属性過多系カノジョさまっ! 〜俺が好きになった相手は四重人格で吸血鬼で悪魔で宇宙人でした──!?〜

青野ハマナツ

文字の大きさ
13 / 14

第十三話 反省

しおりを挟む
 傘を差し、相合傘で家に送るまでに気づいた事実は、咲良さんも一人暮らしだということ。俺は自分のミスに気づいているので、これを解消しようと試みる義務がある。

 俺はそんな気持ちを抱えながら、心亜の案内の通りに進む。商店街を抜けると小さな交差点があり、それを右に曲がった先に住宅街が広がる。家と家の間を十分ほど進んだ所に、咲良の住むアパートがあった──のだが、そこにあったのは……とんでもないオンボロアパートだった。

「えっ……? ここなの?」

 俺は目の前に広がる光景にかなり衝撃を受け、唖然としてしまう。サビなのか、塗装はなんか赤いし、一階の部屋の扉は三つ中二つ外れているし、二階に登る階段は三つほど段が欠けている。共有部分の屋根は一部落ちている。よく法律に引っかからないな、大家は何をしているんだ、など疑問は絶えないが、とにかく咲良さんたちはこのアパートの二階角部屋に住んでいるらしかった。

「送ってくれてありがとう。また明日ね」

 心亜はそう言って笑った。本当ならもう一歩踏み込んでやろうと思っていたのだが、この光景を目にしてしまったものだから、その一歩が出てこなかった。

「う、うん……」

 俺は、ただ頷くことしか出来なかった。

◇ ◇ ◇

 俺は咲良さんという女性のややこしさを感じさせられたまま、翌日を迎えた。なんせ、多重人格なので色々な考えが一人の中に混在している。困ったものだ。俺は朝から雨上がりの裏庭で意味もなくコーヒーを飲む。半分カッコつけ、みたいなところもある。

「おお、大井柊真じゃーん。なにしてんのー? こんなとこで」

 緑髪をゆらゆらと揺らし、身長の小ささを逆に目立たせたぐみが声をかけてきた。

「いや、咲良のことで考え事してたんだよ」

「ほーん? 恋のお悩みってところか」

「まあ、そうだね。昨日のことなんだけど──」

 俺は、ぐみに昨日の「お泊まり断り事件」を話した。

「──と、いうわけで、俺は千載一遇のチャンスを逃したんだよね」

「うん、もったいないことしたね」

「……あ、やっぱりそうなのか。謝った方がいいに決まってるよな……」

「当たり前だな。せっかく長良咲良が一晩中吸血できる依り代をGETできたところだったのに、それを断ったわけだからな」

 ──ん? 吸血……? なんか、違くないですか? 俺はもっと……なんというか、もっと踏み込んだところを想像していたのだが……?

「待て待て。『吸血』? つまり『もったいない』ってのは、咲良視点100%ってこと?」

「当たり前だよ。ぐみは常に吸血鬼目線に立ってるんだもん」

 そうか、こいつはそういう奴だったか。俺は、目の前の小さな先輩にどうしようもない期待外れ感を覚える。

「なんなら一緒に住んでみなよ。同棲どーせいっ」

「はい? 同棲……?」

「そうそう。そーすれば長良咲良は常に吸血できる血液サーバーを手に入れることが出来るでしょ?」

「お、俺のことは無視か?」

「うん。黄金の血は吸血鬼を虜にするし」

「そ、そうですか……」

 なんというか、人間の感情とかムードとかそういうものをフル無視してるんだな、この人は。

「──大井柊真、キミは家を持て余しているね」

「な、なんでそんなことまで知ってるんだよ」

「ぐみのリサーチ力を舐めてもらっちゃあ困るよ? ぐみは研究者だからね。研究のためなら、たとえどんな調査であろうと遂行するのさ」

「──ヤバいやつだな、お前」

 ぐみは、「一種の実験みたいなものさ」と言って笑う。何が実験だ。人の恋愛を笑いやがって。

「てか、なんで急に同棲なんて勧めてくるんだよ」

「──面白そうだから、かなー」

「はぁ??」

 何から何まで舐め腐ったヤツだ。この女は一応先輩なのだが、そんな雰囲気は1ミリも感じ取れない。

「ま、これは提案ってだけさ。気にする必要はないよ」

「──なんなんだ一体」

「じゃーのー」

 ぐみはそう言って教室に戻っていってしまった。何から何まで変なやつだ。俺はそんな彼女を見送り、教室へと帰っていく。

◇ ◇ ◇

「おー、柊真くんおはよう!」

「お、おはよう……」

 そう言って、黄色い瞳の咲良さん──美宙が話しかけてきた。

「どうしたんだよ? まさか、昨日のことを後悔してるとか?」

「──! まあ、そうだよな。分かるよなそれくらい」

「どこまで行ってもボクたちは一心同体だからね──って、一心ではないか。同体ではあるけど」

 普通は逆なのだが、咲良さんたちの場合はこの理論が正しいような雰囲気になるのが不思議だ。

 とはいえ、俺は昨日、目の前の少女の期待を裏切った節はある。彼女の言葉を借りるなら、まさに「同体」。いくら中身が違うとはいえ、外見が同じ人を前にしているのだから気まずい雰囲気にもなってしまう。

「まあ、とにかく気にしないことだね。ボクたちと柊真くんの付き合いは長くなるはずだからさ」

「そ、そっか」

 そう言って美宙は次の授業の準備を始めてしまった。なんとも締まらない感じだ。俺はなんとなくモヤっとした感情を胸に抱えながら、その日を過ごした。

◇ ◇ ◇

 いくら美宙があんな感じでも、もし今が他の三人の時間だったらどうしようという感情のせいでまともに話しかけられない。しかし、こういう時は先手必勝なのが恋の掟……って誰かが言っていたような、俺の造語のような……感じがする。

 そんな恋とは別の謎不安を新たに抱えたものの、それをすぐに捨てて咲良さんに話しかける。

「ねぇ、咲良さん──」

「んぅ?」

 そこに居たのは……紫の咲良さん──心亜だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...