。

「……すみません」
「お前にとっては対岸の火事同然だが、我々にとっては災害規模の大事件だったのだぞ」
「はい、そのようですね」
「……ならば一発殴らせろ」
「はい?」
「殴らせろと言っている」
「えとあの……」

 一点を見つめていたアスターの目がぐるりと動いて俺に向き、その瞳の色は言っている事が決して冗談でないと表していた。
 ダラスに助けを求めようと視線を送るが、ダラスはニコリと悪どい笑みを浮かべ、

「正直俺もアスターの意見には賛成だ」
「ダラスさん!?」
「当たり前だ。お前も事の大きさは理解出来ているようだが、その想像以上に残された俺達の被害はデカすぎた。知らない人からみたら本当にただただ災害に巻き込まれたようなものだ」
「う……」
「俺だって言いたい事は沢山ある。だがここで問答をした所で起きちまった事は何も変わらない。ただ、お前が反省というか、思う所があるのなら、アスターの一発を甘んじて受けろ。それが男のケジメってやつだ」
「……わ、わかりました……」

 横で聞いているダレク達は目をつぶってじっとしているだけで何も言おうとはしない。
 これは俺とダラス達の問題なのだから当たり前と言えば当たり前か。
 それに、二人の言い分も充分に分かる。
 
「覚悟はいいか。遠慮はしない」
「お、オス……!」

 リトルバードの狭い室内でアスターが手甲を外してぐっと拳を握った。
 俺はアスターの全力がいつ来ていいように歯を食いしばり、目を固く閉じる。
 目を閉じてから一秒か、十秒か、一分か。
 随分長く感じられ、薄く目を開いた所でガンッ! という音と共に頬に強烈な衝撃が響いた。

「―――――ッッ!」

 殴られた衝撃で思い切り後ろの壁に頭をぶつけ、後頭部と頬の両方に鈍い痛みを感じる。

「あ、ありあおうごじあましあっ!」
「……ふん」

 アスターの様々な思いが乗った拳の一撃、目の前がチカチカするが、そこを堪えながらお礼の言葉を述べた。
 呂律が回らず言葉にならなかったが、アスターには届いたらしい。
 
「くく……! 殴られて礼を言うとは思わなかったぜ! あっはっは!」
「ひ、ひろいれふよ……いへぇ……」

 涙目になっている俺を見て、ダラスが腹を抱えて笑いだした。
 鉄拳制裁にはお礼で返すんじゃないのか? 俺がずれているのだろうか……?
 アスターの一撃はかなり重く、一発だけなのに殴られた側の頬が数倍に腫れあがって上手く言葉にならない。
 
「くぅ……! 熱いぜ……!」

 横を見れば何故かダレクが涙を流して拳を握ってるし。

「これぞ友情ってヤツだなぁ! 熱い! 熱いぜぇ!」
「ちょっとダレクうるさいよー!」
「そうよ! せっかくいい所なのに!」

 何がいい所なのだろうか。
 ダレクらの言葉の意味はいまいち分からないけど、これで俺の中のわだかまりが一つ消えた。
 しかし、その次にダラスの口から発せられた言葉、

「世話になった礼が言いたいってんなら、もう一人、大事な人がいるだろう」
「もうひほりれふか?」
「分かってるだろう? 陛下だよ」
「……はひ」

 その言葉に俺は一瞬息を詰まらせた。
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...