52 / 99
第八章③「帰国裁判」
広天目
しおりを挟む
王宮都市、正門前。
マダムはそこで仁王立ちしている。
いや、正面突破とは聞いていたけどさ……。
俺はその後ろで軽く頭を抱えている。
俺達はちょっと狼狽え気味の警備兵に囲まれている。
マダムの気迫が凄いので、皆、遠巻きに動けずにいる状態だ。
「なんだい?この王国は、他国に対して兵で囲んで歓迎するのかい?」
「いや、ですから……。そちらのアズマ准男爵は、手配中の人物でして……。奥様のみでしたら、ご自由にお入り頂いて構わないのですが……。」
「臨時とはいえ、一国の頭首に対して奥様とはよく言えたね?しかもご自由にお入り下さいってか。見下されたもんだね、ギルドも。」
「ええと、ですから……。」
「所在地政府離脱権限の施行は、前もって伝えたはずだがね?他国の頭首をご自由にって中に入れるのかい。今日来る事は連絡したと言うのに。ご挨拶だね、この国も。」
「頭首の方はともかく、アズマ准男爵は手配中でして、申し訳ないのですが身柄を預からせて頂きたいのです。それが済めば、兵はひかせて頂きます。」
「こっちの国での事なんて知らないよ。サークはうちのギルドに登録している。つまり、うちの国の人間だ。そしてアタシのボディーガードだ。勝手な真似はさせないよ。」
「ですから~!」
この繰り返しである。
え~と、何か自信満々に正面から行くって言うから、何か手があるのかと思ってたんだけど、どういう事なんだ?これは??
俺は何もせず黙っていろとマダムに言われているので黙って後ろに控えているが、これはどうしたものだろう?
マダムは確かに正面から行った。
俺を従え、警備兵に、
「フライハイトのギルドの頭首だ。国王に『広天目』が来たと伝えな。」
と、いきなり言った。
警備兵はポカンとしたが、その後ろに俺がいる事を見つけて、上に相談に行き、そして兵で取り囲んだと言う状態だ。
何でそれで入れると思ったんだろう?マダムは??
多分、キーワードは『広天目』なんだろう。
それがどう言う意味を持つのかは知らない。
というか、広天目ってあれだよな?
代表的な教会の一つの宗教の四天王の一人。
確か「全てを見通す目」を持っている神様だ。
マダムが千里眼を持っている事を考えれば、広天目の通名を持っていてもおかしくはない。
それにしたって、それを国王に伝えてどうなるんだろう??
まぁ本当に国王に伝えたい訳じゃなくて、王国中枢への伝達なんだろうけどさ。
う~ん、どうなるんだろう??
マダムはただ、そこで仁王立ちしている。
街を出入りしている人達も、何事だろうと遠巻きに見ていた。
「で?広天目が来たってのは、ちゃんと上に伝えたんだろうね??」
マダムはギロリと警備隊長らしき男を睨んだ。
隊長らしき人は少しそれにたじろいだが、負けじと冷静に返した。
「こちらでは判断しかねますので、所在地政府離脱権限を施行しているフライハイトのギルドの代表の広天目を名乗る方が、国王に面会を求めていると上層部に伝えてあります。」
「ふ~ん。なのにこんなに時間がかかっているのかい。アタシも落ちたもんだね。かつては広天目の名を出したら、皆、関わりたくないもんだから、すぐさま王宮に通されたんだけどね。」
マダムは面倒そうにそう言った。
俺の背後の兵が、コソコソ何か言っている。
大方、警備隊的にはとりあえず俺だけは捕まえようって話になっているのだろう。
仕掛けてくるのは後ろからなのかな~なんてのんきに思っていた。
「ところで隊長さん、隊員のボーナスの上澄みをくすねた金、博打で大負けしちまったみたいだけど、大丈夫かい??」
俺を捉えようとジリジリした雰囲気がある中、マダムはポツリと言った。
その瞬間、あからさまに全員に動揺が走る。
マダムは待つのに飽きたのか、懐から紙タバコを取り出すと、緩慢な動作で火をつけた。
周りの兵から「ボーナスくすねたってマジか?!」「確かに別場所の担当より少なかったよな?!」とひそひそ声がしている。
隊長と思われる男の顔が、目に見えて青くなっていた。
「ばっ馬鹿を言うなっ!!その様な事はしていないっ!!皆!動揺させるための罠だ!気を抜くんじゃないっ!!」
そう叫ぶが、一度走った疑惑の念は簡単に払拭されたりはしない。
マダムは面倒そうに煙をくゆらせている。
「皆!落ち着け!どこにそんな証拠がある!何より今はアズマ准男爵を確保する事に専念するんだ!それが我々の仕事だ!」
動揺している隊長を庇うように、その横の男が言った。
それを受けて兵士たちは、少し気持ちを持ち返した。
だが……。
「あんたさ?副隊長だか何だか知らないけど、コイツに口止め料もらってそれを使って浮気してたら、あんまりそのセリフに重みはないってわかってるのかい??」
「なっ?!何を……っ?!」
「いや、別にアタシにゃ関係ないから良いんだけどね?奥さん気づいてるよ??いずれ制裁を受けるから、その心構えでもしといた方がいいんじゃないかい??」
「……………っ?!」
はい、副隊長さんも撃沈~。
それを聞いていた兵士たちも、何となく状況がわかってきたみたいで後ずさりし始めた。
なるほど、広天目の名を出したら、関わりたくないから早々に王宮に入れた訳だ。
マダムが振り返って、ぐるりと兵の顔を見回した。
ヒッと微かな悲鳴が漏れる。
「安心しな、そんな人の秘密をペラペラ喋ったりはしないさ。ところで、王宮からの迎えはまだなのかい??」
「失礼しましたっ!!すぐに確認してまいりますっ!!」
副隊長はそう叫んでその場から逃げた。
まぁ、うん。
安月給な仕事より、我が身の方が可愛いよな……。
俺を取り囲む兵士の中で、俺を捉えようとする者はもういなかった。
そりゃね、この人を敵に回したら何を喋られるかわからないしね……。
俺も色々知られすぎてるから、その気持ちは凄くわかるぞ……。
そのうち、大通りの向こうからやたら豪華な馬車が向かって来るのが見えた。
え??あれって王族専用の馬車じゃないのか?!
ライオネル殿下も乗ってた……??
何?!何事?!
「やれやれ、やっとまともな迎えが来たじゃないかい。」
「……は??迎えって?あれですか?!」
「そうだよ?それ以外に何があるって言うんだい??」
マダムは不思議そうに言いながら、タバコを手持ちの灰皿に押し込んだ。
到着した馬車からは、上級執事と見られる人が降りてきて、道を開けた兵士たちの前で、赤い絨毯をさっとマダムの足元までひいた。
「広天目様でいらっしゃいますか?」
「そうだよ。随分かかったね?」
「前々からご連絡頂いていたにも関わらず、大変、申し訳ございません。中枢組織にて連絡が行き届いておらず、お迎えが遅れてしまいました。何卒、お許し下さい。」
「いいさ。こっちも久しぶりだったんだしね。昔を知らない奴らも増えたんだろ。アタシももう、本当なら来たくはなかったんだけどね。あんまりにも目に余るもんだからね。」
「申し訳ございません。国王がお待ちですので、こちらにお乗り頂けますでしょうか?」
物腰柔らかく、その執事さんは言った。
う~ん、やっぱり熟練の執事さんってかっこいい……。
って言うか、国王がお待ちですって言ったよな??
まさか本当にこのまま国王に会うのか?!
俺が少し動揺しているのをよそに、マダムは何の躊躇もなく赤い絨毯の上を進んで行く。
執事さんがさっとドアを開け、足元に踏み台を置いた。
「サーク、何してるんだい?置いていくよ??」
動かない俺を振り返り、マダムが言った。
え??オレも乗るの??
後ろを歩くとかじゃなくて??
王族専用馬車に??
マダムはさっさとしろと言った目で俺を睨んだ後、馬車に乗ってしまった。
仕方ないとばかりにその後に続き、中に乗り込む。
中はこれが馬車がと言う程、ふかふかで広々と作られていた。
うわ~、乗っちゃったよ、王族専用馬車に~。
どこに座ればいいか迷っていたら、マダムに引っ張られて、横に座る。
執事さんが乗ってきて前に座った。
「王宮にいらっしゃる間、広天目様のお世話をさせて頂きます。グレイ・タガートと申します。どうぞグレイとおよび下さい。」
「……下らない挨拶はよしとくれ、グレイ。というか、あんたまだあの王に仕えてたのかい?」
グレイさんが丁寧に挨拶したのに対し、マダムは呆れた様に返した。
どうやら二人は知り合いらしい。
顔を見合わせて、ニッと笑うと手を打ち合わせた。
「久しいね!レッティ!!来てくれて助かった!!」
「全く、あの阿呆は何してるんだい?!こんな手に負えない状況にしちまってさ?!」
「あちらさんも色々巧みでね。気付いたら手の施しようがなかったんだよ。」
何やら雲行きの怪しい話をしている。
俺はこれを聞いていていいのだろうか??
気配を殺していると、グレイさんが俺を見た。
「君がサークかい?」
「あ、はい。」
「はじめまして。グレイ・タガート、国王の執事長だ。レッティ達とは旧知の仲だよ。大変だったね?帰って来てくれてありがとう。」
グレイさんは気さくな人で、手を差し伸べられたのでそれを握り返した。
それを見たマダムが、派手に大笑いした。
「え?!何です?!マダム?!」
「サーク、あんたはもっと人を疑った方がいいよ?こいつはとんでもない曲者だからね?」
そう言われて、俺はギョとしてグレイさんを見た。
彼は肩をすくめて笑う。
「悪く思わないでくれ。国王に仕える以上、色々気をつけなければならなくてね。それに君は魔力が高いせいで、僕ではよくわからないよ。」
「は?!え?!」
「こいつはね、触った者の事を読むのさ。アタシの千里眼程じゃないけど、その時考えている事ぐらいは読まれちまうから気をつけな。で?サークは何を考えてたんだい?グレイ?」
「彼の頭の中の殆どは恋人の事だったよ。後、いちごの苗。枯れていないか気にかけてた。そんなに大事ないちごなのかい??特殊な品種とか??」
俺はそれを聞いていて、真っ赤になって口をぱくぱくさせる事しか出来なかった。
グレイさんはマダムほどじゃないが、確かに心を読むようだ……。
マダムはそこで仁王立ちしている。
いや、正面突破とは聞いていたけどさ……。
俺はその後ろで軽く頭を抱えている。
俺達はちょっと狼狽え気味の警備兵に囲まれている。
マダムの気迫が凄いので、皆、遠巻きに動けずにいる状態だ。
「なんだい?この王国は、他国に対して兵で囲んで歓迎するのかい?」
「いや、ですから……。そちらのアズマ准男爵は、手配中の人物でして……。奥様のみでしたら、ご自由にお入り頂いて構わないのですが……。」
「臨時とはいえ、一国の頭首に対して奥様とはよく言えたね?しかもご自由にお入り下さいってか。見下されたもんだね、ギルドも。」
「ええと、ですから……。」
「所在地政府離脱権限の施行は、前もって伝えたはずだがね?他国の頭首をご自由にって中に入れるのかい。今日来る事は連絡したと言うのに。ご挨拶だね、この国も。」
「頭首の方はともかく、アズマ准男爵は手配中でして、申し訳ないのですが身柄を預からせて頂きたいのです。それが済めば、兵はひかせて頂きます。」
「こっちの国での事なんて知らないよ。サークはうちのギルドに登録している。つまり、うちの国の人間だ。そしてアタシのボディーガードだ。勝手な真似はさせないよ。」
「ですから~!」
この繰り返しである。
え~と、何か自信満々に正面から行くって言うから、何か手があるのかと思ってたんだけど、どういう事なんだ?これは??
俺は何もせず黙っていろとマダムに言われているので黙って後ろに控えているが、これはどうしたものだろう?
マダムは確かに正面から行った。
俺を従え、警備兵に、
「フライハイトのギルドの頭首だ。国王に『広天目』が来たと伝えな。」
と、いきなり言った。
警備兵はポカンとしたが、その後ろに俺がいる事を見つけて、上に相談に行き、そして兵で取り囲んだと言う状態だ。
何でそれで入れると思ったんだろう?マダムは??
多分、キーワードは『広天目』なんだろう。
それがどう言う意味を持つのかは知らない。
というか、広天目ってあれだよな?
代表的な教会の一つの宗教の四天王の一人。
確か「全てを見通す目」を持っている神様だ。
マダムが千里眼を持っている事を考えれば、広天目の通名を持っていてもおかしくはない。
それにしたって、それを国王に伝えてどうなるんだろう??
まぁ本当に国王に伝えたい訳じゃなくて、王国中枢への伝達なんだろうけどさ。
う~ん、どうなるんだろう??
マダムはただ、そこで仁王立ちしている。
街を出入りしている人達も、何事だろうと遠巻きに見ていた。
「で?広天目が来たってのは、ちゃんと上に伝えたんだろうね??」
マダムはギロリと警備隊長らしき男を睨んだ。
隊長らしき人は少しそれにたじろいだが、負けじと冷静に返した。
「こちらでは判断しかねますので、所在地政府離脱権限を施行しているフライハイトのギルドの代表の広天目を名乗る方が、国王に面会を求めていると上層部に伝えてあります。」
「ふ~ん。なのにこんなに時間がかかっているのかい。アタシも落ちたもんだね。かつては広天目の名を出したら、皆、関わりたくないもんだから、すぐさま王宮に通されたんだけどね。」
マダムは面倒そうにそう言った。
俺の背後の兵が、コソコソ何か言っている。
大方、警備隊的にはとりあえず俺だけは捕まえようって話になっているのだろう。
仕掛けてくるのは後ろからなのかな~なんてのんきに思っていた。
「ところで隊長さん、隊員のボーナスの上澄みをくすねた金、博打で大負けしちまったみたいだけど、大丈夫かい??」
俺を捉えようとジリジリした雰囲気がある中、マダムはポツリと言った。
その瞬間、あからさまに全員に動揺が走る。
マダムは待つのに飽きたのか、懐から紙タバコを取り出すと、緩慢な動作で火をつけた。
周りの兵から「ボーナスくすねたってマジか?!」「確かに別場所の担当より少なかったよな?!」とひそひそ声がしている。
隊長と思われる男の顔が、目に見えて青くなっていた。
「ばっ馬鹿を言うなっ!!その様な事はしていないっ!!皆!動揺させるための罠だ!気を抜くんじゃないっ!!」
そう叫ぶが、一度走った疑惑の念は簡単に払拭されたりはしない。
マダムは面倒そうに煙をくゆらせている。
「皆!落ち着け!どこにそんな証拠がある!何より今はアズマ准男爵を確保する事に専念するんだ!それが我々の仕事だ!」
動揺している隊長を庇うように、その横の男が言った。
それを受けて兵士たちは、少し気持ちを持ち返した。
だが……。
「あんたさ?副隊長だか何だか知らないけど、コイツに口止め料もらってそれを使って浮気してたら、あんまりそのセリフに重みはないってわかってるのかい??」
「なっ?!何を……っ?!」
「いや、別にアタシにゃ関係ないから良いんだけどね?奥さん気づいてるよ??いずれ制裁を受けるから、その心構えでもしといた方がいいんじゃないかい??」
「……………っ?!」
はい、副隊長さんも撃沈~。
それを聞いていた兵士たちも、何となく状況がわかってきたみたいで後ずさりし始めた。
なるほど、広天目の名を出したら、関わりたくないから早々に王宮に入れた訳だ。
マダムが振り返って、ぐるりと兵の顔を見回した。
ヒッと微かな悲鳴が漏れる。
「安心しな、そんな人の秘密をペラペラ喋ったりはしないさ。ところで、王宮からの迎えはまだなのかい??」
「失礼しましたっ!!すぐに確認してまいりますっ!!」
副隊長はそう叫んでその場から逃げた。
まぁ、うん。
安月給な仕事より、我が身の方が可愛いよな……。
俺を取り囲む兵士の中で、俺を捉えようとする者はもういなかった。
そりゃね、この人を敵に回したら何を喋られるかわからないしね……。
俺も色々知られすぎてるから、その気持ちは凄くわかるぞ……。
そのうち、大通りの向こうからやたら豪華な馬車が向かって来るのが見えた。
え??あれって王族専用の馬車じゃないのか?!
ライオネル殿下も乗ってた……??
何?!何事?!
「やれやれ、やっとまともな迎えが来たじゃないかい。」
「……は??迎えって?あれですか?!」
「そうだよ?それ以外に何があるって言うんだい??」
マダムは不思議そうに言いながら、タバコを手持ちの灰皿に押し込んだ。
到着した馬車からは、上級執事と見られる人が降りてきて、道を開けた兵士たちの前で、赤い絨毯をさっとマダムの足元までひいた。
「広天目様でいらっしゃいますか?」
「そうだよ。随分かかったね?」
「前々からご連絡頂いていたにも関わらず、大変、申し訳ございません。中枢組織にて連絡が行き届いておらず、お迎えが遅れてしまいました。何卒、お許し下さい。」
「いいさ。こっちも久しぶりだったんだしね。昔を知らない奴らも増えたんだろ。アタシももう、本当なら来たくはなかったんだけどね。あんまりにも目に余るもんだからね。」
「申し訳ございません。国王がお待ちですので、こちらにお乗り頂けますでしょうか?」
物腰柔らかく、その執事さんは言った。
う~ん、やっぱり熟練の執事さんってかっこいい……。
って言うか、国王がお待ちですって言ったよな??
まさか本当にこのまま国王に会うのか?!
俺が少し動揺しているのをよそに、マダムは何の躊躇もなく赤い絨毯の上を進んで行く。
執事さんがさっとドアを開け、足元に踏み台を置いた。
「サーク、何してるんだい?置いていくよ??」
動かない俺を振り返り、マダムが言った。
え??オレも乗るの??
後ろを歩くとかじゃなくて??
王族専用馬車に??
マダムはさっさとしろと言った目で俺を睨んだ後、馬車に乗ってしまった。
仕方ないとばかりにその後に続き、中に乗り込む。
中はこれが馬車がと言う程、ふかふかで広々と作られていた。
うわ~、乗っちゃったよ、王族専用馬車に~。
どこに座ればいいか迷っていたら、マダムに引っ張られて、横に座る。
執事さんが乗ってきて前に座った。
「王宮にいらっしゃる間、広天目様のお世話をさせて頂きます。グレイ・タガートと申します。どうぞグレイとおよび下さい。」
「……下らない挨拶はよしとくれ、グレイ。というか、あんたまだあの王に仕えてたのかい?」
グレイさんが丁寧に挨拶したのに対し、マダムは呆れた様に返した。
どうやら二人は知り合いらしい。
顔を見合わせて、ニッと笑うと手を打ち合わせた。
「久しいね!レッティ!!来てくれて助かった!!」
「全く、あの阿呆は何してるんだい?!こんな手に負えない状況にしちまってさ?!」
「あちらさんも色々巧みでね。気付いたら手の施しようがなかったんだよ。」
何やら雲行きの怪しい話をしている。
俺はこれを聞いていていいのだろうか??
気配を殺していると、グレイさんが俺を見た。
「君がサークかい?」
「あ、はい。」
「はじめまして。グレイ・タガート、国王の執事長だ。レッティ達とは旧知の仲だよ。大変だったね?帰って来てくれてありがとう。」
グレイさんは気さくな人で、手を差し伸べられたのでそれを握り返した。
それを見たマダムが、派手に大笑いした。
「え?!何です?!マダム?!」
「サーク、あんたはもっと人を疑った方がいいよ?こいつはとんでもない曲者だからね?」
そう言われて、俺はギョとしてグレイさんを見た。
彼は肩をすくめて笑う。
「悪く思わないでくれ。国王に仕える以上、色々気をつけなければならなくてね。それに君は魔力が高いせいで、僕ではよくわからないよ。」
「は?!え?!」
「こいつはね、触った者の事を読むのさ。アタシの千里眼程じゃないけど、その時考えている事ぐらいは読まれちまうから気をつけな。で?サークは何を考えてたんだい?グレイ?」
「彼の頭の中の殆どは恋人の事だったよ。後、いちごの苗。枯れていないか気にかけてた。そんなに大事ないちごなのかい??特殊な品種とか??」
俺はそれを聞いていて、真っ赤になって口をぱくぱくさせる事しか出来なかった。
グレイさんはマダムほどじゃないが、確かに心を読むようだ……。
30
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる