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過去 6
「それで、美月はこのパスタ食べて、どう思った?」
「えっと、普通に美味しいなって」
「具体的に?」
そうだ、これはビジネス。
建前じゃなく、ちゃんとした感想を言わなきゃ。
「美味しいんだけど、特別美味しいって感じじゃない。チェーン店とか自分でも作れるかなって思うような味。パスタの量も男性だったら足りないかも。スープも具が少なくて、サラダの野菜ももっと欲しいかな。これで千六百円は高いかも。ランチのお得感があまりない。ごめんなさい、失礼なこと言って」
加賀宮さんのカフェだもん。そんなこと言われたら、気分が悪くなるよね。
「いや。素直な感想、ありがとう。確かに普通に美味しいんだ。だけど、どこが?って言われると難しいところがあって。俺も同じ。恥ずかしい話、そこまで俺が考えている余裕が今ない。だから、美月にも協力してほしい。スタッフはオープン当初から在籍しているスタッフも多い。だから普通に美味しいで満足しているやつもいるから。初めて食べた美月の感想はとても役立つと思う」
真面目な加賀宮さん。
社長なだけあって説得力がある。
「なんか、社長っぽいね。あ、本物の社長だけど。嘘っぽい社長の加賀宮さんしか見たことなかったから、かっこ良いって思った」
「嘘っぽい社長って酷い話だな。かっこ良いって思ってくれたのは嬉しいよ」
彼がフッと笑った。
それを見て私もフフっと笑ってしまう。
彼は働きたいという願いを叶えてくれた。
私も精一杯応えなくちゃ。
…・…・―――…・・…・――――
「お疲れ様です。なにその眼つき。怖いけど。何かあったの?」
遅番で出勤してきた平野が藤田に話しかけた。
「あの女、加賀宮社長に距離が近すぎなのよ。しかもあんなにニタニタしちゃって。気持ち悪い。旦那が一流企業だからって、調子に乗るんじゃないわよ。うちの会社と提携するから、雇ってるみたいなもんでしょ?」
キッチン奥で二人の様子を見ている藤田は、誰から見ても不愉快極まりない様子だった。
「おい。俺たち管理職だけの情報だろ。キッチンでそんなこと言うなって。他のスタッフに聞かれたらどうすんだよ」
落ち着きなよと平野は小声で彼女をなだめる。
「うるっさいわね。私、ああいう女が大嫌いなの。何も努力してないのに、人生上手くいって調子に乗っている系。しかも私の加賀宮社長に馴れ馴れしく……」
「お前が社長に憧れてるってのは知ってるけど。九条さんとは一時的な付き合いだけだし、既婚者なんだから、社長だって相手にしないって」
平野は、藤田が社長に想いを寄せていることを知っている。
さらに彼女を激情させないよう、言葉を選びなら和まそうと必死だ。
「そうよね。既婚者になんか。社長も優しいから、気を遣っているだけ。うちの会社のためを思ってだもんね」
藤田の肩の力が抜けた。
「そうそう。少しの辛抱だから我慢しろよ」
「ありがとう。相棒」
彼女のご機嫌は回復したようだった。
「俺も加賀宮社長に挨拶に行ってくる」
「待って。私も社長の食器を下げに行く!」
想い人に近付きたいと、平野のうしろ姿を追いかける彼女であった。
…・…・―――…・・…・――――
無事に初出勤が終わり、帰宅をする。
見学しているだけだったけど、実際にランチも食べることができたし良かった。
明日もう一日、お客さんの様子、キッチンの様子を見せてもらって、いろんなことをまとめないと。
こんなことで疲れたとか感じちゃいけないんだろうけど、久し振りに充実した疲労感だな。
玄関を開けリビングへ行くと、ソファに孝介が座っていた。
「ただいま」
一応、声をかけてみる。
「今日は?ミスってないだろうな」
何それ。自分の心配ばかり。
「大丈夫だと思う」
私の返答も自然と無愛想になった。
「だと思う?お前が感じてないだけで、周りが何か思うことがあったらどうするんだよ!?」
どうしてそう突っかかるの?
「大丈夫です。何もありません」
チッと彼は舌打ちした後
「夕飯は十九時に準備しろよ。それまで俺、寝てるから」
そう言って寝室へ向かった。
夕飯は美和さんが作ってくれてるから、お皿に盛り付けるだけなのに。
たまには自分が用意しようとか思わないの?
「えっと、普通に美味しいなって」
「具体的に?」
そうだ、これはビジネス。
建前じゃなく、ちゃんとした感想を言わなきゃ。
「美味しいんだけど、特別美味しいって感じじゃない。チェーン店とか自分でも作れるかなって思うような味。パスタの量も男性だったら足りないかも。スープも具が少なくて、サラダの野菜ももっと欲しいかな。これで千六百円は高いかも。ランチのお得感があまりない。ごめんなさい、失礼なこと言って」
加賀宮さんのカフェだもん。そんなこと言われたら、気分が悪くなるよね。
「いや。素直な感想、ありがとう。確かに普通に美味しいんだ。だけど、どこが?って言われると難しいところがあって。俺も同じ。恥ずかしい話、そこまで俺が考えている余裕が今ない。だから、美月にも協力してほしい。スタッフはオープン当初から在籍しているスタッフも多い。だから普通に美味しいで満足しているやつもいるから。初めて食べた美月の感想はとても役立つと思う」
真面目な加賀宮さん。
社長なだけあって説得力がある。
「なんか、社長っぽいね。あ、本物の社長だけど。嘘っぽい社長の加賀宮さんしか見たことなかったから、かっこ良いって思った」
「嘘っぽい社長って酷い話だな。かっこ良いって思ってくれたのは嬉しいよ」
彼がフッと笑った。
それを見て私もフフっと笑ってしまう。
彼は働きたいという願いを叶えてくれた。
私も精一杯応えなくちゃ。
…・…・―――…・・…・――――
「お疲れ様です。なにその眼つき。怖いけど。何かあったの?」
遅番で出勤してきた平野が藤田に話しかけた。
「あの女、加賀宮社長に距離が近すぎなのよ。しかもあんなにニタニタしちゃって。気持ち悪い。旦那が一流企業だからって、調子に乗るんじゃないわよ。うちの会社と提携するから、雇ってるみたいなもんでしょ?」
キッチン奥で二人の様子を見ている藤田は、誰から見ても不愉快極まりない様子だった。
「おい。俺たち管理職だけの情報だろ。キッチンでそんなこと言うなって。他のスタッフに聞かれたらどうすんだよ」
落ち着きなよと平野は小声で彼女をなだめる。
「うるっさいわね。私、ああいう女が大嫌いなの。何も努力してないのに、人生上手くいって調子に乗っている系。しかも私の加賀宮社長に馴れ馴れしく……」
「お前が社長に憧れてるってのは知ってるけど。九条さんとは一時的な付き合いだけだし、既婚者なんだから、社長だって相手にしないって」
平野は、藤田が社長に想いを寄せていることを知っている。
さらに彼女を激情させないよう、言葉を選びなら和まそうと必死だ。
「そうよね。既婚者になんか。社長も優しいから、気を遣っているだけ。うちの会社のためを思ってだもんね」
藤田の肩の力が抜けた。
「そうそう。少しの辛抱だから我慢しろよ」
「ありがとう。相棒」
彼女のご機嫌は回復したようだった。
「俺も加賀宮社長に挨拶に行ってくる」
「待って。私も社長の食器を下げに行く!」
想い人に近付きたいと、平野のうしろ姿を追いかける彼女であった。
…・…・―――…・・…・――――
無事に初出勤が終わり、帰宅をする。
見学しているだけだったけど、実際にランチも食べることができたし良かった。
明日もう一日、お客さんの様子、キッチンの様子を見せてもらって、いろんなことをまとめないと。
こんなことで疲れたとか感じちゃいけないんだろうけど、久し振りに充実した疲労感だな。
玄関を開けリビングへ行くと、ソファに孝介が座っていた。
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一応、声をかけてみる。
「今日は?ミスってないだろうな」
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「大丈夫だと思う」
私の返答も自然と無愛想になった。
「だと思う?お前が感じてないだけで、周りが何か思うことがあったらどうするんだよ!?」
どうしてそう突っかかるの?
「大丈夫です。何もありません」
チッと彼は舌打ちした後
「夕飯は十九時に準備しろよ。それまで俺、寝てるから」
そう言って寝室へ向かった。
夕飯は美和さんが作ってくれてるから、お皿に盛り付けるだけなのに。
たまには自分が用意しようとか思わないの?
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