Love Potion

煉彩

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「それで、美月はこのパスタ食べて、どう思った?」

「えっと、普通に美味しいなって」

「具体的に?」

 そうだ、これはビジネス。
 建前じゃなく、ちゃんとした感想を言わなきゃ。

「美味しいんだけど、美味しいって感じじゃない。チェーン店とか自分でも作れるかなって思うような味。パスタの量も男性だったら足りないかも。スープも具が少なくて、サラダの野菜ももっと欲しいかな。これで千六百円は高いかも。ランチのお得感があまりない。ごめんなさい、失礼なこと言って」

 加賀宮さんのカフェだもん。そんなこと言われたら、気分が悪くなるよね。

「いや。素直な感想、ありがとう。確かにに美味しいんだ。だけど、どこが?って言われると難しいところがあって。俺も同じ。恥ずかしい話、そこまで俺が考えている余裕が今ない。だから、美月にも協力してほしい。スタッフはオープン当初から在籍しているスタッフも多い。だから普通に美味しいで満足しているやつもいるから。初めて食べた美月の感想はとても役立つと思う」

 真面目な加賀宮さん。
 社長なだけあって説得力がある。

「なんか、社長っぽいね。あ、本物の社長だけど。嘘っぽい社長の加賀宮さんしか見たことなかったから、かっこ良いって思った」

「嘘っぽい社長って酷い話だな。かっこ良いって思ってくれたのは嬉しいよ」

 彼がフッと笑った。
 それを見て私もフフっと笑ってしまう。

 彼は働きたいという願いを叶えてくれた。
 私も精一杯応えなくちゃ。

…・…・―――…・・…・――――

「お疲れ様です。なにその眼つき。怖いけど。何かあったの?」

 遅番で出勤してきた平野が藤田に話しかけた。

「あの女、加賀宮社長に距離が近すぎなのよ。しかもあんなにニタニタしちゃって。気持ち悪い。旦那が一流企業だからって、調子に乗るんじゃないわよ。うちの会社と提携するから、雇ってるみたいなもんでしょ?」

 キッチン奥で二人の様子を見ている藤田彼女は、誰から見ても不愉快極まりない様子だった。

「おい。俺たち管理職だけの情報だろ。キッチンここでそんなこと言うなって。他のスタッフに聞かれたらどうすんだよ」

 落ち着きなよと平野は小声で彼女をなだめる。

「うるっさいわね。私、ああいう女が大嫌いなの。何も努力してないのに、人生上手くいって調子に乗っている系。しかも加賀宮社長に馴れ馴れしく……」

「お前が社長に憧れてるってのは知ってるけど。九条さんとは一時的な付き合いだけだし、既婚者なんだから、社長だって相手にしないって」

 平野は、藤田が社長に想いを寄せていることを知っている。
 さらに彼女を激情させないよう、言葉を選びなら和まそうと必死だ。

「そうよね。既婚者になんか。社長も優しいから、気を遣っているだけ。うちの会社のためを思ってだもんね」

 藤田の肩の力が抜けた。

「そうそう。少しの辛抱だから我慢しろよ」

「ありがとう。相棒」

 彼女のご機嫌は回復したようだった。

「俺も加賀宮社長に挨拶に行ってくる」

「待って。私も社長の食器を下げに行く!」

 想い人に近付きたいと、平野のうしろ姿を追いかける彼女であった。

…・…・―――…・・…・――――

 無事に初出勤が終わり、帰宅をする。
 見学しているだけだったけど、実際にランチも食べることができたし良かった。
 明日もう一日、お客さんの様子、キッチンの様子を見せてもらって、いろんなことをまとめないと。
 こんなことで疲れたとか感じちゃいけないんだろうけど、久し振りに充実した疲労感だな。

 玄関を開けリビングへ行くと、ソファに孝介が座っていた。

「ただいま」
 一応、声をかけてみる。

「今日は?ミスってないだろうな」

 何それ。自分の心配ばかり。

「大丈夫だと思う」

 私の返答も自然と無愛想になった。

「だと思う?お前が感じてないだけで、周りが何か思うことがあったらどうするんだよ!?」

 どうしてそう突っかかるの?

「大丈夫です。何もありません」

 チッと彼は舌打ちした後
「夕飯は十九時に準備しろよ。それまで俺、寝てるから」
 そう言って寝室へ向かった。

 夕飯は美和さんが作ってくれてるから、お皿に盛り付けるだけなのに。  
 たまには自分が用意しようとか思わないの?
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