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第五章 「火の国、動乱」

第六話 「拮抗」

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 ガルムエントの上空を、影が覆う。日の光が遮られたことで気温は瞬間的にグンと下がり、町中から困惑と混乱の悲鳴が劈く。
 すべてを覆う闇。それが【神装ニアズマ漆黒冥闇アビスフィオレ】の真相にして深層。一切合切を飲み込み、捉えて離さないブラックホールの如き深淵だ。
 対して、僕の【神装ニアズマ極聖神殿テクマカリチュア】は光。【神装ニアズマ漆黒冥闇アビスフィオレ】の闇をすら照らして見せる、神の威光を顕現したかのような暖かな光だ。
 その性質は、【神装ニアズマ漆黒冥闇アビスフィオレ】が総てを穿ち喰いちぎる剣であり、【神装ニアズマ極聖神殿テクマカリチュア】が何をも貫くことを許さぬ不動の盾である。

「…………死ね」

 天高く掲げられ、今なお際限のない闇を放ち続けている【神装ニアズマ漆黒冥闇アビスフィオレ】が一息に振り降ろされる。
 その軌跡には一切のものが残らない。たった少しの光すら。あって当然の空気すらも。一切が飲み込まれ、その存在を抹消する。

「くっ……防げ! 【神装ニアズマ極聖神殿テクマカリチュア】ァァ──!!!」

 指輪から放たれる光が、僕の前に盾のように展開され、振り下ろされる闇と拮抗する。
 総てを貫く剣と何をも通さぬ盾。
 照らす光と、引きずり込む闇。
 その二つがぶつかったなら、どうなるか。

「ォォォォォオオオオオオ!!!!」
「ハァァァァァァァ──ッ!!!!」

 轟く、相対する二人の叫び。
 拮抗する、と思われた。
 だが。
 膝をついたのはエイリアスぼくだった。

「ぐっ……ぅぅおおおおおお!!」

 裂帛の気合いとともに、光を支える。
 だが、一度押された距離を押し返すことだけはどうしてもできない。
 当然だ。剣と盾が互角というなら、何処で差がつくか。
 それは、互いの膂力だ。そしてその面に関して、僕に勝利できる可能性は微塵もない。

 だが、そんなことは僕にだって判っていること!
 僕は既に発動済みの【鋼鉄斬糸デルミット・ガタンダ】を【磁力世界シャトレ・アウス】で自在に操作する組み合わせで、剣を支えていられる間に人知れず団長を締めあげにかかる。
 これは以前に団長に勝った時に使った手。もちろん同じ手が何度も通じるなどと思いあがってもない。
 だから僕は十重二十重と団長に勝つためのルートを刹那の間に思考し、それを水面下でいくつもいくつも実行。
 このうちのどれかに引っ掛けられれば僕の勝ち、このまま力で押しきれば団長の勝ち、という単純な構図へと落とし込む。

 糸、躱される。
 小刀、器用に受け止められる。
 針。魔法。閃光。音爆弾。
 使い捨てのマジックアイテムも惜しげなく次々と投入し、一筋の勝利を貪欲に求め突き進む。

 団長が僕を睨んでくるのが、激しい闇と光に遮られて見えないのにも関わらず肌で感じ取れた。
 ズン、と盾にかかる衝撃が段違いに増し、徐々に敗北へと押し切られていく。
 僕は頬に伝う冷や汗を感じながら俯いて盾を支え──!!

 刹那。衝撃の一切が掻き消えた。
 僕はその事実に驚き、理由を求めて視線を上げる。
 理由は、実に簡単なものだった。

「喰い千切れ! 【ドウジマ】ァァァ!!!!」

 見知った一人の男が、叫びながら黒い刀身の刀を手に拮抗の間に飛び込んできたからだ。
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