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特級呪物でケーキ切って大丈夫なのか……?

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「モーリスを婚約破棄します!」

「あぁん?」

「ひぇっ!」

アンドレは、まるで極妻のように怖い婚約者モーリスに婚約破棄をした。

いきなりのことだったので、モーリスはドスの効いた声で凄みながら特級呪物の剣を抜く。

この特級呪物の剣は、モーリスが幼少期にたまたま父親から掠め取った宝箱を開けたら入っていた物だ。

呪われている剣だったために、モーリスはこの剣を寝ても覚めても装備中という呪われた身になってしまったのだ。

ちなみに、父親は呪われた品だから封印するつもりで持っていたのだが………幼少期のモーリスにそんな説明は右から左だった。

さて、モーリスとアンドレの婚約は政略結婚。

嫁側は当時めちゃくちゃ可愛かったモーリスなのだが、剣を手に入れてからスクスクと筋肉やら男らしさやらが育ってしまって、モーリスは完全に雄になっている。

愛は最初からなかった婚約なので、アンドレはモーリスに恐怖を感じて婚約破棄をしたのだ。

………今のモーリスを抱ける気がしないのも理由である。

「俺を婚約破棄?いい度胸じゃねぇか。死ぬ覚悟はあるんだろうな?」

「や、やめて!?僕のライフはもう0よ!」

「嘘つくなよ。ライフ丸々残ってるだろ?今から俺が散らしてやるよ」

「いやぁ!?そういうとこだよ!モーリスと婚約してたら命がいくつあっても足りないの!」

特級呪物の剣が血を求めてギラギラと煌めく。

「安心しろ。死んだら蘇生するから」

「安心できないやつ!!」

厄介なことに、モーリスは蘇生魔法の使い手なのだ。

うっかり殺しても蘇生されるので、実は何回かすでにやらかしている。

その度に父親が揉み消す苦労をしていて、ちょっと頭が草原から荒野になってしまったのは切ない事件だった………。

「お願い致します!婚約破棄……いや、婚約解消をさせてください!!」

「チッ!仕方ない。こんな玉の小さい婚約者よりいい男みつけるか」

なんだかんだで、モーリスもアンドレに不満をもっていたから婚約解消はスムーズに決まった。

ちょっとアンドレが一回死んでから蘇生されたが、モーリスは多少スッキリしたらしい………。



後日、モーリスは一人の男を網に入れて帰宅した。

「親父、俺の婿捕まえてきたぞ」

「どうか命ばかりは………!」

「………モーリス、婿は野生の獣じゃないんだよ」

モーリスの好みだったらしい青年は、まるで生贄の少女のように怯えている。

しかし、モーリスに熱烈に愛を語られて後に無事モーリスに落ちた。

そして、結婚式でケーキ入刀を特級呪物の剣に二人手を添えて行うのであった。
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