1 / 20
1◆初恋
しおりを挟む
騎士団長をしているクロード・ナイルは、現在初恋をしているらしい。
それを副団長セルジュ・ハリアが知ったのは、本人から相談されたからだった。
「セルジュよ」
「なんっすか?」
仕事の話をする時みたいなトーンでクロードに呼ばれたから、セルジュは仕事に必要な資料ファイルをみながら返事をする。
そのファイルは、そこそこな厚みと重みのあるものだった。
「私の初恋の相談を聞いてくれ」
「はい?」
するっ。
ひゅーん、ぶすっ!
「いっだぁああっ!!」
驚きで目を見開いたセルジュはクロードをバッとみて、思わず持っていたファイルを落としてしまい、そのファイルの角が足の甲にクリティカルに直撃して激痛に叫び悶え苦しむことになってしまった。
セルジュ、若干涙目である。
「大丈夫か!?ファイルは!」
「ファイルの心配!?俺の心配してくださいっす!」
「何を言う?セルジュの足はアイアンゴーレムすら粉砕できる蹴りを繰り出せるじゃないか。ファイルなどアイアンゴーレムと比べたら……」
「足の甲は普通に痛いっすよ!」
ジト目のセルジュ。
クロードはなんとなく一度咳ばらいしてから、何もなかったことにして初恋の相談をすることにした。
クロード、もっとセルジュの足の心配してあげて……。
「相手は新入隊員のマリウス。成人になったばかりのピチピチの16歳。私の一目惚れだった」
「マリウス……下手したら幼児にしかみえない見た目のあの子っすか?」
「成人してるから合法ショタだ」
「36歳のむさ苦しいマッチョおっさんとあんな若い子が付き合ったら、未成年のパパ活疑われるっすよ」
あぁセルジュよ、クロードのことをそんな風に言ったら……!
「セルジュ、どうやら私に熱烈に鍛えてほしいようだな。後で覚えておきなさい」
「ひぇっ!?」
……セルジュがクロードに扱かれることが決定してしまった瞬間だった。
マリウスは平民の新入隊員で、5~6歳にみえるショタショタしい子だが16歳の大人である。
幼児ではないから呂律はちゃんとしているが、表情筋が死滅していていつも無表情だ。
スラム出身で、まともな食事ができなかった故に体が成長しなかったが、生きるためにナイフ1本で森で逞しく狩りをして死と隣り合わせの生活をしていた。
なので、騎士団に入団できるほどの実力は一応ある。
騎士団の入団試験は成人年齢である16歳から受けられるのだが、マリウスに面接で入団希望の理由を聞いたら「美味しいものが食べたいから」と死んだ魚の目で言っていた。
……クロードがそっと塩分補給のために持っていた塩飴をマリウスに渡していたが、その塩飴を食べてマリウスは少し驚き「美味しい……これが飴玉……」と初めて食べたらしい飴玉に感動していた。
「お菓子を渡したら喜ぶだろうか」
「小さな子にお菓子あげるって、誘拐のありきたりな手口っすよね!」
「私がマリウスを誘拐……だと……?拉致監禁で幸せになりました。めでたしめでたし……いいな」
「怖っ!?団長、発想がガチの犯罪者っす!」
「はははっ、本気ではない。……半分は」
「半分は!?今半分はって言った!?」
「気の所為だ」
……本当に気の所為なのだろうかと思うセルジュだった。
クロードは、まずはお菓子をマリウスに渡すことにした。
本当はデートがしたいのだが、まだデートは親密度的にもハードル的にもクロードにはキツイので、無難にプレゼントにしたのだ。
……面接の時の密かなリベンジ。
クロードはあの時塩飴しか持っていなかったが、本当なら初恋相手にもっと美味しいものを渡したかった。
せめて、塩飴より甘いフルーツキャンディとかチョコとか渡したかった。
顔面凶器のような何人か人を殺ってそうな怖い微笑みを浮かべ、リベンジに燃えるクロードは仕事終わりにお菓子屋さんに出陣する。
……そしてお菓子屋さんの主人に、ものすごく怯えられたのは言うまでもないことである。
それを副団長セルジュ・ハリアが知ったのは、本人から相談されたからだった。
「セルジュよ」
「なんっすか?」
仕事の話をする時みたいなトーンでクロードに呼ばれたから、セルジュは仕事に必要な資料ファイルをみながら返事をする。
そのファイルは、そこそこな厚みと重みのあるものだった。
「私の初恋の相談を聞いてくれ」
「はい?」
するっ。
ひゅーん、ぶすっ!
「いっだぁああっ!!」
驚きで目を見開いたセルジュはクロードをバッとみて、思わず持っていたファイルを落としてしまい、そのファイルの角が足の甲にクリティカルに直撃して激痛に叫び悶え苦しむことになってしまった。
セルジュ、若干涙目である。
「大丈夫か!?ファイルは!」
「ファイルの心配!?俺の心配してくださいっす!」
「何を言う?セルジュの足はアイアンゴーレムすら粉砕できる蹴りを繰り出せるじゃないか。ファイルなどアイアンゴーレムと比べたら……」
「足の甲は普通に痛いっすよ!」
ジト目のセルジュ。
クロードはなんとなく一度咳ばらいしてから、何もなかったことにして初恋の相談をすることにした。
クロード、もっとセルジュの足の心配してあげて……。
「相手は新入隊員のマリウス。成人になったばかりのピチピチの16歳。私の一目惚れだった」
「マリウス……下手したら幼児にしかみえない見た目のあの子っすか?」
「成人してるから合法ショタだ」
「36歳のむさ苦しいマッチョおっさんとあんな若い子が付き合ったら、未成年のパパ活疑われるっすよ」
あぁセルジュよ、クロードのことをそんな風に言ったら……!
「セルジュ、どうやら私に熱烈に鍛えてほしいようだな。後で覚えておきなさい」
「ひぇっ!?」
……セルジュがクロードに扱かれることが決定してしまった瞬間だった。
マリウスは平民の新入隊員で、5~6歳にみえるショタショタしい子だが16歳の大人である。
幼児ではないから呂律はちゃんとしているが、表情筋が死滅していていつも無表情だ。
スラム出身で、まともな食事ができなかった故に体が成長しなかったが、生きるためにナイフ1本で森で逞しく狩りをして死と隣り合わせの生活をしていた。
なので、騎士団に入団できるほどの実力は一応ある。
騎士団の入団試験は成人年齢である16歳から受けられるのだが、マリウスに面接で入団希望の理由を聞いたら「美味しいものが食べたいから」と死んだ魚の目で言っていた。
……クロードがそっと塩分補給のために持っていた塩飴をマリウスに渡していたが、その塩飴を食べてマリウスは少し驚き「美味しい……これが飴玉……」と初めて食べたらしい飴玉に感動していた。
「お菓子を渡したら喜ぶだろうか」
「小さな子にお菓子あげるって、誘拐のありきたりな手口っすよね!」
「私がマリウスを誘拐……だと……?拉致監禁で幸せになりました。めでたしめでたし……いいな」
「怖っ!?団長、発想がガチの犯罪者っす!」
「はははっ、本気ではない。……半分は」
「半分は!?今半分はって言った!?」
「気の所為だ」
……本当に気の所為なのだろうかと思うセルジュだった。
クロードは、まずはお菓子をマリウスに渡すことにした。
本当はデートがしたいのだが、まだデートは親密度的にもハードル的にもクロードにはキツイので、無難にプレゼントにしたのだ。
……面接の時の密かなリベンジ。
クロードはあの時塩飴しか持っていなかったが、本当なら初恋相手にもっと美味しいものを渡したかった。
せめて、塩飴より甘いフルーツキャンディとかチョコとか渡したかった。
顔面凶器のような何人か人を殺ってそうな怖い微笑みを浮かべ、リベンジに燃えるクロードは仕事終わりにお菓子屋さんに出陣する。
……そしてお菓子屋さんの主人に、ものすごく怯えられたのは言うまでもないことである。
92
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
何故か男の俺が王子の閨係に選ばれてしまった
まんまる
BL
貧乏男爵家の次男アルザスは、ある日父親から呼ばれ、王太子の閨係に選ばれたと言われる。
なぜ男の自分が?と戸惑いながらも、覚悟を決めて殿下の元へ行く。
しかし、殿下はただベッドに横たわり何もしてこない。
殿下には何か思いがあるようで。
《何故か男の僕が王子の閨係に選ばれました》の攻×受が立場的に逆転したお話です。
登場人物、設定は全く違います。
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる