41 / 84
晩餐会
しおりを挟む
度重なる事件から数日が経った。
六花お兄様のことも切島のことも表で報道されることはなかった。
事実を揉み消す鏡月のやり方にはすっかり慣れてしまった。
いつの間にか屋敷にいる人の数は少なくなってしまった。
最近、一お兄様の提案で夕飯はみんなで揃って食べようということになった。
もちろん、その場にゼロが現れることはない。
今日も守屋と川村が用意した食事を目の前にしてそれぞれ席に着く。
一お兄様の「いただきます」を合図に食事が始まる。
今日のメインはビーフシチュー。
長時間煮込まれたのであろう牛肉はスプーンでホロホロとほぐれるぐらいやわらかい。
口の中が幸せでいっぱいになる。
「十一歌、もっと食べたい!」
ペロッ都食べ終わってしまった十一歌がおかわりをねだる。
その横に座っているのは七緒。
モデル活動をしていて、
中高生からカリスマと言われるほど人気があるらしい。
七緒はよく末っ子の十一歌をお世話している。
十一歌も七緒に懐いているようだ。
「十一歌、あんまり食べすぎると太っちゃうわよ」
「えぇ~っ!もっと食べたいぃ~!」
「ブタさんになっちゃってもいいの?」
「うぅ…ブタさんやだぁ」
「そうね、半分だけ守屋によそってもらいましょうか」
「うん!」
嬉しそうな顔で十一歌は自分のお皿を守屋の元へ持っていき、
ビーフシチューをよそってもらう。
「はははっ、十一歌は美味しそうに食べるね~」
自分の席に戻って無心に食べる十一歌を見ながら微笑ましい顔を浮かべる一。
一はこの家の長男。
ゼロが入学させた県内一賢い学校と言われるところで試験の結果は一位を維持。
卒業後は弁護士になり、
たまにゼロの仕事を手伝っているようだ。
まさに模範生とはこのことだ。
その一を心底尊敬している様子でいるのが一の向かいに座っている八重だ。
八重は一と同じ学校に進学し、
生徒会長を務めているらしい。
憧れでもある一に少しでも近づけるように毎日必死の様子だ。
「そういえば、十和」
一は離れた席にいる私に話しをふってきた。
まさか私に話しかけてくるとは思わなかったが、
ここで無視をすれば空気が悪くなって後々面倒くさそうだと思った私は、
ナプキンで口元を拭いてから返事をする。
「なんですか?」
「君も学校では成績優秀らしいじゃないか。将来は何になりたいのかい?」
「将来ですか…今はとくに何も」
「やりたい事とかもないのかい?」
「そうですね…未来のことを想像するのは難しいことですから」
私に未来があるかどうか、分からないし。
「そうか。九都は何かやりたい事があるのかい?」
「うーん、僕は頭がいいわけじゃないからなぁ…普通でいいやって感じですね」
「九都は友人が多いだろう。そのコミュニケーションを活かせばいい職に就けるさ」
「いや~そうですかねぇ?」
将来について語る男子達を横目に私は元の向きに直す。
ふと顔を上げると私の目の前に座る十一歌がこちらをじっと見つめていた。
「……何?」
「お姉様の髪きれいっ!!」
「あ、ありがとう…」
「お姉様お化粧してるの?」
「あんまり…学校があるから薄めにやってるけど」
「十一歌もお化粧したい!お姉様何使ってるの?十一歌も同じものを使う!」
なんだかよく分からないが私に興味津々の十一歌はぐいぐいと私に質問してくる。
確か十一歌はまだ中学生だったか。
まだ子どもっぽい無邪気さがある。
「化粧のことは、七緒お姉様に聞いた方がいいと思うけど…」
「あら、私もあなたの美容方法には興味があるわ」
十一歌の隣で会話を聞いていた七緒も身を乗り出して入ってきた。
「いえ、とくに何もしてないですよ。スキンケアをするぐらいです」
「それだけ?すごく透明な肌をしているから美顔器とか使ってるのかと思ってたけど」
「十一歌もお化粧したら可愛くなれるかなー?」
「十一歌はそのままでも可愛いわよ」
「ううん。七緒お姉様みたいにきれいじゃないもん」
「私はモデルだから特別きれいなのよ」
「十一歌もきれいになりたいっ!きれいになったらもっと……」
「もっと?」
「ううん!何でもないっ!七緒お姉様、お化粧の仕方教えてっ」
「いいわよ。今日はもう遅いし、お肌にも悪いから明日教えてあげる」
「お姉様ありがとう!!」
七緒にぎゅっと抱きつく十一歌。
どうやら話しは終わったみたいで私は変に体力を使ってしまい疲れがドッとくる。
正直、
この晩餐会は面倒だ。
元々、私はまわりから妬まれ距離を置かれていた。
今もまだ妬んでいる奴がいるかもしれないが、
こうやって共に食事をとっている光景は以前であれば考えられないことだ。
変に気を遣って話さなければいけないから疲れる。
だが、相手のことを探り観察する分にはいい。
残りも半分ぐらいといったところか。
残りはどうやって済ませるか。
この前の件で九都が私の計画のことを勘づいているかもしれない。
それに、残りの者たちは今までより時間がかかりそうだ。
慎重に、
確実に、
事を果たす。
決意を胸にする。
そして、珍しく賑やかな晩餐会はお開きとなった。
六花お兄様のことも切島のことも表で報道されることはなかった。
事実を揉み消す鏡月のやり方にはすっかり慣れてしまった。
いつの間にか屋敷にいる人の数は少なくなってしまった。
最近、一お兄様の提案で夕飯はみんなで揃って食べようということになった。
もちろん、その場にゼロが現れることはない。
今日も守屋と川村が用意した食事を目の前にしてそれぞれ席に着く。
一お兄様の「いただきます」を合図に食事が始まる。
今日のメインはビーフシチュー。
長時間煮込まれたのであろう牛肉はスプーンでホロホロとほぐれるぐらいやわらかい。
口の中が幸せでいっぱいになる。
「十一歌、もっと食べたい!」
ペロッ都食べ終わってしまった十一歌がおかわりをねだる。
その横に座っているのは七緒。
モデル活動をしていて、
中高生からカリスマと言われるほど人気があるらしい。
七緒はよく末っ子の十一歌をお世話している。
十一歌も七緒に懐いているようだ。
「十一歌、あんまり食べすぎると太っちゃうわよ」
「えぇ~っ!もっと食べたいぃ~!」
「ブタさんになっちゃってもいいの?」
「うぅ…ブタさんやだぁ」
「そうね、半分だけ守屋によそってもらいましょうか」
「うん!」
嬉しそうな顔で十一歌は自分のお皿を守屋の元へ持っていき、
ビーフシチューをよそってもらう。
「はははっ、十一歌は美味しそうに食べるね~」
自分の席に戻って無心に食べる十一歌を見ながら微笑ましい顔を浮かべる一。
一はこの家の長男。
ゼロが入学させた県内一賢い学校と言われるところで試験の結果は一位を維持。
卒業後は弁護士になり、
たまにゼロの仕事を手伝っているようだ。
まさに模範生とはこのことだ。
その一を心底尊敬している様子でいるのが一の向かいに座っている八重だ。
八重は一と同じ学校に進学し、
生徒会長を務めているらしい。
憧れでもある一に少しでも近づけるように毎日必死の様子だ。
「そういえば、十和」
一は離れた席にいる私に話しをふってきた。
まさか私に話しかけてくるとは思わなかったが、
ここで無視をすれば空気が悪くなって後々面倒くさそうだと思った私は、
ナプキンで口元を拭いてから返事をする。
「なんですか?」
「君も学校では成績優秀らしいじゃないか。将来は何になりたいのかい?」
「将来ですか…今はとくに何も」
「やりたい事とかもないのかい?」
「そうですね…未来のことを想像するのは難しいことですから」
私に未来があるかどうか、分からないし。
「そうか。九都は何かやりたい事があるのかい?」
「うーん、僕は頭がいいわけじゃないからなぁ…普通でいいやって感じですね」
「九都は友人が多いだろう。そのコミュニケーションを活かせばいい職に就けるさ」
「いや~そうですかねぇ?」
将来について語る男子達を横目に私は元の向きに直す。
ふと顔を上げると私の目の前に座る十一歌がこちらをじっと見つめていた。
「……何?」
「お姉様の髪きれいっ!!」
「あ、ありがとう…」
「お姉様お化粧してるの?」
「あんまり…学校があるから薄めにやってるけど」
「十一歌もお化粧したい!お姉様何使ってるの?十一歌も同じものを使う!」
なんだかよく分からないが私に興味津々の十一歌はぐいぐいと私に質問してくる。
確か十一歌はまだ中学生だったか。
まだ子どもっぽい無邪気さがある。
「化粧のことは、七緒お姉様に聞いた方がいいと思うけど…」
「あら、私もあなたの美容方法には興味があるわ」
十一歌の隣で会話を聞いていた七緒も身を乗り出して入ってきた。
「いえ、とくに何もしてないですよ。スキンケアをするぐらいです」
「それだけ?すごく透明な肌をしているから美顔器とか使ってるのかと思ってたけど」
「十一歌もお化粧したら可愛くなれるかなー?」
「十一歌はそのままでも可愛いわよ」
「ううん。七緒お姉様みたいにきれいじゃないもん」
「私はモデルだから特別きれいなのよ」
「十一歌もきれいになりたいっ!きれいになったらもっと……」
「もっと?」
「ううん!何でもないっ!七緒お姉様、お化粧の仕方教えてっ」
「いいわよ。今日はもう遅いし、お肌にも悪いから明日教えてあげる」
「お姉様ありがとう!!」
七緒にぎゅっと抱きつく十一歌。
どうやら話しは終わったみたいで私は変に体力を使ってしまい疲れがドッとくる。
正直、
この晩餐会は面倒だ。
元々、私はまわりから妬まれ距離を置かれていた。
今もまだ妬んでいる奴がいるかもしれないが、
こうやって共に食事をとっている光景は以前であれば考えられないことだ。
変に気を遣って話さなければいけないから疲れる。
だが、相手のことを探り観察する分にはいい。
残りも半分ぐらいといったところか。
残りはどうやって済ませるか。
この前の件で九都が私の計画のことを勘づいているかもしれない。
それに、残りの者たちは今までより時間がかかりそうだ。
慎重に、
確実に、
事を果たす。
決意を胸にする。
そして、珍しく賑やかな晩餐会はお開きとなった。
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
付喪神狩
やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。
容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。
自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる