十番目の愛

夜宮 咲

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夢見るメイドは王子様に恋をする

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夜。

屋敷にいる者たちが寝静まる中、

一人のメイドは庭園へ走り向かう。

真っ暗な外をランプを手に持ってメイドは走る。

庭園に着くとそこには男の姿があった。

紺色の羽織をかけた男は足音に気がつき振り返る。

ランプの光で男がかけている丸眼鏡が反射する。


「走って来たのかい?」

「はいっ…!早くあなたにお会いしたくて……」

「今は敬語はやめてくれよ、夢乃」


息を整えるメイド ー 宮本 夢乃は、

目の前に立つ男 ー 鏡月 五希の顔を見て頬を赤く染める。


「でも、私は五希様に仕えるメイドですから…」

「そうだね。でも僕たち、恋人なんじゃないのかい?」

「そ、それはっ…そうですけど…」

「二人の時はお互い気を使わない約束だろう?だから敬語は距離を感じちゃうな…」

「すみませんっ!」

「ほら、今も」


五希はくすくすと笑う。

笑った時に目の横に皺ができるところがたまらなく愛おしい。


「じゃあ……五希、さん」


恥ずかしながら夢乃は五希の名前を呼んだ。

五希は微笑みながら夢乃と一緒にベンチに腰をかけた。

「今日もいつもと変わらない一日だったのかな」

「今日は、休憩時間に女子会をして…守屋さんがクッキーを焼いてくれて」

「女子会か~。どんな話しをしたの?」

「それは、内緒です」

「僕の事を話したとか?」

「いいえっ!みなさんには何も……」

「そうだね。僕たちは秘密の仲だもんね」

「はい……」


夜空に星が輝いている。


「もうすぐ12時だ」


午後11時頃に庭園のベンチの前で待ち合わせ、12時には部屋へ戻る。

二人の関係は誰にも言っていない。

ご主人様の息子とそこに仕えるメイド。

身分が異なる禁断の関係。

片想いし続けていた私が五希様の恋人になれるだなんて。

おとぎ話の中にでも入ったみたい。

こうして会える時間は午後十一時から十二時までのたったの一時間だけ。

まるでシンデレラのようなひと時。

どんなに夜遅くても、

次の日の朝が早くても、

この人を心の底から愛しているから頑張れる。


「じゃあ、僕は先に戻るよ」

「はい。おやすみなさい」

「夢乃」


そっと唇を交わす。

目の前にある綺麗な顔立ちも、

眼鏡にかかる前髪も、

唇を交わす時に五希様の眼鏡が少しあたるところも含めて、好き。


「……おやすみ、いい夢を」


夢乃からそっと離れ、

五希は屋敷の中へ戻って行った。

夢乃は手を頬にあててその場で幸せを噛み締めた。











庭園で一人のメイドが幸せを感じている姿を窓から眺める人形。


夜の光に照らされていつもより目立つ青い瞳。

メイドが屋敷へ戻って行く姿を確認すると、

青い瞳はゆっくりと暗闇の中へ消えていった。



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