佐藤君のおませな冒険

円マリ子

文字の大きさ
29 / 121

29. 夏休み〜倒錯の扉〜③

しおりを挟む
 それから奇妙な“智彦”と“智子”の二重生活が始まった。私は智子に変身しては京子さんの家に通った。
 女装の次に京子さんが私に教えたことは、清純だった私にはあまりにも衝撃的だった。
「智子ちゃん、女の子として愛し合うためには女性器が必要よね。」
「えっ?」
 彼女が言いたいことが分からず、私はきょとんとした顔をしていたに違いない。
「鈍いわね、もっとはっきり言うわ。貴女にが必要なのよ。」
「京子さん、そんなの無理に決まってるじゃないですか。」
「ふん、貴女だって、男同士でするときの女役がどこを使うかぐらい知ってるでしょ。」
 やっと彼女の意図が分かって青ざめた。そんな私を見る彼女はとても愉快そうにころころと笑った。
 私はどうして抵抗しなかったのか。相手は女性なのだ、腕力では優っている。結局のところ、私に素質があったのだろう。屈辱の中にまで悦びを見つける、快楽に流されやすい性質。
 イチヂク浣腸を手渡され使用したときの気持ち、他人に己の尻穴を見られ、それどころか指を入れられたときの、あの複雑な胸の内を言葉にするのは難しい。恥辱に震えた。しかし、それだけではなかった……。最初は拒否感しかなかった行為も、だんだんと快楽を得られるように変化していき、それにつれて心まで女の子に変わっていった。精神がいかに肉体に支配されているかを思い知らされた。

 京子さんは恋人と言ったが、世間はこの関係をそう思わないだろう。それでも私は満足だった。私が智子でいる間は彼女を独り占めできた。二人だけの秘密が嬉しかった。次第に打ち解け、女の子になるための調教の後には、会話も増えた。
 すると京子さんへのイメージは次第に変わっていった。彼女の衝動に秘められた懊悩が、少しだけ分かったから。
 ある時、こんな話をしたのを覚えている。
「智子ちゃん、私、自分の未来を考えるとちっとも楽しくないんだ……。」
「どうして?」
「だって、うちは両親が保守的だから、25歳までにはお見合いでもさせられて、結婚して、奥さんとして生きるだけの人生が待ってるのよ。大学のうちは自由にさせてもらう約束なんだ。自宅から通える学校にしろと言われたけど、名門なら文句は言われないだろうと思って、今の大学に入るためになかなかガリ勉したよ。」
 壁際で体育座りをする京子さんは、膝に顔を埋めて話を続けた。
「私、ずっと女の子が好きだった……それで同性愛の記事を見るために『マニアの楽園』を読んでた。そのうち、同性愛だけじゃなくて自分の中の嗜虐的な部分に気がついたの。それで、貴女が女の子になると言ったとき、閃いちゃった。自由な今のうちに欲望を叶えちゃおうと思った。すごく自分勝手なの。巻き込んじゃってごめんなさい。」
「気にしないでよ。私、京子さんと仲良くなれて幸せなんだもの。」
「ふふ、智子ちゃんは優しいよね。結局、私って、親に真っ向から歯向かう勇気も、家出する勇気もない臆病者なのね。仕方ないよね。」
「そんなにお見合い結婚が嫌なら、私と結婚しちゃったら?私、男だし結婚できるよ。」
「ふふ、それがいいかもね。でもさ、私、貴女とずっといたら駄目になっちゃいそうな気がする……貴女に甘えて依存して。だから、やっぱりこの遊びは夏休みで終わり。」
「一夏の恋か……ロマンチックだね。」
「うん。」
 力なく揺らめく彼女の瞳を見て、私は以前よりも強く彼女を愛していると思った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

身体検査その後

RIKUTO
BL
「身体検査」のその後、結果が公開された。彼はどう感じたのか?

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...