『欠片の軌跡』おまけ短編集

ねぎ(塩ダレ)

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第八章①②③おまけ

②君のことが知りたい ☆

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「俺さ~、ずっと気になってた事があるんだよね~。」

第一ラウンド後。
事を終えて風呂に入り、部屋のソファーで離れていた間の話をしながらまったり飲んでいると、バスローブ姿のシルクがそこから伸びた褐色の足をギルの足に絡めながらそんな事を言った。
ギルは片手をシルクの腰に回して引き寄せて固定すると、逆の手で無造作に絡められた足を撫でた。

「ほら、そういうとこも。」

シルクは面白そうに笑ってギルにもたれ掛かると、ギルのバスローブの合わせの間に手を滑り込ませて胸板を撫でた。
そういうところ、とは何だろう?
ギルはわからず、機嫌の良い猫のように目を細めて笑うシルクを見つめた。

「何の話だ?」

「ギルってさ、ちんこデカ過ぎて童貞だったのかと思ったけど、違うよね?何か慣れてるっていうか。どこで覚えたの??」

「………………。」

あまり聞かれたくない事を聞かれ、ギルは押し黙った。
無意識に視線を反らせると、ますますシルクは面白そうにギルにもたれ掛かった。

「恋人は俺が初めてだよね?」

「……まぁ…。」

「なら、どこでいろはを学んだの??」

「………………。」

完全に視線は明後日を見ている。
シルクはニャァと笑うと、軽く押し倒さんばかりにギルに体を預け、整った筋肉を撫で回しながら背けられた顔の耳元で囁く。

「お店に通ったの?エッチなお店に??」

「……………。」

「どんなサービスしてもらったの??俺もしてあげる……。」

シルクはそう言って耳元にキスをして、首筋に舌を這わす。
胸元を弄っていた手は次第に下へと下がっていき、絡めた足で股を開かせた。

「どんな事、してもらうのが好きだったの?ギル??」

妖艶に笑う自分の恋人をチラ見して、ギルは諦めたように小さくため息をついた。
全てを分け合う恋人だ。
隠していても仕方のない事だ。

「………店に通った訳じゃない。」

「そうなの??」

「ああ、そうだ。」

ギルはそう言うと、ほとんどのし掛かられているシルクをひょいと抱き上げ、向かい合わせで膝に座らせた。
シルクが満足そうに笑って、濃厚に口付ける。
滑った水音がしばらく深夜の部屋に響いた。

「……キスもエッチだよね??」

「それはほぼ、お前のせいだ。」

「うふふ。俺とキスして覚えたんだ?そういえば最初は荒っぽかったもんね。ガッツリ貪ってくるけど、ガツガツしてたもん。」

「……嫌だったか?」

「ん~ん?好きだよ?ギルの荒っぽいキス。気持ちいいキスも好きだけど、我武者羅に求められてるって思うとゾクゾクする。」

「そうか……。」

ならばと口づけようとすると、ニンマリ笑ったシルクに止められる。
不満そうにその目を睨む。

「ダ~メ。キスで誤魔化さないで。ちゃんと俺の質問に答えてよ。」

「……習った。」

「習った??」

「ああ。」

「貴族の跡取りとかって、そう言うのを習わさられるって、本当なんだ?」

「まぁな。古い人間の間ではいざという時、手間どっては家の恥になると考えるからな。特にうちは辺境伯だし、田舎は下世話なお節介が多いからな。」

「え?!実家で習ったの?!殿下のお付になる関係で、5歳でギルは王宮都市に居たんだよね?!いくつの時に習ったの?!」

膝の上でびっくりしているシルクを前に、ギルは目を反らす。
この距離で顔を背けたって意味などないのに。

「ギル。ちゃんと教えて。」

「だから……リオの…付き人になるからには……。」

「え??5歳の子供で??」

「話だけだ。王家の子供の付き人だ。及びうる危険を全て把握させられる。その一環で子供はそう言う事をしてできるとか、同性でも行為があるとか……希に大人で子供に対してそう言う性癖があるやつがいるとか……。」

なるほど、王子の護衛兼の友人として付き人になるなら、例え子供でもどんな危険があるかは理解させるのか。
それが例え、子供が知るには早すぎる事であっても。
王族って怖いな、とシルクは思った。

「……ヤバイね、王族……。」

「ああ、5歳の俺にはかなりの衝撃だった……。」

何か、ギルが歪んでるのって本人だけのせいじゃないのかも…とシルクは思った。
ちょっと可愛そうになって、抱き着くように体を密着させて、頭を撫でてやる。

「でもそれって、話だけなんでしょ?」

「ああ……。」

「実体験の教育はいつ受けたの??」

「…………てからだ…。」

「え??」

「だからその……体毛が……。」

「ああ!毛が生えてからって事か!!」

「はっきり言うな……。」

妙に恥ずかしがるギルが可愛くて、シルクはよしよしと撫でながら、少し赤らんだ頬に口づけた。

「もっと前かと思った。」

「実体験はって事だ。その前に実家の指示でもっと詳しい資料で学習したり、その……行為を見せられたりしたがな……。」

「……何それ?貴族ってヤバイ。」

必要な教育とはいえ、少年の域を出ないいたいげな子供になんてものを見せるんだ貴族というものは?シルクは少し頭が痛かった。
可愛そうに無垢なギルバート少年は、性別すら理解できない幼いうちに性教育を受け、性に興味を持つ年頃より前に、行為そのものを見せられたのだ。
しかもそれが淡い恋心を抱くライオネル殿下の側にいる為に施されたと言う矛盾。
そりゃ、性的感性や恋愛感情が歪んでも仕方がない。
おまけにそこに、徹底した騎士道精神を植え付けられた訳だ。
そりゃ歪むわ、とシルクは納得した。

「実体験は店に通った訳ではないが、口が硬い、内々に貴族や王族での教育に協力する者が選ばれて、大抵の家はその人を招いて教えを受ける。俺もそうだった。」

ギルはある程度話してしまって吹っ切れたのか、躊躇なく話し始めた。
シルクはその胸にもたれ掛かりながら、黙って話を聞いていた。
ギルはシルクを抱きかかえ直すと、自分を落ち着けるように優しく体を撫でていた。

「まぁ、はじめの頃はそこまでまだ体も成長していなかったからな。普通に行為ができたと言うか……。」

「まだビッグジュニアじゃなかったんだ??」

「子供にしてはって言われたがな?まさか俺自身、ここまで成長するとは思ってなかったが……。」

「息子さん、大きく立派に育ったね~。」

「茶化すな。育ち過ぎてプロでもこれはちょっと難しいとか言われたり、苦労もあったんだ……。」

「ふふふ。だから俺にあっさり入ってびっくりしてたんだ??」

「本当、育ってから初めての行為で可能だったのはお前だけだ。」

「だって俺とギルはつがいだから。まぁ、俺が慣れてたってのもあるかもしれないけど……。」

「……それは俺も聞きたい。」

笑って話していたが、今度はギルがグイッとシルクにのしかかった。
間近で見る無表情なギルの眼差しが真剣で、シルクはちょっとビビってしまった。

「……ギル?!」

「俺の話はしたぞ、シルク。今度はお前の番だ。」

「ヘっ?!」

「嫌な男に囲われていたのは知ってる。逃げ出したその先、詳しく聞いていない。」

抑え込まれる様な体制になり、シルクはちょっと墓穴を掘った事に気づいた。
自分が相手の行為に慣れている事を知りたかったように、相手もまた知りたがるのは当然と言える。
今までは言いにくい事だからと詳しく聞いてきたりはしなかったが、こっちが根掘り葉掘り聞いたのだ、答えないというのも無理がある。
だが、そんな恋人のあまり面白くない話を聞いてどうしようと言うのだろうか??
色を売る話なんて胸グソ悪いだけだろう。
下手をしたら軽蔑される。
シルクは少し怖くなった。

「……聞いてどうするんだよ?」

「………嫉妬する。」

不安を隠す為にツンケンと聞くと、思いもよらない答えを返された。
思わずきょとんとしてしまう。

「嫉妬するの……??」

「当たり前だ。お前と俺が唯一無二のつがいだと言うのなら、お前は生まれた時から俺のものだ。その証拠にお前だけが俺を受け入れられる。なのに、俺のつがいをいいように味わった男どもがいると思うと、腹わたが煮えくりかえりそうだ。確かにシルクは極上の果実だろうが、それを一時でもつまみ食いされたと思うと、探し出してイチモツを叩き斬ってやりたくなる……。」

真剣な表情でそう言われ、シルクは笑ってしまった。
主を除き、自分のもの呼ばわりされるなんて本来は頭に来るのに、ギルに言われるとそうでもない。
むしろ嬉しいと思ってしまう。
自分も末期だなとシルクは思った。
軽蔑されると暗い気持ちになったがギルは違う。
全てを、良いも悪いも全て分け合える相手なのだ。
だからそんな事を恐れる必要などなかった。
嬉しくなって、ぎゅっと抱きついた。

「はじめはさ、踊りだけでやっていこうと思ったんだよ。でも、世の中そんなに甘くないっていうかさ~。10代後半なんて、体は大人と同じでも頭なんてまだまだガキだしさ~。そんな簡単に太刀打ちできる訳じゃないじゃん?ましてや夜の世界なんてさ~。しかも俺、発情期あるし~。」

シルクが話し始めると、ギルは黙ってその話を聞いていた。
時より、ぎゅっと強く抱きしめたり、労るように撫でてくれる。
そして端々で、「そいつがここにいたら殺す」とか「次に見かけたら教えろ。」とか不穏な呟きを漏らす。
こんな話をしているのに何だか幸せだな、と思った。

「……そんな俺だけど、ギルは嫌になったりしないの??」

「別に。お互い初めての相手ではなかったと言うだけだろう??」

「そっか。」

「………ちなみに、俺はお前の話を聞いて腹わたが煮えくりかえりそうだったのだが……お前は…俺に施した相手に嫉妬したか?」

そんな可愛い質問までされてしまっては敵わない。
シルクは満面の笑みを浮かべてギルを見つめた。

「したよ?俺だってはじめから、ギルの全てが欲しかったもん。手解きだって俺、きっとその人より上手にできたと思うし~。」

「確かにお前の手解きは凄そうだな。骨抜きにされそうだ。」

「だからしてあげる……。教えて?はじめは何を教わったの?」

シルクはギルを跨ぐようにソファーに膝立ちになり、可愛くて愛しい自分のつがいを見つめた。
ギルの手がシルクのウエストに触れ、体を這っていく。
お互いにお互いの匂いを感じ始めた。
それを意識したら止まる事はない。

離れていた空白を埋めるように、二人はまた一つに重なっていった。
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