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第八章③「帰国裁判」
法廷開戦
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やれる事は全てやった。
何より多くの仲間が、俺には分不相応な人達が、たった一人の俺の無罪の証明の為に集まってくれた。
正直、凄すぎて身震いしてしまう。
だが、それは俺だけの為じゃない。
その裏に潜む国家の危機を打破する事が目的だ。
だからと言って、彼らが俺の為に集まってくれた事に嘘はない。
俺達は一丸となって立ち向かう。
俺の戦犯と言う冤罪の下に隠された、大きな闇。
俺の無罪を勝ち取る事で、その下に広がる腐った根を引きずり出す。
そしてそれを弾劾し、グレゴリウスの野望を打ち砕いてこの国を取り戻す。
誰かのためじゃない。
お国の為とかでもない。
俺達は皆、ただそうしたいからするんだ。
ヒーローになりたい訳じゃない。
法廷人に促され、俺達は罪人席に座る。
裁判を強行されて勝手に罪人にされたけれど、甘んじて今はそれを受け入れる。
この法廷が終わる時、相手側が罪人席に変わるだろう。
俺達の座る席より高い位置に、中央に法廷議長と補佐、両サイドに貴族陪審員、有識者陪審員が座っている。
そしてその更に上、皇太子と第二王子、第三王子であるライオネル殿下が、更に上の最上部にジョシュア現国王が座っている。
……あれ?!
俺はそれを何の気なしに見上げてぎょっとした。
何故かジョシュア国王の後ろに控えるように、ボーンさんが立っているのだ。
小さいから見にくいが間違いない。
そして見えているので、座ってないで立っているんだと思う。
「疲れないのかな?ボーンさん??」
「そのうち座るさ。じじいだからね。」
思わずつぶやいた俺に、マダムがボソッと返した。
何でボーンさんがあんな所にいるんだ??
確かに国王とは旧知の仲なんだろうけど??
俺はマダムををちらりと見た。
確か「あっちの件」は今、ボーンさんが状況を見ているとさっきグレイさんと話していた。
それは国王に関わる事なのだろうか??
それとも国王も1枚咬んでいると言う事なのだろうか?
俺が見ているのに気づいているはずなのに、マダムは涼しい顔で前を向いている。
マダムは何をしようとしているんだろう??
俺には全くわからなかった。
俺達の向かい側には、古参貴族議員達がふんぞり返って座っている。
昔からの悪知恵を脈々と受け継ぐ古狸と古狐達だとガスパーは言っていた。
見るからに古株な爺さん達に、これから俺と共に若手のガスパーが喧嘩を売る。
俺は爺さん達の実力も何も知らないが、ここに呑気にやってきて偉そうに座っているだけおめでたい頭をしているのは知っている。
だから長い眠りから目を覚ました蛇蝎に敵うことは決してないだろう。
彼らの仲間の中でも、それなりにキレるやつはここには来ていないとガスパーは言っていた。
今回の裁判に関して、薄々感づくものがあったのだろう。
状況によってはすぐに逃げるつもりなのだ。
だがその部分ももう解決済みだ。
ガスパーが宰相のルードビッヒおじさんと、国軍トップのアーチーさんことニール総元帥にあの証拠を前もって見せたのはその為だ。
どこにだろうと逃亡させるつもりはない。
彼らがギル達を監視したように、この場にいない彼らの仲間は、毒蛇と大鷹の目の中に捕らえられている。
法廷は傍聴席が開放され、その中にギル達の姿が見える。
ウィルがいないのは、午後に証言台に立つための手続きに行っているんだろう。
顔ぐらい見たかったのに少し残念だ。
全ての準備が整い法廷議長が開廷を告げるまでの長いような短い時間の中で、ガスパーは目を閉じている。
幼い時のトラウマから、ずっと隠してきた本当の自分を曝け出すのだ。
この僅かな時間の中に、思うところはたくさんあるのだろう。
ガスパーは才能があるのだから、それをもっと表に出すべきだとは思っていたが、そのきっかけが俺の裁判というのはなんか申し訳ない気がした。
「……もっといいタイミングだってあっただろうよ……。こんなところじゃなくてさ~。」
ガスパーの決断をありがたいと思いつつ、思わずぼやく。
俺の横で、ガスパーは目を開けないまま言った。
「それって俺の事言ってんのか??」
「そうだけど??」
「確かにいきなり再審裁判の罪人席から始まるとは思わなかったな。」
「だろ??」
「だがそれがどこか、いつかなんて俺にはどうでもいい事なんだよ。俺はお前が牙を必要とする時が来たら、それを使うと決めていた。これは俺の意思だ。お前にだって文句は言わせねぇ。」
ガスパーはそう言って目を開いた。
その目は冷たく、俺はガスパーを見て初めて蛇だと思った。
ガスパーはそれまで、そう見えた事は一度もなかった。
どんなに悪態をついていてもそうは見えなかった。
だが今はそれが見える。
蛇には色々な側面がある。
死と再生、知識と知恵、生殖と繁栄、水と金、狡猾と毒、冷血と冷酷、そして神の使いでもあるし邪神とも言われる。
ガスパーの中のそれは、いったいどんな顔を持っているのだろう?
少なくとも、知恵と知識は疑い無く持っているだろう。
けれど、それが他人からどう見えようとどうでもいい事だ。
ガスパーは今、長い眠りから覚めてここにいる。
俺の横に確かにいるんだ。
「……頼りにしてる。」
「任せとけ。この俺がやると決めたからには、絶対に負けさせねぇよ。」
ガスパーがそう言った時、法廷議長が開廷を宣言した。
ざわめいていた議会室に静寂と緊張が落ちる。
さぁ、やってやろう。
俺とガスパーは、ちらりと視線を合わせた。
まず、以前に決まった俺の罪状やら何やらが読み上げられた。
続いて第二王子派の代表が、いかに俺が勝手な振る舞いをして、友好国である南の国に非礼を行い、軍に損害を与えたかを述べた。
それに対してガスパーが、友好訪問の際にライオネル殿下がどの様な扱いを受け、訪問中止を決定したか、そして問題の南軍との交戦が、帰路についた一団を捕らえる為に待ち伏せされた結果である事を述べた。
「我々は言われている様に、相手側を挑発し、無礼を働き、それを抑える為に南軍が出陣してきた訳ではない事を主張します。我々は何もせず、静かに南の国を後にしようとしました。メートランド子爵の仰った様に我々が宮廷内で暴れ、非礼を働いた上で南国王宮を離れたのであれば、王宮内にも被害があったはずです。当然、そのような被害があったのならば、修理費用などの請求があるはずです。しかしそのような報告はありません。」
「それは我々が国に申請される前に対応したからだ!」
「でしたらそれはどの程度の請求でしたか?どこが破壊され、どのような保証金をお渡しになったのですか?」
「そんな詳しい事は知らぬっ!!我々は南の国との友好を保つ為に、言われた額を見舞金としてお渡ししたのだ!!」
「何にいくら払うかの請求書もなく、言われた額をお渡しになったと?」
「そうだ!」
「議長!我々はその際、金銭の受け渡し時に取り交わした書類の提出を求めます。」
「メートランド、その書類を見せなさい。」
「それは……その……お怒りをお鎮めする為に、急いでおりまして……。」
「では、正式な書類を残さずに、金銭のやり取りをなさったと?その場合、国際条例に反した他国に対する賄賂とみなされますが、いかがお考えですか??」
「それは違う!!我々は国の為を思って!!もしそうしなかったら!南の国はすぐにでも攻めて来たかも知れぬのだぞっ!それを賄賂とは!口を慎めっ!!」
「では!その際用いた金銭はどこから調達を?!戦争を未然に防ぐ為に、何もなく金品を差し出す事は緊急処置として致し方なかったとしましても!!それを工面した帳簿は残っているはずです!!議長!彼らの言う、南国王宮の被害に対する見舞金の証明として、それを工面した帳簿の提出を求めます!!」
うわ~。
ガスパーのヤツ、畳み掛けるな~。
と言うか、何でその程度の偽物の書類とかも用意してない訳??
俺が逃げてからかなりの時間があったよね??
再審裁判が起こる事なんてわかりきってただろうに、何でその対策をしてないんだよ??
適当な事ばっか並べといて、どこを突かれそうだとか何も考えてなかったのか??
何でデタラメを言うにしたって、ボロが出ないように準備しないんだ??
確かにガスパーは優れてるけどさ??
何なのこの茶番??
俺らを馬鹿にしてんのか??
多分、こいつは偽物の書類を出されたらどうするかまで考えてあったと思うぞ??
何と言われようと揺るがず正論で攻めてくるガスパーに、爺どもはタジタジになってる。
大方、自分の家の権力を振りかざして、白も黒と言わせてのさばって来たんだろうな~。
だから嘘を吐くにしても、力押し一本で細部まで粗がないようになんてしてこなかったんだろう……。
そしていくら代々宰相を出すラティーマー家の人間だとしても、無名の若造だから何とか脅せばイケると思ったんだろうな~。
それがまさか、こんな大蛇が潜んでいるとは思わなかっただろうな~。
今のガスパーは、音もなく忍び寄ってその場に佇み、右往左往するネズミを静かに見下ろす大蛇だ。
しかもその口はまだ閉じられていて、牙を見せてはいない。
なのにこの有様って、いくら何でも酷すぎないか?!
大丈夫なのか?!中央王国政府?!
こんなのばっかりしか中枢にいないとか、ヤバすぎだろ?!
そりゃグレゴリウスに付け込まれるわ……。
とにかくこんな感じでガスパーの独壇場となり、貴族陪審員も有識者陪審員も、突然現れた切れ者の若者にぽかんと口を開けていた。
ガスパーが請求する証拠がない以上、向こうが主張する罪状は不確かなものになっていく。
何より、法廷の流れは完全にガスパーが握っていた。
まさに圧巻だ。
「では議長!我々の主張する待ち伏せにあった件について、証人3名からの話を聞きたいと思います。許可頂けますでしょうか?!」
完全に向こうの主張を黙らせた後、ガスパーは議長にそう言った。
「許可する。では補佐官、証人の準備をしてこちらに連れてくるように。」
議長の言葉に、補佐官の一人が法廷人と共に証人による証言の準備を始める。
ガスパーは俺の隣に戻ってきて座ると、ふぅと息を吐いた。
「お疲れさん。」
「拍子抜けだったわ。ここまで何にもしてないとか、アホだろ、あいつら。」
呆れた様に言ったガスパーの言葉に、俺はブッと吹いてしまった。
何より多くの仲間が、俺には分不相応な人達が、たった一人の俺の無罪の証明の為に集まってくれた。
正直、凄すぎて身震いしてしまう。
だが、それは俺だけの為じゃない。
その裏に潜む国家の危機を打破する事が目的だ。
だからと言って、彼らが俺の為に集まってくれた事に嘘はない。
俺達は一丸となって立ち向かう。
俺の戦犯と言う冤罪の下に隠された、大きな闇。
俺の無罪を勝ち取る事で、その下に広がる腐った根を引きずり出す。
そしてそれを弾劾し、グレゴリウスの野望を打ち砕いてこの国を取り戻す。
誰かのためじゃない。
お国の為とかでもない。
俺達は皆、ただそうしたいからするんだ。
ヒーローになりたい訳じゃない。
法廷人に促され、俺達は罪人席に座る。
裁判を強行されて勝手に罪人にされたけれど、甘んじて今はそれを受け入れる。
この法廷が終わる時、相手側が罪人席に変わるだろう。
俺達の座る席より高い位置に、中央に法廷議長と補佐、両サイドに貴族陪審員、有識者陪審員が座っている。
そしてその更に上、皇太子と第二王子、第三王子であるライオネル殿下が、更に上の最上部にジョシュア現国王が座っている。
……あれ?!
俺はそれを何の気なしに見上げてぎょっとした。
何故かジョシュア国王の後ろに控えるように、ボーンさんが立っているのだ。
小さいから見にくいが間違いない。
そして見えているので、座ってないで立っているんだと思う。
「疲れないのかな?ボーンさん??」
「そのうち座るさ。じじいだからね。」
思わずつぶやいた俺に、マダムがボソッと返した。
何でボーンさんがあんな所にいるんだ??
確かに国王とは旧知の仲なんだろうけど??
俺はマダムををちらりと見た。
確か「あっちの件」は今、ボーンさんが状況を見ているとさっきグレイさんと話していた。
それは国王に関わる事なのだろうか??
それとも国王も1枚咬んでいると言う事なのだろうか?
俺が見ているのに気づいているはずなのに、マダムは涼しい顔で前を向いている。
マダムは何をしようとしているんだろう??
俺には全くわからなかった。
俺達の向かい側には、古参貴族議員達がふんぞり返って座っている。
昔からの悪知恵を脈々と受け継ぐ古狸と古狐達だとガスパーは言っていた。
見るからに古株な爺さん達に、これから俺と共に若手のガスパーが喧嘩を売る。
俺は爺さん達の実力も何も知らないが、ここに呑気にやってきて偉そうに座っているだけおめでたい頭をしているのは知っている。
だから長い眠りから目を覚ました蛇蝎に敵うことは決してないだろう。
彼らの仲間の中でも、それなりにキレるやつはここには来ていないとガスパーは言っていた。
今回の裁判に関して、薄々感づくものがあったのだろう。
状況によってはすぐに逃げるつもりなのだ。
だがその部分ももう解決済みだ。
ガスパーが宰相のルードビッヒおじさんと、国軍トップのアーチーさんことニール総元帥にあの証拠を前もって見せたのはその為だ。
どこにだろうと逃亡させるつもりはない。
彼らがギル達を監視したように、この場にいない彼らの仲間は、毒蛇と大鷹の目の中に捕らえられている。
法廷は傍聴席が開放され、その中にギル達の姿が見える。
ウィルがいないのは、午後に証言台に立つための手続きに行っているんだろう。
顔ぐらい見たかったのに少し残念だ。
全ての準備が整い法廷議長が開廷を告げるまでの長いような短い時間の中で、ガスパーは目を閉じている。
幼い時のトラウマから、ずっと隠してきた本当の自分を曝け出すのだ。
この僅かな時間の中に、思うところはたくさんあるのだろう。
ガスパーは才能があるのだから、それをもっと表に出すべきだとは思っていたが、そのきっかけが俺の裁判というのはなんか申し訳ない気がした。
「……もっといいタイミングだってあっただろうよ……。こんなところじゃなくてさ~。」
ガスパーの決断をありがたいと思いつつ、思わずぼやく。
俺の横で、ガスパーは目を開けないまま言った。
「それって俺の事言ってんのか??」
「そうだけど??」
「確かにいきなり再審裁判の罪人席から始まるとは思わなかったな。」
「だろ??」
「だがそれがどこか、いつかなんて俺にはどうでもいい事なんだよ。俺はお前が牙を必要とする時が来たら、それを使うと決めていた。これは俺の意思だ。お前にだって文句は言わせねぇ。」
ガスパーはそう言って目を開いた。
その目は冷たく、俺はガスパーを見て初めて蛇だと思った。
ガスパーはそれまで、そう見えた事は一度もなかった。
どんなに悪態をついていてもそうは見えなかった。
だが今はそれが見える。
蛇には色々な側面がある。
死と再生、知識と知恵、生殖と繁栄、水と金、狡猾と毒、冷血と冷酷、そして神の使いでもあるし邪神とも言われる。
ガスパーの中のそれは、いったいどんな顔を持っているのだろう?
少なくとも、知恵と知識は疑い無く持っているだろう。
けれど、それが他人からどう見えようとどうでもいい事だ。
ガスパーは今、長い眠りから覚めてここにいる。
俺の横に確かにいるんだ。
「……頼りにしてる。」
「任せとけ。この俺がやると決めたからには、絶対に負けさせねぇよ。」
ガスパーがそう言った時、法廷議長が開廷を宣言した。
ざわめいていた議会室に静寂と緊張が落ちる。
さぁ、やってやろう。
俺とガスパーは、ちらりと視線を合わせた。
まず、以前に決まった俺の罪状やら何やらが読み上げられた。
続いて第二王子派の代表が、いかに俺が勝手な振る舞いをして、友好国である南の国に非礼を行い、軍に損害を与えたかを述べた。
それに対してガスパーが、友好訪問の際にライオネル殿下がどの様な扱いを受け、訪問中止を決定したか、そして問題の南軍との交戦が、帰路についた一団を捕らえる為に待ち伏せされた結果である事を述べた。
「我々は言われている様に、相手側を挑発し、無礼を働き、それを抑える為に南軍が出陣してきた訳ではない事を主張します。我々は何もせず、静かに南の国を後にしようとしました。メートランド子爵の仰った様に我々が宮廷内で暴れ、非礼を働いた上で南国王宮を離れたのであれば、王宮内にも被害があったはずです。当然、そのような被害があったのならば、修理費用などの請求があるはずです。しかしそのような報告はありません。」
「それは我々が国に申請される前に対応したからだ!」
「でしたらそれはどの程度の請求でしたか?どこが破壊され、どのような保証金をお渡しになったのですか?」
「そんな詳しい事は知らぬっ!!我々は南の国との友好を保つ為に、言われた額を見舞金としてお渡ししたのだ!!」
「何にいくら払うかの請求書もなく、言われた額をお渡しになったと?」
「そうだ!」
「議長!我々はその際、金銭の受け渡し時に取り交わした書類の提出を求めます。」
「メートランド、その書類を見せなさい。」
「それは……その……お怒りをお鎮めする為に、急いでおりまして……。」
「では、正式な書類を残さずに、金銭のやり取りをなさったと?その場合、国際条例に反した他国に対する賄賂とみなされますが、いかがお考えですか??」
「それは違う!!我々は国の為を思って!!もしそうしなかったら!南の国はすぐにでも攻めて来たかも知れぬのだぞっ!それを賄賂とは!口を慎めっ!!」
「では!その際用いた金銭はどこから調達を?!戦争を未然に防ぐ為に、何もなく金品を差し出す事は緊急処置として致し方なかったとしましても!!それを工面した帳簿は残っているはずです!!議長!彼らの言う、南国王宮の被害に対する見舞金の証明として、それを工面した帳簿の提出を求めます!!」
うわ~。
ガスパーのヤツ、畳み掛けるな~。
と言うか、何でその程度の偽物の書類とかも用意してない訳??
俺が逃げてからかなりの時間があったよね??
再審裁判が起こる事なんてわかりきってただろうに、何でその対策をしてないんだよ??
適当な事ばっか並べといて、どこを突かれそうだとか何も考えてなかったのか??
何でデタラメを言うにしたって、ボロが出ないように準備しないんだ??
確かにガスパーは優れてるけどさ??
何なのこの茶番??
俺らを馬鹿にしてんのか??
多分、こいつは偽物の書類を出されたらどうするかまで考えてあったと思うぞ??
何と言われようと揺るがず正論で攻めてくるガスパーに、爺どもはタジタジになってる。
大方、自分の家の権力を振りかざして、白も黒と言わせてのさばって来たんだろうな~。
だから嘘を吐くにしても、力押し一本で細部まで粗がないようになんてしてこなかったんだろう……。
そしていくら代々宰相を出すラティーマー家の人間だとしても、無名の若造だから何とか脅せばイケると思ったんだろうな~。
それがまさか、こんな大蛇が潜んでいるとは思わなかっただろうな~。
今のガスパーは、音もなく忍び寄ってその場に佇み、右往左往するネズミを静かに見下ろす大蛇だ。
しかもその口はまだ閉じられていて、牙を見せてはいない。
なのにこの有様って、いくら何でも酷すぎないか?!
大丈夫なのか?!中央王国政府?!
こんなのばっかりしか中枢にいないとか、ヤバすぎだろ?!
そりゃグレゴリウスに付け込まれるわ……。
とにかくこんな感じでガスパーの独壇場となり、貴族陪審員も有識者陪審員も、突然現れた切れ者の若者にぽかんと口を開けていた。
ガスパーが請求する証拠がない以上、向こうが主張する罪状は不確かなものになっていく。
何より、法廷の流れは完全にガスパーが握っていた。
まさに圧巻だ。
「では議長!我々の主張する待ち伏せにあった件について、証人3名からの話を聞きたいと思います。許可頂けますでしょうか?!」
完全に向こうの主張を黙らせた後、ガスパーは議長にそう言った。
「許可する。では補佐官、証人の準備をしてこちらに連れてくるように。」
議長の言葉に、補佐官の一人が法廷人と共に証人による証言の準備を始める。
ガスパーは俺の隣に戻ってきて座ると、ふぅと息を吐いた。
「お疲れさん。」
「拍子抜けだったわ。ここまで何にもしてないとか、アホだろ、あいつら。」
呆れた様に言ったガスパーの言葉に、俺はブッと吹いてしまった。
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