完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール

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24話

 約束していた定休日、私は女将さんたちの住む家を訪ねました。
 扉を開け、出てきた女将さんは、とても申し訳なさそうな表情を浮かべていらした。

 何でも、お産の時に手伝いに来てくれていたお母様がまだ滞在しており、今日は赤ちゃんをその方に預けて私の買い物に付き合ってくれることになっていたという。
 ところが今朝、そのお母様が熱を出してしまったらしく、女将さんは家を空けられなくなってしまった。

「でしたら、また日を改めましょう」

 そう言うと、女将さんは慌てて言うのです。

「私は行けないけど、うちの旦那に案内させるから。一緒に行っといで」

 私は、せっかくのお休みなのですから、ご家族で過ごしてくださいと申し出ましたが、女将さんは笑いながら送り出してくれました。

「帰りに買い物も頼んであるんだし、気にしないで行っておいで」

 そんなわけで、私はご主人と一緒に出かけることになったのです。
 道すがら、たわいない話を交わしながら、商会へと向かいました。

 商会に着くと、ハンスさんが気さくに出迎えてくれ、さまざまな洋服を見せてくれました。

 一人ではなかなか決めきれずにいると、店員の若い女性が優しくアドバイスをしてくださり、さらにご主人やハンスさんの勧めもあって、最終的に私はワンピースを三着も買うことが出来ました。

 お礼を言ってから店を後にし、帰りには女将さんから頼まれていた夕食の食材を、ご主人と一緒に買いに行きました。

 道中、ご主人の話題は、女将さんや子どもたちのことがほとんどで、とくに先日生まれたばかりの女の子の話になると、優しい笑みがふっと浮かぶのです。
 そんな幸福そうな表情を見ているだけで、女将さんがどれほど深く愛されているのかが伝わってきて、私はいつのまにか頬が緩んでいました。
 そしてそんな様子を見ていると私まで幸せな気分になれるのです。
 いつか私も……一瞬、夢のようなことを思ってしまいました。
 思わず首を振り、そんな日が私に訪れるはずがないわと思い直して歩き出しました。
 ご主人は私の様子を不思議そうに見ていました。
 恥ずかしくなった私は何でもないふりをして、ほんの少し熱くなった頬に手を触れます。

(私ったら、何を考えているのかしら……)
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