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化けた猫
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晴れた日の午後。
私は庭園にいた。
「乙女ちゃんも座って!」
「そんな、私は…」
「えぇ~十一歌のお願い聞いてくれないのぉ…?」
「…じゃあ、お言葉に甘えて」
十一歌様に庭園でお茶を飲みたいと言わ
れ、お菓子とお茶を用意するだけのつも
りだったが、何故か一緒にすることにな
ってしまった。
「十一歌、ココアが飲みたいなぁ~とっても甘いやつ」
「チョコレートも用意してあるので、そちらも召し上がってください」
「わぁ~いっ!十一歌、甘いもの大好き~」
無邪気で明るい十一歌様。
末っ子らしいというか、可愛らしい。
「乙女ちゃん、もう大丈夫?」
「えっ?」
「八重お兄様のこと」
ドキッとした。
あの日の夜、晩餐会は最悪のムードの中
解散となった。あの後、屋敷から出てい
ってしまった八重様が戻ってくることは
なく、翌朝早くに電話がかかってきたの
で守屋さんが出ると、八重様は人通りの
少ない場所でトラックに轢かれて病院に
運ばれたそうだ。急いで守屋さんが病院
に向かったが、着いた時にはもう亡くな
っていた。医師によると、搬送された時
点ですでに手遅れだったという。
八重様が亡くなったことを病院から戻っ
て来た守屋さんからみんなに伝えられた
。一様はショックを受けた顔をされてい
た。九都様も驚いた表情をしたままかた
まり、十一歌様も私の腕を掴んでいた。
その時、私はある人に視線を向けた。
私の視線に気がついたその人は、私を見
て口パクで言った。
"よくやった"
「…ちゃん、乙女ちゃん!」
ハッとする。
「あ、すみません」
「もぅ!ずっと呼んでたのにぃ!」
「何か言ってました?」
「八重お兄様が亡くなったのは悲しいけど、お兄様が乙女ちゃんにやったことは許せないよねって話し!十一歌、八重お兄様は優しい人だと思ってたのになぁ」
「そう、ですね…」
八重様の部屋を荒らし、物を盗む。
それは全て八重様の自作自演だった、と
いうことになっているが、これは私がそ
の場で吐いた大嘘。八重様は私が犯人で
あることを前から気づいていたのだろう
。わざわざ八重様が自ら晩餐会を開くだ
なんて怪しいと思った。案の定、私は八
重様の思惑にはまってしまったわけで、
あのまま私が犯人だと認めるわけにはい
かなかったから私は咄嗟に嘘を吐いた。
八重様は相当お怒りの様子だったが、幸
いにもまわりが私側についてくれたおか
げで犯人扱いされずに済んだ。
そもそもどうして私がこんな事をしたか
。私が七緒様の荷物を運び終えたあの時
、あの人にお願いされたこと。
"あなた、八重を怒らせてちょうだい"
はじめはどうしてそんなことを、と思っ
た。だが、お願いを断れる立場ではなか
った私は八重様を怒らせるようなことを
した。お風呂のお湯を水にしたり、守屋
さんが作ったお菓子を私が作ったものと
すり替えた。そして、誰にも見られない
ようにこっそり部屋に入っては荒らした
。結局本人バレてしまったが、怒らせる
ことに成功した。
それに、もう八重様はいない。
「ねぇねぇ、十一歌思ってたんだけどぉ」
「なんでしょう?」
「乙女ちゃん、最近可愛くなったよね!」
「えっ、そ、そうですかっ…?」
「うん!十一歌ね、ずっと思ってたの。なんかキラキラしてる~」
「本当ですかっ?えへへ、ありがとうございます…」
私は八重様を怒らせるためにできる限り
のことはした。私が使用人としてあるま
じき行為をし続けたのは理由がある。
私はあの人に今日やったことを必ず報告
するようにしていた。私が報告すると、
あの人は必ず報酬をくれた。
デパ地下で売っている高いケーキや指輪
、ネイル、いらなくなったブランドの洋
服など、日によって報酬は異なるが、私
がちゃんと任務を果たすとあの人は欲し
い物を私に与えてくれた。
決して私が手に入れられないような高級
品が、今私の手元にある。もらった報酬
で私は変わった。以前より可愛くなる自
分を見て嬉しくなる。それに、なんだか
とても楽しい。もっと頑張れば、もっと
変われるかもしれないと思った。
「十一歌もね、今頑張ってるんだぁ~」
「あ、お勉強ですか?」
「ううん、お勉強よりも大事なこと」
「お勉強以外ですか?」
「うん。十一歌ね、髪を伸ばしてるの」
「そうなんですね!確かに、前より伸びましたね~。もっと長くしたいのですか?」
「ちょっとだけね。あとお化粧も頑張ってるの」
「熱心ですね~」
「乙女ちゃんも最近お化粧してるよね?それって雑誌とか見てるの?」
「そうですねぇー…基本は自分の好みな感じにやってますけど、たまにモデルさんのメイクを真似してみたりとかしますね」
「好きなモデルさんがいるの?」
「特別好きって人はいないんですけど、モデルさんって綺麗だから…あ、でも十和様の広告を拝見したんですけど、あれはちょっと見入っちゃいましたねぇ」
七緒様にお願いされて撮ったものらしい
けど、正直私は七緒様よりも十和様の方
が綺麗だな、と思った。十和様はただお
願いされて撮っただけだからモデルにな
るつもりはないらしく、今まで通り過ご
している。はじめは他の兄妹方から嫌わ
れていたし、冷たい感じで何だか近寄り
難い人だなぁと思っていたけど、遠くか
ら見ているとやっぱり綺麗な人だなぁっ
て改めて思う。同じ女性としては、その
美貌がとても羨ましい。
「十和様の本当のご両親も綺麗な容姿をされているんでしょうねぇ~」
「そうだよねぇ、十一歌はお姉様になりたいんだぁ~」
「あ、頑張っているのはそのためですか?」
「そうだよ」
「私も十和様みたいになれるのならなってみたいですよーっ」
「なってみたいじゃだめなの」
「え?」
「十一歌は絶対お姉様になるのっ」
十一歌様はニコッと笑うと、チョコレー
トを摘んで口の中に入れた。
十一歌様の意味深な言葉が少し引っかか
ったが、深入りしたところで私には関係
のないことだろうと思い、何も聞かなか
った。
私は庭園にいた。
「乙女ちゃんも座って!」
「そんな、私は…」
「えぇ~十一歌のお願い聞いてくれないのぉ…?」
「…じゃあ、お言葉に甘えて」
十一歌様に庭園でお茶を飲みたいと言わ
れ、お菓子とお茶を用意するだけのつも
りだったが、何故か一緒にすることにな
ってしまった。
「十一歌、ココアが飲みたいなぁ~とっても甘いやつ」
「チョコレートも用意してあるので、そちらも召し上がってください」
「わぁ~いっ!十一歌、甘いもの大好き~」
無邪気で明るい十一歌様。
末っ子らしいというか、可愛らしい。
「乙女ちゃん、もう大丈夫?」
「えっ?」
「八重お兄様のこと」
ドキッとした。
あの日の夜、晩餐会は最悪のムードの中
解散となった。あの後、屋敷から出てい
ってしまった八重様が戻ってくることは
なく、翌朝早くに電話がかかってきたの
で守屋さんが出ると、八重様は人通りの
少ない場所でトラックに轢かれて病院に
運ばれたそうだ。急いで守屋さんが病院
に向かったが、着いた時にはもう亡くな
っていた。医師によると、搬送された時
点ですでに手遅れだったという。
八重様が亡くなったことを病院から戻っ
て来た守屋さんからみんなに伝えられた
。一様はショックを受けた顔をされてい
た。九都様も驚いた表情をしたままかた
まり、十一歌様も私の腕を掴んでいた。
その時、私はある人に視線を向けた。
私の視線に気がついたその人は、私を見
て口パクで言った。
"よくやった"
「…ちゃん、乙女ちゃん!」
ハッとする。
「あ、すみません」
「もぅ!ずっと呼んでたのにぃ!」
「何か言ってました?」
「八重お兄様が亡くなったのは悲しいけど、お兄様が乙女ちゃんにやったことは許せないよねって話し!十一歌、八重お兄様は優しい人だと思ってたのになぁ」
「そう、ですね…」
八重様の部屋を荒らし、物を盗む。
それは全て八重様の自作自演だった、と
いうことになっているが、これは私がそ
の場で吐いた大嘘。八重様は私が犯人で
あることを前から気づいていたのだろう
。わざわざ八重様が自ら晩餐会を開くだ
なんて怪しいと思った。案の定、私は八
重様の思惑にはまってしまったわけで、
あのまま私が犯人だと認めるわけにはい
かなかったから私は咄嗟に嘘を吐いた。
八重様は相当お怒りの様子だったが、幸
いにもまわりが私側についてくれたおか
げで犯人扱いされずに済んだ。
そもそもどうして私がこんな事をしたか
。私が七緒様の荷物を運び終えたあの時
、あの人にお願いされたこと。
"あなた、八重を怒らせてちょうだい"
はじめはどうしてそんなことを、と思っ
た。だが、お願いを断れる立場ではなか
った私は八重様を怒らせるようなことを
した。お風呂のお湯を水にしたり、守屋
さんが作ったお菓子を私が作ったものと
すり替えた。そして、誰にも見られない
ようにこっそり部屋に入っては荒らした
。結局本人バレてしまったが、怒らせる
ことに成功した。
それに、もう八重様はいない。
「ねぇねぇ、十一歌思ってたんだけどぉ」
「なんでしょう?」
「乙女ちゃん、最近可愛くなったよね!」
「えっ、そ、そうですかっ…?」
「うん!十一歌ね、ずっと思ってたの。なんかキラキラしてる~」
「本当ですかっ?えへへ、ありがとうございます…」
私は八重様を怒らせるためにできる限り
のことはした。私が使用人としてあるま
じき行為をし続けたのは理由がある。
私はあの人に今日やったことを必ず報告
するようにしていた。私が報告すると、
あの人は必ず報酬をくれた。
デパ地下で売っている高いケーキや指輪
、ネイル、いらなくなったブランドの洋
服など、日によって報酬は異なるが、私
がちゃんと任務を果たすとあの人は欲し
い物を私に与えてくれた。
決して私が手に入れられないような高級
品が、今私の手元にある。もらった報酬
で私は変わった。以前より可愛くなる自
分を見て嬉しくなる。それに、なんだか
とても楽しい。もっと頑張れば、もっと
変われるかもしれないと思った。
「十一歌もね、今頑張ってるんだぁ~」
「あ、お勉強ですか?」
「ううん、お勉強よりも大事なこと」
「お勉強以外ですか?」
「うん。十一歌ね、髪を伸ばしてるの」
「そうなんですね!確かに、前より伸びましたね~。もっと長くしたいのですか?」
「ちょっとだけね。あとお化粧も頑張ってるの」
「熱心ですね~」
「乙女ちゃんも最近お化粧してるよね?それって雑誌とか見てるの?」
「そうですねぇー…基本は自分の好みな感じにやってますけど、たまにモデルさんのメイクを真似してみたりとかしますね」
「好きなモデルさんがいるの?」
「特別好きって人はいないんですけど、モデルさんって綺麗だから…あ、でも十和様の広告を拝見したんですけど、あれはちょっと見入っちゃいましたねぇ」
七緒様にお願いされて撮ったものらしい
けど、正直私は七緒様よりも十和様の方
が綺麗だな、と思った。十和様はただお
願いされて撮っただけだからモデルにな
るつもりはないらしく、今まで通り過ご
している。はじめは他の兄妹方から嫌わ
れていたし、冷たい感じで何だか近寄り
難い人だなぁと思っていたけど、遠くか
ら見ているとやっぱり綺麗な人だなぁっ
て改めて思う。同じ女性としては、その
美貌がとても羨ましい。
「十和様の本当のご両親も綺麗な容姿をされているんでしょうねぇ~」
「そうだよねぇ、十一歌はお姉様になりたいんだぁ~」
「あ、頑張っているのはそのためですか?」
「そうだよ」
「私も十和様みたいになれるのならなってみたいですよーっ」
「なってみたいじゃだめなの」
「え?」
「十一歌は絶対お姉様になるのっ」
十一歌様はニコッと笑うと、チョコレー
トを摘んで口の中に入れた。
十一歌様の意味深な言葉が少し引っかか
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のないことだろうと思い、何も聞かなか
った。
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