【完結】《今世は、彼と出会わない》何度死んでも愛してる

のんびり歩く

文字の大きさ
9 / 16
彼の話

もう一度会いたい

しおりを挟む

数多の魂が淡い光を放ち、川の様に流れ、新たな世界、新たな肉体へと散って行く。
その中で、魂だけとなった俺は彼女の魂を探していた。
似ている魂など無い、他の魂と間違えたりしない。間違えようがないその魂を流れの中に見つけ、そっと抱え込む。
そうして神としての最期の力を使い、俺の魂と彼女の魂を繋げた。

これで彼女と別れる事は無い。
彼女がどこへ生まれても、その側で俺も産まれる事が出来るはず・・・だった。

しかし、とある世界で人の子として産まれ出た俺の側に、彼女はいなかった。
同じ世界に居る気配はするのに、彼女の姿は見えない。
しかも、幼過ぎる身体では、思い通りに喋る事も、身動きする事も出来ず。動ける様になるまでに1年。なんとか言葉を喋れる様になるまでに1年。住処から脱走出来る様になるまでに6年の時を必要とした。

「お前、また脱走したのか?騎士達が嘆いておったぞ。」

広々とした庭の片隅にある東屋で、読書をしていた俺の元に、呆れた顔をした男がやって来た。

「とっとと廃嫡にでもしてくれれば、脱走などしなくて済むのですが。」

「お前はまだ子供だ。廃嫡などされれば、直ぐに野垂れ死ぬぞ。」

「心配には及びませんので、とっとと廃嫡してください。」

「お前はそればかりだな。やる気にさえなれば、お前は良き王になると思うのだがな。」

「何度も言っているでしょう。そんなものに興味は無いと。」

「そんなもの・・・か。隣国では、兄弟間で王位を争い、激しい内戦が起きたというのにな。」

「良かったではありませんか、我が国では、内戦など起きませんよ。第一王子は廃嫡される予定ですからね。」

俺の言葉に、大きな溜息を吐き出す男。彼は、今世での俺の父であり、この国において王と呼ばれる存在の男だ。
そして、その男の第一子である俺は、第一王子らしい。
全く興味など無いが、そういう事らしい。

「何故、それほどまでに城を出たがる?」

「ずっと王位に興味は無い、と言っているでしょう。」

「これから興味が出るかもしれんだろう。将来を決めるには、早すぎると思うが?」

まあ、普通ならばそう言うだろう。
俺の身体はまだ子供だ。普通の子供であれば、家から追い出されれば生きていけないほど小さく無力な年齢だ。

だが、俺は違う。

前世ほどではないが、前世での神としての力が多少使えるし、教育として付けられている教師達から、知識を絞れるだけ絞り取っている。その中で、子供でもまともに生活出来そうな方法を見つけるのは容易な事だし、彼女を探しに出かける事すらままならない今の生活は、俺にとって苦痛でしかなった。

「いえ、私にとっては遅いくらいです。」

早く彼女を見つけなければ。
彼女が近くに居る気配はするのに、どの程度近くなのか分からない。神としての力の大半は、元の世界に置いて来たし、残っていた神としての力も、彼女と俺の魂を繋げる為に使った。残っている力は少ない。
しかし、魂を繋げたおかげで、彼女が今、不幸だと感じる様な状況ではない事だけは分かる。だがそれもずっと続くとは限らない。

「お前が焦る理由は、夢の女の為か?」

夢の女・・・
前世という概念の無いこの世界では、どうせ理解される事はないだろうと思ったが、それでも父には前世の話をそのまま伝えている。
信じてくれるなら、それはそれで良かった。信じてくれなくても変人として、次期国王として不適合だと思われれば良いと思っていた。

「夢ではなく、前世です。」

「そのゼンセという考えはよく分からんが。つまりは、何処に居るかも分からん女を探しに行きたいという事だろう?」

「だから何度もそう言っているでしょう。」

「ならば、お前は王になれ。」

「は?」

「この国は広い。一人で探すには、一生かかっても難しいだろう。しかし王となれば、何処に居るかも分からん女性を救う事が出来る。守る事が出来る。助ける事が出来るのだぞ。」

つまり父が言うには、彼女の居場所が分からないのであれば、国中の人達が幸せになる様にすれば良いという、綺麗事と夢物語で固めた言葉だった。
馬鹿らしい。俺が守りたいのは彼女だけだ。彼女以外の者に興味などない。

しかし、居場所が分からない。歳も容姿も、名前も分からない。彼女が彼女であると分かるのは俺だけだ。人に頼む事は出来ない。出会う事を夢見て旅に出るのも良いが、この国が戦争を始めたら?疫病が広がったら?間伐や洪水などで、食糧危機にでもなったら?
ただ、旅をして彼女を探し続けるだけの俺に、彼女を助ける事は出来るのだろうか?
それも、彼女元へ辿り着いた後ならば、まだ良い。しかし彼女を見つける前に事が起きたらどうなる?

そう思うと、父の言葉を綺麗事だと笑う事は出来なかった。

「分かりました・・・。」

「ん?良いのか?」

「私が良き王になれるかは分かりませんが、精進します。」

「本当にか?本当に良いのか???」

「その代わり、妃を迎える気はありません。彼女以外の女性に触れる気もありません。私の後は弟か、弟の息子に継がせてください。」

「それは、構わんが・・・本当に良いのだな。」

「何度も言うのなら、旅に出・・・。」

「悪かった!!では早速手配をしてくる。王とは大変な仕事だからな!覚悟しておけよ。」

そう言いながら父は、王らしさを投げ捨て、浮かれた足取りで去って行った。
父は王である事を受け入れてはいたが、王であり続けたいとは思っていなかったらしく・・・それから10年後。
俺がまだ若ずぎるという理由で、父を王の座に座らせ続けようとする者達の反対を押し切り、王位を俺に譲・・・押し付けると、さっさと田舎へ引っ込んでしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あざとさを捨てた令嬢は、若き公爵に溺愛される

古紫汐桜
恋愛
婚約者の裏切りを目撃し、命を落とした“私”が目を覚ましたのは、 見知らぬ貴族令嬢の身体の中だった。 そこは、誰かの悪意によって評判を地に落とした世界。 かつて“あざとさ”で生きていた彼女の代わりに、 私はその人生を引き受けることになる。 もう、首を揺らして媚びる生き方はしない。 そう決めた瞬間から、運命は静かに歪み始めた。 冷酷と噂される若公爵ユリエル。 彼もまた、自らの運命に抗い続けてきた男だった。 そんな彼が、私にだけ見せた執着と溺愛。 選び直した生き方の先で待っていたのは、 溺れるほどの愛だった。 あざとさを捨てた令嬢と、運命に翻弄される若公爵。 これは、“やり直し”では終わらない、致命的な恋の物語。

剣士に扮した男爵令嬢は、幽居の公子の自由を願う

石月 和花
恋愛
 両親が亡くなって男爵家を叔父に乗っ取られた令嬢のアンナは、騎士だった父から受けた手解きのお陰で、剣を手に取り冒険者として日銭を稼ぎながら弟を育てていた。  そんなある日、ひょんな事から訳ありそうな冒険者ルーフェスと知り合ったのだった。  アンナは、いつも自分の事を助けてくれるルーフェスに、段々と心が惹かれていったが、彼女にはその想いを素直に認められなかった。  何故ならアンナの目標は、叔父に乗っ取られた男爵位を取り返して身分を回復し、弟に爵位を継がせる事だったから。この願いが叶うと、冒険者のルーフェスとは会えなくなるのだ。  貴族の身分を取り戻したい気持ちと、冒険者としてルーフェスの隣に居たい気持ちの間で悩み葛藤するそんな中で、アンナはルーフェスの重大な秘密を知ってしまうのであった…… ## ファンタジー小説大賞にエントリーしています。気に入って頂けましたら、応援よろしくお願いします! ## この話は、別タイトルで小説家になろうでも掲載しています。

離婚するはずの旦那様を、なぜか看病しています

鍛高譚
恋愛
「結婚とは、貴族の義務。そこに愛など不要――」 そう割り切っていた公爵令嬢アルタイは、王命により辺境伯ベガと契約結婚することに。 お互い深入りしない仮面夫婦として過ごすはずが、ある日ベガが戦地へ赴くことになり、彼はアルタイにこう告げる。 「俺は生きて帰れる自信がない。……だから、お前を自由にしてやりたい」 あっさりと“離婚”を申し出る彼に、アルタイは皮肉めいた笑みを浮かべる。 「では、戦争が終わり、貴方が帰るまで離婚は待ちましょう。   戦地で女でも作ってきてください。そうすれば、心置きなく別れられます」 ――しかし、戦争は長引き、何年も経ったのちにようやく帰還したベガは、深い傷を負っていた。 彼を看病しながら、アルタイは自分の心が変化していることに気づく。 「早く元気になってもらわないと、離婚できませんね?」 「……本当に、離婚したいのか?」 最初は“義務”だったはずの結婚。しかし、夫婦として過ごすうちに、仮面は次第に剥がれていく。 やがて、二人の離婚を巡る噂が王宮を騒がせる中、ベガは決意を固める――。

私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―

喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。 そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。 二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。 最初は手紙も返ってきていたのに、 いつからか音信不通に。 あんなにうっとうしいほど構ってきた男が―― なぜ突然、私を無視するの? 不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、 突然ルイスが帰還した。 ボロボロの身体。 そして隣には――見知らぬ女。 勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、 私の中で何かが壊れた。 混乱、絶望、そして……再起。 すがりつく女は、みっともないだけ。 私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。 「私を簡単に捨てられるとでも? ――君が望んでも、離さない」 呪いを自ら解き放ち、 彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。 すれ違い、誤解、呪い、執着、 そして狂おしいほどの愛―― 二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。 過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

どんなあなたでも愛してる。

piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー 騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。 どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか? ※全四話+後日談一話。 ※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。 ※なろうにも投稿しています。

変人令息は悪女を憎む

くきの助
恋愛
「ブリジット=バールトン。あなたを愛する事はない。」 ああ、ようやく言えた。 目の前の彼女は14歳にしてこれが二度目の結婚。 こんなあどけない顔をしてとんでもない悪女なのだ。 私もそのことを知った時には腹も立ったものだが、こちらにも利がある結婚だと割り切ることにした。 「当初話した通り2年間の契約婚だ。離婚後は十分な慰謝料も払おう。ただ、白い結婚などと主張されてはこちらも面倒だ。一晩だけ付き合ってもらうよ。」 初夜だというのに腹立たしい気持ちだ。 私だって悪女と知る前は契約なんて結ぶ気はなかった。 政略といえど大事にしようと思っていたんだ。 なのになぜこんな事になったのか。 それは半年ほど前に遡る。

記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛

三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。 ​「……ここは?」 ​か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。 ​顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。 ​私は一体、誰なのだろう?

処理中です...