十番目の愛

夜宮 咲

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晩餐会

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度重なる事件から数日が経った。

六花お兄様のことも切島のことも表で報道されることはなかった。

事実を揉み消す鏡月のやり方にはすっかり慣れてしまった。

いつの間にか屋敷にいる人の数は少なくなってしまった。

最近、一お兄様の提案で夕飯はみんなで揃って食べようということになった。

もちろん、その場にゼロが現れることはない。

今日も守屋と川村が用意した食事を目の前にしてそれぞれ席に着く。

一お兄様の「いただきます」を合図に食事が始まる。

今日のメインはビーフシチュー。

長時間煮込まれたのであろう牛肉はスプーンでホロホロとほぐれるぐらいやわらかい。

口の中が幸せでいっぱいになる。


「十一歌、もっと食べたい!」


ペロッ都食べ終わってしまった十一歌がおかわりをねだる。

その横に座っているのは七緒。

モデル活動をしていて、

中高生からカリスマと言われるほど人気があるらしい。

七緒はよく末っ子の十一歌をお世話している。

十一歌も七緒に懐いているようだ。


「十一歌、あんまり食べすぎると太っちゃうわよ」

「えぇ~っ!もっと食べたいぃ~!」

「ブタさんになっちゃってもいいの?」

「うぅ…ブタさんやだぁ」

「そうね、半分だけ守屋によそってもらいましょうか」

「うん!」


嬉しそうな顔で十一歌は自分のお皿を守屋の元へ持っていき、

ビーフシチューをよそってもらう。


「はははっ、十一歌は美味しそうに食べるね~」


自分の席に戻って無心に食べる十一歌を見ながら微笑ましい顔を浮かべる一。

一はこの家の長男。

ゼロが入学させた県内一賢い学校と言われるところで試験の結果は一位を維持。

卒業後は弁護士になり、

たまにゼロの仕事を手伝っているようだ。

まさに模範生とはこのことだ。

その一を心底尊敬している様子でいるのが一の向かいに座っている八重だ。

八重は一と同じ学校に進学し、

生徒会長を務めているらしい。

憧れでもある一に少しでも近づけるように毎日必死の様子だ。


「そういえば、十和」


一は離れた席にいる私に話しをふってきた。

まさか私に話しかけてくるとは思わなかったが、

ここで無視をすれば空気が悪くなって後々面倒くさそうだと思った私は、

ナプキンで口元を拭いてから返事をする。


「なんですか?」

「君も学校では成績優秀らしいじゃないか。将来は何になりたいのかい?」

「将来ですか…今はとくに何も」

「やりたい事とかもないのかい?」

「そうですね…未来のことを想像するのは難しいことですから」


私に未来があるかどうか、分からないし。


「そうか。九都は何かやりたい事があるのかい?」

「うーん、僕は頭がいいわけじゃないからなぁ…普通でいいやって感じですね」

「九都は友人が多いだろう。そのコミュニケーションを活かせばいい職に就けるさ」

「いや~そうですかねぇ?」


将来について語る男子達を横目に私は元の向きに直す。

ふと顔を上げると私の目の前に座る十一歌がこちらをじっと見つめていた。


「……何?」

「お姉様の髪きれいっ!!」

「あ、ありがとう…」

「お姉様お化粧してるの?」

「あんまり…学校があるから薄めにやってるけど」

「十一歌もお化粧したい!お姉様何使ってるの?十一歌も同じものを使う!」


なんだかよく分からないが私に興味津々の十一歌はぐいぐいと私に質問してくる。

確か十一歌はまだ中学生だったか。

まだ子どもっぽい無邪気さがある。


「化粧のことは、七緒お姉様に聞いた方がいいと思うけど…」

「あら、私もあなたの美容方法には興味があるわ」


十一歌の隣で会話を聞いていた七緒も身を乗り出して入ってきた。


「いえ、とくに何もしてないですよ。スキンケアをするぐらいです」

「それだけ?すごく透明な肌をしているから美顔器とか使ってるのかと思ってたけど」

「十一歌もお化粧したら可愛くなれるかなー?」

「十一歌はそのままでも可愛いわよ」

「ううん。七緒お姉様みたいにきれいじゃないもん」

「私はモデルだから特別きれいなのよ」

「十一歌もきれいになりたいっ!きれいになったらもっと……」

「もっと?」

「ううん!何でもないっ!七緒お姉様、お化粧の仕方教えてっ」

「いいわよ。今日はもう遅いし、お肌にも悪いから明日教えてあげる」

「お姉様ありがとう!!」


七緒にぎゅっと抱きつく十一歌。

どうやら話しは終わったみたいで私は変に体力を使ってしまい疲れがドッとくる。

正直、

この晩餐会は面倒だ。

元々、私はまわりから妬まれ距離を置かれていた。

今もまだ妬んでいる奴がいるかもしれないが、

こうやって共に食事をとっている光景は以前であれば考えられないことだ。

変に気を遣って話さなければいけないから疲れる。

だが、相手のことを探り観察する分にはいい。


残りも半分ぐらいといったところか。

残りはどうやって済ませるか。

この前の件で九都が私の計画のことを勘づいているかもしれない。

それに、残りの者たちは今までより時間がかかりそうだ。

慎重に、

確実に、

事を果たす。


決意を胸にする。

そして、珍しく賑やかな晩餐会はお開きとなった。

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