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10話
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迎えた結婚式当日。
白い大理石で造られた礼拝堂は、朝の光を受け、まるで今日のわたくしたちを祝福するかのように輝いていた。高い天井に反響する静寂は、参列者たちの期待と温かな眼差しをそっと包み込んでいる。
わたくしは父の腕にそっと手を添え、長いヴェールを揺らしながら祭壇へ続く道を進む。
最前列には伯父が見守るように立ち、その先でエドガー卿が静かにわたくしを待っていた。
普段の彼なら剣を手にすれば、右に出る者はいないはずなのに、今日の彼は緊張のあまり、まるで初めて剣を手にした騎士のように固まっていて、わたくしは思わず微笑んだ。
(ほんとうに、不器用で真面目な方だわ)
宣誓の言葉を交わし、指輪がはめられた瞬間、エドガー卿の表情がさらに硬くなった。
そして、彼は誓いの口づけをわたくしの唇ではなく額に落とした。
そんな彼の表情に浮かぶのは幸福よりも『責務を果たす覚悟』だった。わたくしは胸の奥が少しだけ痛んだ。
ーーーー
エドガー卿のお屋敷に到着したその日。
兵士たちは整列して、わたくしたちを出迎えたが、その背筋の張り具合と目の泳ぎ方から、彼らが大いに緊張しているのがよくわかった。
(まあ……無理もありませんわね。突然、団長の結婚相手だなんて紹介されれば。あら、あの方は確か舞踏会の時にダンスのお相手をして下さったルイス様……)
「お久しぶりです奥様。私はここの騎士団員でもあります。ここの団員は貴族の子息や平民出身の者、皆が平等に暮らしておりますのでその辺のところをどうぞご理解して頂けると助かります」
わたくしは微笑みながら軽く会釈した。兵士たちは戸惑ったように顔を見合わせている。
「もちろんですわ。これからはわたくしも、皆さんと一緒に仲良く暮らしていけること望んでいますわ」
そう言って、軽く小首を傾けウインクをした。
すると皆、だいぶ緊張が解けたように見えた。
「団長、奥様って、あの……なんか、思ってたより普通……いや、お茶目、外見ではなく中身がお貴族様ーて態度ではないと言う意味で……もちろん外見はすっごい美人ですが」
「バカ、聞こえるぞ」
「でもよ、もっとこう……鼻がこう、ツンと、こう……」
ひそひそ声のつもりなのだろうが、わたくしの耳にはすべて届いていた。
さすがに少し眉が動いたが、すぐに肩の力を抜く。
(お高くとまった令嬢、と思われていたのね)
予想の範囲内だわ。くす。
ーーーー
夕食の時。
厨房にいたメイドがバタバタと、わたくしが連れて来た侍女のアンに駆け寄って、何か話している。するとアンが驚いた表情をして
「お、お嬢……いえ、奥様大変でございます、兵士の皆さまが野営のような食事をお屋敷の裏庭で……!」
アンと二人で見に行くと、庭の一角で兵士たちが鍋を囲み、騎士団の簡易料理のような物を作っていた。
「今日は俺たちは別でいいから!」
「団長に気を使わせたくないだろ? 奥様も疲れてるだろうし」
わたくしは手を胸に当て、ふっと笑った。
「まあ、そんな気遣いをしてくださっていたのですの? だったらわたくしたちも誘ってくだされば一度の手間で済みましたのに」
声をかけると、兵士全員が固まった。
数人は木べらを落とし、ひとりは鍋の蓋を吹っ飛ばした。
「お、奥様!? な、なぜこちらへ……」
「奥様が、こんな俺らのところへ……!」
「こんなだなんて。皆さま、主人のお仲間でしょう? 皆が仲良くしてくださるのは、わたくしにとっても嬉しいことですわ。それに食事は大勢で取った方が楽しいですわよ」
わたくしがにこりと笑むと、兵士たちは全員、呆気にとられた顔になった。
「……なんか、怖いくらい普通なんですけど」
「おい失礼だ、でも気持ちはわかる」
「団長、すげぇ人と結婚したんじゃないか?」
いつのまにか側に来ていたエドガー卿は、少し赤くなりながら、小さく咳払いした。
「奥様は……本当に、お優しい方だ」
そんな団員の一言が胸に突き刺さる。
この方達とならきっと、仲良く暮らしていけるはず。わたくしの中に小さな自信が湧いてきた。
ふと、エドガー卿を見上げると彼は赤くなりながらも嬉しそうに笑っていらした。
それを見てわたくしはとても幸せな気持ちになっていた。
白い大理石で造られた礼拝堂は、朝の光を受け、まるで今日のわたくしたちを祝福するかのように輝いていた。高い天井に反響する静寂は、参列者たちの期待と温かな眼差しをそっと包み込んでいる。
わたくしは父の腕にそっと手を添え、長いヴェールを揺らしながら祭壇へ続く道を進む。
最前列には伯父が見守るように立ち、その先でエドガー卿が静かにわたくしを待っていた。
普段の彼なら剣を手にすれば、右に出る者はいないはずなのに、今日の彼は緊張のあまり、まるで初めて剣を手にした騎士のように固まっていて、わたくしは思わず微笑んだ。
(ほんとうに、不器用で真面目な方だわ)
宣誓の言葉を交わし、指輪がはめられた瞬間、エドガー卿の表情がさらに硬くなった。
そして、彼は誓いの口づけをわたくしの唇ではなく額に落とした。
そんな彼の表情に浮かぶのは幸福よりも『責務を果たす覚悟』だった。わたくしは胸の奥が少しだけ痛んだ。
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エドガー卿のお屋敷に到着したその日。
兵士たちは整列して、わたくしたちを出迎えたが、その背筋の張り具合と目の泳ぎ方から、彼らが大いに緊張しているのがよくわかった。
(まあ……無理もありませんわね。突然、団長の結婚相手だなんて紹介されれば。あら、あの方は確か舞踏会の時にダンスのお相手をして下さったルイス様……)
「お久しぶりです奥様。私はここの騎士団員でもあります。ここの団員は貴族の子息や平民出身の者、皆が平等に暮らしておりますのでその辺のところをどうぞご理解して頂けると助かります」
わたくしは微笑みながら軽く会釈した。兵士たちは戸惑ったように顔を見合わせている。
「もちろんですわ。これからはわたくしも、皆さんと一緒に仲良く暮らしていけること望んでいますわ」
そう言って、軽く小首を傾けウインクをした。
すると皆、だいぶ緊張が解けたように見えた。
「団長、奥様って、あの……なんか、思ってたより普通……いや、お茶目、外見ではなく中身がお貴族様ーて態度ではないと言う意味で……もちろん外見はすっごい美人ですが」
「バカ、聞こえるぞ」
「でもよ、もっとこう……鼻がこう、ツンと、こう……」
ひそひそ声のつもりなのだろうが、わたくしの耳にはすべて届いていた。
さすがに少し眉が動いたが、すぐに肩の力を抜く。
(お高くとまった令嬢、と思われていたのね)
予想の範囲内だわ。くす。
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夕食の時。
厨房にいたメイドがバタバタと、わたくしが連れて来た侍女のアンに駆け寄って、何か話している。するとアンが驚いた表情をして
「お、お嬢……いえ、奥様大変でございます、兵士の皆さまが野営のような食事をお屋敷の裏庭で……!」
アンと二人で見に行くと、庭の一角で兵士たちが鍋を囲み、騎士団の簡易料理のような物を作っていた。
「今日は俺たちは別でいいから!」
「団長に気を使わせたくないだろ? 奥様も疲れてるだろうし」
わたくしは手を胸に当て、ふっと笑った。
「まあ、そんな気遣いをしてくださっていたのですの? だったらわたくしたちも誘ってくだされば一度の手間で済みましたのに」
声をかけると、兵士全員が固まった。
数人は木べらを落とし、ひとりは鍋の蓋を吹っ飛ばした。
「お、奥様!? な、なぜこちらへ……」
「奥様が、こんな俺らのところへ……!」
「こんなだなんて。皆さま、主人のお仲間でしょう? 皆が仲良くしてくださるのは、わたくしにとっても嬉しいことですわ。それに食事は大勢で取った方が楽しいですわよ」
わたくしがにこりと笑むと、兵士たちは全員、呆気にとられた顔になった。
「……なんか、怖いくらい普通なんですけど」
「おい失礼だ、でも気持ちはわかる」
「団長、すげぇ人と結婚したんじゃないか?」
いつのまにか側に来ていたエドガー卿は、少し赤くなりながら、小さく咳払いした。
「奥様は……本当に、お優しい方だ」
そんな団員の一言が胸に突き刺さる。
この方達とならきっと、仲良く暮らしていけるはず。わたくしの中に小さな自信が湧いてきた。
ふと、エドガー卿を見上げると彼は赤くなりながらも嬉しそうに笑っていらした。
それを見てわたくしはとても幸せな気持ちになっていた。
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