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第八章③「帰国裁判」
食べ物の味がわからなくなる時
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ノルの話は続いた。
その話を、今回の事件には関わりの薄い話ではあったが誰もが耳を傾けていた。
ノルにはその力があった。
研究者として誰よりも早く先の未来を現実のものとして捉え、その研究の必要性の重みを示唆する先見と説得力があった。
「少子化問題は簡単なものではありません。アズマ・サークの研究の重要性を示す為に、性的欲求の減退についての話をしましたが、それだけでは収まらない問題です。社会的地位や収入の減少や不安定化など、社会問題にも関係しています。そこから子供を持つ意欲の低下や、晩婚化等が起こっています。科学技術や魔術・魔法医療の発展の遅れも少子化には密接に繋がっています。少子化問題はまだ認識が薄い話ですが、近い将来我々の直面する避けられない危機です。ナグラロクで滅ぶはずだった我々は、また同じその問題を抱えるのなら、もしかしたら我々は滅ぶべきが自然の摂理なのかもしれません。私はそれを否定しようとは思わない。……失礼。話がそれましたね。とにかく、少子化問題はいずれ深刻になって私達は直面する事になるでしょう。アズマ・サークの研究は、その時の対策の一つの大きな鍵となるものです。だと言うのに、それをその第一人者を国外に売り飛ばそうなどと……。」
「バンクロフト博士、大変申し訳ございませんが、そろそろアズマ・サークの人となりについてのお話をまとめて頂いてもよろしいでしょうか?」
ノルが俺の戦犯以上の、南の国に引き渡される話までし始めたのでガスパーはさくっとそれを止めた。
何かノルの一人舞台のようだが、主導権はちゃっかりガスパーが握ってるんだな。
本当、ヤバイな、ガスパー……。
こんな怖い男だと思ってなかったわ。
ストップをもかけられて、ノルはバリバリの研究者から急に素に戻ってしまった。
「ええと……なんの話だっけ??」
「少子化にアズマ・サークの研究が役に立つお話をされていました。バンクロフト博士。」
「ああ、そうだったね。ありがとう。以上の通り、アズマ・サークの研究は近未来に直面するであろう問題の鍵となる研究です。国はもっと彼と彼の研究を大切にすべきです。これでよろしいかな?」
「はい。ありがとうございます。バンクロフト博士。」
「うん。では僕は帰るよ、サーク。君との共同研究の簡易型移動ゲートの研究がまだ残っているからね。裁判が終わったらすぐに連絡をくれ。僕一人だとどうにもならない箇所があるから、早く話し合いたい。それでは失礼。」
ノルはそう言うと、質疑応答などはすっかり頭にないようで、さっさと証言台を降りると法廷を出て行ってしまった。
思わず唖然として見送ってしまった法定人が慌てて後を追う。
法廷内も議長も、あまりの事に呆気に取られていた。
あ~あ、本当に研究の事しか頭にないな~。
ノルらしくて笑ってしまうが、周りは大変だな~。
思わず笑った俺にガスパーが目を向けた後、議長に言った。
「議長!以上を持ちまして、我々のアズマ・サークに関する人となりの弁論を終わります。」
「え……あ、ああ。質疑は……なさそうだな……。博士が帰られてしまったので、取りやめと言う事で……よろしいかな?……それではこれで午前を終了し、休廷とする!」
議長が午前の終了を告げた。
どっとざわめきが起こり、人々が動き出す。
緊張が凄かった分、緩んだ感覚は凄く疲れを感じた。
「……何なんだよ~ガスパー?あれは~??資料用意したって事は、お前、ノルが何話すかわかってたのかよ??」
俺は席に戻ってきて書類を整理するガスパーに言った。
「おそらくこの辺をついてくるだろうと思っただけだ。まさかあんな突っ込んだ話になるとは思わなかったけどな。」
「は~、今の所、全部、お前の手の上で転がされてんだな…全部が……。」
「そんな事もない。最後のお前と博士の共同研究なんて知らなかったし。」
「あ~あれね~。でもそれが何なんだよ~。」
「何って、お前……何気にあれが一番デカイぞ?少子化の話の方はその重要性に関してはわかる奴にしかわからないが、共同研究はわかりやすい。アズマ・サークは古代科学技術研究の第一人者のバンクロフト博士と何か画期的な発明について共同研究をしている。つまり金になる。お前を逃せば金が逃げるって印象を与えられたのは、かなり大きいぞ。」
「なるほどね。金の匂いのする奴は、助ける価値があるって事ね。」
「そういう事。笑うだろ?あれだけ価値のあるバンクロフト博士の少子化の話より、金になる商品開発の方が、世の中大事なんだぜ?」
「だな。」
ガスパーは皮肉たっぷりにそう言った。
ノルの話を聞く前から何を話すか予測でき、そしてその重要性も理解出来ている。
その上でそれが重視されず、ビッグネームの商品開発に俺が嚼んでいる事の方が重要視される事を、ガスパーはわかっていた。
こいつがやさぐれてるのは、本当、頭が良すぎるからなんだな、と思った。
考えるのを止めて生きていた時と、頭をフル回転させ始めた今とでは、ガスパーはどっちが幸せなんだろうと少し思った。
「ラーメン!ラーメンっ!!」
俺は控室で器を抱えてルンルンだった。
餃子も半チャーハンもついてる!
栄養バランスを考えてか、茹でた野菜にあんかけをかけた料理もあった。
ちょっとした点心とデザートもある。
何かラーメンセットというより、ミニフルコースだよな。
「本当にそれで良いのかい??」
グレイさんが首を傾げてそう言った。
昼食は好きなものを注文して届けてもらう形だった。
もちろん、国賓のマダムがいるから王宮の調理師達が作ってくれたものだ。
グレイさんは昨日のようにご馳走を持ってきてくれようとしたのだが、庶民には毎度毎度、ご馳走は重すぎる。
そろそろジャンクなものが食べたくなって、俺はラーメンを頼んだ。
「十分です!と言うか!フルコースじゃないですか~!生きててよかった~!!」
ラーメンを頼んだのに、さすがは王宮の調理場。
さっきも言ったが、ミニフルコースだ。
死ぬほど旨い。
「何か、旨そうだね?アタシもラーメンにすればよかったよ。」
マダムはそう言いながら、クリームパスタを食べている。
まぁ、パスタっつっても、マダムもフルコースになってるんだけどさ。
ガスパーは慣れた感じで魚料理がメインのランチフルコースを食べている。
やっぱ、何気にいいとこのお坊ちゃんだよな、ガスパー。
「何か……欲がないんだね……君たちは……。どんな贅沢な物でも、今なら食べれるのに……。」
「何言ってるんですか!王宮調理人が作ったラーメンとか!!めちゃくちゃ贅沢じゃないですかっ!!」
「まぁ、確かにそうだけどね。」
グレイさんは苦笑しているが楽しそうだった。
そしてそう言うグレイさんもサラダピザを食べているという。
「何だかんだ、高級な食事は肌に合わないんだよ。昔から。」
「ふ~ん。だからあの時も、ジョッシュの求婚を断ったのかい??」
ブホッと俺とガスパーが咽た。
グレイさんっ!サラッとなんつー話しし始めてるんだよ?!
俺とガスパーは居心地悪そうに視線を合わせた。
どうしよう?逃げ場がない……。
「だから何度も言ってんだろ?!好みじゃない。」
「やっぱり自分より強い男じゃないと駄目かい??ホロウみたいに。」
「ケホッ!!……ケホッケホッ!!」
「サ、サークっ?!大丈夫か?!」
麺を啜りそこねた俺を、ガスパーが大慌てで背中を擦る。
麺が喉に残ってるっ!!
スープが鼻に入って痛すぎるっ!!
本当に待って?!
せっかくの旨いラーメンの味がわからなくなるからっ!!
行儀が悪かったが仕方がなく、俺は子供みたいに喉に詰まった麺を手で引っ張り出した。
ガスパーがめちゃくちゃ引きながら、おしぼりとティッシュを渡してくれる。
俺が悪いんじゃない。
俺が悪いんじゃないんだよっ!!
「あんたねぇ……今更、蒸し返すんじゃぁないよ。30年も前の話を。ガキ共が狼狽えてんだろ。」
「そうかな?サーク達も知りたいかと思ったんだけど??」
話を振られた俺とガスパーは、瞬時に首を横に振り続けた。
知らなくて良いです。
多分それ、凄く怖い話だから!!
「グレイ、サークをイジメるのに、アタシをダシにするんじゃないよ。イジメたきゃ違う方法を取りな。」
マダムは気にもせずにそう言うと、パスタの残ったスープをパンに絡めて口に放り込んだ。
え??これ、俺をイジメようとしてたの??
グレイさんはニコニコしたまま、コーヒーを飲んでいる。
「知りたいかと思ったのにな~。30年前の若き王子と4人の英雄による冒険とめくるめく愛の軌跡を~。」
「いい加減におし。グレイ。次、言い出したら、ナイフて喉を割いて喋れなくした上で、千里眼で見えた事を全部公にするよ。」
「それは怖いな。」
くすくす笑うグレイさんはどこまで本当に怖がっているかわからず、俺とガスパーは顔を見合わせるばかりだった。
その話を、今回の事件には関わりの薄い話ではあったが誰もが耳を傾けていた。
ノルにはその力があった。
研究者として誰よりも早く先の未来を現実のものとして捉え、その研究の必要性の重みを示唆する先見と説得力があった。
「少子化問題は簡単なものではありません。アズマ・サークの研究の重要性を示す為に、性的欲求の減退についての話をしましたが、それだけでは収まらない問題です。社会的地位や収入の減少や不安定化など、社会問題にも関係しています。そこから子供を持つ意欲の低下や、晩婚化等が起こっています。科学技術や魔術・魔法医療の発展の遅れも少子化には密接に繋がっています。少子化問題はまだ認識が薄い話ですが、近い将来我々の直面する避けられない危機です。ナグラロクで滅ぶはずだった我々は、また同じその問題を抱えるのなら、もしかしたら我々は滅ぶべきが自然の摂理なのかもしれません。私はそれを否定しようとは思わない。……失礼。話がそれましたね。とにかく、少子化問題はいずれ深刻になって私達は直面する事になるでしょう。アズマ・サークの研究は、その時の対策の一つの大きな鍵となるものです。だと言うのに、それをその第一人者を国外に売り飛ばそうなどと……。」
「バンクロフト博士、大変申し訳ございませんが、そろそろアズマ・サークの人となりについてのお話をまとめて頂いてもよろしいでしょうか?」
ノルが俺の戦犯以上の、南の国に引き渡される話までし始めたのでガスパーはさくっとそれを止めた。
何かノルの一人舞台のようだが、主導権はちゃっかりガスパーが握ってるんだな。
本当、ヤバイな、ガスパー……。
こんな怖い男だと思ってなかったわ。
ストップをもかけられて、ノルはバリバリの研究者から急に素に戻ってしまった。
「ええと……なんの話だっけ??」
「少子化にアズマ・サークの研究が役に立つお話をされていました。バンクロフト博士。」
「ああ、そうだったね。ありがとう。以上の通り、アズマ・サークの研究は近未来に直面するであろう問題の鍵となる研究です。国はもっと彼と彼の研究を大切にすべきです。これでよろしいかな?」
「はい。ありがとうございます。バンクロフト博士。」
「うん。では僕は帰るよ、サーク。君との共同研究の簡易型移動ゲートの研究がまだ残っているからね。裁判が終わったらすぐに連絡をくれ。僕一人だとどうにもならない箇所があるから、早く話し合いたい。それでは失礼。」
ノルはそう言うと、質疑応答などはすっかり頭にないようで、さっさと証言台を降りると法廷を出て行ってしまった。
思わず唖然として見送ってしまった法定人が慌てて後を追う。
法廷内も議長も、あまりの事に呆気に取られていた。
あ~あ、本当に研究の事しか頭にないな~。
ノルらしくて笑ってしまうが、周りは大変だな~。
思わず笑った俺にガスパーが目を向けた後、議長に言った。
「議長!以上を持ちまして、我々のアズマ・サークに関する人となりの弁論を終わります。」
「え……あ、ああ。質疑は……なさそうだな……。博士が帰られてしまったので、取りやめと言う事で……よろしいかな?……それではこれで午前を終了し、休廷とする!」
議長が午前の終了を告げた。
どっとざわめきが起こり、人々が動き出す。
緊張が凄かった分、緩んだ感覚は凄く疲れを感じた。
「……何なんだよ~ガスパー?あれは~??資料用意したって事は、お前、ノルが何話すかわかってたのかよ??」
俺は席に戻ってきて書類を整理するガスパーに言った。
「おそらくこの辺をついてくるだろうと思っただけだ。まさかあんな突っ込んだ話になるとは思わなかったけどな。」
「は~、今の所、全部、お前の手の上で転がされてんだな…全部が……。」
「そんな事もない。最後のお前と博士の共同研究なんて知らなかったし。」
「あ~あれね~。でもそれが何なんだよ~。」
「何って、お前……何気にあれが一番デカイぞ?少子化の話の方はその重要性に関してはわかる奴にしかわからないが、共同研究はわかりやすい。アズマ・サークは古代科学技術研究の第一人者のバンクロフト博士と何か画期的な発明について共同研究をしている。つまり金になる。お前を逃せば金が逃げるって印象を与えられたのは、かなり大きいぞ。」
「なるほどね。金の匂いのする奴は、助ける価値があるって事ね。」
「そういう事。笑うだろ?あれだけ価値のあるバンクロフト博士の少子化の話より、金になる商品開発の方が、世の中大事なんだぜ?」
「だな。」
ガスパーは皮肉たっぷりにそう言った。
ノルの話を聞く前から何を話すか予測でき、そしてその重要性も理解出来ている。
その上でそれが重視されず、ビッグネームの商品開発に俺が嚼んでいる事の方が重要視される事を、ガスパーはわかっていた。
こいつがやさぐれてるのは、本当、頭が良すぎるからなんだな、と思った。
考えるのを止めて生きていた時と、頭をフル回転させ始めた今とでは、ガスパーはどっちが幸せなんだろうと少し思った。
「ラーメン!ラーメンっ!!」
俺は控室で器を抱えてルンルンだった。
餃子も半チャーハンもついてる!
栄養バランスを考えてか、茹でた野菜にあんかけをかけた料理もあった。
ちょっとした点心とデザートもある。
何かラーメンセットというより、ミニフルコースだよな。
「本当にそれで良いのかい??」
グレイさんが首を傾げてそう言った。
昼食は好きなものを注文して届けてもらう形だった。
もちろん、国賓のマダムがいるから王宮の調理師達が作ってくれたものだ。
グレイさんは昨日のようにご馳走を持ってきてくれようとしたのだが、庶民には毎度毎度、ご馳走は重すぎる。
そろそろジャンクなものが食べたくなって、俺はラーメンを頼んだ。
「十分です!と言うか!フルコースじゃないですか~!生きててよかった~!!」
ラーメンを頼んだのに、さすがは王宮の調理場。
さっきも言ったが、ミニフルコースだ。
死ぬほど旨い。
「何か、旨そうだね?アタシもラーメンにすればよかったよ。」
マダムはそう言いながら、クリームパスタを食べている。
まぁ、パスタっつっても、マダムもフルコースになってるんだけどさ。
ガスパーは慣れた感じで魚料理がメインのランチフルコースを食べている。
やっぱ、何気にいいとこのお坊ちゃんだよな、ガスパー。
「何か……欲がないんだね……君たちは……。どんな贅沢な物でも、今なら食べれるのに……。」
「何言ってるんですか!王宮調理人が作ったラーメンとか!!めちゃくちゃ贅沢じゃないですかっ!!」
「まぁ、確かにそうだけどね。」
グレイさんは苦笑しているが楽しそうだった。
そしてそう言うグレイさんもサラダピザを食べているという。
「何だかんだ、高級な食事は肌に合わないんだよ。昔から。」
「ふ~ん。だからあの時も、ジョッシュの求婚を断ったのかい??」
ブホッと俺とガスパーが咽た。
グレイさんっ!サラッとなんつー話しし始めてるんだよ?!
俺とガスパーは居心地悪そうに視線を合わせた。
どうしよう?逃げ場がない……。
「だから何度も言ってんだろ?!好みじゃない。」
「やっぱり自分より強い男じゃないと駄目かい??ホロウみたいに。」
「ケホッ!!……ケホッケホッ!!」
「サ、サークっ?!大丈夫か?!」
麺を啜りそこねた俺を、ガスパーが大慌てで背中を擦る。
麺が喉に残ってるっ!!
スープが鼻に入って痛すぎるっ!!
本当に待って?!
せっかくの旨いラーメンの味がわからなくなるからっ!!
行儀が悪かったが仕方がなく、俺は子供みたいに喉に詰まった麺を手で引っ張り出した。
ガスパーがめちゃくちゃ引きながら、おしぼりとティッシュを渡してくれる。
俺が悪いんじゃない。
俺が悪いんじゃないんだよっ!!
「あんたねぇ……今更、蒸し返すんじゃぁないよ。30年も前の話を。ガキ共が狼狽えてんだろ。」
「そうかな?サーク達も知りたいかと思ったんだけど??」
話を振られた俺とガスパーは、瞬時に首を横に振り続けた。
知らなくて良いです。
多分それ、凄く怖い話だから!!
「グレイ、サークをイジメるのに、アタシをダシにするんじゃないよ。イジメたきゃ違う方法を取りな。」
マダムは気にもせずにそう言うと、パスタの残ったスープをパンに絡めて口に放り込んだ。
え??これ、俺をイジメようとしてたの??
グレイさんはニコニコしたまま、コーヒーを飲んでいる。
「知りたいかと思ったのにな~。30年前の若き王子と4人の英雄による冒険とめくるめく愛の軌跡を~。」
「いい加減におし。グレイ。次、言い出したら、ナイフて喉を割いて喋れなくした上で、千里眼で見えた事を全部公にするよ。」
「それは怖いな。」
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