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第一章「外壁警備編」
不感症の魔術兵
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人とは違う。
それはもう、どうすることも出来ない事だと諦めていた。
人とは違う事はつまり、出来損ないなのだと。
人と同じようにしようとしても、それが出来ない。
欠陥品なのだから仕方がない。
おかしい事に気づいたのは、年頃になった時だ。
皆が誰が好きだなんだ言い始めた。
はじめは気にならなかったし、特に好きな人などいないという自分のことを、まわりも気にしなかった。
だが、だんだんそうも言っていられなくなる。
誰の胸が大きいだの、付き合い始めただの、性行をしただの。
そうなってきてすら、誰も好きではない、誰にも興奮しないというと、怪訝な顔をされた。
男だろうが女だろうが関係なく、性的興奮が起こらないのだ。
さすがにまずいと思い、年上から年下、マニアックなコアなもの、異種間から動物まで、ありとあらゆるその道を研究してみたが、駄目だった。
俺のちんこは、何に対しても無反応だった。
それでも、青々しい思春期はまだよかった。
肉体的発達の為なのか、無理やりしごけば一応、反応がかえってきた。
しかし体が発達を終えた青年期に入ったら、それすら起きなくなった。
興奮に反応しない、物理攻撃にも反応しない。
勃起不全。
完全な不感症。
その頃にはもう、まわりからも変人の烙印を押されていたので、俺は絶望の中、諦めた。
俺は人とは違う。
欠陥品なのだと。
それでもどうにかならないものかと悪足掻きを続け、仕事の傍ら研究を重ねている。
幸か不幸か、研究の副産物である性具がそれなりの需要を持っていて、その収入もあるので研究は滞りない。
お金に余裕がある時は、人を雇って性感実験をしている。
最近ではどこで聞き付けたのか、マニアックな人が無償で協力してくれる事が多い。
ありがたいことだ。
もしも研究だけで食べて行けるほど収入が得られるようになったら、魔術兵の仕事は辞めてもいいかもしれない。
そう思いながら何もついていないトーストをコーヒーで流し込み、昨夜の実験のデータをまとめる。
「あ~あ、こんなところにまで飛んでんじゃん。」
手に持っていたトーストを口にくわえ、俺は測定値がプリントアウトされた紙を掴んだ。
紙にはべっとりと青臭い粘液がこびりついていた。
乾かないうちに拭っておかないとせっかくのデータが無駄になる。
ティッシュで丁寧に拭き取ると、くわえたトーストの残りを口に押し込んだ。
「……ん。」
「おじさん、俺、そろそろ仕事行かないとなんないから起きてもらえますか?」
「あ、ああ、ごめんごめん。泊めてもらうつもりじゃなかったんだけど。」
「まぁ、失神してたしね、仕方ないよ。」
「ああ、凄く良かった……あんなのは初めてだったよ……。」
「トイレと洗面台はあっち。悪いけどうち、シャワーもないから体拭くしか出来ない。夜間銭湯ならすぐ出れば間に合うと思う。」
どこか夢見心地のおっさんを急かし、出かける準備をする。
警備の制服に着替え、おもちゃみたいなお飾りの短刀を帯剣し杖を腰に巻いた。
家を出る時、何故かおっさんが金をくれた。
実験協力は無料ですと伝えたが、くれると言うので有難くもらう事にした。
実験で徹夜した目に朝日がつらいが、遅刻するともっとつらい罰を受けるので、ぐらぐらするのをこらえながら俺は早足で職場に向かった。
それはもう、どうすることも出来ない事だと諦めていた。
人とは違う事はつまり、出来損ないなのだと。
人と同じようにしようとしても、それが出来ない。
欠陥品なのだから仕方がない。
おかしい事に気づいたのは、年頃になった時だ。
皆が誰が好きだなんだ言い始めた。
はじめは気にならなかったし、特に好きな人などいないという自分のことを、まわりも気にしなかった。
だが、だんだんそうも言っていられなくなる。
誰の胸が大きいだの、付き合い始めただの、性行をしただの。
そうなってきてすら、誰も好きではない、誰にも興奮しないというと、怪訝な顔をされた。
男だろうが女だろうが関係なく、性的興奮が起こらないのだ。
さすがにまずいと思い、年上から年下、マニアックなコアなもの、異種間から動物まで、ありとあらゆるその道を研究してみたが、駄目だった。
俺のちんこは、何に対しても無反応だった。
それでも、青々しい思春期はまだよかった。
肉体的発達の為なのか、無理やりしごけば一応、反応がかえってきた。
しかし体が発達を終えた青年期に入ったら、それすら起きなくなった。
興奮に反応しない、物理攻撃にも反応しない。
勃起不全。
完全な不感症。
その頃にはもう、まわりからも変人の烙印を押されていたので、俺は絶望の中、諦めた。
俺は人とは違う。
欠陥品なのだと。
それでもどうにかならないものかと悪足掻きを続け、仕事の傍ら研究を重ねている。
幸か不幸か、研究の副産物である性具がそれなりの需要を持っていて、その収入もあるので研究は滞りない。
お金に余裕がある時は、人を雇って性感実験をしている。
最近ではどこで聞き付けたのか、マニアックな人が無償で協力してくれる事が多い。
ありがたいことだ。
もしも研究だけで食べて行けるほど収入が得られるようになったら、魔術兵の仕事は辞めてもいいかもしれない。
そう思いながら何もついていないトーストをコーヒーで流し込み、昨夜の実験のデータをまとめる。
「あ~あ、こんなところにまで飛んでんじゃん。」
手に持っていたトーストを口にくわえ、俺は測定値がプリントアウトされた紙を掴んだ。
紙にはべっとりと青臭い粘液がこびりついていた。
乾かないうちに拭っておかないとせっかくのデータが無駄になる。
ティッシュで丁寧に拭き取ると、くわえたトーストの残りを口に押し込んだ。
「……ん。」
「おじさん、俺、そろそろ仕事行かないとなんないから起きてもらえますか?」
「あ、ああ、ごめんごめん。泊めてもらうつもりじゃなかったんだけど。」
「まぁ、失神してたしね、仕方ないよ。」
「ああ、凄く良かった……あんなのは初めてだったよ……。」
「トイレと洗面台はあっち。悪いけどうち、シャワーもないから体拭くしか出来ない。夜間銭湯ならすぐ出れば間に合うと思う。」
どこか夢見心地のおっさんを急かし、出かける準備をする。
警備の制服に着替え、おもちゃみたいなお飾りの短刀を帯剣し杖を腰に巻いた。
家を出る時、何故かおっさんが金をくれた。
実験協力は無料ですと伝えたが、くれると言うので有難くもらう事にした。
実験で徹夜した目に朝日がつらいが、遅刻するともっとつらい罰を受けるので、ぐらぐらするのをこらえながら俺は早足で職場に向かった。
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