十番目の愛

夜宮 咲

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はじめの一歩

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さぁ、どうしようか?



誕生日会の翌日。

私は九都と一緒に学校の中庭で昼食をとりながら考えていた。

鏡月の兄妹たちが通う学校は全員同じというわけではない。

だが、どの学校もゼロが入学手続きを行った名門私立校。

私と九都が通っている学校も温室育ちのお嬢様やお坊ちゃんがたくさんいる。

学力にも力をいれている学校ではあるから、

まぁ、まともな方だろう。

「十和さ、昨日はお父様に何か言われたの?」

あの後、私はすぐに自分の部屋に戻ってしまった。

「あぁ~…別にたいした話しはしてないよ」

「十和が部屋から出て行った後の兄さんと姉さんたちの悪口大会はすごかったよ」

「もぅ慣れたわ。鏡月に来た頃からだもの。今さら気にしない」

上の兄と姉にあたいする人たちは、

私のことを随分と嫌っているようだ。

鏡月に来たばかりの頃、

ゼロが私の名前を呼んだときから兄と姉たちは私をよく思っていない。

私よりも前から鏡月にいる兄と姉たちにとって、

自分は一度も名前を呼ばれたことがないのに、

来たばかりの奴が気に入られることは由々しき問題なのだろう。

「そんなことで?」と思うかもしれないが、

自分たちが大好きな人のお気に入りが突然やって来た目の色が左右異なる奇妙な奴だと思うと、

プライドが許せないのだろう。

おまけにあんな態度をとる私だ。

当然、良くは思われないだろう。

「はぁ…」

「何?考えごと?」

「まぁね…」

「十和って何を考えているのか分からないよね」

「そうかしら」

「そうだよ。授業中はほとんど本を読んでいるのにテストの順位は毎回1位だし、休み時間はすぐにどっか行っちゃうし」

「授業はちゃんと聞いているし、休み時間は1人になりたいから人気のないところへ行っているだけ。別におかしなことではないじゃない」

「まぁ、それが十和らしいところではあるけどね」

「遠回しにおかしいと言ってる気がするけど…」

「はははっ」

笑って誤魔化された。

「悩みがあるなら聞くけど」

「たいしたことではないの。だから、大丈夫」

「そう?なんかあったら相談にのるから。…そろそろ教室に戻ろう。次、移動らしいから」

昼食を食べ終え、教室に戻る。

九都は、鏡月になる前からのつき合いだ。

私の母親が重い病気で亡くなり、

その数日後に父親が事故で亡くなった。

身寄りがなかった私は施設に預けられることになり、そこで同じ日にやってきたのが九都だった。

歳が同じだったのと、

タイミングが同じだったことから、

親近感をもち、

私から話しをかけたのがきっかけだった。

施設に入って2週間頃、

ゼロ本人が私を引き取りたいと申し出てきた。

そこで私は「あの子も一緒に連れて行って」と頼み、

九都と私は共に鏡月へやって来たのだった。

鏡月に来てからも九都は変わらず私のそばにいてくれている。

「九都」

「ん?」

「ありがとう」

「よく分かんないけど、どういたしまして?」

九都は頼れる存在だ。

この存在は消したくない。











学校が終わり、迎えの車で家に戻り各自部屋へ戻る。

部屋へ戻る途中、前方から2人の影が向かってくる。

一応気を遣って、壁側に寄る。

2番目と3番目 ー 二葉と三葉。

珍しい男女の双子は、

いつも2人で並んで歩く。

姉の二葉の横に弟の三葉がひっつくように並んで歩いて行く。

三葉のポケットから何やら紐が落ちた。

「三葉お兄様、落とされましたよ」

2人が振り返って私の手元にある紐を見る。

それを見て二葉がズカズカとこちらへ向かってきて、紐を取り上げる。

「三葉。私があげたミサンガつけてないの?」

後ろに立つ三葉は黙ったままこちらへとやってくる。

「……忘れてた」

「もぅ!お揃いでつけようって言ったじゃないっ」

「上手くつけられなくて…」

「三葉は不器用だもんね。三葉ったら、私がいないとなんにもできないんだから~」

そして私の方を見る。

「…でも、また新しいのを買ってあげる。この子が触ったものなんてつけてほしくないもの」

そう言って2人はどこかへ行ってしまった。

「はぁ…私は拾っただけなのに。感謝してほしいぐらいだわ」

たとえ私が親切なことをしても関係ない。

何をやっても話しにならない。

言い返しても意味がない。

ただ黙っていればいい。


そんなことではダメ。


私が何をした?

いいえ。

何もしていないわ。

ただ私はあの人に気に入られ、

それに皆が嫉妬しているだけ。

それを黙って聞くだけですって?

私が我慢をする必要なんてどこにもない。

私だって1人の人間。

私にだって自由が許されている。

「…考えがまとまったわ」

自分の部屋に入り、机に鞄を置く。

窓を開けると、

心地よい風が入り込んでくる。

「まずは手始めに、あの人からにしましょう。さぁ、どうなるかしら…?」

スタートラインに立った。

ここから私は羽ばたいていく。

机の上にある瓶の中から飴玉を取り、

口の中へ放りこむ。

口の中でレモン味がパチパチと弾ける。

「さて、忙しくなりそうね」

窓に入り込む風はいつの間にかやんでいた。













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