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第二章「別宮編」
正気を失う
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昨日の模擬戦の後、俺は師匠から、今回の敗因が何か考えて来いと宿題を出された。
いくつかの答えを持って俺は師匠のいる応接室に向かう。
「師匠!昨日のお話なのですが…!」
ドアを開けて中に入ると、お客さんがいた。
すぐに姿勢を正し、礼を尽くす。
「あれ?副隊長今日はこっちな…ん……っ!?」
しかしよく見れは来ているのは副隊長。
笑顔で俺に軽く手を降る。
俺はそれに答えようとしてふと、副隊長の横にもう一人お客様がいるのに気がついた。
「……っ!!」
その人は俺に気がつくと、優雅に微笑み、手を振った。
完全に固まった。
頭の中が真っ白になる。
……待て、待て待て!!
早速、可愛すぎる事しないで!!
心臓に悪いから!!
「お久しぶりですね、サーク様。新しい制服もお似合いですよ。」
そんな俺のことなど露知らず、その人は穏やかにそう言った。
心地よいバリトンボイス。
にっこりとそう言われ、俺はとうとうオーバーヒートした。
口を開けたままわたわたし、勢い余って外に出てドアをばたんと閉めた。
…………………………。
うわ!何閉めてんだよ!!
でも待って!!待って!!待って!!
不意打ちはヤバい!!
ヤバいから!!
極限状態のあまり、もうどうしていいのかすらわからない。
俺はこの場に座り込み、口を押さえて待って待ってとぶつぶつと呟き続けた。
「……あんた、何やってるの?」
中々戻らない俺の様子を見に来たらしい副隊長が、そんな俺を見て呆れた様に言った。
「待ってください!!ヤバいです!!心の準備が出来てないのに!不意打ちはヤバいです!!」
「サーク、あんた大丈夫!?」
「駄目です!!ヤバいです!!」
「何がヤバいのよ??」
「レオンハルドさんがみえてるなんて!俺!聞いてません!!うわ~!こんな事なら!朝!ちゃんと髪の毛とかして来るんだった~!!」
「……は??サーク、あんたまさか、レオンさん大好きなの?!」
「だっ!大好きとか!!恐れ多いこと言わないで下さい!!失礼でしょ!!」
「……マジで~!?」
副隊長は、は~とため息をつくと俺の首根っこを掴んだ。
さすがは女性とはいえ、副隊長。
元魔術兵の見習い魔術師なんか軽々と引っ張り上げる。
「行くわよ!!」
「いやぁ~!!待って!!待って下さい待って!!心の準備が出来てません!!」
「あんた、相手の顔見て逃げ出す方が失礼でしょうが!!」
「無理無理無理無理っ!直ぐは無理です!!どんな顔すればいいかわかんないから!!」
「いいから!!とっととする!!」
乙女のようにもじもじする俺に副隊長がキレる。
半ギレの副隊長に引きずられ、俺は部屋に戻されてしまった。
「……あっ!」
キョドる俺。
きょとんとした顔のレオンハルドさんと目が合ってしまう。
途端、ビシッと背が伸びて硬直し、何故か敬礼した。
「……申し訳ございませんでした~!!お久しぶりにお会いしたので、気が動転してしまって……っ!!!」
そして土下座せんばかりに俺は頭を下げる。
レオンハルドさんはそんな俺をふふふとおかしそうに笑った。
「サーク様は相変わらず、可愛らしいですね。」
……………………チーン。
一瞬の間の後、思考がフリーズ。
俺は完全に石化していた。
……か、可愛い!?
俺が!?
その言葉にまたも完全にぴよってしまった俺を見て、副隊長がため息をついた。
師匠の方は、わくわくと面白そうに俺を見ている。
「やだ~サークちゃんたら!ダンディー好き!?渋いわね~!!」
「好きとか!!滅相もありません!!」
「じゃあ、あんたのその挙動不審さは何なのよ?サーク?」
「めっちゃ憧れの人に会ったら!!思考回路ぶっ飛ばして!挙動不審にもなります!!」
「おやおや。サーク様にそのような事を言って頂けるなど、このレオンハルド、身に余る光栄でございます。」
「~~っ!」
ヤバい……鼻血出そう……。
言葉を忘れた俺にレオンハルドさんはにっこりと微笑む。
「さて、私は殿下に頼まれていたものを届けねばなりません。とても残念ですが、この辺で失礼致します。」
レオンハルドさんはそう言うと立ち上がった。
凄い寂しいけど、このままだと心臓が持たないので俺は少しほっとする。
「……そうだ、サーク様。王宮で余ったお菓子なのですが、宜しければ貰って頂けますか?」
少し気を緩めた俺に、レオンハルドさんがにこやかにそう言った。
渡された小さな包み。
思わず大事に両手で包んだ。
「あ、ありがとうございます!!大切にします!!」
「ふふふ、頑張っておられるようですね?でも、あまり無理はなさいませぬように。」
レオンハルドさんは、ぽんぽんと俺の頭を撫でた。
え??撫でた??ぽんぽんって?!
……うわあぁ~!!
夢か!?
これは夢なのか!?
喜びすぎてピクリとも動けなくなる俺。
レオンハルドさんが出ていってもしばらくは固まったままだった。
しかし……
「……ふ、副隊長~!!師匠~!!見ましたか!?」
「はいはい、見てました。」
「頭、ぽんぽんされましたよ!!俺!!」
「良かったわね!サークちゃん!!」
「我が一生に悔い無し!!死ねる!!」
なんか男泣きに泣けてくる。
でも力む余りお菓子を握りしめないようにしないと。
せっかくレオンハルドさんが下さったのだから!!
「……あのね~、サーク。レオンさんはカッコいいかも知れないけどさ~、あの人、実は結構、危険人物よ??」
少し言いにくそうに副隊長は言った。
しかしテンションのおかしくなった俺には通用しない。
「何ですか!?それは!?カッコ良くて!完璧で!お茶目で!可愛い上に!!さらに危険なんですか!?どんだけ凄いんです!!まさに神の作った芸術!!むしろ神っ!!このお菓子は家宝にしよう!!」
興奮覚めやらず、訳のわからないことを口走る俺を、師匠はゲラゲラ笑う。
副隊長は頭を抱えて、ため息をついた。
「……ダメだこりゃ。」
俺はレオンハルドさんに貰ったお菓子を高々と掲げ、自分の幸せに感謝した。
いくつかの答えを持って俺は師匠のいる応接室に向かう。
「師匠!昨日のお話なのですが…!」
ドアを開けて中に入ると、お客さんがいた。
すぐに姿勢を正し、礼を尽くす。
「あれ?副隊長今日はこっちな…ん……っ!?」
しかしよく見れは来ているのは副隊長。
笑顔で俺に軽く手を降る。
俺はそれに答えようとしてふと、副隊長の横にもう一人お客様がいるのに気がついた。
「……っ!!」
その人は俺に気がつくと、優雅に微笑み、手を振った。
完全に固まった。
頭の中が真っ白になる。
……待て、待て待て!!
早速、可愛すぎる事しないで!!
心臓に悪いから!!
「お久しぶりですね、サーク様。新しい制服もお似合いですよ。」
そんな俺のことなど露知らず、その人は穏やかにそう言った。
心地よいバリトンボイス。
にっこりとそう言われ、俺はとうとうオーバーヒートした。
口を開けたままわたわたし、勢い余って外に出てドアをばたんと閉めた。
…………………………。
うわ!何閉めてんだよ!!
でも待って!!待って!!待って!!
不意打ちはヤバい!!
ヤバいから!!
極限状態のあまり、もうどうしていいのかすらわからない。
俺はこの場に座り込み、口を押さえて待って待ってとぶつぶつと呟き続けた。
「……あんた、何やってるの?」
中々戻らない俺の様子を見に来たらしい副隊長が、そんな俺を見て呆れた様に言った。
「待ってください!!ヤバいです!!心の準備が出来てないのに!不意打ちはヤバいです!!」
「サーク、あんた大丈夫!?」
「駄目です!!ヤバいです!!」
「何がヤバいのよ??」
「レオンハルドさんがみえてるなんて!俺!聞いてません!!うわ~!こんな事なら!朝!ちゃんと髪の毛とかして来るんだった~!!」
「……は??サーク、あんたまさか、レオンさん大好きなの?!」
「だっ!大好きとか!!恐れ多いこと言わないで下さい!!失礼でしょ!!」
「……マジで~!?」
副隊長は、は~とため息をつくと俺の首根っこを掴んだ。
さすがは女性とはいえ、副隊長。
元魔術兵の見習い魔術師なんか軽々と引っ張り上げる。
「行くわよ!!」
「いやぁ~!!待って!!待って下さい待って!!心の準備が出来てません!!」
「あんた、相手の顔見て逃げ出す方が失礼でしょうが!!」
「無理無理無理無理っ!直ぐは無理です!!どんな顔すればいいかわかんないから!!」
「いいから!!とっととする!!」
乙女のようにもじもじする俺に副隊長がキレる。
半ギレの副隊長に引きずられ、俺は部屋に戻されてしまった。
「……あっ!」
キョドる俺。
きょとんとした顔のレオンハルドさんと目が合ってしまう。
途端、ビシッと背が伸びて硬直し、何故か敬礼した。
「……申し訳ございませんでした~!!お久しぶりにお会いしたので、気が動転してしまって……っ!!!」
そして土下座せんばかりに俺は頭を下げる。
レオンハルドさんはそんな俺をふふふとおかしそうに笑った。
「サーク様は相変わらず、可愛らしいですね。」
……………………チーン。
一瞬の間の後、思考がフリーズ。
俺は完全に石化していた。
……か、可愛い!?
俺が!?
その言葉にまたも完全にぴよってしまった俺を見て、副隊長がため息をついた。
師匠の方は、わくわくと面白そうに俺を見ている。
「やだ~サークちゃんたら!ダンディー好き!?渋いわね~!!」
「好きとか!!滅相もありません!!」
「じゃあ、あんたのその挙動不審さは何なのよ?サーク?」
「めっちゃ憧れの人に会ったら!!思考回路ぶっ飛ばして!挙動不審にもなります!!」
「おやおや。サーク様にそのような事を言って頂けるなど、このレオンハルド、身に余る光栄でございます。」
「~~っ!」
ヤバい……鼻血出そう……。
言葉を忘れた俺にレオンハルドさんはにっこりと微笑む。
「さて、私は殿下に頼まれていたものを届けねばなりません。とても残念ですが、この辺で失礼致します。」
レオンハルドさんはそう言うと立ち上がった。
凄い寂しいけど、このままだと心臓が持たないので俺は少しほっとする。
「……そうだ、サーク様。王宮で余ったお菓子なのですが、宜しければ貰って頂けますか?」
少し気を緩めた俺に、レオンハルドさんがにこやかにそう言った。
渡された小さな包み。
思わず大事に両手で包んだ。
「あ、ありがとうございます!!大切にします!!」
「ふふふ、頑張っておられるようですね?でも、あまり無理はなさいませぬように。」
レオンハルドさんは、ぽんぽんと俺の頭を撫でた。
え??撫でた??ぽんぽんって?!
……うわあぁ~!!
夢か!?
これは夢なのか!?
喜びすぎてピクリとも動けなくなる俺。
レオンハルドさんが出ていってもしばらくは固まったままだった。
しかし……
「……ふ、副隊長~!!師匠~!!見ましたか!?」
「はいはい、見てました。」
「頭、ぽんぽんされましたよ!!俺!!」
「良かったわね!サークちゃん!!」
「我が一生に悔い無し!!死ねる!!」
なんか男泣きに泣けてくる。
でも力む余りお菓子を握りしめないようにしないと。
せっかくレオンハルドさんが下さったのだから!!
「……あのね~、サーク。レオンさんはカッコいいかも知れないけどさ~、あの人、実は結構、危険人物よ??」
少し言いにくそうに副隊長は言った。
しかしテンションのおかしくなった俺には通用しない。
「何ですか!?それは!?カッコ良くて!完璧で!お茶目で!可愛い上に!!さらに危険なんですか!?どんだけ凄いんです!!まさに神の作った芸術!!むしろ神っ!!このお菓子は家宝にしよう!!」
興奮覚めやらず、訳のわからないことを口走る俺を、師匠はゲラゲラ笑う。
副隊長は頭を抱えて、ため息をついた。
「……ダメだこりゃ。」
俺はレオンハルドさんに貰ったお菓子を高々と掲げ、自分の幸せに感謝した。
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