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第八章③「帰国裁判」
懐かしい顔
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多分、多分だ。
レオンハルドさんはバラ一輪の意味なんて知らない。
あれは俺達が花言葉を使っていたから、面白がってそれに乗っかっただけだし。
むしろ、むしろだ。
バラ一輪にそんな意味があるなら、あの頃の俺に教えてやりたい!
だって!バラ一輪に俺の気持ちが全て詰まってるんだから!!
バラ一輪渡せば、全て伝えられたんだからっ!!
いや!だがしかしっ!!
あの頃の俺に!
バラを一輪、レオンハルドさんに渡す度胸があったか?!
いや無いっ!!
駄目じゃんっ!!
「あああああぁ~っ!!こんちくしょうっ!!」
「………あんた、さっきから何一人で身悶えてるんだい??気色悪い……。」
一人で赤くなりながら手で顔を覆ってジタバタする俺を、マダムが気持ち悪そうに見ている。
「誰かからバラでももらったのかい?もしかして?」
「もらうことはもらいましたけど!多分、意味は知らないと思います。むしろですね!!その意味を昔の自分に教えてやりたいのですが!きっと当時の俺にはバラを買って渡す度胸なんかなかったと思うと……!!」
「……滅茶苦茶気持ち悪い妄想して身悶えてんのかい、あんた……。」
マダムが呆れた様にハンッと鼻息を吹いた。
そんな気持ちの悪い俺を、グレイさんがニコニコと見ている。
「いやぁ、若いって羨ましいですね~。」
「でもサーク、あんたの恋人は端からあんたに惚れてだだろう??そんなバラを渡して想いを伝える様な場面があったのかい??」
「いやいや、レッティ。男はそれなりに決めたい時もあるんだよ。」
「へぇ、それであんたはキメたのかい??グレイ??」
「僕の場合は、その気になれば手を繋げば全部わかるからね?そこまで意気込んでキメた事はないよ。だから逆に羨ましいね。そう言うの。」
2人がそんな話をしているのを聞いて、俺は少し冷静になった。
そうだ、今、ここには人を読むプロが二人もいるんだ。
下手にデレデレ妄想に浸っていたら、丸裸にされかねない。
マダムに至っては俺の全てを知っているんだ。
と、言う事は……。
「え……その辺もバレてんのか……?!」
さ~と血の気が引いた。
全部知っていると言う事は、俺がレオンハルドさんに初恋をした事も、ギルとなんやかんやあった事も、性欲や快楽を経験したくて夜の街で色々試した事など、全部知られていると言う事だ……。
「うわぁぁっ!!いっそ殺してくれっ!!」
「今度はなんだい?!騒々しい子だねっ?!」
「あはは、面白いね、サークは。見てて飽きないよ。」
グレイさんは厚切りのステーキを上品に切りながら、そう言った。
そう、俺が薔薇の本数の意味を知っておかしな妄想の世界に入り込んでいるうちに、グレイさんが戻ってきて食事になった。
もう、これでもかと言う見た事もない御馳走が並んでいる。
うん、とにかく落ち着こう。
そして今はこのご馳走のご相伴に預かろう。
大きく深呼吸して、テーブルの上を見つめる。
やっぱり前菜から食べるべきなのかな??
グレイさんはいきなりステーキ食べてるけど。
とりあえずとスープをよそって口に入れた。
「……………ふぁ?!えっ?!これ?!何のポタージュですか?!」
「ああ、何だったかな??何か希少なトウモロコシのポタージュだよ。多分、もう一生、口にする事はないかもね。」
「……ふぁっ?!」
一生口にする事のない可能性が高いポタージュって何なんだろう??
いや、でもすこぶる旨いから味わっておこう……。
俺は黙々と食事をはじめた。
ポタージュを拭おうとパンを手に取って、その柔らかさと薫りに驚いた。
クンクン嗅いでから、何もつけずにそのまま口に入れる。
「~~~っ!!」
ジタバタする。
そのままパンを齧っているのに、ジタバタするほど旨い。
それをマダムとグレイさんがぽかんと見ている。
「美味しい……美味しいです。グレイさん……。」
「あ、うん。喜んでもらえて良かったよ……。うん。何だろう??君は本当に見てて飽きないというか……、食べてる時は、目が反らせないね??これも美味しいよ?高地でしか取れない幻のトマトのサラダだよ。」
「ありがとうございます!……えっ?!何ですかこれっ?!すごい濃厚っ!!しかもメチャメチャ甘いっ!!」
「うんうん。そんなに喜んでもらえると、持ってきた僕も作ったシェフも嬉しいよ。」
グレイさんがニコニコと食べる俺を眺めている。
何かもう、食べるのを眺められるのも慣れてきたな。
でも次に勧められたローストビーフも、頬が落ちるくらい美味しかった。
王宮料理、最高。
メチャメチャ旨い。
「……何だろね??サークが可愛く見えるよ……。やっぱり疲れてるんだね、あたしゃ。」
マダムが具がたっぷり挟まれたサンドイッチを食べながら、そんな事を言っていた。
ご馳走をたらふく頂いていると、部屋にあるウインドチャイムが音を奏でた。
これは別館のドアベルと魔術で連携していて、来客を知らせるものだ。
国王が来た時は鳴ってなかったので、王様はドアベルも鳴らさず突入してきたのだろう。
一応、グレイさんが信頼できるとしているハウスキーパー兼用心棒が建物内に2人ほどいるらしいのだが、王様相手では止ようもなかったのだろう。
今回はちゃんとベルを鳴らしてきたと言う事は、ジョシュア王ではなさそうだ。
グレイさんが席を立ち、様子を見に行く。
マダムは特に何も気にせずシャーベットを食べていて、俺は見た事のないフルーツに苦戦していた。
何だろう??このイガグリみたいな物体は??
めちゃくちゃ甘い匂いはするんだけど??
「サーク、ちょっといいかい??」
出て行ったグレイさんがドアから顔を出し、俺を呼んだ。
行ってみると、どうも来客は俺に用があるらしい。
俺の仲間だと言っているらしいが、念の為入れる前に顔を確認して欲しいとの事だった。
ドア前で待っている姿を、離れた窓から確認する。
「……あっ!大丈夫ですっ!!」
俺はその姿を見て嬉しくなってしまった。
どれくらいぶりだろう??
懐かしい姿を見て、俺はやっと本当にここに帰ってきたのだと実感した。
ハウスキーパーさんがそいつを別館に招き入れている所に勢い余って走り込む。
「イヴァンっ!!」
「サークさん!おかえりなさいっ!!」
来てくれたのはイヴァンだった。
恐らく彼は一番あの件に関わっていない為、ずっとライオネル殿下の警護をしながら王宮内の様子を探っていたのだろう。
だから俺がここに来ても、一番訪ねて来やすい立場なのだ。
思わずガシっとハグを交わす。
相変わらずこいつとのハグは、筋肉のせいで硬くて痛い。
「元気だったか?!」
「それはこっちの台詞ですよ!ちゃんと食べてますか?!」
「お~。今、王宮料理をたらふく堪能してたとこだよ。」
「それは……狡くないですか??」
そう言って、イヴァンはいつものように爽やかで太陽のような笑顔を見せた。
久しぶりに見ると、文句の付け所のない好青年に見える。
まぁ、実際は結構変なところもある奴なんだけど。
俺とイヴァンは別館の一室を借りて話す事になった。
グレイさんが気を使って残っていた食事や軽食などを綺麗に盛り付け直して持ってきてくれる。
「ちなみにサーク、ライチはこうやって食べるんだよ。」
俺が苦戦していた果物はライチと言うらしく、グレイさんが食べ方を教えてくれて去っていった。
何かぶどうに近い味なのにやたらめったら種がデカくて、でもかなり美味かった。
イヴァンと話している間、俺はむちむちとそれを食べる。
「……本当、いつ見ても飽きない食べっぷりですよね。」
イヴァンは思い出したようにくすくす笑いながら、出されたサンドイッチにローストビーフを足して挟んで頬張っている。
意外と豪快に食うよな、こいつ。
「うっせーな。それより、皆、大丈夫なのかよ?!」
「微妙ですね。ガスパーが裏から手を回して睨みを効かせてるんで捕まったりする実害はないですけど、僕以外は行動を制限されてますよ。見張りは僕にすらついてますし。」
「そっか……。」
「でもやりますね、サークさん。まさか国賓として帰ってくるとは思わなかったです。これじゃ誰も手出しできないですよ。」
「俺もこんな帰り方になるとは思わなかったよ……。」
そう、俺が王国に帰っても連行されないのは、所在地政府離脱権限を施行しているフライハイトのギルドの一員として、その長であるマダムの同行者としての扱いになっているからだ。
いわゆる治外法権的なものに守られている。
「冒険者をしているとは聞いてましたが、まさかこんな形で使ってくるとは僕達も予想してませんでしたよ。」
「俺だってそんなつもりはなかったんだけどさ~。」
「まさにサークさんの特性を活かした反撃ですね。」
「特性??何だそりゃ??」
「前も言ったでしょ?あなたは、普通なら後から来ておいて副隊長になるなんて恨みを買うはずなのに、皆に受け入れられる様な人なんですよ。僕だってはじめは恋敵だと思ってたのに、何だかんだ懐柔されちゃいましたし。」
「何が言いたいんだよ??たまたまだろ??全部。運が良かったんだよ。」
「違いますよ。そんな何度も運良くそうなる訳ないでしょう?これは全部、サークさんの特性、人たらしによるものです。」
「……は?!何だそれ?!言うにことかいて人たらしとか、酷くね?!」
「事実ですし。」
イヴァンは紅茶を口にしながらにっこりと笑った。
何か……何か言い返したいが、上手い言葉が見つからない。
「人たらしじゃねぇし……。今回のギルドの協力は俺の為でもあるけど、マダムは他に思うところがあっての事だし……。」
「まぁ、人たらしだけじゃなくて、強運の持ち主である事も確かですね。」
「何か……凄くけなされてる気分だ……。」
「え??褒めてるんですけど、僕??」
あっけらかんとそう言って、イヴァンはもりっとステーキを頬張った。
俺はイヴァンの言葉を喜んでいいのかわからず、ライチをまた一つ剥いて口に放り込んだのだった。
レオンハルドさんはバラ一輪の意味なんて知らない。
あれは俺達が花言葉を使っていたから、面白がってそれに乗っかっただけだし。
むしろ、むしろだ。
バラ一輪にそんな意味があるなら、あの頃の俺に教えてやりたい!
だって!バラ一輪に俺の気持ちが全て詰まってるんだから!!
バラ一輪渡せば、全て伝えられたんだからっ!!
いや!だがしかしっ!!
あの頃の俺に!
バラを一輪、レオンハルドさんに渡す度胸があったか?!
いや無いっ!!
駄目じゃんっ!!
「あああああぁ~っ!!こんちくしょうっ!!」
「………あんた、さっきから何一人で身悶えてるんだい??気色悪い……。」
一人で赤くなりながら手で顔を覆ってジタバタする俺を、マダムが気持ち悪そうに見ている。
「誰かからバラでももらったのかい?もしかして?」
「もらうことはもらいましたけど!多分、意味は知らないと思います。むしろですね!!その意味を昔の自分に教えてやりたいのですが!きっと当時の俺にはバラを買って渡す度胸なんかなかったと思うと……!!」
「……滅茶苦茶気持ち悪い妄想して身悶えてんのかい、あんた……。」
マダムが呆れた様にハンッと鼻息を吹いた。
そんな気持ちの悪い俺を、グレイさんがニコニコと見ている。
「いやぁ、若いって羨ましいですね~。」
「でもサーク、あんたの恋人は端からあんたに惚れてだだろう??そんなバラを渡して想いを伝える様な場面があったのかい??」
「いやいや、レッティ。男はそれなりに決めたい時もあるんだよ。」
「へぇ、それであんたはキメたのかい??グレイ??」
「僕の場合は、その気になれば手を繋げば全部わかるからね?そこまで意気込んでキメた事はないよ。だから逆に羨ましいね。そう言うの。」
2人がそんな話をしているのを聞いて、俺は少し冷静になった。
そうだ、今、ここには人を読むプロが二人もいるんだ。
下手にデレデレ妄想に浸っていたら、丸裸にされかねない。
マダムに至っては俺の全てを知っているんだ。
と、言う事は……。
「え……その辺もバレてんのか……?!」
さ~と血の気が引いた。
全部知っていると言う事は、俺がレオンハルドさんに初恋をした事も、ギルとなんやかんやあった事も、性欲や快楽を経験したくて夜の街で色々試した事など、全部知られていると言う事だ……。
「うわぁぁっ!!いっそ殺してくれっ!!」
「今度はなんだい?!騒々しい子だねっ?!」
「あはは、面白いね、サークは。見てて飽きないよ。」
グレイさんは厚切りのステーキを上品に切りながら、そう言った。
そう、俺が薔薇の本数の意味を知っておかしな妄想の世界に入り込んでいるうちに、グレイさんが戻ってきて食事になった。
もう、これでもかと言う見た事もない御馳走が並んでいる。
うん、とにかく落ち着こう。
そして今はこのご馳走のご相伴に預かろう。
大きく深呼吸して、テーブルの上を見つめる。
やっぱり前菜から食べるべきなのかな??
グレイさんはいきなりステーキ食べてるけど。
とりあえずとスープをよそって口に入れた。
「……………ふぁ?!えっ?!これ?!何のポタージュですか?!」
「ああ、何だったかな??何か希少なトウモロコシのポタージュだよ。多分、もう一生、口にする事はないかもね。」
「……ふぁっ?!」
一生口にする事のない可能性が高いポタージュって何なんだろう??
いや、でもすこぶる旨いから味わっておこう……。
俺は黙々と食事をはじめた。
ポタージュを拭おうとパンを手に取って、その柔らかさと薫りに驚いた。
クンクン嗅いでから、何もつけずにそのまま口に入れる。
「~~~っ!!」
ジタバタする。
そのままパンを齧っているのに、ジタバタするほど旨い。
それをマダムとグレイさんがぽかんと見ている。
「美味しい……美味しいです。グレイさん……。」
「あ、うん。喜んでもらえて良かったよ……。うん。何だろう??君は本当に見てて飽きないというか……、食べてる時は、目が反らせないね??これも美味しいよ?高地でしか取れない幻のトマトのサラダだよ。」
「ありがとうございます!……えっ?!何ですかこれっ?!すごい濃厚っ!!しかもメチャメチャ甘いっ!!」
「うんうん。そんなに喜んでもらえると、持ってきた僕も作ったシェフも嬉しいよ。」
グレイさんがニコニコと食べる俺を眺めている。
何かもう、食べるのを眺められるのも慣れてきたな。
でも次に勧められたローストビーフも、頬が落ちるくらい美味しかった。
王宮料理、最高。
メチャメチャ旨い。
「……何だろね??サークが可愛く見えるよ……。やっぱり疲れてるんだね、あたしゃ。」
マダムが具がたっぷり挟まれたサンドイッチを食べながら、そんな事を言っていた。
ご馳走をたらふく頂いていると、部屋にあるウインドチャイムが音を奏でた。
これは別館のドアベルと魔術で連携していて、来客を知らせるものだ。
国王が来た時は鳴ってなかったので、王様はドアベルも鳴らさず突入してきたのだろう。
一応、グレイさんが信頼できるとしているハウスキーパー兼用心棒が建物内に2人ほどいるらしいのだが、王様相手では止ようもなかったのだろう。
今回はちゃんとベルを鳴らしてきたと言う事は、ジョシュア王ではなさそうだ。
グレイさんが席を立ち、様子を見に行く。
マダムは特に何も気にせずシャーベットを食べていて、俺は見た事のないフルーツに苦戦していた。
何だろう??このイガグリみたいな物体は??
めちゃくちゃ甘い匂いはするんだけど??
「サーク、ちょっといいかい??」
出て行ったグレイさんがドアから顔を出し、俺を呼んだ。
行ってみると、どうも来客は俺に用があるらしい。
俺の仲間だと言っているらしいが、念の為入れる前に顔を確認して欲しいとの事だった。
ドア前で待っている姿を、離れた窓から確認する。
「……あっ!大丈夫ですっ!!」
俺はその姿を見て嬉しくなってしまった。
どれくらいぶりだろう??
懐かしい姿を見て、俺はやっと本当にここに帰ってきたのだと実感した。
ハウスキーパーさんがそいつを別館に招き入れている所に勢い余って走り込む。
「イヴァンっ!!」
「サークさん!おかえりなさいっ!!」
来てくれたのはイヴァンだった。
恐らく彼は一番あの件に関わっていない為、ずっとライオネル殿下の警護をしながら王宮内の様子を探っていたのだろう。
だから俺がここに来ても、一番訪ねて来やすい立場なのだ。
思わずガシっとハグを交わす。
相変わらずこいつとのハグは、筋肉のせいで硬くて痛い。
「元気だったか?!」
「それはこっちの台詞ですよ!ちゃんと食べてますか?!」
「お~。今、王宮料理をたらふく堪能してたとこだよ。」
「それは……狡くないですか??」
そう言って、イヴァンはいつものように爽やかで太陽のような笑顔を見せた。
久しぶりに見ると、文句の付け所のない好青年に見える。
まぁ、実際は結構変なところもある奴なんだけど。
俺とイヴァンは別館の一室を借りて話す事になった。
グレイさんが気を使って残っていた食事や軽食などを綺麗に盛り付け直して持ってきてくれる。
「ちなみにサーク、ライチはこうやって食べるんだよ。」
俺が苦戦していた果物はライチと言うらしく、グレイさんが食べ方を教えてくれて去っていった。
何かぶどうに近い味なのにやたらめったら種がデカくて、でもかなり美味かった。
イヴァンと話している間、俺はむちむちとそれを食べる。
「……本当、いつ見ても飽きない食べっぷりですよね。」
イヴァンは思い出したようにくすくす笑いながら、出されたサンドイッチにローストビーフを足して挟んで頬張っている。
意外と豪快に食うよな、こいつ。
「うっせーな。それより、皆、大丈夫なのかよ?!」
「微妙ですね。ガスパーが裏から手を回して睨みを効かせてるんで捕まったりする実害はないですけど、僕以外は行動を制限されてますよ。見張りは僕にすらついてますし。」
「そっか……。」
「でもやりますね、サークさん。まさか国賓として帰ってくるとは思わなかったです。これじゃ誰も手出しできないですよ。」
「俺もこんな帰り方になるとは思わなかったよ……。」
そう、俺が王国に帰っても連行されないのは、所在地政府離脱権限を施行しているフライハイトのギルドの一員として、その長であるマダムの同行者としての扱いになっているからだ。
いわゆる治外法権的なものに守られている。
「冒険者をしているとは聞いてましたが、まさかこんな形で使ってくるとは僕達も予想してませんでしたよ。」
「俺だってそんなつもりはなかったんだけどさ~。」
「まさにサークさんの特性を活かした反撃ですね。」
「特性??何だそりゃ??」
「前も言ったでしょ?あなたは、普通なら後から来ておいて副隊長になるなんて恨みを買うはずなのに、皆に受け入れられる様な人なんですよ。僕だってはじめは恋敵だと思ってたのに、何だかんだ懐柔されちゃいましたし。」
「何が言いたいんだよ??たまたまだろ??全部。運が良かったんだよ。」
「違いますよ。そんな何度も運良くそうなる訳ないでしょう?これは全部、サークさんの特性、人たらしによるものです。」
「……は?!何だそれ?!言うにことかいて人たらしとか、酷くね?!」
「事実ですし。」
イヴァンは紅茶を口にしながらにっこりと笑った。
何か……何か言い返したいが、上手い言葉が見つからない。
「人たらしじゃねぇし……。今回のギルドの協力は俺の為でもあるけど、マダムは他に思うところがあっての事だし……。」
「まぁ、人たらしだけじゃなくて、強運の持ち主である事も確かですね。」
「何か……凄くけなされてる気分だ……。」
「え??褒めてるんですけど、僕??」
あっけらかんとそう言って、イヴァンはもりっとステーキを頬張った。
俺はイヴァンの言葉を喜んでいいのかわからず、ライチをまた一つ剥いて口に放り込んだのだった。
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