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2◆幸せなんて許さない
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「兄さん……兄さん……」
おぞましいヘドロみたいな人型の化け物が、愛おしい兄を求めて彷徨う。
彼はイレギュラーの中でも特に強い存在だ。
愛おしくて狂おしい程恨んでいる愛する兄を取り戻すために、こんな姿になってしまった。
化け物になってもいいから、兄を奪い返す……兄の幸せなんて許さない。
守られている兄に、自分と同じところまで堕ちてもらわないと許せない。
だって彼にはもう戻る身体がないのだから。
「兄さん……愛してる……だから、僕が兄さんを壊してあげるよ……」
ヘドロのような両手をみつめ、彼は笑いながらポロポロとヘドロのような涙を流す。
壊された心が兄だけを求めた。
彼はいつかみていた優しい夢をもうみることはできない。
兄を取り戻せば、またあの優しい夢を今度は二人でみれると信じている。
【□□□視点】
少年は純粋な子だった。
純粋に兄を慕う美しい子だった。
だが、少年は悪魔に囚われてしまったのだ。
少年は美しい子だったから、悪魔に目をつけられてしまった哀れな子。
救う方法はただ一つ。
兄が魔の軍勢に一人で立ち向かい、魔の王を討ち取ることだった。
兄は少年を救うために、己の手を血に染めるしかなかった。
優しく明るい兄は毎日の戦いに心が疲弊するが、少年を救うことだけを心の支えに己を酷使する。
人々は兄を勇者と呼ぶ。
人間を愛する神に特別な力を与えられて、兄は聖剣を握る。
穏やかに本を読むのが好きだった兄は、もういない。
魔の王を討ち取った後、悪魔の下に戻って待っていたのは、物言わぬ骸になった少年だった。
その姿はみるも無残な姿で、口にするのも憚られるような様々な拷問を受けたことが嫌でもわかる。
高笑いをする悪魔は、少年を返す気などなかったのだ。
魔の王を討ち取らせたのも、ただの無理難題だったのだ。
だが、兄は魔の王を討ち取ってしまった。
なので悪魔は、充分に遊んで飽きたゴミを約束通りに返すことにした。
生きて返すとは約束していないと悪魔は楽しそうに笑う。
そして、悪魔の騎士達が刃を兄に向ける。
用済みになった兄は、もう邪魔だったからだ。
兄は深く絶望する。
少年の身体を抱き寄せて声もなく泣くしかない兄を、刃が貫こうとした。
おぞましいヘドロみたいな人型の化け物が、愛おしい兄を求めて彷徨う。
彼はイレギュラーの中でも特に強い存在だ。
愛おしくて狂おしい程恨んでいる愛する兄を取り戻すために、こんな姿になってしまった。
化け物になってもいいから、兄を奪い返す……兄の幸せなんて許さない。
守られている兄に、自分と同じところまで堕ちてもらわないと許せない。
だって彼にはもう戻る身体がないのだから。
「兄さん……愛してる……だから、僕が兄さんを壊してあげるよ……」
ヘドロのような両手をみつめ、彼は笑いながらポロポロとヘドロのような涙を流す。
壊された心が兄だけを求めた。
彼はいつかみていた優しい夢をもうみることはできない。
兄を取り戻せば、またあの優しい夢を今度は二人でみれると信じている。
【□□□視点】
少年は純粋な子だった。
純粋に兄を慕う美しい子だった。
だが、少年は悪魔に囚われてしまったのだ。
少年は美しい子だったから、悪魔に目をつけられてしまった哀れな子。
救う方法はただ一つ。
兄が魔の軍勢に一人で立ち向かい、魔の王を討ち取ることだった。
兄は少年を救うために、己の手を血に染めるしかなかった。
優しく明るい兄は毎日の戦いに心が疲弊するが、少年を救うことだけを心の支えに己を酷使する。
人々は兄を勇者と呼ぶ。
人間を愛する神に特別な力を与えられて、兄は聖剣を握る。
穏やかに本を読むのが好きだった兄は、もういない。
魔の王を討ち取った後、悪魔の下に戻って待っていたのは、物言わぬ骸になった少年だった。
その姿はみるも無残な姿で、口にするのも憚られるような様々な拷問を受けたことが嫌でもわかる。
高笑いをする悪魔は、少年を返す気などなかったのだ。
魔の王を討ち取らせたのも、ただの無理難題だったのだ。
だが、兄は魔の王を討ち取ってしまった。
なので悪魔は、充分に遊んで飽きたゴミを約束通りに返すことにした。
生きて返すとは約束していないと悪魔は楽しそうに笑う。
そして、悪魔の騎士達が刃を兄に向ける。
用済みになった兄は、もう邪魔だったからだ。
兄は深く絶望する。
少年の身体を抱き寄せて声もなく泣くしかない兄を、刃が貫こうとした。
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