十番目の愛

夜宮 咲

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鏡月 五希の愛は空っぽで(1)

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僕の両親は、

僕を産んですぐに亡くなったらしい。

だから僕は両親の顔を見たことがない。

はじめから一人だったから両親がいないことに悲しさを感じることもなかった。

性格も容姿も悪くはない。

きっと両親の良い遺伝子を受け継いだのだろう。

だから新しい環境でも僕は不自由なく過ごすことが出来ているのかもしれない。

でもひとつだけ足りないものがある。


愛だ。


小学生の時、自分が思う愛について作文にする時間があった。

まわりがスラスラと文を書く姿を僕は不思議に思った。

どうしてそんなにすぐに書けるのだろう。

僕は結局一文字も書くことが出来ず、

先生に後から提出するようにと言われたが、

そういえばあの後僕はちゃんと提出できたんだっけ?

あぁ、友達に何を書いたのか聞いたことは覚えている。

家族。

みんな同じような事を口にした。

でも僕にはそれがよく分からなかった。

僕には家族がいなかったから。

両親が生きていれば僕にも愛というものを理解することが出来たのだろうか。






中学生になった頃、まわりは恋愛に興味を持ち始めた。

僕の友達も彼女を作っては別れの繰り返し。

恋愛の何がそんなに楽しいのだろう。

でも友達が恋愛をしている姿はどこか楽しそうで、幸せそうで…。

なんでそんなに楽しそうなのか聞いてみた。


「彼女のどこがそんなに好きなの」

「え?そりゃあ、好きな人ってのはその人が何をしていても全部が可愛いーってなるんだよ」

「それが好きってこと?」

「まぁな。もう全部が愛おしいんだよ」

「愛してるってことなのか?」

「なんだよーっ、恥ずかしいこと言わせんなって!」


恥ずかしさを誤魔化すために僕の背中を叩く友達を見て笑った。

そうか。

恋愛は、愛と同じなのか。


「そういえばよ、最近よく見る隣のクラスの女子さ、お前のこと好きなんじゃね?」

「そんな子いるの?」

「なんだよ気づいてねーの?この間も俺らが体育してる時に窓から見てたぜ」

「へぇ、気づかなかったな」

「絶対お前に気があるって。告白されんじゃね?」

「気のせいかもよ」

「いーや!あれは絶対そうだね」


友達の予想通り数日後、

僕は隣のクラスの女子に告白された。

胸の前で手をギュッと握りしめて、

下を俯いている女子の顔は真っ赤だった。

確かに、少し可愛いかもしれない。

これが恋なんだと思った。

その日から僕には彼女ができた。

彼女ができてからは今までとは違う日々を送っているような感覚だった。

友達が言っていたように、

相手の全てが可愛いと感じたり、

幸せを感じたり。

僕は生まれて初めて愛することを理解した。

そして、愛は僕の心をこんなにも満たしてくれるものだということも。









彼女とは上手く続いていた。


「お前さ、最近どーよ。彼女と上手くいってんの?」


その時は友達と屋上で昼休みを過ごしていた。


「うん」

「ふーん、いいじゃん」

「お前は?」

「あー、最近浮気して怒られた」

「浮気?」

「そっ。なんか飽きたっつーか、彼女より魅力を感じたんだよなー」

「でも彼女のことを愛してるって言ってたじゃないか」

「それはそうだけどよー。愛なんて色んな形があるだろ?まぁ、そういう事だよ」

「ふーん…」


愛する人がいるのに他の人を愛する…。

愛はひとつだけじゃないのか?

愛はたくさんあるのか。






その日の放課後、僕は彼女ではない子に「好き」と言われた。

この状況に僕は困惑した。

だって僕には愛する彼女がいるから。

だから僕はそう伝えた。

でもこの子は「それでもいい」と言う。


「本命じゃなくていいから」


その真っ直ぐな目を見て、

本当に僕のことが好きなんだと感じた。

これはいけない事、許されない事。

でも僕はこの子の気持ちを受け入れてしまった。


しばらくしてから彼女にその事を知られた。

あぁ、終わりなんだと思った。

でも彼女は泣きながら僕に「別れないで」と言った。

僕は他の女の子を愛してしまったのに、

彼女はその事を怒りもしないでただ抱きついて泣きながら僕を求めた。

「別れないで」「私のことを好きでいて」「好きでいてくれればそれでいいから」と彼女は泣きながら訴えた。


僕は彼女を優しく抱きしめながら考えた。

愛には色んな形がある。

愛する人の数は関係ない。

相手を愛している事実があればそれでいいんだ。


こうして僕は愛を学んだ。









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