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第八章③「帰国裁判」
薔薇の本数
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何なんだここは……。
俺は通された部屋にビビリ過ぎて引いていた。
俺とマダムが連れて来られたのは、王宮の来客用の別館の1つだった。
王宮別館は他国の国賓等も泊まる物もあるが、俺達が招かれたのはとても小さいものだった。
それでも国賓を泊めるような場所だ。
1部屋がエライ広いし、豪華だし、俺はどうしていいのかわからず突っ立っていた。
「何やってんだい?落ち着きのない子だね??さっさと座ったらどうだい??」
「いや俺はむしろ、この状況でこのソファーに普通に座ったマダムにびっくりしてるんですけど?!」
「高価なもんだろうと何だろうと、ソファーは座るもんだろう?下らない事言ってないで横に座んな。」
俺はそう言われて、しかた無くマダムの横に座った。
このソファーだけできっと俺の年収くらいするんだろうなと思うと涙が出てきた。
「落ち着いたかい?」
「落ち着かないです……。」
グレイさんがお茶のトレーを持ってきて俺とマダムの前に置いてくれたのだが、そのティーカップだってやたら高価そうで触るのも怖い。
ビクビクする俺をよそに、マダムは慣れた感じでお茶を飲んでいた。
何者なんだよ、マダム……。
俺の様子にグレイさんがくすりと笑う。
「何か、サークは……その……まるでエアーデを見ているようだよ。」
そう言われ俺は驚いてグレイさんを見た。
エアーデ、つまりボーンさんだ。
「え?!ボーンさんともお知り合いなのですか??」
「おや、レッティ?話していないのかい?」
「必要ないだろ?」
「そうかな?これから国王にも会うというのに、何も教えないのかい??」
やんわりと笑うグレイさんに、マダムは面倒そうに頭を掻く。
いや、面倒がらないで下さい。
そろそろ少しは教えて貰わないと、頭がパニックになります。
俺は目でマダムに訴えた。
仕方ないとばかりに、マダムが口を開きかけた時、バンッと部屋のドアが開いた。
驚いてそちらに顔を向けた俺は、そこに立っている人物を見て固まった。
その人はマダムを見て、ぷるぷると感動に打ち震えている。
「スカーレットっ!!ああ!本当に君なんだね?!」
…………。
待ってくれ!!
本当にマダムは何者なんだよ?!
その人物は、足早にマダムに歩み寄ると持っていた花束を差し出した。
真っ赤なバラが5本。
バラは基本、愛とか美を意味しているらしい。(シルク情報)
そして確か、赤いバラの花言葉は「あなたを愛してます」「愛情」「美」「情熱」「熱烈な恋」。
ええと、これを俺はどう捉えたらいいのだろうか??
当のマダムは、面倒なヤツが来たとばかりに顔を背け、耳をほじっている。
「相変わらず面倒くさい男だね、ジョシュア。」
「久しぶりの再会なのだから、このくらい許しておくれ、スカーレット。」
「……まぁ、5本だから受け取ってやるけどね。あんたは自分の立場と状況をきちんと把握すべきだと思うんだけどね、アタシは。」
「その通りです。陛下。」
そう、陛下。
マダムを熱烈に歓迎したのは、何を隠そうこの国の国王、ジョシュア・タブ・ファレル・クインサー。
もう俺は目が点。
真横で起きているその事態が、意味不明すぎて何をどうしたら良いのかわからない。
何で国王がマダムに跪いてバラを渡しているのか?!
何?!
何なの?!本当?!
「陛下、お気持ちはわかりますが、お時間です。」
グレイさんがさり気なく王に促す。
王様はとてもとても名残り惜しそうな顔をして渋っている。
「せめて、その手に接吻を……。」
「ジョッシュ!いい加減にしないと僕も怒るぞっ!!この国の王であり、既婚者の君が!他の女性に薔薇の花束を渡して跪くなんてっ!!仲間内では許されても!国王としては許されないんだぞっ!!わかっているのかっ!!僕がすぐに別館に入ってもらって人払いをしておいたからいいとは言え!少しは考えろっ!このポンコツっ!!」
……………ポンコツ。
グレイさん、王様にポンコツ言ってる……。
俺はそれも信じられなくて、グレイさんを見つめた。
温厚そうだったのに鬼の様な顔をしている。
そしてむんずと王様の首根っこを掴んだ。
「グレイ!痛い!痛いからっ!!悪かった!私が悪かった!!」
「だったらさっさと、昼食会に行ってください……。そこでの話し合いだって、重要なお仕事なんですよ?わかりますね?」
「わかった!わかったから離してくれっ!!」
「わかってるなら!こんな所に来てないで!さっさと行くっ!!」
王様はグレイさんに猫の子の様につまみ上げられ、部屋の外にぽいっと捨てられた。
マジか……。
多分、昔からの間柄なんだろうけれど、執事長とはいえ王様にあんな事して大丈夫なのだろうか??
パンパンと手を叩きながら、グレイさんが戻ってくる。
完全に頭真っ白で固まっている俺を見て、困った様に笑った。
「お見苦しいところを。」
「い、いえ……。」
「レッティもいきなりアンポンタンが来たから疲れただろ?気を取り直して昼飯にしよう!!」
「そうだね。まさかこの歳になってもあんなんだとは思わなかったよ。とりあえず口直しにシャーベットでももらえるかい?」
「良いとも。好きなものを言ってくれ。レッティが食べたいと言ったといえば、ゴールドビッグホーンの分厚いステーキだって出してくれるだろうよ。」
「あたしゃあいつの顔を見て疲れたからね。サンドイッチとか軽めのもんを頼むよ。サークには……そうだね?こんな機会ももうないかもしれないから、いいもん食わしてやっておくれ。もちろんあんたもね、グレイ。」
「ああ、心得てるさ。サーク、嫌いな物や食べられない物はあるかい??」
「いえ、大丈夫です……。」
「ならお茶を飲んで寛いでいてくれ。」
「はいはい。」
グレイさんはそう言うと部屋を出て行った。
何かよくわからないうちにエライ事になった気がするが、気にしないでおこう。
とにかく訳がわからない。
何が一体、どうなってるんだ??
完全に頭がオーバーヒートしている俺を見て、マダムが諦めたようにため息をついた。
「仕方ないね~。あんまり話したくなかったんだけど、このままだとあんた、昼飯の味もわからなそうだしね。」
「……どういう事ですか?!何が起きてるんですか?!どうなってるんですか?!」
「落ち着きな、サーク。話してやるから。」
目を白黒させる俺を宥め、マダムはあからさまに嫌そうにため息をつくと話し始めた。
「現王、ジョシュア王の功績は知ってるね?」
「はい、王の功績と言うか、即位前に建てられた功績が一番有名ですよね?30年ほど前の、西央戦争を鎮めた?」
「そ。その戦争にさ、アタシらが咬んでんのさ。」
「…………は??西央戦争に?!マダムが?!」
「アタシだけじゃない。ボーンも、ホロウ……いや今はレオンハルドだっけ?も、フレデリカも、皆、咬んでる。」
「ええええええええぇ?!フレデリカって魔術師のフレデリカさんですか?!」
「そうさ、知ってんだろ?女帝の魔女。」
「知ってます……だからフレデリカさんも王と知り合いなんですね……。」
「だね。ただあいつはあの時、冒険者じゃなかったけどね。一、二を争う宮廷魔術師だった。他のアタシらは当時、皆、ピンでやってた名の知れられた冒険者でね。で、ジョシュアはさ、一人息子だろ??姉2人の妹1人の。だからさ、何もしなくても王位を継ぐ能無しだって言われてたのさ。」
「うわぁ……。」
「だから、前王は即位前に功績を残させようとしてさ、あいつに西央戦争を任せたのさ。あいつも考えたんだろうね?無い頭でさ。」
「何気に酷い……。」
「うるさいね?見ただろ、あんたも。ちょっとお花畑なんだよ、あいつは。女兄弟の中で姉さん方のお人形みたいにされて子供時代育っちまったからさ。仕方ないんだよ。」
「なるほど……。」
「で、あいつは軍の他に、少数精鋭の優れた冒険者を集めたチームを作ったのさ。それで集められたのがアタシら4人だよ。ちなみにグレイはその頃すでにジョシュア付きの執事だったよ。」
「へぇ……。」
「あんたはアタシら4人をそれぞれ知ってるんだ。結果はわかるだろ??功績としても残ったしね。」
「そ……そんな人達が……何で皆、てんでバラバラに王政とも関わりなく、好き勝手に生きてるんですか……。レオンハルドさんはちょっとまだ絡んでますけど……。」
「他は知らないが、あたしゃ王政なんて面倒なものは大嫌いだよ。冒険者として好きに生きたかったからね。」
「そこはわかったんですけど……王様のあれは何なんですか……??」
「見ての通りだよ。あいつは昔、アタシに惚れてたんだよ。」
「えっ!!」
「えってサーク、あんたね……。アタシだって30年前はババアじゃなかったんだよ。それなりモテてたしね。」
フフンッとマダムは言った。
まぁ、確かにマダムは美人だったと思う。
ババア、ババアって自分で言うけど、今でも結構美人だと思うし。
しかもこの男前な性格だ。
何だかんだまわりに好かれただろうなと思う。
「でも王様の気持ちには答えなかったんですね?」
「当たり前だろ??王様の妃になんてなりたかないよ。身分も違うし、アタシの好みとも違うしさ。」
そう言えばあの時、ボーンさんが酔っ払ってマダムの恋愛話してたっけ。
マダムにも色々あったんだなぁ、若い時。
そして王様はフラレたけど今でも好きなんだな~、真っ赤なバラの花を贈るくらい。
……ん?
薔薇の花??
「……そう言えばさっき、バラの花を5本だから受け取るって言ってましたけど、何ですか?それは??」
シルクに言われて花言葉は少し覚えたけど、本数とかにも意味があるのだろうか??
マダムはもらった花束をぽいっとテーブルに投げると言った。
「バラの花束は本数にも意味があるんだよ。面倒くさいことにね。大昔、知らないで受け取って大変な目にあったよ。5本は『あなたに出会えて心から嬉しいです』だから受け取ったんだよ。他の本数だったら受け取らなかったね。」
「ちなみに……他の本数の意味は??」
「1本は『一目ぼれ』『あなたしかいない』 、2本は『この世界はあなたと私だけ』 、3本は『愛しています』『告白』、 4本は『死ぬまで気持ちは変わりません』 とかだよ。この辺は気をつけな。少ない本数だからいいかなんて思って受け取ると、エライ目に合うから。…………何、赤面してんだい??サーク??」
「いえ、何でもないです。」
「ま、花言葉なんて意識して送ってくる様な男はそんなにいないけどね。」
「ですよね、普通は知らないですよね?」
そう言いながら、俺は顔が赤くなるのを止められなかった。
俺は通された部屋にビビリ過ぎて引いていた。
俺とマダムが連れて来られたのは、王宮の来客用の別館の1つだった。
王宮別館は他国の国賓等も泊まる物もあるが、俺達が招かれたのはとても小さいものだった。
それでも国賓を泊めるような場所だ。
1部屋がエライ広いし、豪華だし、俺はどうしていいのかわからず突っ立っていた。
「何やってんだい?落ち着きのない子だね??さっさと座ったらどうだい??」
「いや俺はむしろ、この状況でこのソファーに普通に座ったマダムにびっくりしてるんですけど?!」
「高価なもんだろうと何だろうと、ソファーは座るもんだろう?下らない事言ってないで横に座んな。」
俺はそう言われて、しかた無くマダムの横に座った。
このソファーだけできっと俺の年収くらいするんだろうなと思うと涙が出てきた。
「落ち着いたかい?」
「落ち着かないです……。」
グレイさんがお茶のトレーを持ってきて俺とマダムの前に置いてくれたのだが、そのティーカップだってやたら高価そうで触るのも怖い。
ビクビクする俺をよそに、マダムは慣れた感じでお茶を飲んでいた。
何者なんだよ、マダム……。
俺の様子にグレイさんがくすりと笑う。
「何か、サークは……その……まるでエアーデを見ているようだよ。」
そう言われ俺は驚いてグレイさんを見た。
エアーデ、つまりボーンさんだ。
「え?!ボーンさんともお知り合いなのですか??」
「おや、レッティ?話していないのかい?」
「必要ないだろ?」
「そうかな?これから国王にも会うというのに、何も教えないのかい??」
やんわりと笑うグレイさんに、マダムは面倒そうに頭を掻く。
いや、面倒がらないで下さい。
そろそろ少しは教えて貰わないと、頭がパニックになります。
俺は目でマダムに訴えた。
仕方ないとばかりに、マダムが口を開きかけた時、バンッと部屋のドアが開いた。
驚いてそちらに顔を向けた俺は、そこに立っている人物を見て固まった。
その人はマダムを見て、ぷるぷると感動に打ち震えている。
「スカーレットっ!!ああ!本当に君なんだね?!」
…………。
待ってくれ!!
本当にマダムは何者なんだよ?!
その人物は、足早にマダムに歩み寄ると持っていた花束を差し出した。
真っ赤なバラが5本。
バラは基本、愛とか美を意味しているらしい。(シルク情報)
そして確か、赤いバラの花言葉は「あなたを愛してます」「愛情」「美」「情熱」「熱烈な恋」。
ええと、これを俺はどう捉えたらいいのだろうか??
当のマダムは、面倒なヤツが来たとばかりに顔を背け、耳をほじっている。
「相変わらず面倒くさい男だね、ジョシュア。」
「久しぶりの再会なのだから、このくらい許しておくれ、スカーレット。」
「……まぁ、5本だから受け取ってやるけどね。あんたは自分の立場と状況をきちんと把握すべきだと思うんだけどね、アタシは。」
「その通りです。陛下。」
そう、陛下。
マダムを熱烈に歓迎したのは、何を隠そうこの国の国王、ジョシュア・タブ・ファレル・クインサー。
もう俺は目が点。
真横で起きているその事態が、意味不明すぎて何をどうしたら良いのかわからない。
何で国王がマダムに跪いてバラを渡しているのか?!
何?!
何なの?!本当?!
「陛下、お気持ちはわかりますが、お時間です。」
グレイさんがさり気なく王に促す。
王様はとてもとても名残り惜しそうな顔をして渋っている。
「せめて、その手に接吻を……。」
「ジョッシュ!いい加減にしないと僕も怒るぞっ!!この国の王であり、既婚者の君が!他の女性に薔薇の花束を渡して跪くなんてっ!!仲間内では許されても!国王としては許されないんだぞっ!!わかっているのかっ!!僕がすぐに別館に入ってもらって人払いをしておいたからいいとは言え!少しは考えろっ!このポンコツっ!!」
……………ポンコツ。
グレイさん、王様にポンコツ言ってる……。
俺はそれも信じられなくて、グレイさんを見つめた。
温厚そうだったのに鬼の様な顔をしている。
そしてむんずと王様の首根っこを掴んだ。
「グレイ!痛い!痛いからっ!!悪かった!私が悪かった!!」
「だったらさっさと、昼食会に行ってください……。そこでの話し合いだって、重要なお仕事なんですよ?わかりますね?」
「わかった!わかったから離してくれっ!!」
「わかってるなら!こんな所に来てないで!さっさと行くっ!!」
王様はグレイさんに猫の子の様につまみ上げられ、部屋の外にぽいっと捨てられた。
マジか……。
多分、昔からの間柄なんだろうけれど、執事長とはいえ王様にあんな事して大丈夫なのだろうか??
パンパンと手を叩きながら、グレイさんが戻ってくる。
完全に頭真っ白で固まっている俺を見て、困った様に笑った。
「お見苦しいところを。」
「い、いえ……。」
「レッティもいきなりアンポンタンが来たから疲れただろ?気を取り直して昼飯にしよう!!」
「そうだね。まさかこの歳になってもあんなんだとは思わなかったよ。とりあえず口直しにシャーベットでももらえるかい?」
「良いとも。好きなものを言ってくれ。レッティが食べたいと言ったといえば、ゴールドビッグホーンの分厚いステーキだって出してくれるだろうよ。」
「あたしゃあいつの顔を見て疲れたからね。サンドイッチとか軽めのもんを頼むよ。サークには……そうだね?こんな機会ももうないかもしれないから、いいもん食わしてやっておくれ。もちろんあんたもね、グレイ。」
「ああ、心得てるさ。サーク、嫌いな物や食べられない物はあるかい??」
「いえ、大丈夫です……。」
「ならお茶を飲んで寛いでいてくれ。」
「はいはい。」
グレイさんはそう言うと部屋を出て行った。
何かよくわからないうちにエライ事になった気がするが、気にしないでおこう。
とにかく訳がわからない。
何が一体、どうなってるんだ??
完全に頭がオーバーヒートしている俺を見て、マダムが諦めたようにため息をついた。
「仕方ないね~。あんまり話したくなかったんだけど、このままだとあんた、昼飯の味もわからなそうだしね。」
「……どういう事ですか?!何が起きてるんですか?!どうなってるんですか?!」
「落ち着きな、サーク。話してやるから。」
目を白黒させる俺を宥め、マダムはあからさまに嫌そうにため息をつくと話し始めた。
「現王、ジョシュア王の功績は知ってるね?」
「はい、王の功績と言うか、即位前に建てられた功績が一番有名ですよね?30年ほど前の、西央戦争を鎮めた?」
「そ。その戦争にさ、アタシらが咬んでんのさ。」
「…………は??西央戦争に?!マダムが?!」
「アタシだけじゃない。ボーンも、ホロウ……いや今はレオンハルドだっけ?も、フレデリカも、皆、咬んでる。」
「ええええええええぇ?!フレデリカって魔術師のフレデリカさんですか?!」
「そうさ、知ってんだろ?女帝の魔女。」
「知ってます……だからフレデリカさんも王と知り合いなんですね……。」
「だね。ただあいつはあの時、冒険者じゃなかったけどね。一、二を争う宮廷魔術師だった。他のアタシらは当時、皆、ピンでやってた名の知れられた冒険者でね。で、ジョシュアはさ、一人息子だろ??姉2人の妹1人の。だからさ、何もしなくても王位を継ぐ能無しだって言われてたのさ。」
「うわぁ……。」
「だから、前王は即位前に功績を残させようとしてさ、あいつに西央戦争を任せたのさ。あいつも考えたんだろうね?無い頭でさ。」
「何気に酷い……。」
「うるさいね?見ただろ、あんたも。ちょっとお花畑なんだよ、あいつは。女兄弟の中で姉さん方のお人形みたいにされて子供時代育っちまったからさ。仕方ないんだよ。」
「なるほど……。」
「で、あいつは軍の他に、少数精鋭の優れた冒険者を集めたチームを作ったのさ。それで集められたのがアタシら4人だよ。ちなみにグレイはその頃すでにジョシュア付きの執事だったよ。」
「へぇ……。」
「あんたはアタシら4人をそれぞれ知ってるんだ。結果はわかるだろ??功績としても残ったしね。」
「そ……そんな人達が……何で皆、てんでバラバラに王政とも関わりなく、好き勝手に生きてるんですか……。レオンハルドさんはちょっとまだ絡んでますけど……。」
「他は知らないが、あたしゃ王政なんて面倒なものは大嫌いだよ。冒険者として好きに生きたかったからね。」
「そこはわかったんですけど……王様のあれは何なんですか……??」
「見ての通りだよ。あいつは昔、アタシに惚れてたんだよ。」
「えっ!!」
「えってサーク、あんたね……。アタシだって30年前はババアじゃなかったんだよ。それなりモテてたしね。」
フフンッとマダムは言った。
まぁ、確かにマダムは美人だったと思う。
ババア、ババアって自分で言うけど、今でも結構美人だと思うし。
しかもこの男前な性格だ。
何だかんだまわりに好かれただろうなと思う。
「でも王様の気持ちには答えなかったんですね?」
「当たり前だろ??王様の妃になんてなりたかないよ。身分も違うし、アタシの好みとも違うしさ。」
そう言えばあの時、ボーンさんが酔っ払ってマダムの恋愛話してたっけ。
マダムにも色々あったんだなぁ、若い時。
そして王様はフラレたけど今でも好きなんだな~、真っ赤なバラの花を贈るくらい。
……ん?
薔薇の花??
「……そう言えばさっき、バラの花を5本だから受け取るって言ってましたけど、何ですか?それは??」
シルクに言われて花言葉は少し覚えたけど、本数とかにも意味があるのだろうか??
マダムはもらった花束をぽいっとテーブルに投げると言った。
「バラの花束は本数にも意味があるんだよ。面倒くさいことにね。大昔、知らないで受け取って大変な目にあったよ。5本は『あなたに出会えて心から嬉しいです』だから受け取ったんだよ。他の本数だったら受け取らなかったね。」
「ちなみに……他の本数の意味は??」
「1本は『一目ぼれ』『あなたしかいない』 、2本は『この世界はあなたと私だけ』 、3本は『愛しています』『告白』、 4本は『死ぬまで気持ちは変わりません』 とかだよ。この辺は気をつけな。少ない本数だからいいかなんて思って受け取ると、エライ目に合うから。…………何、赤面してんだい??サーク??」
「いえ、何でもないです。」
「ま、花言葉なんて意識して送ってくる様な男はそんなにいないけどね。」
「ですよね、普通は知らないですよね?」
そう言いながら、俺は顔が赤くなるのを止められなかった。
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