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第八章③「帰国裁判」
悪夢の再来
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恐ろしい量の魔力に包まれた法廷内は、空気というか、建物というか、空間そのものがピシピシ音を立てている。
魔力のない人間でも、何かに圧倒される感覚がわかるほどの魔力だ。
こんな限られた場所でガンガンに魔力を出すのは本来危険なのだが、そこを猫耳姉弟が保護して事なきを得ている。
いやなんだ、流石は大魔法師寡黙なるエアーデの弟子と言うのか、これほどの状況をサーニャさんとアレックの猫耳姉弟は涼しい顔で片手間に保護している。
本来二人がするのはボーンさんとフレデリカさんの補佐だからだ。
それだって凄い事だ。
かたや大魔法師の、かたや伝説の女帝魔術師の補佐をするのだ、並大抵の魔術師や魔法師では不可能だ。
それなのに、その上、場の保護までしている。
保護は関係ないものを魔力の影響から守るものだから魔法でも魔術でもさほど変わるものではないが、今回、魔術と魔法が同時に使われるからどちらの保護もかけ、また、どちらかの集中の穴を補い合う為に二重がけしているのだろう。
と言うか、そこまでの状況で行われる事って、本当何なの?!
俺に何かデカイこと任せようとしてるなら、ちゃんと教えてよっ!!
そうこうしているうちに、頭上に魔法陣が白く輝いた。
魔法でも魔法陣って使うんだ?!
いや、魔法陣って言うくらいだから本来は魔法で使うものなのかな??等とよくわからない事を考える。
天井を覆うような魔法陣からはキラキラしたものが降ってきた。
「……え??雪??」
それは光り輝く、冷たくない雪。
その雪の結晶の一つ一つが力を持った魔法陣の一種だった。
「これって……。」
浄化の魔法だ。
ボーンさんは壮大な浄化魔法を使っているのだ。
しんしんと光る浄化の雪が法廷内に降り注ぐ。
何て綺麗な魔法だろう?
雪は白い、白く白く全てを飲み込んでいく。
それは全てを浄化するのに似ていた。
「………う……うう…っ!!」
光る雪がひときわ輝いて、ある場所に集まり始めた。
その場に新しい魔法陣が生まれて光り輝く。
「ランスっ!ランス!しっかりしろっ!!」
それは皇太子を人質に取っていた第二王子の所だった。
突然ナイフを落とし、苦しそうに額を抑えている。
それを王太子が抱きかかえて支えている。
「ガブリエル王太子っ!!離れて下さいっ!!早くっ!!」
「しかしランスがっ!!」
「人質にされたのをお忘れですかっ?!お早くっ!!」
王太子の抵抗虚しく、第二王子から剥がされてガブリエル王太子はランスロット第二王子と距離を取らされる。
その間も第二王子は苦しみ続け、テラス席の手すりに捕まって唸り続けている。
第二王子を囲むように新たに現れた魔法陣は、下から上に光の筋が伸びて、まるで月明かりが差し込む小窓の下にいるように見えた。
「うぅ……ううううぅ……ぁぁ……ぎっ……ぎゃあああぁぁぁっっ!!」
そんな幻想的な魔法とは裏腹に、とうとう第二王子が叫び声を上げる。
その声は何かの断末魔のようで、聞いている人間全てをゾッとさせた。
恐ろしいその咆哮に誰一人動けなくなってしまった。
「ランスっ!!しっかりしろっ!!離せっ!ランスが苦しんでいるっ!!」
けれど気丈というか何と言うか、王太子だけは必死になってランスロット第二王子に寄り添おうとしていた。
皆が必死に止めているが、大丈夫だろうか??
叫び声が続く中、光の蔦がゆるゆると第二王子に巻き付き始めた。
その体が次第に蔦に飲み込まれて見えなくなっていく。
「やめろっ!!ランスが死んでしまうっ!!」
ガブリエル王太子が発狂して叫んでいる。
う~ん、悲痛な叫び声も美声過ぎて格好いい……。
「……ったく!うっせぇ王子様だな?!死なさない為にやってんだっつーのっ!!」
最上階のテラス席でボーンさんがブツブツ文句を言っている。
口では悪態をついているが、さっきの口止めの魔法の影響もあってフラフラだし、すぐにでも倒れてしまいそうに見えた。
そんなボーンさんが、キッと俺を見た。
口では何も言わなかったが、後を頼むと強く訴えている。
ボロボロのボーンさんに俺は黙って頷く。
何が起こるのかはわからないが、ボーンさんがここまでしているんだ。
ツンツンのボーンさんが俺を頼ってくれたのだから、応えない訳にはいかない。
俺は何が起こるかはわからなかったが、自分の中の魔力を練り始める。
第二王子を包み込んだ光る蔦は、やがて大きな一つの植物のようになった。
何かを第二王子から吸い上げて成長し、やがて大きな花の蕾をつけていた。
あまりに綺麗な魔法なので、敵味方関係なくそれをただ見上げている。
その花がゆっくりと花弁を開こうとしていた。
「魔力のあるやつは全員構えなっ!!来るよっ!!」
その夢のような光景に反し、マダムの声が鋭く響いた。
それにビクッとした冒険者達は身構える。
何故か敵の魔術師達にも、慌てて指輪などを返していた。
何が起こる訳??
本当……。
俺は魔力を練りながら、不安しかなかった。
美しい魔法の花がゆっくりと花開く。
「ギィギャアアアァァァッ!!」
花が開くと同時に、恐ろしい叫び声が法廷内に響いた。
光り輝く美しい花の中から、どす黒い……本当にどす黒い、禍々しい何かが出てきたのだ。
「……フレデリカッ!!」
「わかってるっ!!」
ボーンさんがぶっ倒れながら最後の力を振り絞ってフレデリカさんに呼びかけた。
フレデリカさんがその身に宿す全魔力を使ってそれを結界内に封じ込めた。
さすがのフレデリカさんも顔が引きつり、汗を流している。
嘘だろ……。
俺はその禍々しい何かから目を反らすことができず、目を見開いていた。
自分の手がカタカタと震えているのがわかる。
結界内で暴れるそれから漏れ出すものを、アレックが浄化してサーニャさんが空間を保護している。
「ぼさっとすんじゃないよっ!野郎どもっ!!魔術師は全員!結界補助っ!!魔法師は漏れ出すやつをどんどん浄化しなっ!!」
マダムのカツで我にかえり、敵味方関係なく、その指示に従った。
「遅れてすみませんっ!!クーデターの押さえ込みに時間がかかっちゃってっ!!」
傍聴席側のドアがバンッと開くと、師匠と宮廷魔術師の皆さんがなだれ込んできた。
そして直ぐに師匠が指示を出し、結界補助を始める。
いつの間にか審議場の出入り口から宮廷魔法師達が入ってきて浄化を始める。
テラス席はロイヤルシールドの面々が並び、王族の保護と結界補助を始めていた。
いやいやいやいやいや?!
待ってくれ?!
皆、結界補助して、漏れ出したものを浄化してるけどさ?!
これ?!
本体、どうすんの?!
俺はただただ青くなって後退った。
これは……。
呪いだ……。
限りなく竜の血の呪いに近いものだ……。
結界の中で暴れ狂う禍々しいものを見つめながら、俺は冷や汗を流した。
もう二度と前には立ちたくないと思ったそれ。
ヴィオールとは違い、竜の血の呪い程異常な力ではないが、完全に呪いに変わっていて意志のない純粋な負の塊だ。
……は??
まさかこれを俺にどうにかしろって?!
冗談じゃないぞっ?!
できるわけ無いだろ!!
ヴィオールの時はウィルがかかってたから、なりふり構わず必死だったんだよ!!
いくら竜の血の呪いよりも弱いってったって、ちょっと弱い程度だぞ?!
ほぼ竜の血の呪いと変わんないから!!
これ!物凄いんだぞ?!
おそらく竜に近いもの、神格化に近いシーサーペントとかガーゴイルとかオルトロスとか、そのレベルの魔物を呪いにしたものだ。
何でそんな呪い作るんだよ!!
悪趣味すぎるぞ!おいっ!!
「……何やってんだい?サーク?出番だろ??」
マダムがけろりとした顔で言った。
何その!!
さっさと風呂入りな的なノリは?!
呪いだよ?!かなりヤバイ呪いなんだよ?!
何でそんなノリで俺にどうにかしてこいって言うの?!
「あんた、呪いを壊すのは得意だろ?!」
「得意じゃないですっ!!仕方なくやってただけですっ!!」
「なら、今回も仕方ないから壊しといで。あんたが壊さなきゃ、皆に被害が出るよ??」
そう言って、マダムはクイッと傍聴席を親指でさした。
冒険者の仲間、宮廷魔術師の皆さん、そしてウィルや仲間の皆……。
確かに、誰かがここでこの呪いをどうにかしないと被害が出ますけど……。
だから待って?!
これ?!竜の血の呪いに近いものなんだよ?!
壊せるかなんてわからないよっ!!
ジリジリと葛藤している俺の首根っこを、誰かが掴んだ。
「……ヘっ?!」
「まどろっこしいなぁ。」
振り返ると、にっこり笑ったグレイさんが立っていた。
俺は恐ろしくなって半泣きになる。
「……グ、グレイさん??」
「ん~?やっぱり君はこれぐらいの事でないと泣いてくれないんだねぇ~??」
「いやいやいやいやっ!!今!泣き顔、関係ないからっ!!本当、勘弁してくださいっ!!」
「ふふふ、半泣きになってて可愛いな~。あの中に投げ入れたら、本当に泣いちゃいそうだね??」
にこにこと怖い事を言う。
いやもう、すでにその言葉だけで泣きそうです……。
とても嬉しそうに笑って、グレイさんはひょいと俺を持ち上げた。
え??
見かけによらず怪力なんですね??
グレイさん??
俺はサーッと血の気が引いて、涙目で訴えた。
しかしそれはグレイさんを助長するに過ぎなかった。
「いやぁ、久々に萌えるね~。その泣き顔~。ゾクゾクするよ~。さぁ!頑張って泣き喚いてきておくれ!!」
るんるんと上機嫌なグレイさんは、そのまま俺を結界に向けてぶん投げた。
嘘だろ!?どこにそんな怪力隠してたの?!グレイさん?!
いとも簡単に持ち上げられて投げ飛ばされ、俺は目の前が真っ暗になった。
「嫌だあああぁぁっ!!助けて~っ!!」
泣き叫ぶ俺を、とても嬉しそうにグレイさんが見ている。
マダムは少し申し訳ないような困ったような顔で手を振っていた。
やはり俺がやるしかないのか……。
そうなのか……。
あぁ、短い人生だったな。
せめてウィルと結婚式上げてから死にたかった……。
絶望に打ちひしがれながら、俺は無理やり結界の中にぶち込まれていった。
「ん~、今日はいい泣き顔が拝めそうだ~。」
「本当、あんたって鬼畜だね……。」
グレイさんと並んだマダムは、そんな会話をしていた。
魔力のない人間でも、何かに圧倒される感覚がわかるほどの魔力だ。
こんな限られた場所でガンガンに魔力を出すのは本来危険なのだが、そこを猫耳姉弟が保護して事なきを得ている。
いやなんだ、流石は大魔法師寡黙なるエアーデの弟子と言うのか、これほどの状況をサーニャさんとアレックの猫耳姉弟は涼しい顔で片手間に保護している。
本来二人がするのはボーンさんとフレデリカさんの補佐だからだ。
それだって凄い事だ。
かたや大魔法師の、かたや伝説の女帝魔術師の補佐をするのだ、並大抵の魔術師や魔法師では不可能だ。
それなのに、その上、場の保護までしている。
保護は関係ないものを魔力の影響から守るものだから魔法でも魔術でもさほど変わるものではないが、今回、魔術と魔法が同時に使われるからどちらの保護もかけ、また、どちらかの集中の穴を補い合う為に二重がけしているのだろう。
と言うか、そこまでの状況で行われる事って、本当何なの?!
俺に何かデカイこと任せようとしてるなら、ちゃんと教えてよっ!!
そうこうしているうちに、頭上に魔法陣が白く輝いた。
魔法でも魔法陣って使うんだ?!
いや、魔法陣って言うくらいだから本来は魔法で使うものなのかな??等とよくわからない事を考える。
天井を覆うような魔法陣からはキラキラしたものが降ってきた。
「……え??雪??」
それは光り輝く、冷たくない雪。
その雪の結晶の一つ一つが力を持った魔法陣の一種だった。
「これって……。」
浄化の魔法だ。
ボーンさんは壮大な浄化魔法を使っているのだ。
しんしんと光る浄化の雪が法廷内に降り注ぐ。
何て綺麗な魔法だろう?
雪は白い、白く白く全てを飲み込んでいく。
それは全てを浄化するのに似ていた。
「………う……うう…っ!!」
光る雪がひときわ輝いて、ある場所に集まり始めた。
その場に新しい魔法陣が生まれて光り輝く。
「ランスっ!ランス!しっかりしろっ!!」
それは皇太子を人質に取っていた第二王子の所だった。
突然ナイフを落とし、苦しそうに額を抑えている。
それを王太子が抱きかかえて支えている。
「ガブリエル王太子っ!!離れて下さいっ!!早くっ!!」
「しかしランスがっ!!」
「人質にされたのをお忘れですかっ?!お早くっ!!」
王太子の抵抗虚しく、第二王子から剥がされてガブリエル王太子はランスロット第二王子と距離を取らされる。
その間も第二王子は苦しみ続け、テラス席の手すりに捕まって唸り続けている。
第二王子を囲むように新たに現れた魔法陣は、下から上に光の筋が伸びて、まるで月明かりが差し込む小窓の下にいるように見えた。
「うぅ……ううううぅ……ぁぁ……ぎっ……ぎゃあああぁぁぁっっ!!」
そんな幻想的な魔法とは裏腹に、とうとう第二王子が叫び声を上げる。
その声は何かの断末魔のようで、聞いている人間全てをゾッとさせた。
恐ろしいその咆哮に誰一人動けなくなってしまった。
「ランスっ!!しっかりしろっ!!離せっ!ランスが苦しんでいるっ!!」
けれど気丈というか何と言うか、王太子だけは必死になってランスロット第二王子に寄り添おうとしていた。
皆が必死に止めているが、大丈夫だろうか??
叫び声が続く中、光の蔦がゆるゆると第二王子に巻き付き始めた。
その体が次第に蔦に飲み込まれて見えなくなっていく。
「やめろっ!!ランスが死んでしまうっ!!」
ガブリエル王太子が発狂して叫んでいる。
う~ん、悲痛な叫び声も美声過ぎて格好いい……。
「……ったく!うっせぇ王子様だな?!死なさない為にやってんだっつーのっ!!」
最上階のテラス席でボーンさんがブツブツ文句を言っている。
口では悪態をついているが、さっきの口止めの魔法の影響もあってフラフラだし、すぐにでも倒れてしまいそうに見えた。
そんなボーンさんが、キッと俺を見た。
口では何も言わなかったが、後を頼むと強く訴えている。
ボロボロのボーンさんに俺は黙って頷く。
何が起こるのかはわからないが、ボーンさんがここまでしているんだ。
ツンツンのボーンさんが俺を頼ってくれたのだから、応えない訳にはいかない。
俺は何が起こるかはわからなかったが、自分の中の魔力を練り始める。
第二王子を包み込んだ光る蔦は、やがて大きな一つの植物のようになった。
何かを第二王子から吸い上げて成長し、やがて大きな花の蕾をつけていた。
あまりに綺麗な魔法なので、敵味方関係なくそれをただ見上げている。
その花がゆっくりと花弁を開こうとしていた。
「魔力のあるやつは全員構えなっ!!来るよっ!!」
その夢のような光景に反し、マダムの声が鋭く響いた。
それにビクッとした冒険者達は身構える。
何故か敵の魔術師達にも、慌てて指輪などを返していた。
何が起こる訳??
本当……。
俺は魔力を練りながら、不安しかなかった。
美しい魔法の花がゆっくりと花開く。
「ギィギャアアアァァァッ!!」
花が開くと同時に、恐ろしい叫び声が法廷内に響いた。
光り輝く美しい花の中から、どす黒い……本当にどす黒い、禍々しい何かが出てきたのだ。
「……フレデリカッ!!」
「わかってるっ!!」
ボーンさんがぶっ倒れながら最後の力を振り絞ってフレデリカさんに呼びかけた。
フレデリカさんがその身に宿す全魔力を使ってそれを結界内に封じ込めた。
さすがのフレデリカさんも顔が引きつり、汗を流している。
嘘だろ……。
俺はその禍々しい何かから目を反らすことができず、目を見開いていた。
自分の手がカタカタと震えているのがわかる。
結界内で暴れるそれから漏れ出すものを、アレックが浄化してサーニャさんが空間を保護している。
「ぼさっとすんじゃないよっ!野郎どもっ!!魔術師は全員!結界補助っ!!魔法師は漏れ出すやつをどんどん浄化しなっ!!」
マダムのカツで我にかえり、敵味方関係なく、その指示に従った。
「遅れてすみませんっ!!クーデターの押さえ込みに時間がかかっちゃってっ!!」
傍聴席側のドアがバンッと開くと、師匠と宮廷魔術師の皆さんがなだれ込んできた。
そして直ぐに師匠が指示を出し、結界補助を始める。
いつの間にか審議場の出入り口から宮廷魔法師達が入ってきて浄化を始める。
テラス席はロイヤルシールドの面々が並び、王族の保護と結界補助を始めていた。
いやいやいやいやいや?!
待ってくれ?!
皆、結界補助して、漏れ出したものを浄化してるけどさ?!
これ?!
本体、どうすんの?!
俺はただただ青くなって後退った。
これは……。
呪いだ……。
限りなく竜の血の呪いに近いものだ……。
結界の中で暴れ狂う禍々しいものを見つめながら、俺は冷や汗を流した。
もう二度と前には立ちたくないと思ったそれ。
ヴィオールとは違い、竜の血の呪い程異常な力ではないが、完全に呪いに変わっていて意志のない純粋な負の塊だ。
……は??
まさかこれを俺にどうにかしろって?!
冗談じゃないぞっ?!
できるわけ無いだろ!!
ヴィオールの時はウィルがかかってたから、なりふり構わず必死だったんだよ!!
いくら竜の血の呪いよりも弱いってったって、ちょっと弱い程度だぞ?!
ほぼ竜の血の呪いと変わんないから!!
これ!物凄いんだぞ?!
おそらく竜に近いもの、神格化に近いシーサーペントとかガーゴイルとかオルトロスとか、そのレベルの魔物を呪いにしたものだ。
何でそんな呪い作るんだよ!!
悪趣味すぎるぞ!おいっ!!
「……何やってんだい?サーク?出番だろ??」
マダムがけろりとした顔で言った。
何その!!
さっさと風呂入りな的なノリは?!
呪いだよ?!かなりヤバイ呪いなんだよ?!
何でそんなノリで俺にどうにかしてこいって言うの?!
「あんた、呪いを壊すのは得意だろ?!」
「得意じゃないですっ!!仕方なくやってただけですっ!!」
「なら、今回も仕方ないから壊しといで。あんたが壊さなきゃ、皆に被害が出るよ??」
そう言って、マダムはクイッと傍聴席を親指でさした。
冒険者の仲間、宮廷魔術師の皆さん、そしてウィルや仲間の皆……。
確かに、誰かがここでこの呪いをどうにかしないと被害が出ますけど……。
だから待って?!
これ?!竜の血の呪いに近いものなんだよ?!
壊せるかなんてわからないよっ!!
ジリジリと葛藤している俺の首根っこを、誰かが掴んだ。
「……ヘっ?!」
「まどろっこしいなぁ。」
振り返ると、にっこり笑ったグレイさんが立っていた。
俺は恐ろしくなって半泣きになる。
「……グ、グレイさん??」
「ん~?やっぱり君はこれぐらいの事でないと泣いてくれないんだねぇ~??」
「いやいやいやいやっ!!今!泣き顔、関係ないからっ!!本当、勘弁してくださいっ!!」
「ふふふ、半泣きになってて可愛いな~。あの中に投げ入れたら、本当に泣いちゃいそうだね??」
にこにこと怖い事を言う。
いやもう、すでにその言葉だけで泣きそうです……。
とても嬉しそうに笑って、グレイさんはひょいと俺を持ち上げた。
え??
見かけによらず怪力なんですね??
グレイさん??
俺はサーッと血の気が引いて、涙目で訴えた。
しかしそれはグレイさんを助長するに過ぎなかった。
「いやぁ、久々に萌えるね~。その泣き顔~。ゾクゾクするよ~。さぁ!頑張って泣き喚いてきておくれ!!」
るんるんと上機嫌なグレイさんは、そのまま俺を結界に向けてぶん投げた。
嘘だろ!?どこにそんな怪力隠してたの?!グレイさん?!
いとも簡単に持ち上げられて投げ飛ばされ、俺は目の前が真っ暗になった。
「嫌だあああぁぁっ!!助けて~っ!!」
泣き叫ぶ俺を、とても嬉しそうにグレイさんが見ている。
マダムは少し申し訳ないような困ったような顔で手を振っていた。
やはり俺がやるしかないのか……。
そうなのか……。
あぁ、短い人生だったな。
せめてウィルと結婚式上げてから死にたかった……。
絶望に打ちひしがれながら、俺は無理やり結界の中にぶち込まれていった。
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