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第九章「海神編」
食卓の温かさ
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俺は何かを感知でもしていたのだろうか……。
リアナとラニが風呂に入っている間に部屋を準備しようと思い、どの部屋にしようかと考えていたのだけれども、おあつらえの部屋が一部屋あったのだ。
一階の従業員控室を改造した数人泊まる用の部屋。
ここは新しく改造したのであまり荷物がなく、俺が独り暮らししていた時の使わない机なんかの荷物がとりあえず置いてある。
別にニ階のツインの客室でも良かったのだが、ここには何故か二段ベッドが置いてあったのだ。
元々この家に置いてあったものの様だが、古びているがしっかりした作りなので、数人用に使うつもりの部屋だからそのままにしておいたのだ。
恐らく元は従業員の休憩・仮眠用として二段ベッドが置かれていたんだと思う。
俺はそれに修繕とクリーニングの魔術をかけ、ついでに色も壁紙に合わせた。
「なんか……前々から双子用に準備してたみたいでちょっと気持ち悪い……。」
色が整った二段ベッドを見て、俺は呟いてしまった。
その他にも元々置いてあった机と俺が持ってきて置いた机。
同じく備え付けのタンスと俺が使わないから放置していたタンス。
その他に俺がダイニングテーブルとして使ってたテーブルセット。(もちろん椅子は2脚だ)
せっかくだからとそれらも修繕・クリーニングして何となく色を揃えた。
形は微妙に違うが、家具がニ個ずつある事には変わりない。
部屋を出ればトイレもシャワーも近くにあるし、洗濯場から裏庭に出れる出口もある。
必要最低限の家具は2個ずつあるし、普段使いに申し分ない広さはあるし、他の部屋同様内装は綺麗にされてるし、二人で寛ぐダイニングテーブルはあるし、俺の部屋で使っていたカーペットなんかもある。
リアナもラニも魔術が使えるから、物の配置や色は気に入らなければ自分達で何とかするだろうし、足りない家具は買い足せば良い。
「……って言うか!!本当にずっと二人がここに住む感覚で準備してないか?!俺?!」
何故か当たり前にずっと一緒に住む様な感覚で俺は準備をしていたのだが、そんな訳にはいかないだろう。
確かにあんな子供らだけでどこかに住まわせる訳にはいかないけれど、ここは俺の家でもあるがウィルの家でもあるのだ。
その許可も必要だし、何よりリアナとラニは竜の谷の民なのだ。
抜け出してきたからと言って、何事もなくこっちの国にそのままずっと住んでいられるとは思えない。
「……やっぱ、ニ階のツインの客室に寝かせるか……。」
そう思い直して俺は部屋を出ようとした。
しかし遅かった。
「わぁー!!ここ!!僕たちの部屋?!」
「ふ~ん。悪くないけど、ちょっとまだ寂しいわね。」
「おい!こら!!」
出ようとした俺の横をすり抜け、風呂上がりのリアナとラニが部屋の中に飛び込んできた。
キラキラした目で、自分達の部屋になると思ったその部屋の中を見て回っている。
うぅ……こんな期待に満ちた目で中を見られてから、やっぱ駄目とはもう言えない……。
二段ベッドの上をどちらにするかで仲良くもめているのを見ながら、俺は諦めて息を吐き出した。
「……て言うか、二人ともその服……。」
「これだけはね、置いてこれなかったの。」
「だって、お兄ちゃんとの思い出だから。」
「それにこれ、楽なのよね~。」
「うん。パジャマより好き。」
風呂から上がった二人がを着ているものを見て、俺は思わず笑ってしまった。
二人はあの時買ってやったジンベエを着ていたのだ。
どうやらパジャマ代わりにしているみたいだが、ジンベエってそういうもんだよな。
よく見れば、着てきた服も持ってきたリュックやカバンなどの荷物も、全部あの時俺が買ってやったヤツだ。
胸の奥が妙にこそばゆい。
俺と過ごした時間なんて、そんなに長くはなかったはずだ。
なのにこだわった様に、俺の買ってやったものばかりを持ってこいつらは俺の所に来た。
一ヶ月にも満たない時間。
でも、この子達にとったら、かけがえのない時間だったのかもしれない。
俺が胸の奥に言葉にならないくすぐったさを感じて二人を見守っていると、そこにカレンと義父さんが顔を覗かせた。
「おや、いい部屋だね、二人とも。」
嬉しそうな二人を見つめながら、義父さんがにこにこしている。
カレンと義父さんの手には、着替えと思われるいくつかの服があった。
「義父さん、それ……。」
「ああ、教会の子供用に買ってあったやつだよ。リアナもラニも、ジンベエ以外、着替えは何も持っていなかったからね。」
「ごめん。うちにはあの子達が着れる服がなかったから助かるよ。」
「気にする事はないさ。ちょっと買い込み過ぎかなぁとも思っていたし。それにまだもう少しこの国にいる事になりそうだから、また買いに行っても良いんだしね。」
「ありがとう、義父さん。」
そんな話をしている前で、双子は今度はどっちがどっちのタンスを使うかでもめている。
それを笑いながら、カレンが当面の服をしまうのを手伝っていた。
リアナとラニにとったら、ちょっと年上のお姉さんができたみたいな感覚なのかもしれない。
ケンカしながらカレンになだめられ、ぶーぶー文句を聞いてもらい甘えている。
カレンも年下の双子の面倒を見るのは新鮮で楽しいのか、とても嬉しそうに見えた。
なんか賑やかだし、家族って感じでいいなって思う。
「……サクは二人が来るのを知っていたのかい??」
「いえ……。」
そんな俺に義父さんが穏やかな声で聞いた。
この部屋を見たら、確かにそう聞かれても仕方ないなと苦笑いする。
「そうか……ふふふっ。まるで二人が来るのを知っていて用意してあったみたいだったからね。」
「いや、元々あった家具と俺が独り暮らしで使ってた家具がたまたま置いてあって……それを今、魔術で綺麗にしただけなんだけどさ……ニ個ずつあったのは本当に偶然なんだよ。それに逆に知ってたら服もちゃんと用意してたし。」
「そうかそうか。なら、私が子供達の服を買い込んでいたのも、そういう事なんだろうね。」
「そういう事??」
「うん、そういう事だよ。」
義父さんはただ笑った。
はっきりとは言わなかったが、多分、義父さんも巡りの事を言っているんだろうなと思った。
「……だとしたら受け入れるしかないか~!何が起きるかわかんないけどさ~!とにかくまずはウィルに話して二人を置いていいか聞かないとだけどさぁ~。」
出来れば直接会って話したい。
でも別れたのだって今朝な訳だし、修行中は余程の事がない限りは会わないと決めてあった。
ウィルと同じ竜の谷の民の話だから、余程の事と言っても良いのかもしれないが、ひとまずは手紙で知らせる事にしよう。
それでウィルが会って話したいと言うなら会いに行けばいい。
ウィルはどうしているだろう?
別れたのは今朝だというのに、その後色々ありすぎて、会いたくなってしまう。
いつの間にウィルが側にいてくれるのが当たり前になってしまったんだろう?
出会った時は、いつもどこにいるのかわからない人だったのに。
今は少し離れるだけでとても寂しい。
「やっぱ、甘え過ぎかなぁ……俺……。」
「ふふっ、ウィル君にかい?」
「うん……。」
「甘え過ぎは良くないと思うけど、私は凄く安心したよ。」
「どうして?」
「だってサクはいつだって一人で決めて、一人で背負い込んで進んで行ってしまう子だったからね。」
「そんなこと無いよ。俺、結構、優柔不断だし。」
「でも肝心な事は誰にも言わない。一人で背負い込んで、一人で行動に移す。それは誰も傷つけたくないお前の優しさでもあるけど、助けたいと思っている側からすると、とても寂しかったよ。」
「……なんか似たような事、仲間にも言われた。何にも言わないでいつも事後報告だって……。」
「ふふっ、やっぱりね。」
「なんかごめん。そんなつもりじゃなかったんだけど……。」
「だから、ウィル君に甘えて頼りきりな部分を見て、凄く驚いたし安心した。ああ、この子にもそういう人ができたんだって。もう一人でどこかに行ってしまったりしないんだろうなってね。」
「俺ってそんなにふらふらどこかに行っちゃいそうなの??全くそんなつもり無いんだけど??」
「自覚がないからどこかに行ってしまいそうなんだよ。そうやって一人でどこかに向かい続けて、いつか本来いるべき世界の方に行ってしまうんだって思っていたよ、私は。」
「本来、いるべき世界……?」
「サクは小さくても神様だったからね。」
義父さんの言葉に俺は何も答えられなかった。
俺の中にある精霊としての存在。
ライオネル殿下は無理やり持っていたそれだけれども、俺は生まれつきそういう存在を持ち合わせているのだ。
「義父さん……。」
「ん??」
「精霊って何なの?」
俺の問いに義父さんはただ微笑むだけだ。
多分、その答えは沢山あるのだ。
そしてその答えのどれが正しいなんて答えもない。
だから自分が一番納得できる答えを持つしかないのだ。
そしてそれは、きっとすでに俺の中にあるものなのだ。
「片付けてたらお腹空いたわ~!!」
「お兄ちゃん、何ぼんやりしてるの??早くご飯食べようよ!!」
カレンに手伝ってもらいながら、魔術なんかも使って部屋の模様替えと片付けをしていたリアナとラニがこちらに小走りでやってくる。
そういえばリアナは杖を使わずに魔術を使うよなぁ。
このままにしておくと目立つから、俺と同じようにお飾りで木の棒を持たせておかないとな。
そんな事を考えながら二人に腕を引かれて普段使いのダイニングに向かう。
今日は色々あった。
疲れた頭で色々考えても答えは出ない。
ご飯を食べて、ゆっくり風呂に入って、ウィルに手紙を書いて、それでもう寝よう。
明日はジョシュア国王に義父さんを会わせるんだし。
そんな事を思ってテーブルにつくと、今日の夕飯は手打ちうどんの肉味噌和えとコンソメ味の肉じゃがだった。
帰った時、二人で何かやってると思ったらうどんを作っていたみたいだ。
カレンが嬉々として双子にうどんの作り方を話している。
リアナもラニも美味しい美味しいと言って、うどんも肉じゃがもおかわりしていた。
よく食べる子供が二人増えた事で最終的に足りなくなって、途中で肉じゃがの残りをベースにすいとん汁を作って食べる事になった。
正直言うと今日は少し気が滅入っていた。
そんな日にウィルがいないのがとても寂しかった。
でも、義父さんがいて、カレンがいて、騒がしいくらい元気なリアナとラニがいる。
空元気で笑っていたはずの顔には、いつの間にか自然と笑みが浮かんでいた。
賑やかで温かい食卓がある事に、俺はとても感謝した。
リアナとラニが風呂に入っている間に部屋を準備しようと思い、どの部屋にしようかと考えていたのだけれども、おあつらえの部屋が一部屋あったのだ。
一階の従業員控室を改造した数人泊まる用の部屋。
ここは新しく改造したのであまり荷物がなく、俺が独り暮らししていた時の使わない机なんかの荷物がとりあえず置いてある。
別にニ階のツインの客室でも良かったのだが、ここには何故か二段ベッドが置いてあったのだ。
元々この家に置いてあったものの様だが、古びているがしっかりした作りなので、数人用に使うつもりの部屋だからそのままにしておいたのだ。
恐らく元は従業員の休憩・仮眠用として二段ベッドが置かれていたんだと思う。
俺はそれに修繕とクリーニングの魔術をかけ、ついでに色も壁紙に合わせた。
「なんか……前々から双子用に準備してたみたいでちょっと気持ち悪い……。」
色が整った二段ベッドを見て、俺は呟いてしまった。
その他にも元々置いてあった机と俺が持ってきて置いた机。
同じく備え付けのタンスと俺が使わないから放置していたタンス。
その他に俺がダイニングテーブルとして使ってたテーブルセット。(もちろん椅子は2脚だ)
せっかくだからとそれらも修繕・クリーニングして何となく色を揃えた。
形は微妙に違うが、家具がニ個ずつある事には変わりない。
部屋を出ればトイレもシャワーも近くにあるし、洗濯場から裏庭に出れる出口もある。
必要最低限の家具は2個ずつあるし、普段使いに申し分ない広さはあるし、他の部屋同様内装は綺麗にされてるし、二人で寛ぐダイニングテーブルはあるし、俺の部屋で使っていたカーペットなんかもある。
リアナもラニも魔術が使えるから、物の配置や色は気に入らなければ自分達で何とかするだろうし、足りない家具は買い足せば良い。
「……って言うか!!本当にずっと二人がここに住む感覚で準備してないか?!俺?!」
何故か当たり前にずっと一緒に住む様な感覚で俺は準備をしていたのだが、そんな訳にはいかないだろう。
確かにあんな子供らだけでどこかに住まわせる訳にはいかないけれど、ここは俺の家でもあるがウィルの家でもあるのだ。
その許可も必要だし、何よりリアナとラニは竜の谷の民なのだ。
抜け出してきたからと言って、何事もなくこっちの国にそのままずっと住んでいられるとは思えない。
「……やっぱ、ニ階のツインの客室に寝かせるか……。」
そう思い直して俺は部屋を出ようとした。
しかし遅かった。
「わぁー!!ここ!!僕たちの部屋?!」
「ふ~ん。悪くないけど、ちょっとまだ寂しいわね。」
「おい!こら!!」
出ようとした俺の横をすり抜け、風呂上がりのリアナとラニが部屋の中に飛び込んできた。
キラキラした目で、自分達の部屋になると思ったその部屋の中を見て回っている。
うぅ……こんな期待に満ちた目で中を見られてから、やっぱ駄目とはもう言えない……。
二段ベッドの上をどちらにするかで仲良くもめているのを見ながら、俺は諦めて息を吐き出した。
「……て言うか、二人ともその服……。」
「これだけはね、置いてこれなかったの。」
「だって、お兄ちゃんとの思い出だから。」
「それにこれ、楽なのよね~。」
「うん。パジャマより好き。」
風呂から上がった二人がを着ているものを見て、俺は思わず笑ってしまった。
二人はあの時買ってやったジンベエを着ていたのだ。
どうやらパジャマ代わりにしているみたいだが、ジンベエってそういうもんだよな。
よく見れば、着てきた服も持ってきたリュックやカバンなどの荷物も、全部あの時俺が買ってやったヤツだ。
胸の奥が妙にこそばゆい。
俺と過ごした時間なんて、そんなに長くはなかったはずだ。
なのにこだわった様に、俺の買ってやったものばかりを持ってこいつらは俺の所に来た。
一ヶ月にも満たない時間。
でも、この子達にとったら、かけがえのない時間だったのかもしれない。
俺が胸の奥に言葉にならないくすぐったさを感じて二人を見守っていると、そこにカレンと義父さんが顔を覗かせた。
「おや、いい部屋だね、二人とも。」
嬉しそうな二人を見つめながら、義父さんがにこにこしている。
カレンと義父さんの手には、着替えと思われるいくつかの服があった。
「義父さん、それ……。」
「ああ、教会の子供用に買ってあったやつだよ。リアナもラニも、ジンベエ以外、着替えは何も持っていなかったからね。」
「ごめん。うちにはあの子達が着れる服がなかったから助かるよ。」
「気にする事はないさ。ちょっと買い込み過ぎかなぁとも思っていたし。それにまだもう少しこの国にいる事になりそうだから、また買いに行っても良いんだしね。」
「ありがとう、義父さん。」
そんな話をしている前で、双子は今度はどっちがどっちのタンスを使うかでもめている。
それを笑いながら、カレンが当面の服をしまうのを手伝っていた。
リアナとラニにとったら、ちょっと年上のお姉さんができたみたいな感覚なのかもしれない。
ケンカしながらカレンになだめられ、ぶーぶー文句を聞いてもらい甘えている。
カレンも年下の双子の面倒を見るのは新鮮で楽しいのか、とても嬉しそうに見えた。
なんか賑やかだし、家族って感じでいいなって思う。
「……サクは二人が来るのを知っていたのかい??」
「いえ……。」
そんな俺に義父さんが穏やかな声で聞いた。
この部屋を見たら、確かにそう聞かれても仕方ないなと苦笑いする。
「そうか……ふふふっ。まるで二人が来るのを知っていて用意してあったみたいだったからね。」
「いや、元々あった家具と俺が独り暮らしで使ってた家具がたまたま置いてあって……それを今、魔術で綺麗にしただけなんだけどさ……ニ個ずつあったのは本当に偶然なんだよ。それに逆に知ってたら服もちゃんと用意してたし。」
「そうかそうか。なら、私が子供達の服を買い込んでいたのも、そういう事なんだろうね。」
「そういう事??」
「うん、そういう事だよ。」
義父さんはただ笑った。
はっきりとは言わなかったが、多分、義父さんも巡りの事を言っているんだろうなと思った。
「……だとしたら受け入れるしかないか~!何が起きるかわかんないけどさ~!とにかくまずはウィルに話して二人を置いていいか聞かないとだけどさぁ~。」
出来れば直接会って話したい。
でも別れたのだって今朝な訳だし、修行中は余程の事がない限りは会わないと決めてあった。
ウィルと同じ竜の谷の民の話だから、余程の事と言っても良いのかもしれないが、ひとまずは手紙で知らせる事にしよう。
それでウィルが会って話したいと言うなら会いに行けばいい。
ウィルはどうしているだろう?
別れたのは今朝だというのに、その後色々ありすぎて、会いたくなってしまう。
いつの間にウィルが側にいてくれるのが当たり前になってしまったんだろう?
出会った時は、いつもどこにいるのかわからない人だったのに。
今は少し離れるだけでとても寂しい。
「やっぱ、甘え過ぎかなぁ……俺……。」
「ふふっ、ウィル君にかい?」
「うん……。」
「甘え過ぎは良くないと思うけど、私は凄く安心したよ。」
「どうして?」
「だってサクはいつだって一人で決めて、一人で背負い込んで進んで行ってしまう子だったからね。」
「そんなこと無いよ。俺、結構、優柔不断だし。」
「でも肝心な事は誰にも言わない。一人で背負い込んで、一人で行動に移す。それは誰も傷つけたくないお前の優しさでもあるけど、助けたいと思っている側からすると、とても寂しかったよ。」
「……なんか似たような事、仲間にも言われた。何にも言わないでいつも事後報告だって……。」
「ふふっ、やっぱりね。」
「なんかごめん。そんなつもりじゃなかったんだけど……。」
「だから、ウィル君に甘えて頼りきりな部分を見て、凄く驚いたし安心した。ああ、この子にもそういう人ができたんだって。もう一人でどこかに行ってしまったりしないんだろうなってね。」
「俺ってそんなにふらふらどこかに行っちゃいそうなの??全くそんなつもり無いんだけど??」
「自覚がないからどこかに行ってしまいそうなんだよ。そうやって一人でどこかに向かい続けて、いつか本来いるべき世界の方に行ってしまうんだって思っていたよ、私は。」
「本来、いるべき世界……?」
「サクは小さくても神様だったからね。」
義父さんの言葉に俺は何も答えられなかった。
俺の中にある精霊としての存在。
ライオネル殿下は無理やり持っていたそれだけれども、俺は生まれつきそういう存在を持ち合わせているのだ。
「義父さん……。」
「ん??」
「精霊って何なの?」
俺の問いに義父さんはただ微笑むだけだ。
多分、その答えは沢山あるのだ。
そしてその答えのどれが正しいなんて答えもない。
だから自分が一番納得できる答えを持つしかないのだ。
そしてそれは、きっとすでに俺の中にあるものなのだ。
「片付けてたらお腹空いたわ~!!」
「お兄ちゃん、何ぼんやりしてるの??早くご飯食べようよ!!」
カレンに手伝ってもらいながら、魔術なんかも使って部屋の模様替えと片付けをしていたリアナとラニがこちらに小走りでやってくる。
そういえばリアナは杖を使わずに魔術を使うよなぁ。
このままにしておくと目立つから、俺と同じようにお飾りで木の棒を持たせておかないとな。
そんな事を考えながら二人に腕を引かれて普段使いのダイニングに向かう。
今日は色々あった。
疲れた頭で色々考えても答えは出ない。
ご飯を食べて、ゆっくり風呂に入って、ウィルに手紙を書いて、それでもう寝よう。
明日はジョシュア国王に義父さんを会わせるんだし。
そんな事を思ってテーブルにつくと、今日の夕飯は手打ちうどんの肉味噌和えとコンソメ味の肉じゃがだった。
帰った時、二人で何かやってると思ったらうどんを作っていたみたいだ。
カレンが嬉々として双子にうどんの作り方を話している。
リアナもラニも美味しい美味しいと言って、うどんも肉じゃがもおかわりしていた。
よく食べる子供が二人増えた事で最終的に足りなくなって、途中で肉じゃがの残りをベースにすいとん汁を作って食べる事になった。
正直言うと今日は少し気が滅入っていた。
そんな日にウィルがいないのがとても寂しかった。
でも、義父さんがいて、カレンがいて、騒がしいくらい元気なリアナとラニがいる。
空元気で笑っていたはずの顔には、いつの間にか自然と笑みが浮かんでいた。
賑やかで温かい食卓がある事に、俺はとても感謝した。
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