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本編
デスゲームは突然に
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何故、こうなった……。
サークは自分がどういう状況なのかわからず困惑していた。
そんなサークの後ろには、無言で牽制し合う「元、剣道部主将」と「元、空手部主将」が並んで立っている。
じとっとした目でファースト騎士であり姫騎士のライルを見れば、何も知りませんと言いたげににぱっと無邪気に笑った。
くそう!何も悪い事なんかしてないよって顔しやがって!この策士が!!
サークがいくら睨んでも、ライルはどこ吹く風。
蛙の面に水とは正にこの事だなと、ため息をつくしかなかった。
「……ちゃんと後ろで手を組んでおけ、空手部。偶然を装って触ろうとするな……。」
「お前こそ、まとわりつくような視線でサークを見てんじゃねぇよ!!このムッツリ!!」
「うるせぇ!!お前ら!!二人が嫌なら帰れ!!」
ボソボソとした言い合い。
堪忍袋が切れかけてサークは怒鳴った。
どうしてこうなったかと言えば、サークが空手部元主将に「騎士の申し出」を受けたところまで戻る。
あれをした瞬間、どこから現れたのかギルがさっと割って入り、ライルごとサークを庇うように立ち塞がった。
その時、ライルが妙にホッとしたように息を吐き出したのがサークは不思議だった。
睨み合う元空手部主将VS元剣道部主将。
通学してきた生徒達も何事かと足を止める。
いつの間に来たのか知らないが、サークは他のクラスメイトに引っ張られ、その場からは距離を作らされた。
それを確認してからサークの「姫騎士」ライルが芝居ががった仕草でギルの前に出た。
「……申し出は理解した。D組空手部元主将、エドモンド・フーパー公。だが、少しそれは考えさせて欲しい。」
「え?!何でだよ?!」
ライルの返答に周囲は少しどよめいた。
騎士の申し出は基本的に断れないからだ。
だが、ライルは表情を崩さなかった。
「君は一年時、シルクの騎士になろうとして断られた経緯がある。」
「それは……!」
「本来、「騎士」は高校生活においてたった一人の「姫」しか選べない。断られて騎士となっていなくとも、君は一度はシルクの騎士になろうとした。「騎士」制度から考えてサークへの申し出は不誠実だとも言える。」
「あれは!まだ騎士制度をよく理解していなかったからで……!!しかも申し出たっていうか!なってもいいぞって冗談で言っただけで……っ!!跪いて誓った訳じゃない!!」
「まぁ、そう言う側面もあるのはわかってる。だがその時、シルクの騎士と問題を起こして数日停学になったよな?問題行動の形跡のある者の申し出は、申請すれば断れるのは知ってるよな?」
「それは……っ!!シルクの件は一年の1学期の事で!本当にまだ騎士制度をよく理解していなかったんだ!だからシルクの騎士たちの態度に頭に来て……!俺もまだまだガキで馬鹿だったのは今はよくわかってる!!もう一年の時の俺じゃないんだ!!」
変に張り詰める空気の中、あ~あれかぁ~とサークは呑気に思い出す。
サーク自身、はじめは彼にあまりいい感情は持っていなかった。
なぜかと言うと元主将ことエドは、シルクと仲良くなったきっかけだった陰口の件で一緒になってシルクを悪く言っていた奴だからだ。
だが、その後誰に言われたでもなく頭を丸めて反省し、そしてどうもシルクに淡い好意があって思わず悪口を言っていた事がわかった。
だから騎士にもなりたがった訳なのだが、気恥ずかしくて冗談交じりに申し込んだし、シルクはシルクであの件を水に流しはしたが本当の意味では許していなかった。
そういう事情からシルクはエドに騎士の申し出をさせまいと邪魔をして誓わせなかったし、騎士達も自分たちが高校三年間を捧げた「姫」に対してふざけた態度で騎士の申し出をしようとした事にとても怒り、揉めたりしたのだ。
好きな子の気を引く為にわざと悪く言ったりいじめたりなんて、今時小学生でもやらないと思うのだが、何となく色々察してからはそういう事だったのかと思ったし、何よりその後は誰よりも練習に励み努力して主将になったのだ。
ただそのせいでイヴァンが入学して一目惚れしたシルクに速攻、告ろうとした時、シルクの騎士達は瞬時に臨戦状態に入ってしまい、変な事になってしまったのだ。
適応力の高いイヴァンはその後すぐに騎士制度を理解し、ゆっくり時間をかけて先輩騎士達の怒りを鎮め半年後には好意的に見てもらえるようになったのだが、何しろシルクがアイツの騎士の申し出を受け入れないんだよな~。
他の騎士はシルクがいいと言えばなっていいぞと言っているので、イヴァンが凸をかけてきても笑っている。(シルクが断るとわかっているからってのもある)
まぁそんな一連のシルクの騎士問題の事があったので、それまで何となくだった先輩騎士へのお伺い制度は実行委員会からも推薦される方法と正式にお触れが出で、今や完全に暗黙のルールとなった経緯があったりする。
ちなみに、はっきり言って空手部で一番強いのは当然ながらシルクだ。
だが空手の試合ってのは強さを競うものじゃない。
技の決まり具合や完成度みたいなポイント制なのだ。
シルクは強い。
けれどそれは実践においての強さだ。
アイツはヤバい。
「姫」って感じで半分女子みたいな雰囲気すらあるのに、戦うとなったらいきなり感情ブッ飛んでる死神になるのだ。
多分、シルクなら微笑みながら余裕で人を殺せる。
それぐらい強い。(色んな意味で)
実はシルクは空手を専門にやっている訳じゃない。
うちの学校では空手部に入部する事が推薦の条件だったから空手部にいただけで、本来は古武術をやっているのだ。(そして俺の神推しドイル先生も本来は古武術の師範なのだ♪)
そんな訳で、試合において確実にポイントを取るという点ではエドの方が上手かった。
シルクは「姫」という顔もあるので、本人も周りも「主将」に関してはあまり前向きではなかった。
その点、エドは主将になりたいと皆にはっきり言った。
ずっと努力してきた事も皆知っていたし、試合で言えばポイントを確実に高く取ってくるエドは主将に向いていた。
人間関係もあの日以来、揉めないよう凄く気を使って頑張っていた。
はじめにそういう事があったので、シルクはエドに対して反抗はしないが近寄らず必要以上に関わらずのスタンスを通し、何かと俺が二人の間に入って上手くやってきたのだ。
「………………だからって??何で今更、俺の「騎士」になりたいんだ??シルクならわかるけど??」
俺がぼそっと呟くと、何故かクラスメイト達が慌てて俺の口を手で塞ぐ。
何なんだよ?ライルも皆も??
なんか変だぞ??
俺は口を押さえられながら怪訝な顔でクラスメイトの顔を見渡した。
「それは……っ!!」
俺の声に即座に反応するエド。
その顔に妙な違和感を感じた。
あれ??
こいつってこんな奴だったっけ??
嬉々として勢い良く俺を見てくる高揚した表情に俺は首をひねった。
いつも硬すぎだってくらい「主将として」って自分を律していたんだけど??
引退して主将でなくなって、タカが外れちまったのかな??
何か言いかけるエドの前に、やはりギルが無言で立ち塞がり俺からは見えなくなる。
そしてライルが少し厳し目の口調で告げた。
「はい、ストップ。それ以上言ったら、姫騎士の「姫代行権限」を使ってお前を減点処罰にする。2度も揉め事を起こしたと判断されれば誰の騎士にもなれないし、お前、外部受験組だよな?別にこんな生徒間のお遊びが内申に影響する事はないだろうが、学校全体に与えるお前の心証が下がる事は確かだ。受験は自分のモチベーションがかなり影響するぞ?知ってるだろ??」
「………………………………。」
俺からは見えないので、どうなっているかはわからない。
ただ野次馬している連中の顔はハラハラしっぱなしで、あんまりいい状況ではないんだろうなと思った。
ちなみに姫騎士の「姫代行権限」と言うのは、姫騎士が姫にとっては「先輩姫」に当たる事から新しい姫の教育係・相談役の役割を兼ねている事から、咄嗟の事で判断に迷った姫の代わりに姫と同じ様な事ができる制度だ。
主に他の騎士と違い減点処置ができるって事なのだが、施行してもそうそう実行委員会に認められないし、減点も姫の半分の権限なので最高でも5点しか減点できない。
それでも権限が施行される可能性があるだけで、状況を鎮静化させるには十分な抑止力を持つ。
だからこの時もそれが功を奏したようだ。
野次馬はやがて一人、また一人と歩き出した。
おかしな緊迫感はなくなり、どことなく全体的に空気が緩んだ。
よくわからないが話はついたようだ。
ライルがギルとエドと話し合っている。
少し難しい顔をした後、ライルは二人を残し俺の所に来るとこう言った。
「……問題を起こして二人とも同条件みたいなもんだから、しばらく二人を騎士見習いとして二人セットでならサークにつく事を許そうと思う……。そして見習いの間にどちらか一人をサークが選んで騎士にする。もう一人は潔くきっぱり諦める。それで話を付けたいんだけど……構わないか?」
常に計算して動いてきたライルの表情が険しかった。
これは想定していなかった事態なのだろう。
そしてその目がサークに懇願していた。
事態を悪化させない為にこの条件を飲んで欲しいと。
それがどういう事なのかサークにはわからなかった。
でも、掌の上で転がされていたとしても、ライルは常にサークの安全をきちんと考えた上で行動していた。
何よりライルは友達だ。
その友達が訳は言えないが、そうして欲しいと、たぶん自分の事を考えた上で何も言わずにその条件を飲んで欲しいと懇願しているのだ。
サークは迷わなかった。
にこっといつもの調子で笑って、バンバンとライルの背中を叩いた。
「何、変な顔してんだよ?!ライル?!よくわかんないけど、ありがとな!!この件はライルに任せるよ。俺、姫とか騎士とかまだよくわかんないし。変な企てはするけど、ライルが俺にヤバい条件は常に避けてくれてたのわかってるし。」
「サーク……っ!!」
「うん。これからも頼むな?!姫騎士先輩?」
俺の様子からライルはちょっと泣きそうなクシャッとした表情をした。
俺は笑ってハグをする。
それにライルは珍しくギュッと真剣に応えてきた。
「……絶対、危ない目には合わせないから……俺、仮にも姫騎士だから……サークの騎士だから……ちゃんとサークを守るから……。」
「守るって何だよ?!大袈裟だなぁ~。」
よくわからなくて、サークはへらへら笑ってた。
かくして俺には姫騎士のライルと、二人セットで一人前扱いの見習い騎士が二人ついた。
ちなみに片方しかいない時は俺に近づいたらいけない事になっていた。
面倒な事になった。
と、サークは後ろについた二人を見てはため息をつく。
完全に犬猿の仲たが、二人一緒でないとサークにつけないのでいがみ合いながらもギルとエドは予定が合う限り全て合わせて、サークにべったり張り付いた。
うんざりしながらも、これが何かの目論見なのだと思っているサークは我慢する。
その時の事を後から振り返り、サークは思った。
ライルもクラスメイトも表面上はいつも通りだったので、全く気づかなかったのだと……。
その時それがかなりの緊迫した状況だった事に、サークは気づいていなかったのだ。
まるで空砲だと思い込みながら本物の弾が入っている銃でロシアンルーレットをしている様な状況に、サークは気づいていなかったのだ……。
サークは自分がどういう状況なのかわからず困惑していた。
そんなサークの後ろには、無言で牽制し合う「元、剣道部主将」と「元、空手部主将」が並んで立っている。
じとっとした目でファースト騎士であり姫騎士のライルを見れば、何も知りませんと言いたげににぱっと無邪気に笑った。
くそう!何も悪い事なんかしてないよって顔しやがって!この策士が!!
サークがいくら睨んでも、ライルはどこ吹く風。
蛙の面に水とは正にこの事だなと、ため息をつくしかなかった。
「……ちゃんと後ろで手を組んでおけ、空手部。偶然を装って触ろうとするな……。」
「お前こそ、まとわりつくような視線でサークを見てんじゃねぇよ!!このムッツリ!!」
「うるせぇ!!お前ら!!二人が嫌なら帰れ!!」
ボソボソとした言い合い。
堪忍袋が切れかけてサークは怒鳴った。
どうしてこうなったかと言えば、サークが空手部元主将に「騎士の申し出」を受けたところまで戻る。
あれをした瞬間、どこから現れたのかギルがさっと割って入り、ライルごとサークを庇うように立ち塞がった。
その時、ライルが妙にホッとしたように息を吐き出したのがサークは不思議だった。
睨み合う元空手部主将VS元剣道部主将。
通学してきた生徒達も何事かと足を止める。
いつの間に来たのか知らないが、サークは他のクラスメイトに引っ張られ、その場からは距離を作らされた。
それを確認してからサークの「姫騎士」ライルが芝居ががった仕草でギルの前に出た。
「……申し出は理解した。D組空手部元主将、エドモンド・フーパー公。だが、少しそれは考えさせて欲しい。」
「え?!何でだよ?!」
ライルの返答に周囲は少しどよめいた。
騎士の申し出は基本的に断れないからだ。
だが、ライルは表情を崩さなかった。
「君は一年時、シルクの騎士になろうとして断られた経緯がある。」
「それは……!」
「本来、「騎士」は高校生活においてたった一人の「姫」しか選べない。断られて騎士となっていなくとも、君は一度はシルクの騎士になろうとした。「騎士」制度から考えてサークへの申し出は不誠実だとも言える。」
「あれは!まだ騎士制度をよく理解していなかったからで……!!しかも申し出たっていうか!なってもいいぞって冗談で言っただけで……っ!!跪いて誓った訳じゃない!!」
「まぁ、そう言う側面もあるのはわかってる。だがその時、シルクの騎士と問題を起こして数日停学になったよな?問題行動の形跡のある者の申し出は、申請すれば断れるのは知ってるよな?」
「それは……っ!!シルクの件は一年の1学期の事で!本当にまだ騎士制度をよく理解していなかったんだ!だからシルクの騎士たちの態度に頭に来て……!俺もまだまだガキで馬鹿だったのは今はよくわかってる!!もう一年の時の俺じゃないんだ!!」
変に張り詰める空気の中、あ~あれかぁ~とサークは呑気に思い出す。
サーク自身、はじめは彼にあまりいい感情は持っていなかった。
なぜかと言うと元主将ことエドは、シルクと仲良くなったきっかけだった陰口の件で一緒になってシルクを悪く言っていた奴だからだ。
だが、その後誰に言われたでもなく頭を丸めて反省し、そしてどうもシルクに淡い好意があって思わず悪口を言っていた事がわかった。
だから騎士にもなりたがった訳なのだが、気恥ずかしくて冗談交じりに申し込んだし、シルクはシルクであの件を水に流しはしたが本当の意味では許していなかった。
そういう事情からシルクはエドに騎士の申し出をさせまいと邪魔をして誓わせなかったし、騎士達も自分たちが高校三年間を捧げた「姫」に対してふざけた態度で騎士の申し出をしようとした事にとても怒り、揉めたりしたのだ。
好きな子の気を引く為にわざと悪く言ったりいじめたりなんて、今時小学生でもやらないと思うのだが、何となく色々察してからはそういう事だったのかと思ったし、何よりその後は誰よりも練習に励み努力して主将になったのだ。
ただそのせいでイヴァンが入学して一目惚れしたシルクに速攻、告ろうとした時、シルクの騎士達は瞬時に臨戦状態に入ってしまい、変な事になってしまったのだ。
適応力の高いイヴァンはその後すぐに騎士制度を理解し、ゆっくり時間をかけて先輩騎士達の怒りを鎮め半年後には好意的に見てもらえるようになったのだが、何しろシルクがアイツの騎士の申し出を受け入れないんだよな~。
他の騎士はシルクがいいと言えばなっていいぞと言っているので、イヴァンが凸をかけてきても笑っている。(シルクが断るとわかっているからってのもある)
まぁそんな一連のシルクの騎士問題の事があったので、それまで何となくだった先輩騎士へのお伺い制度は実行委員会からも推薦される方法と正式にお触れが出で、今や完全に暗黙のルールとなった経緯があったりする。
ちなみに、はっきり言って空手部で一番強いのは当然ながらシルクだ。
だが空手の試合ってのは強さを競うものじゃない。
技の決まり具合や完成度みたいなポイント制なのだ。
シルクは強い。
けれどそれは実践においての強さだ。
アイツはヤバい。
「姫」って感じで半分女子みたいな雰囲気すらあるのに、戦うとなったらいきなり感情ブッ飛んでる死神になるのだ。
多分、シルクなら微笑みながら余裕で人を殺せる。
それぐらい強い。(色んな意味で)
実はシルクは空手を専門にやっている訳じゃない。
うちの学校では空手部に入部する事が推薦の条件だったから空手部にいただけで、本来は古武術をやっているのだ。(そして俺の神推しドイル先生も本来は古武術の師範なのだ♪)
そんな訳で、試合において確実にポイントを取るという点ではエドの方が上手かった。
シルクは「姫」という顔もあるので、本人も周りも「主将」に関してはあまり前向きではなかった。
その点、エドは主将になりたいと皆にはっきり言った。
ずっと努力してきた事も皆知っていたし、試合で言えばポイントを確実に高く取ってくるエドは主将に向いていた。
人間関係もあの日以来、揉めないよう凄く気を使って頑張っていた。
はじめにそういう事があったので、シルクはエドに対して反抗はしないが近寄らず必要以上に関わらずのスタンスを通し、何かと俺が二人の間に入って上手くやってきたのだ。
「………………だからって??何で今更、俺の「騎士」になりたいんだ??シルクならわかるけど??」
俺がぼそっと呟くと、何故かクラスメイト達が慌てて俺の口を手で塞ぐ。
何なんだよ?ライルも皆も??
なんか変だぞ??
俺は口を押さえられながら怪訝な顔でクラスメイトの顔を見渡した。
「それは……っ!!」
俺の声に即座に反応するエド。
その顔に妙な違和感を感じた。
あれ??
こいつってこんな奴だったっけ??
嬉々として勢い良く俺を見てくる高揚した表情に俺は首をひねった。
いつも硬すぎだってくらい「主将として」って自分を律していたんだけど??
引退して主将でなくなって、タカが外れちまったのかな??
何か言いかけるエドの前に、やはりギルが無言で立ち塞がり俺からは見えなくなる。
そしてライルが少し厳し目の口調で告げた。
「はい、ストップ。それ以上言ったら、姫騎士の「姫代行権限」を使ってお前を減点処罰にする。2度も揉め事を起こしたと判断されれば誰の騎士にもなれないし、お前、外部受験組だよな?別にこんな生徒間のお遊びが内申に影響する事はないだろうが、学校全体に与えるお前の心証が下がる事は確かだ。受験は自分のモチベーションがかなり影響するぞ?知ってるだろ??」
「………………………………。」
俺からは見えないので、どうなっているかはわからない。
ただ野次馬している連中の顔はハラハラしっぱなしで、あんまりいい状況ではないんだろうなと思った。
ちなみに姫騎士の「姫代行権限」と言うのは、姫騎士が姫にとっては「先輩姫」に当たる事から新しい姫の教育係・相談役の役割を兼ねている事から、咄嗟の事で判断に迷った姫の代わりに姫と同じ様な事ができる制度だ。
主に他の騎士と違い減点処置ができるって事なのだが、施行してもそうそう実行委員会に認められないし、減点も姫の半分の権限なので最高でも5点しか減点できない。
それでも権限が施行される可能性があるだけで、状況を鎮静化させるには十分な抑止力を持つ。
だからこの時もそれが功を奏したようだ。
野次馬はやがて一人、また一人と歩き出した。
おかしな緊迫感はなくなり、どことなく全体的に空気が緩んだ。
よくわからないが話はついたようだ。
ライルがギルとエドと話し合っている。
少し難しい顔をした後、ライルは二人を残し俺の所に来るとこう言った。
「……問題を起こして二人とも同条件みたいなもんだから、しばらく二人を騎士見習いとして二人セットでならサークにつく事を許そうと思う……。そして見習いの間にどちらか一人をサークが選んで騎士にする。もう一人は潔くきっぱり諦める。それで話を付けたいんだけど……構わないか?」
常に計算して動いてきたライルの表情が険しかった。
これは想定していなかった事態なのだろう。
そしてその目がサークに懇願していた。
事態を悪化させない為にこの条件を飲んで欲しいと。
それがどういう事なのかサークにはわからなかった。
でも、掌の上で転がされていたとしても、ライルは常にサークの安全をきちんと考えた上で行動していた。
何よりライルは友達だ。
その友達が訳は言えないが、そうして欲しいと、たぶん自分の事を考えた上で何も言わずにその条件を飲んで欲しいと懇願しているのだ。
サークは迷わなかった。
にこっといつもの調子で笑って、バンバンとライルの背中を叩いた。
「何、変な顔してんだよ?!ライル?!よくわかんないけど、ありがとな!!この件はライルに任せるよ。俺、姫とか騎士とかまだよくわかんないし。変な企てはするけど、ライルが俺にヤバい条件は常に避けてくれてたのわかってるし。」
「サーク……っ!!」
「うん。これからも頼むな?!姫騎士先輩?」
俺の様子からライルはちょっと泣きそうなクシャッとした表情をした。
俺は笑ってハグをする。
それにライルは珍しくギュッと真剣に応えてきた。
「……絶対、危ない目には合わせないから……俺、仮にも姫騎士だから……サークの騎士だから……ちゃんとサークを守るから……。」
「守るって何だよ?!大袈裟だなぁ~。」
よくわからなくて、サークはへらへら笑ってた。
かくして俺には姫騎士のライルと、二人セットで一人前扱いの見習い騎士が二人ついた。
ちなみに片方しかいない時は俺に近づいたらいけない事になっていた。
面倒な事になった。
と、サークは後ろについた二人を見てはため息をつく。
完全に犬猿の仲たが、二人一緒でないとサークにつけないのでいがみ合いながらもギルとエドは予定が合う限り全て合わせて、サークにべったり張り付いた。
うんざりしながらも、これが何かの目論見なのだと思っているサークは我慢する。
その時の事を後から振り返り、サークは思った。
ライルもクラスメイトも表面上はいつも通りだったので、全く気づかなかったのだと……。
その時それがかなりの緊迫した状況だった事に、サークは気づいていなかったのだ。
まるで空砲だと思い込みながら本物の弾が入っている銃でロシアンルーレットをしている様な状況に、サークは気づいていなかったのだ……。
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