煙草1本分の話

Ku-

文字の大きさ
2 / 3

副流煙の話

しおりを挟む
「うわ、先輩、やめて下さいよ。俺まで臭くなるじゃないっすか」
次の取引先まで少し会いた時間にコンビニに寄った。上司はニヤニヤしながらフーッと煙を吹きかけてくる。
「いーじゃん。シュッシュってやつするしマウスウォッシュもあるし、この一服で切り替えるんだよ」
「いやほんとに、やめさせる気ないけど、良いことないっすよ。それに副流煙って主流煙の何十倍もやばいって聞いたことありますし。やめた方がいいっすよ。ウッ…絶対アイスの方がいいって」
強い日差しに溶かされる前にガリガリ君を頬張った。
「キーンてしながらよく言うよな。しかもやめさせる気あんじゃん笑 まあ明日から休みだし今日は付き合えや」

 俺は非喫煙者だ。飲み会もよく行くしたまにパチンコもやる。あとは同僚や友人。受動喫煙はしてるだろう。

 明日からお盆休みに入るので帰省の準備を始めた。冷蔵庫も空にしてしまったし、今日はコンビニで済まそうかな。週に5日はコンビニ飯だけど。
 家の近くのファミマで冷やし中華とファミチキと缶ビールをカゴに入れた。あっそうだ。
「えーっと、178番ください」
「はい。…全部で1280円です。」
煙草どんどん値上がりしてるなあ。
「ありがとうございましたー」
 ビールを飲みながらさっき買った煙草を見てみる。タール17ミリだって。よくわかんないけど強そう。これが体に悪いんだよね。1日2箱だと340ミリ、3センチちょいあるぞ。いや単位がミリグラムとミリメートルから違うわ。とか1人でノリツッコミしてみたりした。

 新幹線で3時間の実家。最寄駅のひとつ手前の駅で降りた。
「よ、お父さん、久しぶり。元気してた?」
転がったビールの缶を片付けながら話しかける。
「ほら、お父さんの好きなやつ。たまにしか吸えなくて待ってたんじゃない?1日2箱くらい吸ってたもんな。」
そう言って俺は煙草に火をつけた。案の定むせる。
「よくこんなの吸ってたよなあ。何が良いんだよ。俺の上司も同じの吸ってるけど、でも自分で吸うとなんか臭い違う気がする」
いつもは浴びている細い煙が父の方に向かう。
 何とか一本吸い終わって、残りは父にあげた。
「じゃーな。また正月くらいにくるわ」
父にそう言って実家に帰った。

「××!少し遅かったから心配してたけど良かった。おかえりなさい。元気?仕事はどう?」
「あれ、LINEしたんだけど見てない?元気。仕事も元気。」
「うそ!気づかなかった。仕事も元気って何よ笑…あ、お父さんの匂いがする。寄ってきたのね。きっと喜んでるわ。毎年ありがとうね」

 俺は煙草が嫌いだ。だけど20歳になってからは年に2本吸う。父はヘビースモーカーだった。外仕事をしていた父は冬でも日焼けしてて、腕も逞しかった。
 中学生の頃やっと父に背が追いつきそうになった時、父は急性心筋梗塞で亡くなった。あまりにも突然だった。その後は母と姉と3人で力を合わせながら生活してきた。姉弟2人を1人で大学まで出させてくれた母にはとても感謝をしている。
 昨年姉が結婚した時に知ったのだが、学費や俺達を育てる為のお金はほとんど父が用意しておいてくれたらしい。自分が学歴で苦労したからと。お陰で俺は国立大学を卒業できた。かっこ良すぎるんだよな。父よりも背が高くなったけれど、いつまで経っても何をしても父には敵わないと思う。

 だけど。父と同じ煙草を吸っている時だけは、父に少し追いついた気がする。先端から上がる煙のフィルターをかけて見た世界は少しいつもと違う。俺にはまだ美味しさが分からないから、まだまだなんだろうなってその度に自分に喝を入れる。亡くなっても尚、叱咤激励してくれる父は本当に偉大だ。
 3日程、母の飯を食った。

 よし。また帰ったら頑張ろう。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

アルファポリスであなたの良作を1000人に読んでもらうための25の技

MJ
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスは書いた小説を簡単に投稿でき、世間に公開できる素晴らしいサイトです。しかしながら、アルファポリスに小説を公開すれば必ずしも沢山の人に読んでいただけるとは限りません。 私はアルファポリスで公開されている小説を読んでいて気づいたのが、面白いのに埋もれている小説が沢山あるということです。 すごく丁寧に真面目にいい文章で、面白い作品を書かれているのに評価が低くて心折れてしまっている方が沢山いらっしゃいます。 そんな方に言いたいです。 アルファポリスで評価低いからと言って心折れちゃいけません。 あなたが良い作品をちゃんと書き続けていればきっとこの世界を潤す良いものが出来上がるでしょう。 アルファポリスは本とは違う媒体ですから、みんなに読んでもらうためには普通の本とは違った戦略があります。 書いたまま放ったらかしではいけません。 自分が良いものを書いている自信のある方はぜひここに書いてあることを試してみてください。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

アルファポリスの禁止事項追加の件

黒いテレキャス
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスガイドライン禁止事項が追加されるんでガクブル

アルファポリス投稿ガイドラインについて

ゆっち
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスでの利用規約、投稿ガイドラインについて考察。 ・2024年3月からスコア切り始まる。 ・ptが高いのに0スコアになるのは何故? ・一定の文字数が必要 曖昧で解らない部分は運営様に問い合わせ、規約に則った投稿を心掛けています。

処理中です...