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38話
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季節がひとつ巡った頃。
ソニア様とロイドお兄様の仲は、誰の目にも明らかなほど親密になっていた。
やがて伯父様と辺境伯様は腕を組み、堂々と宣言した。
『婿入りならば文句はあるまい!』
こうしてロイドお兄様は辺境伯家に婿養子として迎えられ、ソニア様は領地の若き女主人となった。
ふたりが肩を並べて領民に挨拶する姿は、まるで皆が憧れる理想の夫婦そのものだった。
暫くしてからわたくしたちは、そんなふたりからの手紙を読み終え、暖炉の前で静かにお喋りを楽しんでいた。
「良かったわね、エドガー様。ソニア様はもう寂しくないわ」
「ロイド殿も、きっと良い旦那になるだろう」
エドガー様は微笑み、そっと足を組み替えた。
その動作は以前より自然で、痛みも軽いようだった。
「最近、歩く姿がずいぶん軽やかになりましたわ。お医師様も驚いていましたもの」
「君のおかげだよ。あの竜巻で荒れ果てた庭を見て、もう一度立たねばと思ったからね」
わたくしはあの日の光景を思い出し、照れ隠しに話題を変える。
「領地経営も順調ですわ。新しい薬草の試験栽培も、好調で来年には収穫できるそうです」
「ああ、商会との契約も整った。これで領民も安心だろう」
窓の外には、整えられた庭と新芽をつけた木々。
竜巻の爪痕は、今ではもうどこにも見当たらなかった。
「ねえエドガー様」
「ん?」
「わたくし……今、とても幸せですわ」
そう言うと、エドガー様は少し照れたように目を細め
「ならば、私はそれで十分だ」
と、わたくしの手を包むように握ってくれた。
静かで、満ち足りていて、どこかくすぐったいような午後。
ソニア様は愛を得て、ロイドお兄様は新しい居場所を見つけた。そしてわたくしたちは平和な日々を過ごしている。
こんな幸福な日が訪れるなんて、あの日、誰が想像できたかしら? この幸せがずっと続きますよにと願わずにはいられなかった。
ーーーー
数日後の昼下がり。
レイモンドさんが一通の封書を持ってきた。
「辺境伯領より、お手紙でございます」
わたくしとエドガー様は顔を見合わせ、自然と微笑みが溢れる。差出人はひと目で分かった。
「また、ロイドお兄様ね」
封を切ると、まず最初に勢いよく目に飛び込んできた文字があった。
《ミリアン嬢、助けてくれ》
「……まあ、何事かしら?」
続きを読むと、どうやらロイドお兄様は新婚生活というものに想像以上の試練を感じているらしい。
『ソニアはとても愛らしいが、領地改革への情熱が強すぎてついていけない。
朝は視察、昼は会議、夜は資料整理……私は婿養子ではなく彼女の秘書なのではないか?』
思わず吹き出しそうになったところへ、追伸が目に入る。
『なお、この隣でソニアが優雅に微笑みながら、
(妻は頼りになる)と書き加えろと指示している』
そして、本当に続いていた。
『妻はとても頼りになる』
わたくしは堪えきれず、くすりと笑ってしまった。
「仲睦まじいじゃないか」
エドガー様は喉の奥で楽しそうに笑いながら、わたくしに肩を寄せた。
「ならば、こちらも返事を書きましょうか。応援する内容の」
「いや、新婚とはそういうものだ、放っておこう」
「まあ、意地悪ですわね、エドガー様」
「君に似たんだよ」
そう言いながら、彼はそっとわたくしの指先を握った。
暖炉の火は穏やかに揺れ、窓の外では新芽が風にそよいでいる。
遠く離れていても、手紙はこうして笑いと温もりを運んでくれるのだと、胸がじんわりと温かく満たされた。
「では、返事にはこう書きましょう。《幸せそうで安心しました》って」
「うむ。それが一番相応しいな」
ふたりで声を合わせて笑った。
ソニア様とロイドお兄様の仲は、誰の目にも明らかなほど親密になっていた。
やがて伯父様と辺境伯様は腕を組み、堂々と宣言した。
『婿入りならば文句はあるまい!』
こうしてロイドお兄様は辺境伯家に婿養子として迎えられ、ソニア様は領地の若き女主人となった。
ふたりが肩を並べて領民に挨拶する姿は、まるで皆が憧れる理想の夫婦そのものだった。
暫くしてからわたくしたちは、そんなふたりからの手紙を読み終え、暖炉の前で静かにお喋りを楽しんでいた。
「良かったわね、エドガー様。ソニア様はもう寂しくないわ」
「ロイド殿も、きっと良い旦那になるだろう」
エドガー様は微笑み、そっと足を組み替えた。
その動作は以前より自然で、痛みも軽いようだった。
「最近、歩く姿がずいぶん軽やかになりましたわ。お医師様も驚いていましたもの」
「君のおかげだよ。あの竜巻で荒れ果てた庭を見て、もう一度立たねばと思ったからね」
わたくしはあの日の光景を思い出し、照れ隠しに話題を変える。
「領地経営も順調ですわ。新しい薬草の試験栽培も、好調で来年には収穫できるそうです」
「ああ、商会との契約も整った。これで領民も安心だろう」
窓の外には、整えられた庭と新芽をつけた木々。
竜巻の爪痕は、今ではもうどこにも見当たらなかった。
「ねえエドガー様」
「ん?」
「わたくし……今、とても幸せですわ」
そう言うと、エドガー様は少し照れたように目を細め
「ならば、私はそれで十分だ」
と、わたくしの手を包むように握ってくれた。
静かで、満ち足りていて、どこかくすぐったいような午後。
ソニア様は愛を得て、ロイドお兄様は新しい居場所を見つけた。そしてわたくしたちは平和な日々を過ごしている。
こんな幸福な日が訪れるなんて、あの日、誰が想像できたかしら? この幸せがずっと続きますよにと願わずにはいられなかった。
ーーーー
数日後の昼下がり。
レイモンドさんが一通の封書を持ってきた。
「辺境伯領より、お手紙でございます」
わたくしとエドガー様は顔を見合わせ、自然と微笑みが溢れる。差出人はひと目で分かった。
「また、ロイドお兄様ね」
封を切ると、まず最初に勢いよく目に飛び込んできた文字があった。
《ミリアン嬢、助けてくれ》
「……まあ、何事かしら?」
続きを読むと、どうやらロイドお兄様は新婚生活というものに想像以上の試練を感じているらしい。
『ソニアはとても愛らしいが、領地改革への情熱が強すぎてついていけない。
朝は視察、昼は会議、夜は資料整理……私は婿養子ではなく彼女の秘書なのではないか?』
思わず吹き出しそうになったところへ、追伸が目に入る。
『なお、この隣でソニアが優雅に微笑みながら、
(妻は頼りになる)と書き加えろと指示している』
そして、本当に続いていた。
『妻はとても頼りになる』
わたくしは堪えきれず、くすりと笑ってしまった。
「仲睦まじいじゃないか」
エドガー様は喉の奥で楽しそうに笑いながら、わたくしに肩を寄せた。
「ならば、こちらも返事を書きましょうか。応援する内容の」
「いや、新婚とはそういうものだ、放っておこう」
「まあ、意地悪ですわね、エドガー様」
「君に似たんだよ」
そう言いながら、彼はそっとわたくしの指先を握った。
暖炉の火は穏やかに揺れ、窓の外では新芽が風にそよいでいる。
遠く離れていても、手紙はこうして笑いと温もりを運んでくれるのだと、胸がじんわりと温かく満たされた。
「では、返事にはこう書きましょう。《幸せそうで安心しました》って」
「うむ。それが一番相応しいな」
ふたりで声を合わせて笑った。
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