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第一章
採取
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「あ、あぁ……食料確保ですか。私も失念していましたね……はい。いい機会ですし、どうせ動くことも無いでしょうから、今のうちにやっていただけるのならそれに越したことは。何かあったら私が対応しておきますので」
タルトがこんな感じで快く承諾してくれたので、俺はルーと共に森に入った。
森にどんな食べ物……もとい。獲物、動物がいるのかとルーに聞くと、凶暴なモノだと猪や熊。これらはあまり出ては来ないらしいが、仕留められると大きい。凶暴でなく、安全なモノだと鹿とからしい。動物以外の食べられるものなら、果物やキノコもあるし、百人を超える大所帯でも支えられるだけの供給源ではある、という。
「このキノコ……すげぇ毒々しい色してるけど」
「……大丈夫」
「この果物、ドロっと爛れてるしすげぇ匂いするけど」「……大丈夫」
「…………この「大丈夫」大丈夫!? 本当に大丈夫!?」
異世界で異なる生態系、異なる環境で進化したものたちだからか。俺が生きていた世界では見たこともないものばかりが生えたり実ったりしていた。料理された後だとわからなかったなぁ……味ばかりは似たり寄ったりだったし。俺が好きな、よく夕食に出てくる少し甘いジャガイモらしきものもモノはもっと違う物なのだろうか。もっと商店街的なところに行けば面白かったかもしれない。というか動物は俺の世界と一緒なんだなぁ……謎が多い。
俺はルーに安全かどうかとかをちゃんと聴きながら、安全性を第一に確認しつつ食べ物を収集する。
「ふう。案外結構集まるもんだな。持ってきたカゴが足りるか心配になってきた」
何せ百人分必要なのだ、背負える大きなカゴを沢山持ってきたが、あんまりにもホイホイと収穫出来るので、あと二時間もすれば全部埋まってしまうのではないか。もしかすると、試験会場が此処に選ばれたのは食料が豊富という理由もあったのかもしれない。
近くで弓の弦が空気を切る音がする。何を仕留めたかは知らないが。
「……これだけあれば、試験期間中は凌げる」
その辺りの裁量には自信があるらしいルーが胸を張って断言する。ルーはどちらかと言えば、こういう資源に関わるところが強いらしい。数字に特に強く、事務職とかに良く向いているようだ。
「そうか。それなら良いけど……予備もあるに越した事はないからな。取れるだけは取っていこう。兵糧攻めとかされる展開も……ある、かなぁ……」
砦でもないのにそんな展開があるとはとても思えないが。まぁ多くて困る事はない。要らないなら後で投棄すれば良いのだ。
「……無いと思う、けど。まぁ、良い……」
ルーがゴソゴソとキノコなどを採取しつつ、俺の話に相槌を打つ。
しかし、さて。あまり長い間戦力を分散しておくのは避けたい所だし。そろそろ帰るか……?
俺のその思考がフラグだったとでもいうのか、突如木の上で望遠鏡を覗いていた男が大口を開けて叫んだ。
「敵襲、敵襲ーー!!!!」
──ああ、やっぱりそう上手く行く事ばかりでは無いんだなぁ。
休息が休息となっていない現状に、俺は深く息を吐く。自分の不運に嫌気がさす。まったく、付いてきて正解だった。
「総員集合!! 整列して指示を待て!」
慣れた手つきで鋭く指示を出しながら、俺は持ち物に忍ばせた、望遠鏡に続く秘密兵器二号に思いを馳せていた。
さて、どうお披露目してくれようか、と!
タルトがこんな感じで快く承諾してくれたので、俺はルーと共に森に入った。
森にどんな食べ物……もとい。獲物、動物がいるのかとルーに聞くと、凶暴なモノだと猪や熊。これらはあまり出ては来ないらしいが、仕留められると大きい。凶暴でなく、安全なモノだと鹿とからしい。動物以外の食べられるものなら、果物やキノコもあるし、百人を超える大所帯でも支えられるだけの供給源ではある、という。
「このキノコ……すげぇ毒々しい色してるけど」
「……大丈夫」
「この果物、ドロっと爛れてるしすげぇ匂いするけど」「……大丈夫」
「…………この「大丈夫」大丈夫!? 本当に大丈夫!?」
異世界で異なる生態系、異なる環境で進化したものたちだからか。俺が生きていた世界では見たこともないものばかりが生えたり実ったりしていた。料理された後だとわからなかったなぁ……味ばかりは似たり寄ったりだったし。俺が好きな、よく夕食に出てくる少し甘いジャガイモらしきものもモノはもっと違う物なのだろうか。もっと商店街的なところに行けば面白かったかもしれない。というか動物は俺の世界と一緒なんだなぁ……謎が多い。
俺はルーに安全かどうかとかをちゃんと聴きながら、安全性を第一に確認しつつ食べ物を収集する。
「ふう。案外結構集まるもんだな。持ってきたカゴが足りるか心配になってきた」
何せ百人分必要なのだ、背負える大きなカゴを沢山持ってきたが、あんまりにもホイホイと収穫出来るので、あと二時間もすれば全部埋まってしまうのではないか。もしかすると、試験会場が此処に選ばれたのは食料が豊富という理由もあったのかもしれない。
近くで弓の弦が空気を切る音がする。何を仕留めたかは知らないが。
「……これだけあれば、試験期間中は凌げる」
その辺りの裁量には自信があるらしいルーが胸を張って断言する。ルーはどちらかと言えば、こういう資源に関わるところが強いらしい。数字に特に強く、事務職とかに良く向いているようだ。
「そうか。それなら良いけど……予備もあるに越した事はないからな。取れるだけは取っていこう。兵糧攻めとかされる展開も……ある、かなぁ……」
砦でもないのにそんな展開があるとはとても思えないが。まぁ多くて困る事はない。要らないなら後で投棄すれば良いのだ。
「……無いと思う、けど。まぁ、良い……」
ルーがゴソゴソとキノコなどを採取しつつ、俺の話に相槌を打つ。
しかし、さて。あまり長い間戦力を分散しておくのは避けたい所だし。そろそろ帰るか……?
俺のその思考がフラグだったとでもいうのか、突如木の上で望遠鏡を覗いていた男が大口を開けて叫んだ。
「敵襲、敵襲ーー!!!!」
──ああ、やっぱりそう上手く行く事ばかりでは無いんだなぁ。
休息が休息となっていない現状に、俺は深く息を吐く。自分の不運に嫌気がさす。まったく、付いてきて正解だった。
「総員集合!! 整列して指示を待て!」
慣れた手つきで鋭く指示を出しながら、俺は持ち物に忍ばせた、望遠鏡に続く秘密兵器二号に思いを馳せていた。
さて、どうお披露目してくれようか、と!
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採取まで読みました。ルーちゃん可愛い。
採取における「大丈夫?」の部分はとても良かったです。かなり異世界感が出ていました!
ただその代わり、ところどころ日本語がおかしくなっている箇所が目立ってきています。
お話的に盛り上がってきた様子、続き楽しみにしています。
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10日間かー、食糧の現地調達はうまくいっているのかな?
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なるほど。
それを感想欄で説明するのではなく、作中で説明していただけると良いです。
別にその種族の起源がどうのこうのを説明しなくていいのです。軽くどういうものなのかを説明して、軽く理由をつければ説得力が増します。何も設定資料集の文章をコピペして見せろというわけじゃないんです。
世界観説明は非常に難しいですが、上手くやれば非常に世界観がわかりやすくなり、読者が世界観にのめり込みやすくなります。
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ここを頑張ればもっといい作品になると思うので、続き頑張ってください。