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第六章「副隊長編」
終演と寸劇
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場の混乱が収まり、進行役が咳払いをした。
あれだけ取り乱した皆が、ツンと澄ましているのが笑える。
「ええ、少し場が混乱しましたが、会議を続けます。」
「お騒がせ致しました。申し訳ございません。」
俺は笑いたいのを堪えながらそう言った。
何事もなかったように取り繕う様がかえってシュールだ。
後ろでシルクがけほけほと小さく噎せている。
「まぁ、魔術であのような事をされるのは正直、不愉快ですな。」
ムッと誰かがそう言った。
場の何人かは全くだと言い合っている。
別に魔術で幻を見せた訳ではないんだけどな。
陛下が咳払いをして俺に言った。
「少し驚いたが、面白いものを見せてもらったよ、アズマ・サーク。あれが呪いになった竜なのか?」
「はい。私も竜は見たことがなかったので、精霊にして初めて実際の全体像を見たときは驚きました。思ったより大きくて、狭い部屋の中で窮屈そうにしていてちょっと笑いました。」
「ははは。あれが部屋にいたら確かに驚くな。」
王様のにこやかな声が嫌味な声に蓋をした。
それがあえてそうしたのかド天然なのかは、長いテーブルの距離がありすぎて読めない。
俺は話を真っ直ぐに聞いてくれた王様に、じっと顔を向けた。
「竜の血の呪いがあった確かな証明にまではなりませんが、私にとってあの精霊がこの一件で手にした唯一のものです。」
本当は、この旅で俺が得たのはウィルなんだけどね。
それはここで言うことではない。
とりあえずヴィオールのインパクトで、色々勢いはついたと思う。
国王はゆっくり頷き、テーブルに座る家臣たちの顔を準順に見つめた。
そして俺の方に向き直る。
「さて。……実は其方については前々から様々な話が出ていてな。今後の事を鑑み、今回、何らかの処分をした方がいいとの声が強かったのだ。」
「はい。」
「が、直接色々と話しをしてみて、その必要は無さそうだとわかった。」
王様の言葉にざわりとテーブルが騒がしくなる。
それを離れた末席から、俺達は何も言わずに見守った。
「陛下!それでは話が違います!!」
「魔術本部所属の魔術師とはいえ!何の処分もせずにおけば今後も好き勝手にするに違いありません!全体の規律をお考え下さい!」
処分ナシ、そう先に王が口にした事で周りは慌てている。
それをふ~んとばかりに眺めていた。
つまりあれだ。
出る杭は打たれる。
俺の存在は、自分達が利用できなければただの脅威であり、今後何を仕出かして自分達に不利益をもたらすかわからない目の上のたんこぶって訳だ。
それだったら早めにペナルティを与えるなどして、遠ざけるか、自分達に逆らえば痛い目をみると教え込む必要があった。
そしてこれはその絶好の機会だった訳だ。
おそらくお偉方さんは、俺にそれなりの温情とペナルティをかける事で制御したかったのだろう。
だと言うのに思惑通りには進まなかった。
何人かの人間が王の言葉に強く異を唱えた。
陛下はそれを手で制する。
「確かに竜の血の呪いがあった証拠はない。彼がそれをおさめた証拠もない。」
「ならば……!」
「だが逆に、それがなかったという事を誰か証明できるのか?それができるなら、アズマ・サークの処分を検討しよう。よいな?」
陛下はにっこりと笑った。
そう言われて彼らは苦虫を噛み潰した様な顔をする。
俺にペナルティを与える事も、取り込む事も、排除する事も、できなかったのだからそんな顔にもなるだろう。
それでもどんなに悔しがったとしても、竜の血の呪いがなかった証明もできないだろうから、これはこれで終わるのだろう。
ライオネル殿下もそうだけど、王様もぽやんと天然みたいな顔して、締めなきゃならない部分は笑顔のまま有無を言わさず締め上げるタイプみたいだ。
「リロイ、わざわざ足を運ばせてすまんな。たまには顔を見せに来てくれ。」
「もったいないお言葉です。陛下。」
「皆も良いな?」
不満げな人、混乱している人、様々だった。
だが陛下が言うのなら、それがここの全てだ。
ああ、終わったんだ。
何だか気が抜けた。
横のギルは相変わらず無表情でただ前を見ていた。
ロイさんがポンと俺の肩に手を置いて微笑む。
早く帰りたい。
それに微笑み返しながら俺はそう思った。
「何か、王様達の手のひらと言うより、主の手のひらで転がされた気分。」
部屋を出るとシルクが真っ先に口を開いた。
その顔は少し不満げだ。
「何、怒ってるんだよ?」
「別に~。主が知らないところでまた勝手に死にかけてたとか~、何にも話してくれてなかったとか~別に気にしてないし~。」
「いや、気にしてんだろ、それは。」
「同感だな。こっちは協力しようと必死なのに、全く知らないところでいつも話が進んでいて、訳がわからなくなる。」
「ギル、お前もかよ。」
俺がそう言うとシルクが不意打ちで尻を強めに蹴ってきた。
つんのめった俺の首根っこをギルが掴んで、ついでとばかりに腹パンした。
グヘッと何か出そうになる。
苦痛に身を丸めた俺を仁王立ちのシルクと無表情なギルが見下ろしている。
シルクはツンとそっぽを向いた。
「いこ、ギル。」
「そうだな。」
ふたりはすたすたと先に行ってしまった。
確かに話してなかった部分が多くて、不満を持たれても仕方ない。
今回のこれは甘んじて受けよう……。
……痛いけど。
そんな俺にロイさんが手を差しのべた。
俺はすいませんと言いながら、それに捕まった。
「ふふふ、仲がいいんだね。」
今のが仲良く見えるのか……。
少し複雑だが、まぁそうなんだろう。
なんだかんだ付き合ってくれる事にありがたいと思う。
ロイさんはヴィオールにとても興味を持ったようだった。
そりゃ当たり前だよな、何しろ精霊と言えど竜だし。
一度見てしまえば、できればちゃんと見たいだろう。
そんな訳で、これから一緒にウィルに会うことになった。
なのでウィルの森の町行きは当分ないだろうな。
ウィルを森の町に案内できないのは残念だが、谷の民であるウィルとロイさんを会わせる事は何か意味がある気がした。
何とか一人で立ってそのまま一緒に歩いて行こうとした時、並んでいたはずのロイさんが急に消えた。
は??と思うと、さっきの蛇みたいな男がロイさんの腕を引っ張って、そのまま壁際に追い詰めていた。
そのただならぬ気迫に俺はぽかんとする。
え?何?何事??
「リロイ・オズ・クウェンネル……っ!!」
あ、蛇の人……。
確かルードビッヒって呼ばれていた人だ。
言い様のない顔でロイさんを睨んでいる。
かたやロイさんは何故かにっこり笑う。
「やぁ、ルーイ。相変わらず僕の事をフルネームで呼ぶんだね?前から思ってたけど、それ、面倒じゃないのかい?」
「黙れ……!姿を消したと思えばのこのこと……っ!!」
「だって、疲れてしまったんだよ。」
「それはお前が……っ!!」
何だか知らないが修羅場だ!と思っていると、ロイさんがまたどこかに引っ張られて消える。
その方向を見ると、さっきの鷹っぽい軍服の人が立っていた。
ロイさんは庇われるように、その人の腕に捕らえられている。
なんだろう?
やっぱり修羅場だ……。
「急いで出ていくと思えば、まだ貴様はリーにちょっかいを出すのか……。」
「やぁ、アーチー。君も相変わらず僕の事をリーって呼ぶんだね。本当にふたりとも変わってないね?」
蛇と鷹が睨み合う中、ロイさんだけがにこやかに笑っている。
どう見てもそんな雰囲気じゃないのに……。
なんか全てがチグハグでとうしていいのかわからない。
「ほらほら、せっかく久しぶりの再開じゃないか。君たちはまだこうやって喧嘩ばかりしているのかい?」
一人、にこにことロイさんは言う。
でも多分ロイさん……。
憶測ですが、ふたりが喧嘩をするのはあなたが原因かと思われます……。
理由はわからないけど……。
ロイさんの言葉に、軍服の鷹が、ひとまず目をそらせた。
「久しぶりだな、リー?元気か?」
「元気だよ。なのでとりあえず離してくれないか?」
ロイさんはそう言って、彼の腕から脱出した。
が、その腕を蛇が掴む。
「来い……っ!!」
「痛た……。どうしたんだ?ルーイ、痛いよ?」
「お前に話がある!」
そう言って連れ去ろうとすると、アーチーと呼ばれている軍服の鷹が逆の手を掴むという、案の定な展開が起こる。
やだ、なんなの?このお約束!?
「勝手な真似をするな!リー、俺も話がある。食事に行こう。」
またも睨み合いが始まる。
ロイさん、両方から引っ張られているのに、何でそんな平気な顔でにこにこしてるんですか……。
「う~ん、ごめん、ふたりとも。僕はまだ仕事が残っているんだ。だからどちらとも一緒には行けない。」
そう言って、スパンとふたりの手を払った。
そして何故か俺のところにくる。
当然、蛇と鷹の目が俺に向けられた。
こ、怖い……。
やめて下さい……巻き込まないで下さい……。
怖いよ~!!
なのに半泣きの俺の事は無視して、ロイさんは最後までにこやかだ。
「またふたりにあえて嬉しかったよ。じゃあね。さぁ、サーク、待たせたね。用事を済まそう。」
「え?あ?はい~??」
蛇に睨まれ鷹に不審そうに見つめられながら俺は、ロイさんに引きずられるようにしてその場を離れる。
「え?え?いいんですか!?」
「ああ、いいんだよ。」
「え~とその~??仲がいいんですね??」
「……そうだね??確かにそうだ。」
改めてそう言われ、ロイさんはおかしそうに笑った。
いや、あれで仲がいいのか、少しわかんないけど。
そんな俺の考えを読んだのか、ロイさんはクスッと笑う。
「……君も私ぐらいの年になった時、さっきのふたりと再会したなら、どんな風になるんだろうね?……そう思わないかい?サーク?」
さっきの二人ってのは、シルクとギルの事だろうか??
どうしてそんな話になるんだろう?
少し考えてみたけど諦めた。
「う~ん。俺は今で手一杯なんで、そこまで先の事はまだわからないです……。」
でも多分、俺の場合はあんな修羅場な感じにはならないだろうなと思いながら、急ぎ足のロイさんについて歩いた。
あれだけ取り乱した皆が、ツンと澄ましているのが笑える。
「ええ、少し場が混乱しましたが、会議を続けます。」
「お騒がせ致しました。申し訳ございません。」
俺は笑いたいのを堪えながらそう言った。
何事もなかったように取り繕う様がかえってシュールだ。
後ろでシルクがけほけほと小さく噎せている。
「まぁ、魔術であのような事をされるのは正直、不愉快ですな。」
ムッと誰かがそう言った。
場の何人かは全くだと言い合っている。
別に魔術で幻を見せた訳ではないんだけどな。
陛下が咳払いをして俺に言った。
「少し驚いたが、面白いものを見せてもらったよ、アズマ・サーク。あれが呪いになった竜なのか?」
「はい。私も竜は見たことがなかったので、精霊にして初めて実際の全体像を見たときは驚きました。思ったより大きくて、狭い部屋の中で窮屈そうにしていてちょっと笑いました。」
「ははは。あれが部屋にいたら確かに驚くな。」
王様のにこやかな声が嫌味な声に蓋をした。
それがあえてそうしたのかド天然なのかは、長いテーブルの距離がありすぎて読めない。
俺は話を真っ直ぐに聞いてくれた王様に、じっと顔を向けた。
「竜の血の呪いがあった確かな証明にまではなりませんが、私にとってあの精霊がこの一件で手にした唯一のものです。」
本当は、この旅で俺が得たのはウィルなんだけどね。
それはここで言うことではない。
とりあえずヴィオールのインパクトで、色々勢いはついたと思う。
国王はゆっくり頷き、テーブルに座る家臣たちの顔を準順に見つめた。
そして俺の方に向き直る。
「さて。……実は其方については前々から様々な話が出ていてな。今後の事を鑑み、今回、何らかの処分をした方がいいとの声が強かったのだ。」
「はい。」
「が、直接色々と話しをしてみて、その必要は無さそうだとわかった。」
王様の言葉にざわりとテーブルが騒がしくなる。
それを離れた末席から、俺達は何も言わずに見守った。
「陛下!それでは話が違います!!」
「魔術本部所属の魔術師とはいえ!何の処分もせずにおけば今後も好き勝手にするに違いありません!全体の規律をお考え下さい!」
処分ナシ、そう先に王が口にした事で周りは慌てている。
それをふ~んとばかりに眺めていた。
つまりあれだ。
出る杭は打たれる。
俺の存在は、自分達が利用できなければただの脅威であり、今後何を仕出かして自分達に不利益をもたらすかわからない目の上のたんこぶって訳だ。
それだったら早めにペナルティを与えるなどして、遠ざけるか、自分達に逆らえば痛い目をみると教え込む必要があった。
そしてこれはその絶好の機会だった訳だ。
おそらくお偉方さんは、俺にそれなりの温情とペナルティをかける事で制御したかったのだろう。
だと言うのに思惑通りには進まなかった。
何人かの人間が王の言葉に強く異を唱えた。
陛下はそれを手で制する。
「確かに竜の血の呪いがあった証拠はない。彼がそれをおさめた証拠もない。」
「ならば……!」
「だが逆に、それがなかったという事を誰か証明できるのか?それができるなら、アズマ・サークの処分を検討しよう。よいな?」
陛下はにっこりと笑った。
そう言われて彼らは苦虫を噛み潰した様な顔をする。
俺にペナルティを与える事も、取り込む事も、排除する事も、できなかったのだからそんな顔にもなるだろう。
それでもどんなに悔しがったとしても、竜の血の呪いがなかった証明もできないだろうから、これはこれで終わるのだろう。
ライオネル殿下もそうだけど、王様もぽやんと天然みたいな顔して、締めなきゃならない部分は笑顔のまま有無を言わさず締め上げるタイプみたいだ。
「リロイ、わざわざ足を運ばせてすまんな。たまには顔を見せに来てくれ。」
「もったいないお言葉です。陛下。」
「皆も良いな?」
不満げな人、混乱している人、様々だった。
だが陛下が言うのなら、それがここの全てだ。
ああ、終わったんだ。
何だか気が抜けた。
横のギルは相変わらず無表情でただ前を見ていた。
ロイさんがポンと俺の肩に手を置いて微笑む。
早く帰りたい。
それに微笑み返しながら俺はそう思った。
「何か、王様達の手のひらと言うより、主の手のひらで転がされた気分。」
部屋を出るとシルクが真っ先に口を開いた。
その顔は少し不満げだ。
「何、怒ってるんだよ?」
「別に~。主が知らないところでまた勝手に死にかけてたとか~、何にも話してくれてなかったとか~別に気にしてないし~。」
「いや、気にしてんだろ、それは。」
「同感だな。こっちは協力しようと必死なのに、全く知らないところでいつも話が進んでいて、訳がわからなくなる。」
「ギル、お前もかよ。」
俺がそう言うとシルクが不意打ちで尻を強めに蹴ってきた。
つんのめった俺の首根っこをギルが掴んで、ついでとばかりに腹パンした。
グヘッと何か出そうになる。
苦痛に身を丸めた俺を仁王立ちのシルクと無表情なギルが見下ろしている。
シルクはツンとそっぽを向いた。
「いこ、ギル。」
「そうだな。」
ふたりはすたすたと先に行ってしまった。
確かに話してなかった部分が多くて、不満を持たれても仕方ない。
今回のこれは甘んじて受けよう……。
……痛いけど。
そんな俺にロイさんが手を差しのべた。
俺はすいませんと言いながら、それに捕まった。
「ふふふ、仲がいいんだね。」
今のが仲良く見えるのか……。
少し複雑だが、まぁそうなんだろう。
なんだかんだ付き合ってくれる事にありがたいと思う。
ロイさんはヴィオールにとても興味を持ったようだった。
そりゃ当たり前だよな、何しろ精霊と言えど竜だし。
一度見てしまえば、できればちゃんと見たいだろう。
そんな訳で、これから一緒にウィルに会うことになった。
なのでウィルの森の町行きは当分ないだろうな。
ウィルを森の町に案内できないのは残念だが、谷の民であるウィルとロイさんを会わせる事は何か意味がある気がした。
何とか一人で立ってそのまま一緒に歩いて行こうとした時、並んでいたはずのロイさんが急に消えた。
は??と思うと、さっきの蛇みたいな男がロイさんの腕を引っ張って、そのまま壁際に追い詰めていた。
そのただならぬ気迫に俺はぽかんとする。
え?何?何事??
「リロイ・オズ・クウェンネル……っ!!」
あ、蛇の人……。
確かルードビッヒって呼ばれていた人だ。
言い様のない顔でロイさんを睨んでいる。
かたやロイさんは何故かにっこり笑う。
「やぁ、ルーイ。相変わらず僕の事をフルネームで呼ぶんだね?前から思ってたけど、それ、面倒じゃないのかい?」
「黙れ……!姿を消したと思えばのこのこと……っ!!」
「だって、疲れてしまったんだよ。」
「それはお前が……っ!!」
何だか知らないが修羅場だ!と思っていると、ロイさんがまたどこかに引っ張られて消える。
その方向を見ると、さっきの鷹っぽい軍服の人が立っていた。
ロイさんは庇われるように、その人の腕に捕らえられている。
なんだろう?
やっぱり修羅場だ……。
「急いで出ていくと思えば、まだ貴様はリーにちょっかいを出すのか……。」
「やぁ、アーチー。君も相変わらず僕の事をリーって呼ぶんだね。本当にふたりとも変わってないね?」
蛇と鷹が睨み合う中、ロイさんだけがにこやかに笑っている。
どう見てもそんな雰囲気じゃないのに……。
なんか全てがチグハグでとうしていいのかわからない。
「ほらほら、せっかく久しぶりの再開じゃないか。君たちはまだこうやって喧嘩ばかりしているのかい?」
一人、にこにことロイさんは言う。
でも多分ロイさん……。
憶測ですが、ふたりが喧嘩をするのはあなたが原因かと思われます……。
理由はわからないけど……。
ロイさんの言葉に、軍服の鷹が、ひとまず目をそらせた。
「久しぶりだな、リー?元気か?」
「元気だよ。なのでとりあえず離してくれないか?」
ロイさんはそう言って、彼の腕から脱出した。
が、その腕を蛇が掴む。
「来い……っ!!」
「痛た……。どうしたんだ?ルーイ、痛いよ?」
「お前に話がある!」
そう言って連れ去ろうとすると、アーチーと呼ばれている軍服の鷹が逆の手を掴むという、案の定な展開が起こる。
やだ、なんなの?このお約束!?
「勝手な真似をするな!リー、俺も話がある。食事に行こう。」
またも睨み合いが始まる。
ロイさん、両方から引っ張られているのに、何でそんな平気な顔でにこにこしてるんですか……。
「う~ん、ごめん、ふたりとも。僕はまだ仕事が残っているんだ。だからどちらとも一緒には行けない。」
そう言って、スパンとふたりの手を払った。
そして何故か俺のところにくる。
当然、蛇と鷹の目が俺に向けられた。
こ、怖い……。
やめて下さい……巻き込まないで下さい……。
怖いよ~!!
なのに半泣きの俺の事は無視して、ロイさんは最後までにこやかだ。
「またふたりにあえて嬉しかったよ。じゃあね。さぁ、サーク、待たせたね。用事を済まそう。」
「え?あ?はい~??」
蛇に睨まれ鷹に不審そうに見つめられながら俺は、ロイさんに引きずられるようにしてその場を離れる。
「え?え?いいんですか!?」
「ああ、いいんだよ。」
「え~とその~??仲がいいんですね??」
「……そうだね??確かにそうだ。」
改めてそう言われ、ロイさんはおかしそうに笑った。
いや、あれで仲がいいのか、少しわかんないけど。
そんな俺の考えを読んだのか、ロイさんはクスッと笑う。
「……君も私ぐらいの年になった時、さっきのふたりと再会したなら、どんな風になるんだろうね?……そう思わないかい?サーク?」
さっきの二人ってのは、シルクとギルの事だろうか??
どうしてそんな話になるんだろう?
少し考えてみたけど諦めた。
「う~ん。俺は今で手一杯なんで、そこまで先の事はまだわからないです……。」
でも多分、俺の場合はあんな修羅場な感じにはならないだろうなと思いながら、急ぎ足のロイさんについて歩いた。
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