《完結》財閥令嬢と伯爵令嬢の魂の入れ替わり

ヴァンドール

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10話(両親)

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 私がスマートフォンという物で色々と調べることに熱中していると、扉がノックされ、外から鈴さんから声がかかった。

「旦那様がお帰りです。お食事のご用意も出来ました」

 私は慌てて返事を返した。

「すぐに行きます」

 そして初めて会うお父様にどう接したら良いのか緊張が走った。しかし、記憶を失っているのだから、どんなに受け答えが不自然でも、それは仕方がないで通るはずだと自分に言い聞かせた。
 そして下の階に降りて鈴さんと食卓に入ると、優しそうなお父様らしき方が優しい眼差しを向けてくれる。

「美優、大丈夫か? もう熱は下がったと聞いたが、辛かったら無理しなくていいのだからな」

 私は緊張気味に答えました。

「もう、身体の方はすっかり回復しました。ただ記憶の方がまだ曖昧ですいません」

「謝る必要はない。焦らずゆっくり思い出していけばいい」
 
 そいって優しく接してくださる。
 
「さあ、座りなさい。食事にしようか」

 そしてお母様も含めた三人での食事が始まった。
 お食事はどれも美味しく、私がいた世界では見たことも食べたこともないものばかりだった。
 そして食事をしながらお母様に聞かれた。

「そういえば美優、来月から予定していた留学のことなんだけど、美優がまだ無理そうなら延期してもいいのよ」

 私は思わず答えてしまった。

「いいえ、身体の方はもう大丈夫なので予定通りでお願いします」

 どう答えるのが正解なのかは分からなかったが、少なくとも自分を知っている人がいないところの方が気が楽なように思えた。しかし、お父様から意外なことを言われてしまった。

「そうだな。向こうには一馬もいるから安心だ」

 私は思わず、鈴さんから聞いていた人物だったので反射的に言葉が出た。

「お兄様もあちらにいらっしゃるのですか?」

 するとお父様は少し肩を落とされた。

「そうか、それも忘れてしまったか。まあ、一馬には一通り伝えてあるから心配しなくていい」

 その後、三人でのぎこちない会話をしながらの食事も終わり、私は自分の部屋へと戻った。

 そして寝室に入るなり思わずため息が出てしまった。

『はー、疲れたわ』

 確かに優しい方たちでも、接し方を考えながらというのは常に緊張してしまう。

『早く慣れないといけないわ』

 そう思いながらも、先程のお兄様という存在がまたもや緊張を誘った。

 多分その一馬という名のお兄様もきっと優しい方なのだと何となくは想像できる。だって、私がこちらの世界で目覚めてから、自分に悪意を向ける人は誰もいないのだから。
 それでもやはり緊張は解けない。いくら考えても仕方がないので、私は寝る前にもう少しこのスマートフォンという物でこちらの世界のことを知ろうと調べ始めた。

 そして『図書館にも行かずにこれほど多くのことを学べるなんて』と感激をしていた。
 その上、このスマホの詳しい使い方さえもこれで調べることができることにも驚いていた。

 昼間に鈴さんから教えてもらったメールやLINE、SNSのやり方を一度に説明を受けたので、全てを覚えきれなかったため、もう一度このスマホで調べた。
 電話以外にもあるこんなに多くの通信手段に感心しながら気づけば時間は深夜になっていた。

 その頃、下の階では父と母が、娘のあまりの変貌ぶりに驚いていた。

 二人は、あの気が強く勝気な美優があれほど大人しく淑やかな女性になり、二人なりに戸惑っていた。 
 そして、来月留学先で会う一馬にもこのことを前もって伝えておかなければと話し合った。それから、美優の幼馴染の神宮寺大和。彼からは、直接電話があり、美優とは話すことができたというが、やはりあまりの変わりように驚いていた。

 彼は電話で話しただけだが、口ぶりが別人のようで戸惑ってしまったと言っていた。それを聞いた母は、元々美優に好意を持っていた大和さんが、今の美優と記憶を失う前の美優、どちらがタイプなのかしら? と思わずにはいられなかった。

 二人は、美優がこのままずっと今のままの美優なのか、それともいつか元の美優に戻るのか、どうしてもそこが気になるところだったが、そればかりは病院の先生からも分からないと言われている。 

 二人にとってはどちらの美優でも娘に違いはないのだが、あまりにも真逆の変貌には二人共戸惑っていた。
 とりあえず、一番不安なのは美優自身なのだから、このまま自然を装い接していこうと決めた。そして、前の美優だったらこうだったという言い方は決してしてはいけないと話し合った。その言葉は今の美優を傷つけてしまいそうだったからだ。

《そんな二人の様子を見て、優しい家族で安心した神様だった》
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