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鏡月 二葉の大事なもの(1)
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私と三葉の母親は、私達を産んですぐに亡くなってしまった。
父親とは離婚していたらしい。
気づいたときには祖母の家で暮らしていた。
だが、祖母も歳だったため身体に負担を抱えていた。
だから、自分たちのことは自分でやる。
そう決めていた。
弟の三葉は無口で不器用な子だから、
弟の分まで私がなんとかしようと思った。
その気持ちは、祖母が亡くなってからよりいっそう強くなった。
私達が鏡月家へ迎え入れられたのは、
祖母が亡くなってから1年後。
施設で生活をしていたところへお父様がやって来た。
はじめは、「怖い人」と思った。
大きな屋敷に入ったとき、
別世界のように感じた。
よくドラマで観るようなお金持ちの家そのものだった。
私達が来たときには、
すでに一お兄様がいた。
私達の3つ歳上であるお兄様はとても優しい人で、
突然やって来た私達に親切に話してくれた。
食事や部屋も、どれも豪華。
これからここで暮らしていくと思うと、
少し緊張した。
今までの暮らしと全く違うから、
こんなお金持ちの家で暮らしていけるのだろうか?と思った。
それと同時に、ここにいれば生活に困らないと思った。
施設での生活に不満があったわけではないが、
こちらの方が断然いい。
お金の心配をしなくて済む。
三葉と安心して過ごすことができる。
ここでの暮らしには意外とすぐに慣れた。
私達が鏡月家で暮らし始めた後も、
お父様が私達と同じように施設から引き取った子を連れて帰ってくることがあった。
みんな血のつながりはないけれど、
すぐに仲良くなれた。
でも、あの子だけは違った。
ある日、お父様が2人の子どもを連れて帰ってきた。
1人は小説に登場するような好青年という感じの男の子だった。
だが、もう1人の子は今までの子と違った。
少し明るい髪色、透き通った肌、そして左右異なる目。
オッドアイというのだろうか。
青い瞳が宝石のように光っていた。
すごく惹きつけられる目をしていた。
「…名前を言いなさい」
お父様の低い声が響く。
「初めまして。鏡月 九都と言います。よろしくお願いします」
「鏡月 十和です」
淡々と答えた後、私達も一通り自己紹介をした。
この時の私は仲良くなれるかな、と考えていた。
だが、屋敷を案内しようとするときだった。
「十和」
お父様が名前を呼んだ。
「あと、君もだ。学校の手続きをする。私についてきなさい」
そう言われ、「すみません」と礼儀正しく九都が断った後、十和と一緒にお父様に連れて行かれた。
お父様たちが姿を消した後、
他の兄妹たちはそれぞれ言葉を発した。
「今、名前を呼んだ…?」
「どうして、今日来たばかりなのに」
「ここに来てしばらく経つのに、私達はまだ一度も呼ばれたことがないのよ!?」
私も正直驚いた。
しかも、十和っていう子の名前だけをお父様は口に出して呼んだ。
「二葉……」
袖をつかまれ、我にかえる。
三葉が私の顔を覗いていた。
「何?三葉」
「大丈夫…?」
「え?」
三葉はあまり感情を表情に出さないが、
双子の私にはなんとなく分かる。
これは、心配しているんだ。
「大丈夫だよ。ちょっと考えごとしてただけ。ごめんね、心配しないで」
今まで通りあの子たちとも仲良くなればいいだけ。
そう、それだけ。
何を驚いているの。
ただ名前を呼ばれただけじゃない。
三葉に心配なんかさせちゃダメ。
明日、話しをかけてみよう。
次の日、リビングにいる九都を見つけて声をかけた。
九都は、気さくな感じの少年だった。
「へぇ、双子なんですか」
「そうなの。こっちは三葉。無口で分かりにくいかもしれないけど、優しい子だから仲良くしてあげて」
「もちろんです。あ、十和には声かけましたか?」
「ううん、まだ。話してみたいなと思ってるんだけど、今日はまだ見かけてなくて…」
「あぁ、さっきお父様に呼ばれてたので…見かけたら言いますね」
「わかった。ありがとう」
またお父様に呼ばれているの?
学校の手続きがまだ終わってないのかしら?
そう思いながらも三葉と一緒にお父様の部屋がある方へ行ってみた。
ちょうどあの子がお父様の部屋から出てくるところだった。
「あ、丁度よかった!ちょっといい?」
「なんですか?」
昨日も思ったが、この子の目は人を惹きつける。
「昨日は話せなかったから…昨日自己紹介したんだけど分かるかしら。二葉と三葉。双子なの」
「十和です」
「えっと~…あなたと仲良くなりたいなって思って。よかったらリビングでお茶でもしない?」
「すみません。本を読みたいので遠慮しておきます」
「そう…。こっちも急に誘ってごめんなさい。またお話しましょう」
「……なんの本、読むの」
ずっと隣にいた三葉が口を開いた。
「色々読みますよ。本好きなんですか?」
「うん、好き」
「私物の本でよければ貸しますよ」
「…………いいの?」
「いいですよ。今度渡しますね。それじゃあ、私はここで」
十和は早々と部屋へと戻っていった。
話してみて思ったのは、
十和は人形のように美しい顔をしているが、
素っ気なくて少し冷たい子ということ。
でも、普段無口な三葉が自分から話しをかけたことには驚いた。
「珍しいね。三葉から話しかけるなんて」
「…本を読む人、あまりいないから」
無表情でそう話すが、少し嬉しそうだ。
ここに来てから三葉がこんなに嬉しそうな顔をするのは初めてかもしれない。
そう考えると私も嬉しい。
三葉に趣味仲間ができればいいな。
三葉があの子と仲良くなったら、
私も仲良くできるかもしれない。
この時の私はそう思っていた。
父親とは離婚していたらしい。
気づいたときには祖母の家で暮らしていた。
だが、祖母も歳だったため身体に負担を抱えていた。
だから、自分たちのことは自分でやる。
そう決めていた。
弟の三葉は無口で不器用な子だから、
弟の分まで私がなんとかしようと思った。
その気持ちは、祖母が亡くなってからよりいっそう強くなった。
私達が鏡月家へ迎え入れられたのは、
祖母が亡くなってから1年後。
施設で生活をしていたところへお父様がやって来た。
はじめは、「怖い人」と思った。
大きな屋敷に入ったとき、
別世界のように感じた。
よくドラマで観るようなお金持ちの家そのものだった。
私達が来たときには、
すでに一お兄様がいた。
私達の3つ歳上であるお兄様はとても優しい人で、
突然やって来た私達に親切に話してくれた。
食事や部屋も、どれも豪華。
これからここで暮らしていくと思うと、
少し緊張した。
今までの暮らしと全く違うから、
こんなお金持ちの家で暮らしていけるのだろうか?と思った。
それと同時に、ここにいれば生活に困らないと思った。
施設での生活に不満があったわけではないが、
こちらの方が断然いい。
お金の心配をしなくて済む。
三葉と安心して過ごすことができる。
ここでの暮らしには意外とすぐに慣れた。
私達が鏡月家で暮らし始めた後も、
お父様が私達と同じように施設から引き取った子を連れて帰ってくることがあった。
みんな血のつながりはないけれど、
すぐに仲良くなれた。
でも、あの子だけは違った。
ある日、お父様が2人の子どもを連れて帰ってきた。
1人は小説に登場するような好青年という感じの男の子だった。
だが、もう1人の子は今までの子と違った。
少し明るい髪色、透き通った肌、そして左右異なる目。
オッドアイというのだろうか。
青い瞳が宝石のように光っていた。
すごく惹きつけられる目をしていた。
「…名前を言いなさい」
お父様の低い声が響く。
「初めまして。鏡月 九都と言います。よろしくお願いします」
「鏡月 十和です」
淡々と答えた後、私達も一通り自己紹介をした。
この時の私は仲良くなれるかな、と考えていた。
だが、屋敷を案内しようとするときだった。
「十和」
お父様が名前を呼んだ。
「あと、君もだ。学校の手続きをする。私についてきなさい」
そう言われ、「すみません」と礼儀正しく九都が断った後、十和と一緒にお父様に連れて行かれた。
お父様たちが姿を消した後、
他の兄妹たちはそれぞれ言葉を発した。
「今、名前を呼んだ…?」
「どうして、今日来たばかりなのに」
「ここに来てしばらく経つのに、私達はまだ一度も呼ばれたことがないのよ!?」
私も正直驚いた。
しかも、十和っていう子の名前だけをお父様は口に出して呼んだ。
「二葉……」
袖をつかまれ、我にかえる。
三葉が私の顔を覗いていた。
「何?三葉」
「大丈夫…?」
「え?」
三葉はあまり感情を表情に出さないが、
双子の私にはなんとなく分かる。
これは、心配しているんだ。
「大丈夫だよ。ちょっと考えごとしてただけ。ごめんね、心配しないで」
今まで通りあの子たちとも仲良くなればいいだけ。
そう、それだけ。
何を驚いているの。
ただ名前を呼ばれただけじゃない。
三葉に心配なんかさせちゃダメ。
明日、話しをかけてみよう。
次の日、リビングにいる九都を見つけて声をかけた。
九都は、気さくな感じの少年だった。
「へぇ、双子なんですか」
「そうなの。こっちは三葉。無口で分かりにくいかもしれないけど、優しい子だから仲良くしてあげて」
「もちろんです。あ、十和には声かけましたか?」
「ううん、まだ。話してみたいなと思ってるんだけど、今日はまだ見かけてなくて…」
「あぁ、さっきお父様に呼ばれてたので…見かけたら言いますね」
「わかった。ありがとう」
またお父様に呼ばれているの?
学校の手続きがまだ終わってないのかしら?
そう思いながらも三葉と一緒にお父様の部屋がある方へ行ってみた。
ちょうどあの子がお父様の部屋から出てくるところだった。
「あ、丁度よかった!ちょっといい?」
「なんですか?」
昨日も思ったが、この子の目は人を惹きつける。
「昨日は話せなかったから…昨日自己紹介したんだけど分かるかしら。二葉と三葉。双子なの」
「十和です」
「えっと~…あなたと仲良くなりたいなって思って。よかったらリビングでお茶でもしない?」
「すみません。本を読みたいので遠慮しておきます」
「そう…。こっちも急に誘ってごめんなさい。またお話しましょう」
「……なんの本、読むの」
ずっと隣にいた三葉が口を開いた。
「色々読みますよ。本好きなんですか?」
「うん、好き」
「私物の本でよければ貸しますよ」
「…………いいの?」
「いいですよ。今度渡しますね。それじゃあ、私はここで」
十和は早々と部屋へと戻っていった。
話してみて思ったのは、
十和は人形のように美しい顔をしているが、
素っ気なくて少し冷たい子ということ。
でも、普段無口な三葉が自分から話しをかけたことには驚いた。
「珍しいね。三葉から話しかけるなんて」
「…本を読む人、あまりいないから」
無表情でそう話すが、少し嬉しそうだ。
ここに来てから三葉がこんなに嬉しそうな顔をするのは初めてかもしれない。
そう考えると私も嬉しい。
三葉に趣味仲間ができればいいな。
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私も仲良くできるかもしれない。
この時の私はそう思っていた。
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