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9話(初仕事)
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わたくしの前の世界での我が家は、世間で言う三大財閥だったので、昔のこちらの世界の貴族についても興味を持ち、調べたことがあった。
その当時の貴族は見た目ほど皆が裕福というわけではなく、領地経営だけでは苦しい貴族も多数いたと書かれていた。しかし、貴族があからさまに商売をするのは品位を問われたという。
そんな中でも裕福な貴族は手広く商売をしている会社、こちらではカンパニーと言うのだが、そこに投資という形で支出をして利益を得ていたらしい。だとするとこちらの侯爵家も間違いなく色々なカンパニーに投資をしているのは確かだった。それは、明らかにその辺の貴族、もちろんわたくしのいた伯爵家とは格段の差があったからだった。
それならわたくしは、伯父様達のためにも、もちろんわたくしのためにも、前の世界の知識を生かしていこうと決めていた。その手始めが、まずはこのトリートメントだった。
わたくしは、伯父様が帰って来られてから今日一日のことをお話しさせていただいた。
伯母様は、ご自分が使われた満足感を伯父様に細かく説明してくださった。
「これだったら他のご婦人方も一度使ったら手放せなくなるわ」
叔母様は太鼓判を押してくださった。
わたくしはそんな光景を目の当たりにしながら、わたくしが前の世界で学んだこと、経験したことは、もしかしたらこうなる日が来ることを想定にしていたのでは? と感じずにはいられなかった。
《本当はただ単に神様の手違いだったとは知らないステーシアこと元美優であった》
その後、伯父様は、投資先のカンパニーにこのトリートメントを持ち込み、商品化できないか相談したのは言うまでもなかった。
カンパニーの方々への作り方は、わたくしが説明させてもらった。皆さんは真剣にわたくしの説明を聞いてくれ、理解すると同時に直ちに商品化へと動きだしてくれた。これを作るにはそれほど難しい工程は無かったため、程なく商品化できた。
そして早々にこの商品の噂は、伯母様の人脈も手伝って、あっという間に評判となっていった。
しかし、その頃わたくしは既に次なる商品開発に頭を切り替えていた。
そしてそんなわたくしを、最初の頃、周りのカンパニーの人達は好奇の目で見ていたが、それでも日が経つにつれ、皆、とても協力的に接っするようになってくれた。そして伯父様と伯母様は、そんなわたくしを実に不思議そうな目で見る。
「これが、本当にあのステーシアなのか?」
驚きが隠せないようだった。そんなおふたりにわたくしは思わず苦笑してしまった。
その後、隣国留学より戻った従兄のお兄様は、伯父様のお仕事のお手伝いを本格的に始めた。
まずは伯父様の一番の投資先で隣国との貿易を行なっているカンパニーへの協力を、お兄様が引き受けることとなった。
お兄様は隣国留学の経験から隣国の言葉は堪能だったので、色々な手続きの書類のチェックを頼まれていた。しかし、その数は膨大で、お兄様は毎日疲れ果てて帰宅なさっていた。
なんでも、お兄様がお手伝いなさる前は、言葉が分からないことをいいことに、随分とごまかされた書類にサインをしては損益を出していたという。
わたくしは、疲れ果ててソファに横になっているお兄様がやりきれず持ち帰った書類を見た。
『何故かしら? 異国の文字なのに理解できるわ』
そんな自分に驚いていた。そしてソファに寝そべるお兄様の隣りで、やりきれずに持ち帰った書類が途中まで翻訳されていたので、残りをわたくしが翻訳して全て書き入れておいた。
わたくしは、疲れ果て寝ているお兄様を起こすことはせずにブランケットを掛けて差し上げ、私室へと戻りその日は休んだ。
そして次の日の朝、昨夜のうちにわたくしが仕上げた書類を持ったお兄様がいきなりノックもせずに部屋へ入ってこられた。それをアンに指摘され、初めて気づき、済まなそう顔をなさった。
「ごめんよ。あまりにも驚いて押しかけてしまった」
その騒ぎで伯父様や伯母様までいらしてしまい、皆様の前で、お兄様に尋ねられた。
「ステーシア、この翻訳は君が仕上げてくれたのか?」
「ごめんなさい、お兄様が余りにお疲れのご様子だったので余計なことをしてしまいましたか?」
「何を言っているんだ、本当に助かったよ、急いでいた物だったんだ」
「しかし、何故君は隣国の言葉を読み書き出来るんだ?」
「ごめんなさい、記憶が戻らず、わたくし自身もよく分かりません」
思わず誤魔化した。だけど自分でも何故、他国の言葉が分かるのか、理解できないのは本当だった。
だからもしかしたら、元のこの身体の持ち主の能力なのかもしれないと思うことにした。
そして伯父様と伯母様も後ろでその会話に驚きを隠せないようだった。
その後、着替えたわたくしは朝食のために下に降り、皆さんで一緒にお食事をいただいた。
その時、伯父様からわたくしを虐げた継母からわたくしの相続分を取り返せることになったと聞かされた。
その話を聞いたわたくしはお願いをした。
「せめて、こちらでお世話になる分としてそれをお納め下さい」
「何言ってるの、それは将来、貴女自身のためにお使いなさい」
「それに、この間の商品の売れ行きもいいそうだし、ジャンもお世話になったのだから却ってこちらも助かっているのよ。気にしないで」
そう仰ってくれた。そして不思議そうに言われた。
「それにしても隣国の言葉、いつ学んだのかしらね? ただあの継母が来る前までは随分とたくさんの家庭教師がついていたから、その時かもしれないわね」
伯母様が仰った。わたくしもきっとそうなのだわ。と納得した。
《その能力が神様の償いとはまだ知らないステーシアこと元美優だった》
その当時の貴族は見た目ほど皆が裕福というわけではなく、領地経営だけでは苦しい貴族も多数いたと書かれていた。しかし、貴族があからさまに商売をするのは品位を問われたという。
そんな中でも裕福な貴族は手広く商売をしている会社、こちらではカンパニーと言うのだが、そこに投資という形で支出をして利益を得ていたらしい。だとするとこちらの侯爵家も間違いなく色々なカンパニーに投資をしているのは確かだった。それは、明らかにその辺の貴族、もちろんわたくしのいた伯爵家とは格段の差があったからだった。
それならわたくしは、伯父様達のためにも、もちろんわたくしのためにも、前の世界の知識を生かしていこうと決めていた。その手始めが、まずはこのトリートメントだった。
わたくしは、伯父様が帰って来られてから今日一日のことをお話しさせていただいた。
伯母様は、ご自分が使われた満足感を伯父様に細かく説明してくださった。
「これだったら他のご婦人方も一度使ったら手放せなくなるわ」
叔母様は太鼓判を押してくださった。
わたくしはそんな光景を目の当たりにしながら、わたくしが前の世界で学んだこと、経験したことは、もしかしたらこうなる日が来ることを想定にしていたのでは? と感じずにはいられなかった。
《本当はただ単に神様の手違いだったとは知らないステーシアこと元美優であった》
その後、伯父様は、投資先のカンパニーにこのトリートメントを持ち込み、商品化できないか相談したのは言うまでもなかった。
カンパニーの方々への作り方は、わたくしが説明させてもらった。皆さんは真剣にわたくしの説明を聞いてくれ、理解すると同時に直ちに商品化へと動きだしてくれた。これを作るにはそれほど難しい工程は無かったため、程なく商品化できた。
そして早々にこの商品の噂は、伯母様の人脈も手伝って、あっという間に評判となっていった。
しかし、その頃わたくしは既に次なる商品開発に頭を切り替えていた。
そしてそんなわたくしを、最初の頃、周りのカンパニーの人達は好奇の目で見ていたが、それでも日が経つにつれ、皆、とても協力的に接っするようになってくれた。そして伯父様と伯母様は、そんなわたくしを実に不思議そうな目で見る。
「これが、本当にあのステーシアなのか?」
驚きが隠せないようだった。そんなおふたりにわたくしは思わず苦笑してしまった。
その後、隣国留学より戻った従兄のお兄様は、伯父様のお仕事のお手伝いを本格的に始めた。
まずは伯父様の一番の投資先で隣国との貿易を行なっているカンパニーへの協力を、お兄様が引き受けることとなった。
お兄様は隣国留学の経験から隣国の言葉は堪能だったので、色々な手続きの書類のチェックを頼まれていた。しかし、その数は膨大で、お兄様は毎日疲れ果てて帰宅なさっていた。
なんでも、お兄様がお手伝いなさる前は、言葉が分からないことをいいことに、随分とごまかされた書類にサインをしては損益を出していたという。
わたくしは、疲れ果ててソファに横になっているお兄様がやりきれず持ち帰った書類を見た。
『何故かしら? 異国の文字なのに理解できるわ』
そんな自分に驚いていた。そしてソファに寝そべるお兄様の隣りで、やりきれずに持ち帰った書類が途中まで翻訳されていたので、残りをわたくしが翻訳して全て書き入れておいた。
わたくしは、疲れ果て寝ているお兄様を起こすことはせずにブランケットを掛けて差し上げ、私室へと戻りその日は休んだ。
そして次の日の朝、昨夜のうちにわたくしが仕上げた書類を持ったお兄様がいきなりノックもせずに部屋へ入ってこられた。それをアンに指摘され、初めて気づき、済まなそう顔をなさった。
「ごめんよ。あまりにも驚いて押しかけてしまった」
その騒ぎで伯父様や伯母様までいらしてしまい、皆様の前で、お兄様に尋ねられた。
「ステーシア、この翻訳は君が仕上げてくれたのか?」
「ごめんなさい、お兄様が余りにお疲れのご様子だったので余計なことをしてしまいましたか?」
「何を言っているんだ、本当に助かったよ、急いでいた物だったんだ」
「しかし、何故君は隣国の言葉を読み書き出来るんだ?」
「ごめんなさい、記憶が戻らず、わたくし自身もよく分かりません」
思わず誤魔化した。だけど自分でも何故、他国の言葉が分かるのか、理解できないのは本当だった。
だからもしかしたら、元のこの身体の持ち主の能力なのかもしれないと思うことにした。
そして伯父様と伯母様も後ろでその会話に驚きを隠せないようだった。
その後、着替えたわたくしは朝食のために下に降り、皆さんで一緒にお食事をいただいた。
その時、伯父様からわたくしを虐げた継母からわたくしの相続分を取り返せることになったと聞かされた。
その話を聞いたわたくしはお願いをした。
「せめて、こちらでお世話になる分としてそれをお納め下さい」
「何言ってるの、それは将来、貴女自身のためにお使いなさい」
「それに、この間の商品の売れ行きもいいそうだし、ジャンもお世話になったのだから却ってこちらも助かっているのよ。気にしないで」
そう仰ってくれた。そして不思議そうに言われた。
「それにしても隣国の言葉、いつ学んだのかしらね? ただあの継母が来る前までは随分とたくさんの家庭教師がついていたから、その時かもしれないわね」
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