38 / 84
神の逆鱗に触れる
しおりを挟む
屋敷周辺に響き渡るサイレン。
外には救急車が赤いランプを点滅させて止まっていた。
誰かが担架で運ばれていく様子を私は部屋の窓から見下ろしていた。
そんな中、
私の部屋に客が訪ねてくる。
「失礼します」
ドアをノックしてから入ってきたのはメイドの切島だった。
「すみません、ティータイム中でしたか」
「えぇ…なんだか外が騒がしいわね」
「今、六花様が運ばれました」
「六花お兄様が?」
「はい」
六花お兄様には先日廊下でぶつかってから顔を合わせていない。
彼は一日中部屋に篭っているはずだ。
一体何があったのだろうか。
「お兄様はなぜ運ばれたの?」
「部屋の窓から誤って転落した、ということになっています」
「意味深なことを言うわね」
「きっとそういう事になると思いますので」
「…どう言う意味?」
「私が……切島が六花様を突き落としたのです」
切島は笑顔でそう答えた。
「…あなたがお兄様を突き落とした?」
「はい。以前から六花様の態度には少し腹を立てていたものですから、つい……ですが、それ以上の理由があります」
「理由?」
「これはあなた様のためです」
「私のため」
「はいっ…!」
切島は両手を顔にあてて興奮した状態で語り始めた。
「あなた様のことは私が一番理解しています!あなた様は屋敷の者が邪魔なのでしょう?私も何度かお手伝いさせていただきました……」
「そうね」
「あなた様の聡明さ、何事も冷静な行動力…そして何よりもその美しい容姿!まるで地上に舞い降りた女神のよう!!私はあなた様のためなら何でも致します!!」
「それで、お兄様を突き落としたと?」
「はい!わざわざあなた様が手を汚す必要はありません!!あなた様にとって邪魔な者は私が全員消してさしあげます…!!これからも、私はあなた様の味方……あなた様の仰せのままにっ…!!」
切島は終始興奮した状態で熱く語った。
私をまるで神のように崇める彼女の熱弁を合間に紅茶を飲みつつ私は窓から外の様子を眺めながら聞いていた。
「つまり、あなたは私のためにやったということね…」
「はいっ、あなた様のことを思って…」
「切島、あなたさっき私のためなら何でもやると言ったわね?」
「もちろんです!!」
「じゃあ、今すぐこの窓から飛び降りろと言ったらやってくれるわよね?」
「えっ、今、なんと…?」
「あら、理解が出来なかった?じゃあ簡単に言うわね」
私は何を言っているのか分からないといった顔をして呆然とする切島の腕を引っ張り窓の前に立たせた。
「今すぐここから飛び降りなさい」
「な、何を仰っているのですか…?ここから飛び降りろとは……?」
「だから、死になさいと言っているの」
「なぜですか!?私はあなた様のためにっ…あなた様の望みを叶えて…!!」
「六花お兄様を突き落としたこと?私がいつあなたにそんな事を頼んだの?」
「それは………」
「頼んでないわよね?私はちゃんと考えてから計画を実行しているの。それをあなたは私が喜ぶと思って勝手にやったみたいだけど…私からすれば、あなたのこういう行動が一番邪魔だわ」
「そんな、そんな…私は……」
「使えないオモチャはもういらないの」
私は窓を開けて切島の背中にそっと手を置く。
「さぁ、最後はちゃんと見届けてあげるから」
「あ、あぁ…許してくださいっ…どうか、どうか……!!」
切島は青ざめた表情で必死に懇願する。
「お願いしますっ…!!これからは、勝手なことをしませんっ……あなた様の命令に従いますから…どうかっ、私を生き残してくださいませっ………!!」
「……わかったわ」
「あっ、ありがとうございまー……」
言い終える前に私は切島の背中を勢いよく押した。
強く突き飛ばされた切島は手を伸ばす暇もなく急落下していった。
落ちた音がするのを確認し、
私は部屋から飛び出す。
屋敷に止まっている救急車の元へ急いで駆け寄る。
「すみませんっ…!!誰かっ…」
「どうされましたか?」
「使用人が、窓から飛び降りてっ…」
「この屋敷の人ですか!?場所は…」
「あっちです!私っ…私のせいでっ…!」
「おいっ!誰かあっちに回ってくれ!お嬢さん、何があったのか説明出来るかい?」
救急隊員の男性は混乱した様子の私の肩に優しく手を置いて聞いた。
「自殺するって…私の目の前で飛び降りてっ……私、止められなかった」
「そうか、詳しくは後で聞くから…怖かったね、泣かないで」
優しく頭を撫でて落ち着かせてくれる救急隊員。
手で顔を覆い隠しながら涙を流す私。
この日、神の逆鱗に触れた信者は神の手によってこの世から消された。
外には救急車が赤いランプを点滅させて止まっていた。
誰かが担架で運ばれていく様子を私は部屋の窓から見下ろしていた。
そんな中、
私の部屋に客が訪ねてくる。
「失礼します」
ドアをノックしてから入ってきたのはメイドの切島だった。
「すみません、ティータイム中でしたか」
「えぇ…なんだか外が騒がしいわね」
「今、六花様が運ばれました」
「六花お兄様が?」
「はい」
六花お兄様には先日廊下でぶつかってから顔を合わせていない。
彼は一日中部屋に篭っているはずだ。
一体何があったのだろうか。
「お兄様はなぜ運ばれたの?」
「部屋の窓から誤って転落した、ということになっています」
「意味深なことを言うわね」
「きっとそういう事になると思いますので」
「…どう言う意味?」
「私が……切島が六花様を突き落としたのです」
切島は笑顔でそう答えた。
「…あなたがお兄様を突き落とした?」
「はい。以前から六花様の態度には少し腹を立てていたものですから、つい……ですが、それ以上の理由があります」
「理由?」
「これはあなた様のためです」
「私のため」
「はいっ…!」
切島は両手を顔にあてて興奮した状態で語り始めた。
「あなた様のことは私が一番理解しています!あなた様は屋敷の者が邪魔なのでしょう?私も何度かお手伝いさせていただきました……」
「そうね」
「あなた様の聡明さ、何事も冷静な行動力…そして何よりもその美しい容姿!まるで地上に舞い降りた女神のよう!!私はあなた様のためなら何でも致します!!」
「それで、お兄様を突き落としたと?」
「はい!わざわざあなた様が手を汚す必要はありません!!あなた様にとって邪魔な者は私が全員消してさしあげます…!!これからも、私はあなた様の味方……あなた様の仰せのままにっ…!!」
切島は終始興奮した状態で熱く語った。
私をまるで神のように崇める彼女の熱弁を合間に紅茶を飲みつつ私は窓から外の様子を眺めながら聞いていた。
「つまり、あなたは私のためにやったということね…」
「はいっ、あなた様のことを思って…」
「切島、あなたさっき私のためなら何でもやると言ったわね?」
「もちろんです!!」
「じゃあ、今すぐこの窓から飛び降りろと言ったらやってくれるわよね?」
「えっ、今、なんと…?」
「あら、理解が出来なかった?じゃあ簡単に言うわね」
私は何を言っているのか分からないといった顔をして呆然とする切島の腕を引っ張り窓の前に立たせた。
「今すぐここから飛び降りなさい」
「な、何を仰っているのですか…?ここから飛び降りろとは……?」
「だから、死になさいと言っているの」
「なぜですか!?私はあなた様のためにっ…あなた様の望みを叶えて…!!」
「六花お兄様を突き落としたこと?私がいつあなたにそんな事を頼んだの?」
「それは………」
「頼んでないわよね?私はちゃんと考えてから計画を実行しているの。それをあなたは私が喜ぶと思って勝手にやったみたいだけど…私からすれば、あなたのこういう行動が一番邪魔だわ」
「そんな、そんな…私は……」
「使えないオモチャはもういらないの」
私は窓を開けて切島の背中にそっと手を置く。
「さぁ、最後はちゃんと見届けてあげるから」
「あ、あぁ…許してくださいっ…どうか、どうか……!!」
切島は青ざめた表情で必死に懇願する。
「お願いしますっ…!!これからは、勝手なことをしませんっ……あなた様の命令に従いますから…どうかっ、私を生き残してくださいませっ………!!」
「……わかったわ」
「あっ、ありがとうございまー……」
言い終える前に私は切島の背中を勢いよく押した。
強く突き飛ばされた切島は手を伸ばす暇もなく急落下していった。
落ちた音がするのを確認し、
私は部屋から飛び出す。
屋敷に止まっている救急車の元へ急いで駆け寄る。
「すみませんっ…!!誰かっ…」
「どうされましたか?」
「使用人が、窓から飛び降りてっ…」
「この屋敷の人ですか!?場所は…」
「あっちです!私っ…私のせいでっ…!」
「おいっ!誰かあっちに回ってくれ!お嬢さん、何があったのか説明出来るかい?」
救急隊員の男性は混乱した様子の私の肩に優しく手を置いて聞いた。
「自殺するって…私の目の前で飛び降りてっ……私、止められなかった」
「そうか、詳しくは後で聞くから…怖かったね、泣かないで」
優しく頭を撫でて落ち着かせてくれる救急隊員。
手で顔を覆い隠しながら涙を流す私。
この日、神の逆鱗に触れた信者は神の手によってこの世から消された。
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
付喪神狩
やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。
容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。
自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる