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彼の話
二度目の出会い
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そこから俺は、領主の裁量により、格差の激しかった医療、教育、治安に力を入れ、あらゆる有事に備えられる様に準備し、各地の状況を確認する為という名目で、密かに各地を巡った。
慕ってくれる者達に囲まれ、穏やかとは言いがたいが充実した日々の中で、何処に居るかも分からない彼女が、少しでも穏やかな日々が送れる様にと願い、奔走していた。そうして気付けば俺は、賢王と呼ばれる様になっていた。
しかし、それも全ては彼女の為。
彼女を見つける事の出来ない不甲斐ない俺が出来る、精一杯の事をしているだけ。
それだけだった。
「ララベル・・・・」
それは、偶々訪れた小さな小さな村だった。
本当の視察先は、もう少し先だったが、前日の雨で道がぬかるみ思うように進めず、偶々立ち寄る事になった小さな村。
そこで見つけた。
ずっと、ずっと探し求めていた彼女を。
「ララベル、ララベル、ララベル・・。」
彼女を見た瞬間、彼女が彼女であると分かった。
勝手に足が前へ前へと進んで行く。
彼女を求め全身が、魂が、彼女へ向かっていく。
互いを結ぶ魂の糸を手繰り寄せるように彼女に手を伸ばし、腕の中に閉じ込めれば、世界に色が溢れていく。
そして、それと共に深く深く安堵した。
彼女が生きている事に、彼女を俺の腕の中に閉じ込める事が出来た事に。
「・・・・」
しかし、彼女から何の反応も返ってこない。
俺の事を覚えていないのかもしれない。少し寂しいと感じるが、俺とは違い、彼女は元々ただの人だったのだから仕方がないだろう。
それならそれで、これからゆっくりと俺の事を知っていってもらえば良いだけだ。
そんな事を思っていると、俺の腕の中にいる彼女が身じろぎしながら俺の顔見上げた。
可愛い。顔の造形など全く興味は無いが、それが彼女だと思えば、全てが愛おしく可愛らしい。
しかも、そんな彼女から思いがけない言葉を貰えたらなら、俺は・・・
「か・・・かみ・・さま?」
かなり戸惑いながらも、確かめる様に漏れてきた声に、驚きと安堵と何か熱いものが込み上げてきた。
目から涙がポロポロとこぼれ落ちては、彼女の頬へと雨の様に降っていく。
「お久しぶりです。神様。」
俺の表情を見て、俺が俺であると確信したのだろう。彼女は俺と同じ様にポロポロと涙を零しながら、嬉しそうに笑っていた。
嬉しそうに、とても嬉しそうに笑ってくれていた。
それから彼女のご両親に挨拶をし、村の中を見て回った。
彼女の暮らす村は小さかったが、病院も学校もあり、治安もとても良いらしい。
彼女の話では、前国王の頃も悪かった訳ではないが、今の国王になってから飛躍的に生活が楽になったとの事だった。
それを聞き、俺が今までしていた事が間違いではなかったのだと安堵し、同時に彼女に褒められた事で浮かれた俺は、うっかり自分が王だと言ってしまった。
「・・・そう・・・ですか。」
悲しそうな彼女の表情にハッとする。
「大丈夫だ。俺には、妻も婚約者も愛妾もいなければ、うっかりそこら辺の女に手を付ける様な事もした事がない。俺は清いままだ。それに、先代国王との約束で、君を見つけたら直ぐにでも王位を弟か弟の息子に譲る事になっている。まあ直ぐにとは言えないが、王位を正式に譲れば、これからは一緒に居られる。というか居る。それに、この辺りの土地を治めていた領主には子供がおらず、親戚に跡を継がせるか、養子をとるか悩んでいたからな。俺が跡を継げは問題ないはずだ。だから安心しろ。」
そう言うと、彼女は困った様でいて、嬉しそうな表情をしながら
「・・・はい。」
と、小さく返事をくれた。これでやっと彼女と共に居られる。
しかし、やるべき事はまだある。直ぐに全てを投げ出して彼女と共に生きたいが、それで国が荒れては意味が無い。俺は、俺について来た護衛数名に、今回行く予定であった視察先に視察の中止と、城へ帰り弟に王位を譲る手筈を整える様に伝えに行かせた。
この時の俺は浮かれていたし、父との約束もあり、王位の継承は直ぐに行えると思っていた。
だから、3日ほど彼女の村に滞在した後、『直ぐに戻って来る』と言い城へと帰った。今度この地へ戻る時には、彼女と共にいられると信じて。
それなのに・・・・それなのに・・・・
「兄上・・・大変申し上げにくいのですが・・・彼女は自害しました。」
城に戻って二週間・・弟が、意味の分からない言葉を喋りだした。
「どうやら、あの村は・・・山賊に襲われた様です・・・。知らせを受けた領主が直ぐに私兵を連れて向かった様ですが村は焼き払われた後で・・・。」
何を言っているのか分からない。分かりたくもない。けれど聞かなければならない・・・
「彼女は・・・。」
声が震える。
そんな俺を、弟は悲しそうな目で見詰めながら、ゆっくりと何かを差し出した。
それは、俺が彼女と別れる時に渡した物。
俺が着ていた上着だった。ただ色が元の色とは違う。そんなに赤黒くなかった。そんな焦げ跡なんて無かった。
「直ぐに村へ向かう。」
そう言い残し、俺は護衛も付けず城を出た。休みもとらず馬を何頭も乗り換え、彼女の村があった場所へと向かう。
俺が彼女を置いて村を出て直ぐに、彼女が不安がっているのを感じていた。けれどそれは、俺が王である事や、俺が本当に戻って来るか。といった不安なのだと思っていた。
だから弟に、彼女に渡したはずの服を見せられた時に動揺した。
ずっと感じていた彼女の不安は、俺と離れた事に対するものではなかったのか、もっと違うものだったのかと。
けれど、城を飛び出して直ぐに変だと感じた。
彼女は生きている。それに、彼女は確かに不安がってはいるが、恐怖心を感じてる様子は無い。しかし、弟が持って来た服は間違い無く俺の物だった。
俺は、彼女無事を確認せずにはいられず、彼女の村へと急いだ。
慕ってくれる者達に囲まれ、穏やかとは言いがたいが充実した日々の中で、何処に居るかも分からない彼女が、少しでも穏やかな日々が送れる様にと願い、奔走していた。そうして気付けば俺は、賢王と呼ばれる様になっていた。
しかし、それも全ては彼女の為。
彼女を見つける事の出来ない不甲斐ない俺が出来る、精一杯の事をしているだけ。
それだけだった。
「ララベル・・・・」
それは、偶々訪れた小さな小さな村だった。
本当の視察先は、もう少し先だったが、前日の雨で道がぬかるみ思うように進めず、偶々立ち寄る事になった小さな村。
そこで見つけた。
ずっと、ずっと探し求めていた彼女を。
「ララベル、ララベル、ララベル・・。」
彼女を見た瞬間、彼女が彼女であると分かった。
勝手に足が前へ前へと進んで行く。
彼女を求め全身が、魂が、彼女へ向かっていく。
互いを結ぶ魂の糸を手繰り寄せるように彼女に手を伸ばし、腕の中に閉じ込めれば、世界に色が溢れていく。
そして、それと共に深く深く安堵した。
彼女が生きている事に、彼女を俺の腕の中に閉じ込める事が出来た事に。
「・・・・」
しかし、彼女から何の反応も返ってこない。
俺の事を覚えていないのかもしれない。少し寂しいと感じるが、俺とは違い、彼女は元々ただの人だったのだから仕方がないだろう。
それならそれで、これからゆっくりと俺の事を知っていってもらえば良いだけだ。
そんな事を思っていると、俺の腕の中にいる彼女が身じろぎしながら俺の顔見上げた。
可愛い。顔の造形など全く興味は無いが、それが彼女だと思えば、全てが愛おしく可愛らしい。
しかも、そんな彼女から思いがけない言葉を貰えたらなら、俺は・・・
「か・・・かみ・・さま?」
かなり戸惑いながらも、確かめる様に漏れてきた声に、驚きと安堵と何か熱いものが込み上げてきた。
目から涙がポロポロとこぼれ落ちては、彼女の頬へと雨の様に降っていく。
「お久しぶりです。神様。」
俺の表情を見て、俺が俺であると確信したのだろう。彼女は俺と同じ様にポロポロと涙を零しながら、嬉しそうに笑っていた。
嬉しそうに、とても嬉しそうに笑ってくれていた。
それから彼女のご両親に挨拶をし、村の中を見て回った。
彼女の暮らす村は小さかったが、病院も学校もあり、治安もとても良いらしい。
彼女の話では、前国王の頃も悪かった訳ではないが、今の国王になってから飛躍的に生活が楽になったとの事だった。
それを聞き、俺が今までしていた事が間違いではなかったのだと安堵し、同時に彼女に褒められた事で浮かれた俺は、うっかり自分が王だと言ってしまった。
「・・・そう・・・ですか。」
悲しそうな彼女の表情にハッとする。
「大丈夫だ。俺には、妻も婚約者も愛妾もいなければ、うっかりそこら辺の女に手を付ける様な事もした事がない。俺は清いままだ。それに、先代国王との約束で、君を見つけたら直ぐにでも王位を弟か弟の息子に譲る事になっている。まあ直ぐにとは言えないが、王位を正式に譲れば、これからは一緒に居られる。というか居る。それに、この辺りの土地を治めていた領主には子供がおらず、親戚に跡を継がせるか、養子をとるか悩んでいたからな。俺が跡を継げは問題ないはずだ。だから安心しろ。」
そう言うと、彼女は困った様でいて、嬉しそうな表情をしながら
「・・・はい。」
と、小さく返事をくれた。これでやっと彼女と共に居られる。
しかし、やるべき事はまだある。直ぐに全てを投げ出して彼女と共に生きたいが、それで国が荒れては意味が無い。俺は、俺について来た護衛数名に、今回行く予定であった視察先に視察の中止と、城へ帰り弟に王位を譲る手筈を整える様に伝えに行かせた。
この時の俺は浮かれていたし、父との約束もあり、王位の継承は直ぐに行えると思っていた。
だから、3日ほど彼女の村に滞在した後、『直ぐに戻って来る』と言い城へと帰った。今度この地へ戻る時には、彼女と共にいられると信じて。
それなのに・・・・それなのに・・・・
「兄上・・・大変申し上げにくいのですが・・・彼女は自害しました。」
城に戻って二週間・・弟が、意味の分からない言葉を喋りだした。
「どうやら、あの村は・・・山賊に襲われた様です・・・。知らせを受けた領主が直ぐに私兵を連れて向かった様ですが村は焼き払われた後で・・・。」
何を言っているのか分からない。分かりたくもない。けれど聞かなければならない・・・
「彼女は・・・。」
声が震える。
そんな俺を、弟は悲しそうな目で見詰めながら、ゆっくりと何かを差し出した。
それは、俺が彼女と別れる時に渡した物。
俺が着ていた上着だった。ただ色が元の色とは違う。そんなに赤黒くなかった。そんな焦げ跡なんて無かった。
「直ぐに村へ向かう。」
そう言い残し、俺は護衛も付けず城を出た。休みもとらず馬を何頭も乗り換え、彼女の村があった場所へと向かう。
俺が彼女を置いて村を出て直ぐに、彼女が不安がっているのを感じていた。けれどそれは、俺が王である事や、俺が本当に戻って来るか。といった不安なのだと思っていた。
だから弟に、彼女に渡したはずの服を見せられた時に動揺した。
ずっと感じていた彼女の不安は、俺と離れた事に対するものではなかったのか、もっと違うものだったのかと。
けれど、城を飛び出して直ぐに変だと感じた。
彼女は生きている。それに、彼女は確かに不安がってはいるが、恐怖心を感じてる様子は無い。しかし、弟が持って来た服は間違い無く俺の物だった。
俺は、彼女無事を確認せずにはいられず、彼女の村へと急いだ。
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