真夜中の変態

ミクリ21 (新)

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本当に怖い真夜中の変態の話

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真夜中。

俺は仕事帰りに暗闇の道を歩く。

灯りのない夜道は不気味で、気が滅入る。

だけど、歩かないと帰れないから仕方ないとため息を吐いた。

「?」

ふと、後ろを誰かが歩く足音が聞こえる。

より一層不気味に思ったけれど、どうせオカルト的なものではないだろう。

俺はそういうものを信じていないんだ。

だから、何も気にしなかった。

「………」

でも、足音はずっと後ろからする。

角を右に曲がっても、左に曲がっても、ずっと後ろに誰かいる。

ちょっと試しに足を止めれば、足音は止まった。

「……っ!」

そこで、やっと俺は気にしだす。

………つけられている。

振り向いたらバレるぐらい堂々とつけられている。

俺は、また歩き始めた。

足音もついてくる。

このままこのストーカーを家まで連れて行くのはお断りだ。



だから俺は………ダッシュをする!

「ふんっ!!」

「……!?」

後ろの誰かが驚く気配を感じるが、俺は気にしない。

走れ俺!

メロスよりも光よりも全力で走れ俺!

当然足音も全力ダッシュでついてきた。

しかし俺は止まらない。

走って走って走って………近くにあったコンビニに飛び込んでゴールイン!

ここまでくればもう大丈夫。

………俺はそう思っていた。



「きゃーーーっ!!」

コンビニ店員の悲鳴があがる。

店員の視線は俺の背後をみていた。

俺は咄嗟に振り向いた。

するとそこには………首輪をつけた全裸のおっさんが下半身のアレを昂らせて、はぁはぁ言っていた。

たぶん、変態的なはぁはぁと疲労的なはぁはぁだと思う。

「はぁはぁっ……はぁはぁっ!」

「ぎゃーーーっ!?」

悲鳴をあげた俺の足がおっさんのギンギンな汚物を華麗に蹴り上げ、おっさんはこの世の果てを知ってしまった愚者のような悲鳴をあげて白目をむいて倒れた。

「あああああっ!!………ぐはっ」



その後、おっさんはやってきた警察に捕まる。

店員が全裸のおっさんを侮辱の眼差しで哀れんで、新聞を一枚汚物を隠すために警察に渡していた。

それでおっさんの汚物は隠されて、パトカーに乗ってドナドナされていった。



あのおっさんは、俺がいつ自分に気づくかというスリルや、気づいた時の反応を想像して楽しんでいたらしい。

たまたま今日は俺を狙ったけど、俺以外の被害者はいっぱいいるのが捜査でわかったそうだ。

おっさんは、罪は認めたが後悔はしていないとかふざけたことを言っていると聞く。

なんならまた股を蹴ってほしいなんて言っていたと警察に聞いてしまい、俺は思ったよ。

「よし、引っ越そう」



世の中、本当に怖いのは幽霊じゃなくて生きた人間なんだなってちょっと思った出来事だったよ。
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