十番目の愛

夜宮 咲

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幕開け

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広い敷地に建つ屋敷。

鏡月の姓をもつ者が住む。

私もその一人。

「十和!」

敷地内にある広い庭園のベンチで空を見上げていると、

遠くから私の名前を呼ぶ声がする。

「何?」

「そろそろお父様が戻るらしい」

「そう」

鏡月 十和(かがつき とわ)。

これが私の名前。

この鏡月家で暮らしている。

「みんな集まってるみたいだから、僕らもいそごう」

私のとなりにいるのは鏡月 九都(かがつき くと)。

私と同じ16歳で、1日を共にする時間が長い関係。

同い年ということもあって、1番居心地のよい存在だ。

私達は同じ鏡月の姓だが、血のつながりはない。

私達の保護者ー鏡月 零(かがつき れい)は、

日本の財閥のトップに君臨する男で、

怖気な顔つきや圧倒的存在感の強さが有名。

彼は国を動かすほどの力を持っていると言われている。

鏡月 零は、私達を含め11人の養子をもつ。

そして、その子らには迎え入れた順番に漢数字がはいった

名前が与えられている。

このことから、通称"ゼロ"と呼ばれている。

「今日はお父様の誕生日だから、みんな気合いがはいってるみたいだよ」

「気合い?なんで?」

「みんなお父様に気に入られたいんだよ」

「ふーん」

今日はゼロの誕生日。

全員そろって食事をとることになっている。

屋敷に着くと、主役以外はすでにそろっているようだっ

た。

ここで、11人の養子を紹介しよう。



1 鏡月 一(かがつき はじめ)         23歳
2.鏡月 二葉(かがつき ふたば)         21歳
3.鏡月 三葉(かがつき みつば)         21歳
4.鏡月 四菜(かがつき しいな)         20歳
5.鏡月 五希(かがつき いつき)         18歳
6.鏡月 六花(かがつき りっか)         17歳
7.鏡月 七緒 (かがつき なお)            17歳
8.鏡月 八重(かがつき やえ)             17歳
9.鏡月 九都(かがつき くと)             16歳
10.鏡月 十和(かがつき とわ)            16歳
11.鏡月 十一歌(かがつき といか)     13歳




それぞれ時期は違うが養子として迎えられた兄妹。

血のつながりはない。

「九都と十和も席に着いて。お父様が到着されたようだから」

1番目の一に言われ、席に着く。

正直、誕生日に興味はない。

だが、目の前に並べられる豪華な食事には魅力を感じる。

むしろこれが目当て。

「旦那様がお戻りになられました」

鏡月家に長年使える使用人の守屋 カヲル(もりや かおる)

の後にこの家の主が姿を現す。

厳しい目つき、たたずまい、圧。

一瞬で空気を変える力…これがゼロだ。

「お帰りなさいお父様!」

「お誕生日おめでとうございます」

「ケーキもあるよーっ」

次々と飛び交う言葉。

この兄妹たちは、ゼロに気に入られるために必死なのだ。

私にはよく分からない。

「お父様。先日の裁判で勝利しました」

「今年も生徒会長に選ばれたんですよ」

「私、プレゼント用意したの!開けてみてよっ」

「僕も用意しました」

「あたしも~!!」

食事をとりながら最近あったことなどを順番に伝えていく

兄妹たちをゼロは見向きもせず、ただ淡々と答える。

「…そうか」

九都と私は、黙々と目の前に用意された食事を食べる。

そんは私達を目にかけ、一が話しをふる。

「九都。お前もお父様に何か報告することはないか?」

「いや、僕は何もないよ。兄さんたちみたいなすごいことしてないし、普通に学校通ってるだけだから」

「十和は?」

「私もとくに」

私は必死になる理由がない。

ただ普通に生きていられればそれでいい。

「あとはお前たちの好きにしろ」

低い声が響く。

ゼロは席を立ち、部屋の扉の前で止まる。

「十和」

私の名前が呼ばれる。

「…はい」

「後で私の部屋に来なさい」

そう言い、部屋を出て行った。

「また十和?」

「なんで十和だけ…」

お父様がいなくなった途端、皆が本来の姿に戻る。

「お父様はなんで十和ばっかり」

「私達の名前は一度も呼ばないのに…」

嫌な空気がながれる。

さっさと出てしまおうと扉に向かう途中で聞こえた言葉。

「変な目してるくせに」

私の母は、ロシア人の父と結婚した。

父の遺伝で片目だけ青い瞳をもった私。

ゼロは、私を気に入っているのか、

私の名前はちゃんと呼び、そしてこうやってたまに部屋に

呼び出すことがある。

それをよく思わない兄妹たちは私を嫌っているようだ。

「失礼します」

ゼロの書斎へ入る。

「何かご用でしょうか」

しばらく間があいてからゼロの口が開く。

「…最近はどうだ」

「普通です」

「困っていることはないか」

「とくにないです」

「…そうか」

「やる事があるので、何もなければこれで失礼します」

そう言って早々と書斎を出た。

私はゼロが嫌いだ。

何を考えているのか分からない。

できればあまり関わりたくもない。

だが、私にはやる事がある。

そのためにここにいる。

私の計画はすでに始まっているのだから。

これからやる事がたくさんある。

私のやる事に誰も邪魔はさせない。




「さぁ、はじめようか」



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