十番目の愛

夜宮 咲

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化けた猫

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晴れた日の午後。

私は庭園にいた。


「乙女ちゃんも座って!」

「そんな、私は…」

「えぇ~十一歌のお願い聞いてくれないのぉ…?」

「…じゃあ、お言葉に甘えて」


十一歌様に庭園でお茶を飲みたいと言わ

れ、お菓子とお茶を用意するだけのつも

りだったが、何故か一緒にすることにな

ってしまった。


「十一歌、ココアが飲みたいなぁ~とっても甘いやつ」

「チョコレートも用意してあるので、そちらも召し上がってください」

「わぁ~いっ!十一歌、甘いもの大好き~」


無邪気で明るい十一歌様。

末っ子らしいというか、可愛らしい。


「乙女ちゃん、もう大丈夫?」

「えっ?」

「八重お兄様のこと」


ドキッとした。

あの日の夜、晩餐会は最悪のムードの中

解散となった。あの後、屋敷から出てい

ってしまった八重様が戻ってくることは

なく、翌朝早くに電話がかかってきたの

で守屋さんが出ると、八重様は人通りの

少ない場所でトラックに轢かれて病院に

運ばれたそうだ。急いで守屋さんが病院

に向かったが、着いた時にはもう亡くな

っていた。医師によると、搬送された時

点ですでに手遅れだったという。

八重様が亡くなったことを病院から戻っ

て来た守屋さんからみんなに伝えられた

。一様はショックを受けた顔をされてい

た。九都様も驚いた表情をしたままかた

まり、十一歌様も私の腕を掴んでいた。

その時、私はある人に視線を向けた。

私の視線に気がついたその人は、私を見

て口パクで言った。


"よくやった"



「…ちゃん、乙女ちゃん!」


ハッとする。


「あ、すみません」

「もぅ!ずっと呼んでたのにぃ!」

「何か言ってました?」

「八重お兄様が亡くなったのは悲しいけど、お兄様が乙女ちゃんにやったことは許せないよねって話し!十一歌、八重お兄様は優しい人だと思ってたのになぁ」

「そう、ですね…」


八重様の部屋を荒らし、物を盗む。

それは全て八重様の自作自演だった、と

いうことになっているが、これは私がそ

の場で吐いた大嘘。八重様は私が犯人で

あることを前から気づいていたのだろう

。わざわざ八重様が自ら晩餐会を開くだ

なんて怪しいと思った。案の定、私は八

重様の思惑にはまってしまったわけで、

あのまま私が犯人だと認めるわけにはい

かなかったから私は咄嗟に嘘を吐いた。

八重様は相当お怒りの様子だったが、幸

いにもまわりが私側についてくれたおか

げで犯人扱いされずに済んだ。

そもそもどうして私がこんな事をしたか

。私が七緒様の荷物を運び終えたあの時

、あの人にお願いされたこと。


"あなた、八重を怒らせてちょうだい"


はじめはどうしてそんなことを、と思っ

た。だが、お願いを断れる立場ではなか

った私は八重様を怒らせるようなことを

した。お風呂のお湯を水にしたり、守屋

さんが作ったお菓子を私が作ったものと

すり替えた。そして、誰にも見られない

ようにこっそり部屋に入っては荒らした

。結局本人バレてしまったが、怒らせる

ことに成功した。

それに、もう八重様はいない。


「ねぇねぇ、十一歌思ってたんだけどぉ」

「なんでしょう?」

「乙女ちゃん、最近可愛くなったよね!」

「えっ、そ、そうですかっ…?」

「うん!十一歌ね、ずっと思ってたの。なんかキラキラしてる~」

「本当ですかっ?えへへ、ありがとうございます…」


私は八重様を怒らせるためにできる限り

のことはした。私が使用人としてあるま

じき行為をし続けたのは理由がある。

私はあの人に今日やったことを必ず報告

するようにしていた。私が報告すると、

あの人は必ず報酬をくれた。

デパ地下で売っている高いケーキや指輪

、ネイル、いらなくなったブランドの洋

服など、日によって報酬は異なるが、私

がちゃんと任務を果たすとあの人は欲し

い物を私に与えてくれた。

決して私が手に入れられないような高級

品が、今私の手元にある。もらった報酬

で私は変わった。以前より可愛くなる自

分を見て嬉しくなる。それに、なんだか

とても楽しい。もっと頑張れば、もっと

変われるかもしれないと思った。


「十一歌もね、今頑張ってるんだぁ~」

「あ、お勉強ですか?」

「ううん、お勉強よりも大事なこと」

「お勉強以外ですか?」

「うん。十一歌ね、髪を伸ばしてるの」

「そうなんですね!確かに、前より伸びましたね~。もっと長くしたいのですか?」

「ちょっとだけね。あとお化粧も頑張ってるの」

「熱心ですね~」

「乙女ちゃんも最近お化粧してるよね?それって雑誌とか見てるの?」

「そうですねぇー…基本は自分の好みな感じにやってますけど、たまにモデルさんのメイクを真似してみたりとかしますね」

「好きなモデルさんがいるの?」

「特別好きって人はいないんですけど、モデルさんって綺麗だから…あ、でも十和様の広告を拝見したんですけど、あれはちょっと見入っちゃいましたねぇ」


七緒様にお願いされて撮ったものらしい

けど、正直私は七緒様よりも十和様の方

が綺麗だな、と思った。十和様はただお

願いされて撮っただけだからモデルにな

るつもりはないらしく、今まで通り過ご

している。はじめは他の兄妹方から嫌わ

れていたし、冷たい感じで何だか近寄り

難い人だなぁと思っていたけど、遠くか

ら見ているとやっぱり綺麗な人だなぁっ

て改めて思う。同じ女性としては、その

美貌がとても羨ましい。


「十和様の本当のご両親も綺麗な容姿をされているんでしょうねぇ~」

「そうだよねぇ、十一歌はお姉様になりたいんだぁ~」

「あ、頑張っているのはそのためですか?」

「そうだよ」

「私も十和様みたいになれるのならなってみたいですよーっ」

「なってみたいじゃだめなの」

「え?」

「十一歌は絶対お姉様になるのっ」


十一歌様はニコッと笑うと、チョコレー

トを摘んで口の中に入れた。

十一歌様の意味深な言葉が少し引っかか

ったが、深入りしたところで私には関係

のないことだろうと思い、何も聞かなか

った。






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