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第四章「独身寮編」
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町にランタンが瞬いている。
淡い光が幾重にも幾重にも。
人々が浮かれ、静かな興奮の中で笑い合っている。
シルクはイヴァンを見つめていた。
「……なんて、冗談です。ちょっと言ってみたかったんです。」
空いた間に苦笑して、イヴァンはそう言った。
そして何事もなかったように座り直そうとする。
シルクは立ち上がった。
「いいぞ。」
「……え?」
今度は逆にシルクがイヴァンの腕を引いた。
それにイヴァンが目を丸くする。
手を引かれるまま、座りかけた腰を上げた。
その顔は少し呆けている。
「シルクさん、踊れるんですか?」
「お前、俺を誰だと思ってるんだ?これぐらいの踊り一度見ればわかる。」
「本当に?」
「ああ。女性のパートを俺が踊ればいいんだろ?」
音楽が始まる。
半信半疑のままイヴァンはシルクの手を取った。
リードするとシルクは事も無げについてくる。
なるほど問題なさそうだとイヴァンは納得した。
「踊った事があったんですね。」
「ある訳ないだろ。俺、ずっと西の砂漠にいたんだし~。」
「なら本当に今見ただけで?」
「むしろ、お前が踊れるのにびっくりだよ。」
「う~ん。こう見えましても、僕、一応それなりの家柄なもので。」
「お坊っちゃんか。そんな感じだよな~、お前。」
「……あなたへの気持ちに家柄は関係ありません。」
イヴァンはそう言うと、シルクの腰に回していた手をグッと引き寄せた。
至近距離。
真剣な眼差しをシルクは見返した。
でもまだ答えが出ない。
シルクはその眼差しに何も答えられなかった。
踊りの流れ、お互い手を伸ばして体を離す。
それは出ない答えが彷徨う様を表している様だった。
今度は引き寄せられるまま、くるりとシルクが回ってイヴァンが受け止める。
「ふふっ。本当に踊れてる。」
「馬鹿にしてんのか?お前?」
「いや、楽しくて。」
その言葉通りのステップを踏むと、体を反らせたシルクの腰を支え、イヴァンはいつものように笑った。
明るくて屈託がなくて、太陽みたいだ。
それはカンカンと照りつけるようなものではなく、爽やかな初夏の風を帯びている。
シルクにとって踊りはいつだって一人だった。
主だってその舞台を作ってはくれたが、踊る時は一人。
それは踊りがシルクの武器であり、神聖な儀式だったからだ。
踊る事は武術と同じ。
ただ、己の中の己と向き合う。
でも……。
誰かと踊るのも悪くない。
こんな夜もいいかもしれない。
そうシルクは思った。
ふと、イヴァンの動きが固くなった。
回りからくすくすとした笑い声が聞こえる。
うら若い青年ふたりが、ふざけてるにしては上手に踊るので興味を持たれたらしい。
周囲の好奇の目がこちらを見つめている。
表情を曇らせ、イヴァンは動きを止めた。
「イヴァン……。」
「ごめんなさい。悪ふざけが過ぎましたね。」
困ったように笑う。
音楽が終わった。
祭りの雑踏の中に苦味が混じった。
「……おい、イヴァン。もう一曲踊れ。」
「え、でも……。」
「俺は、俺を踊りに誘った男を笑われて、そのままにしておけるほど優しくない。」
「……シルクさん。」
「少し待ってろ。誰にもお前を笑わせたりなんかしない。」
そう言って、シルクはイヴァンの側を少し離れた。
三曲目が始まる。
シルクはゆっくりと、一人で踊り出した。
シルクが踊り出すと、人々の視線は、段々とシルクに集まった。
歩いている人の足が止まる。
ガヤガヤしていた話し声が、静まっていく。
そこに咲く美しい華に、誰もが心を奪われた。
「……イヴァン、出番だ。」
「…………はい。」
ふわりとイヴァンの前に躍り出たシルクは、その手を引いた。
魔法にでもかけられている気分だった。
そこにいる美しい人が、自分だけを見つめ、踊りへと誘ったのだ。
祭りの雰囲気も手伝って、イヴァンは何だか幻想的な夢を見ているようで、誘われるまま腰に手をまわしても実感がわかなかった。
けれど腕の中のその人は、戦人の様に勝ち気に笑う。
「派手にやるぞ!ついてこい!」
そうシルクが啖呵を切る。
優雅な踊りなのに、まるで戦場に立っているかの様にシルクはその動き一つ一つを美しく鋭く放つ。
そうか、この人は踊り子だ。
だとしたら踊りの場は戦場と同じ。
その美しき舞を武器に闘い、勝利を手にするまで諦めない。
それは武術や武道の試合ととても良く似ていた。
踊りの各所でシルクが指示を出す。
イヴァンはそれに従い、サポートする。
「次!左手に俺を投げる感じで手を伸ばせ!」
仕事でも補佐をしていたせいか、指示とシルクの動きで彼が何がしたいのかイヴァンにはわかる。
シルクもイヴァンのサポートに慣れていたし、いつだってそれに満足していた。
二人の目が合う。
これまで共に過ごした中で築いた関係。
それを踊りの中で再確認する。
悪くない。
そう思えた。
彼のサポートに満足し信頼しているシルクは、それを告げずにオーバーターンをした。
イヴァンは慌てる事なくそれに対応し、触れている指先を掴んで引き寄せる。
「俺を上に持ち上げて、ぐるっと回れ!」
指示通りイヴァンはシルクを高々とリフトして、そのままくるりと回った。
派手なパフォーマンスにわっという歓声が上がる。
純粋な歓声だ。
もう誰も二人を馬鹿になどしていない。
「ふっ……はははっ!」
イヴァンは何だか楽しくなって笑ってしまった。
それに勝ち誇った顔でシルクが答える。
「仕上げるぞ!そのまま俺を股の間に投げ込め!そんでもって引き上げろ!」
「はい!」
イヴァンはリフトを降ろす勢いのままシルクを足の間に滑り込ませ、そして再度、滑らかに引き上げた。
動きは優雅でも、相手への信頼がなければできない動きであり、力のいる動作だ。
けれどイヴァンはシルクの望むように、そつなくそれをこなした。
あらためて向き合った二人が手を取り合い、体制を整える。
「ステップ!強く!強く!」
体勢を整え大袈裟にステップを踏む。
周りはもう二人の為に場を開けているので、大きくコミカルな動きをしても誰の邪魔にもならない。
笑い声と手拍子が祭りの夜に響く。
クライマックスだ。
曲の流れでまた体が離れる。
伸ばされた手と手、繋がった指先。
シルクは何も指示しなかった。
ただじっとイヴァンを見つめる。
イヴァンは小さく頷いた。
強く引き寄せる。
シルクはそれを利用して、ぐるぐると多めに回転して、勢いよくイヴァンの腕の中に飛び込んだ。
イヴァンはそれに応え、シルクの腰をしっかり支える。
それを信用しているシルクは、地面につくくらい派手に体を反らせた。
曲が終わった。
拍手喝采かふたりを包んだ。
高揚した雰囲気の中、視線を合わせる。
シルクはニッと強気に笑い、イヴァンは柔らかくそれを見つめた。
拍手と歓声が響く中、シルクはイヴァンの手を取り恭しくお辞儀をした。
イヴァンもそれに従い、共に頭を下げる。
全てが夢のようだった。
幻想的な祭りの夜に見た幻。
でもそれは不確かなものではなく、今、ここに確かにあった。
自分の横で、してやったりといった顔でシルクが笑っている。
時が止まった。
イヴァンはそう感じた。
世界に今、ここにふたりだけな気がした。
祭りの夜。
魔法にかかってしまったのだ。
夢現の現実に、閉じ込めていた筈の宝石箱の蓋が開いてしまった。
想いを止められなかった。
シルクを抱き寄せ、そして口付けた。
「……来てください。」
驚いて呆けた顔のシルクの腕を引き、人混みをかき分け走った。
誰にも邪魔をされたくない。
抑えられなくなった気持ちが溢れている。
開けずに墓場まで持っていこうと決めていた小さな宝石箱の中には、とめどない想いがいつの間にか溜まっていた。
一度開けてしまったら、もう蓋をする事ができない。
喧騒を離れた裏路地につき、イヴァンはシルクを強く抱き締めた。
「まだ……言わないつもりでした……。でももう、自分を止める事ができませんでした……。」
体を離し、シルクの顔を撫でてじっと見つめる。
溢れた想いで指先が震えている。
その人が愛しくて愛しくて仕方なかった。
「あなたが好きです。愛しています。」
イヴァンの真剣な眼差しがシルクをとらえていた。
シルクは何も言えず、ただその瞳を見つめる。
「……僕じゃ、駄目ですか?」
壁を背にイヴァンの腕に挟まれ、その顔を見つめる。
シルクは何も言わなかった。
お互いの息が混ざる。
答える代わりに、シルクはゆっくりと目を閉じた。
引き寄せ合うように唇が重なる。
イヴァンが好きだ。
嘘じゃない。
一緒にいて楽しい。
わがままもひねくれも全部受け止めてくれる。
こうしたいと思う事についてきてくれる。
苛立ちも寂しさも、全部、優しく包んでくれる。
……この人の愛に応えよう。
シルクはそう思った。
口付けるイヴァンの体に手を添え、口を開いた。
隙間から舌が入り込み、吸われる。
甘い時間。
このまま溶かして欲しい。
そう思った。
なのに……。
「……っ!!」
気づくと、シルクはドンッとイヴァンを突き飛ばしていた。
自分でも信じられなかった。
「シルクさん……。」
「……。ごめん……本当にごめん……。」
イヴァンの瞳が揺れている。
言葉にならない感情がシルクの顔をぐちゃぐちゃにする。
これ以上何も言えず踵を返した。
そしてシルクはそのまま幻想的な町を走り抜けた。
他にどうすることも出来なかった。
淡い光が幾重にも幾重にも。
人々が浮かれ、静かな興奮の中で笑い合っている。
シルクはイヴァンを見つめていた。
「……なんて、冗談です。ちょっと言ってみたかったんです。」
空いた間に苦笑して、イヴァンはそう言った。
そして何事もなかったように座り直そうとする。
シルクは立ち上がった。
「いいぞ。」
「……え?」
今度は逆にシルクがイヴァンの腕を引いた。
それにイヴァンが目を丸くする。
手を引かれるまま、座りかけた腰を上げた。
その顔は少し呆けている。
「シルクさん、踊れるんですか?」
「お前、俺を誰だと思ってるんだ?これぐらいの踊り一度見ればわかる。」
「本当に?」
「ああ。女性のパートを俺が踊ればいいんだろ?」
音楽が始まる。
半信半疑のままイヴァンはシルクの手を取った。
リードするとシルクは事も無げについてくる。
なるほど問題なさそうだとイヴァンは納得した。
「踊った事があったんですね。」
「ある訳ないだろ。俺、ずっと西の砂漠にいたんだし~。」
「なら本当に今見ただけで?」
「むしろ、お前が踊れるのにびっくりだよ。」
「う~ん。こう見えましても、僕、一応それなりの家柄なもので。」
「お坊っちゃんか。そんな感じだよな~、お前。」
「……あなたへの気持ちに家柄は関係ありません。」
イヴァンはそう言うと、シルクの腰に回していた手をグッと引き寄せた。
至近距離。
真剣な眼差しをシルクは見返した。
でもまだ答えが出ない。
シルクはその眼差しに何も答えられなかった。
踊りの流れ、お互い手を伸ばして体を離す。
それは出ない答えが彷徨う様を表している様だった。
今度は引き寄せられるまま、くるりとシルクが回ってイヴァンが受け止める。
「ふふっ。本当に踊れてる。」
「馬鹿にしてんのか?お前?」
「いや、楽しくて。」
その言葉通りのステップを踏むと、体を反らせたシルクの腰を支え、イヴァンはいつものように笑った。
明るくて屈託がなくて、太陽みたいだ。
それはカンカンと照りつけるようなものではなく、爽やかな初夏の風を帯びている。
シルクにとって踊りはいつだって一人だった。
主だってその舞台を作ってはくれたが、踊る時は一人。
それは踊りがシルクの武器であり、神聖な儀式だったからだ。
踊る事は武術と同じ。
ただ、己の中の己と向き合う。
でも……。
誰かと踊るのも悪くない。
こんな夜もいいかもしれない。
そうシルクは思った。
ふと、イヴァンの動きが固くなった。
回りからくすくすとした笑い声が聞こえる。
うら若い青年ふたりが、ふざけてるにしては上手に踊るので興味を持たれたらしい。
周囲の好奇の目がこちらを見つめている。
表情を曇らせ、イヴァンは動きを止めた。
「イヴァン……。」
「ごめんなさい。悪ふざけが過ぎましたね。」
困ったように笑う。
音楽が終わった。
祭りの雑踏の中に苦味が混じった。
「……おい、イヴァン。もう一曲踊れ。」
「え、でも……。」
「俺は、俺を踊りに誘った男を笑われて、そのままにしておけるほど優しくない。」
「……シルクさん。」
「少し待ってろ。誰にもお前を笑わせたりなんかしない。」
そう言って、シルクはイヴァンの側を少し離れた。
三曲目が始まる。
シルクはゆっくりと、一人で踊り出した。
シルクが踊り出すと、人々の視線は、段々とシルクに集まった。
歩いている人の足が止まる。
ガヤガヤしていた話し声が、静まっていく。
そこに咲く美しい華に、誰もが心を奪われた。
「……イヴァン、出番だ。」
「…………はい。」
ふわりとイヴァンの前に躍り出たシルクは、その手を引いた。
魔法にでもかけられている気分だった。
そこにいる美しい人が、自分だけを見つめ、踊りへと誘ったのだ。
祭りの雰囲気も手伝って、イヴァンは何だか幻想的な夢を見ているようで、誘われるまま腰に手をまわしても実感がわかなかった。
けれど腕の中のその人は、戦人の様に勝ち気に笑う。
「派手にやるぞ!ついてこい!」
そうシルクが啖呵を切る。
優雅な踊りなのに、まるで戦場に立っているかの様にシルクはその動き一つ一つを美しく鋭く放つ。
そうか、この人は踊り子だ。
だとしたら踊りの場は戦場と同じ。
その美しき舞を武器に闘い、勝利を手にするまで諦めない。
それは武術や武道の試合ととても良く似ていた。
踊りの各所でシルクが指示を出す。
イヴァンはそれに従い、サポートする。
「次!左手に俺を投げる感じで手を伸ばせ!」
仕事でも補佐をしていたせいか、指示とシルクの動きで彼が何がしたいのかイヴァンにはわかる。
シルクもイヴァンのサポートに慣れていたし、いつだってそれに満足していた。
二人の目が合う。
これまで共に過ごした中で築いた関係。
それを踊りの中で再確認する。
悪くない。
そう思えた。
彼のサポートに満足し信頼しているシルクは、それを告げずにオーバーターンをした。
イヴァンは慌てる事なくそれに対応し、触れている指先を掴んで引き寄せる。
「俺を上に持ち上げて、ぐるっと回れ!」
指示通りイヴァンはシルクを高々とリフトして、そのままくるりと回った。
派手なパフォーマンスにわっという歓声が上がる。
純粋な歓声だ。
もう誰も二人を馬鹿になどしていない。
「ふっ……はははっ!」
イヴァンは何だか楽しくなって笑ってしまった。
それに勝ち誇った顔でシルクが答える。
「仕上げるぞ!そのまま俺を股の間に投げ込め!そんでもって引き上げろ!」
「はい!」
イヴァンはリフトを降ろす勢いのままシルクを足の間に滑り込ませ、そして再度、滑らかに引き上げた。
動きは優雅でも、相手への信頼がなければできない動きであり、力のいる動作だ。
けれどイヴァンはシルクの望むように、そつなくそれをこなした。
あらためて向き合った二人が手を取り合い、体制を整える。
「ステップ!強く!強く!」
体勢を整え大袈裟にステップを踏む。
周りはもう二人の為に場を開けているので、大きくコミカルな動きをしても誰の邪魔にもならない。
笑い声と手拍子が祭りの夜に響く。
クライマックスだ。
曲の流れでまた体が離れる。
伸ばされた手と手、繋がった指先。
シルクは何も指示しなかった。
ただじっとイヴァンを見つめる。
イヴァンは小さく頷いた。
強く引き寄せる。
シルクはそれを利用して、ぐるぐると多めに回転して、勢いよくイヴァンの腕の中に飛び込んだ。
イヴァンはそれに応え、シルクの腰をしっかり支える。
それを信用しているシルクは、地面につくくらい派手に体を反らせた。
曲が終わった。
拍手喝采かふたりを包んだ。
高揚した雰囲気の中、視線を合わせる。
シルクはニッと強気に笑い、イヴァンは柔らかくそれを見つめた。
拍手と歓声が響く中、シルクはイヴァンの手を取り恭しくお辞儀をした。
イヴァンもそれに従い、共に頭を下げる。
全てが夢のようだった。
幻想的な祭りの夜に見た幻。
でもそれは不確かなものではなく、今、ここに確かにあった。
自分の横で、してやったりといった顔でシルクが笑っている。
時が止まった。
イヴァンはそう感じた。
世界に今、ここにふたりだけな気がした。
祭りの夜。
魔法にかかってしまったのだ。
夢現の現実に、閉じ込めていた筈の宝石箱の蓋が開いてしまった。
想いを止められなかった。
シルクを抱き寄せ、そして口付けた。
「……来てください。」
驚いて呆けた顔のシルクの腕を引き、人混みをかき分け走った。
誰にも邪魔をされたくない。
抑えられなくなった気持ちが溢れている。
開けずに墓場まで持っていこうと決めていた小さな宝石箱の中には、とめどない想いがいつの間にか溜まっていた。
一度開けてしまったら、もう蓋をする事ができない。
喧騒を離れた裏路地につき、イヴァンはシルクを強く抱き締めた。
「まだ……言わないつもりでした……。でももう、自分を止める事ができませんでした……。」
体を離し、シルクの顔を撫でてじっと見つめる。
溢れた想いで指先が震えている。
その人が愛しくて愛しくて仕方なかった。
「あなたが好きです。愛しています。」
イヴァンの真剣な眼差しがシルクをとらえていた。
シルクは何も言えず、ただその瞳を見つめる。
「……僕じゃ、駄目ですか?」
壁を背にイヴァンの腕に挟まれ、その顔を見つめる。
シルクは何も言わなかった。
お互いの息が混ざる。
答える代わりに、シルクはゆっくりと目を閉じた。
引き寄せ合うように唇が重なる。
イヴァンが好きだ。
嘘じゃない。
一緒にいて楽しい。
わがままもひねくれも全部受け止めてくれる。
こうしたいと思う事についてきてくれる。
苛立ちも寂しさも、全部、優しく包んでくれる。
……この人の愛に応えよう。
シルクはそう思った。
口付けるイヴァンの体に手を添え、口を開いた。
隙間から舌が入り込み、吸われる。
甘い時間。
このまま溶かして欲しい。
そう思った。
なのに……。
「……っ!!」
気づくと、シルクはドンッとイヴァンを突き飛ばしていた。
自分でも信じられなかった。
「シルクさん……。」
「……。ごめん……本当にごめん……。」
イヴァンの瞳が揺れている。
言葉にならない感情がシルクの顔をぐちゃぐちゃにする。
これ以上何も言えず踵を返した。
そしてシルクはそのまま幻想的な町を走り抜けた。
他にどうすることも出来なかった。
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